ちなみにこの作品のお気に入り数とか4日で100突破しそうでビビってます。僕も月山みたいになりそうです。
「やあトーカ君。調子はどうだい?」
「ドクターの薬のおかげで。動けるくらいには回復してます。」
「そうかい。」
月山君主催のあれから3日後くらい。研究やら読書やらに忙しく、それらが済んで久しぶりに部屋の外に出てみたら、何やらトーカくんが体調を崩したと聞き、私は彼女の部屋に来ていた。
しかし、どうやら私が店の皆に渡していた薬のおかげでそこまで悪化はしなかったらしい。
「…だけどねトーカ君。あの薬は痩せ我慢用みたいなものだ。いくら友人関係を維持したいからと言って、あまり飲みすぎない様にしたまえよ。薬品というのは薬にも毒にもなり得るからね。…ほら、補充分。」
「…わかってます。」
そう言いつつ、トーカ君は私が渡した薬をしまう。
…あの薬はコーヒーから着想を得て喰種の味覚を鈍くするもの。あまり使いすぎると味覚がなくなってしまう。それは良くないだろう。
「ま、君の体調についての話はここまでにしておこう。…何やらお客さんが来そうだしねぇ。」
「お客さん?」
私が話を切り上げたタイミングで、扉がノックされる。
「あ、はーい。」
そのノックを聞きつけ、トーカ君が玄関に向かう。
しかし誰だろうねぇ。足音で誰か来るのはわかったが、流石に誰か特定するのは無理だからね。
トーカ君が淹れてくれたコーヒーを飲みつつ、玄関での話し声に耳を傾ける。
「…ふむ。」
なになに? …なるほど、リョーコ君か。ヒナミ君を預かっていて欲しいと。
まあ母親らしいことだが、どことなく焦っているような。何かあったのかねぇ。
しかしヒナミ君か、私は少々彼女に嫌われているような気がするんだが。流石に長居しすぎだし、そろそろ帰るべきか…
うーむ、と、この後どうするか一人で考えていると、声をかけられる。
「あ、あの…何を悩んでるんですか?」
「ふむ、私が邪魔になる前に出て行った方が…って、ヒナミ君か。」
声をかけてきたのはヒナミくんだった。
いつの間にか私と向かい合う様に座っており、テーブルには本とノートまで広げてある。
…いつの間に。
「ほら、気づいてなかった。やっぱりやったらよかったのに。」
「で、でも、迷惑だっただろうし、邪魔しちゃったら良くないと思うし…」
「大丈夫だよ、ドクターはそんなことで怒ったりしないし。」
「全くトーカ君、何やら企んでいた様だねぇ? ヒナミ君が優しいおかげで助かったが。」
別に何も、と少し笑いながら言っているトーカ君を睨んでやりつつ、テーブルに広がっているヒナミ君の私物を見る。
「ほう、また本が変わっているねぇ。前回のものは読み終わってしまったのかい?」
「あ、はい。とっても面白かったです。」
「早いねぇ。私ですらあれを読み終えるのに何日か使ったというのに。1日でか。君はすごいねぇ。」
「え、えっと…ありがとうございます。」
あれを1日で、と素直に驚いただけなのだが、ヒナミ君は褒められたのが嬉しかったのかくすぐったそうに笑った。
…可愛い。 子供は扱いづらいと近づかない様にしていたが、案外可愛いものだ。
「…おや。」
「? どうしたんですか?」
リョーコ君とはまた別の足音が聞こえて、思わずつぶやいてしまう。
何やら今日は客人が多いね。それだけトーカ君に人望があるということかな。
「なんでもないよ。ただトーカ君の人望に驚いてしまっただけさ。…トーカ君、またお客様だ。」
「人望…って、どういう意味ですか?」
…ああ、そういえば言葉の意味を勉強中だったか、彼女は。
人望の意味を教えてやると、玄関にお客を迎えに行っていたトーカ君がその人物を引き連れて戻ってきた。
「おや、やっぱり金木君。」
「ど、どうも…」
「わかってたんなら言ってくださいよ、ドア開けなかったのに。」
「あはは…」
どうやら金木君がずいぶん嫌いなようで。そんなわけないだろうに。
これはあれか、ツンデレというやつか。
「バッ、そんなわけないでしょ!?」
「おや、声に出てたかな? これは失礼。」
「絶対わざとでしょ… それで? 金木は何しにきたの?」
トーカ君が金木君に聞く。
まあ彼のことだからお見舞いとかだろう。
「えっと、体調崩したって聞いたからお見舞いに。」
「ふーん? 手ぶらで?」
「えっと…」
おやまあ、痛いところをつくね。
金木君がどうするのか見守っていると、その恐ろしい空気を突き破るようにヒナミ君が金木君に質問する。
「お兄ちゃん、これなんて読むの?」
「えっと…キンモクセイ、だね。」
「これもお花?」
それをみたトーカ君は、流石に邪魔するのは気が引けるのか、彼の分のコーヒーも入れる。
よかったねぇ、ボコボコにされずに済んだようで。…それにしても。
「いやはや、君たちにはちゃんと友人がいるようで羨ましいね。…私は研究三昧でそんなものいないからねぇ。」
…無論、できない理由はそれだけではないのだろうが。
昔は作ろうと努力したものだ。後の祭りだったが。
そんなふうに忘れたい思い出に浸っていると、トーカ君が言った。
「私、友達じゃないんですか?」
「…え、っと。」
少しその言葉に驚く。…てっきり、友達ではないと思われていたと思ったが。
良くて上司あたりだろう、と。
そう呆けていると、彼女がそのまま言葉を続ける。
「お見舞いに来てくれる時点で友達だと思いますよ。」
…そう、なのか。
…そうか。
私は一人じゃなかったか。
ふふ、と思わず笑いが溢れる。
「…そういえば確かに、もうたくさんの人に囲まれていたな、私は。」
「何を今更言ってるんですか、本当に。」
「すまない、今の言葉は忘れてくれ。」
私が少し感傷に浸っていると、再びインターホンが押される。
「流石に…君、友達多すぎないかい?」
「こんなに人来るのは予想外です…。」
思わずトーカ君に言ってしまう。
本日3度目…私を含めると4人目だ。全く、呆れた人望の強さだ。
また先ほどみたいに廊下に耳を傾けてみると、仲の良い相手のようだ、トーカ君を心配する様な声が聞こえる。
「何やら話し込んでいる様だね。」
「そうですね?」
トーカ君の中の良い相手ねぇ。ちょっとみてみようか。
リビングから、金木君と共に顔を出してドアの方を見てみる。
そこにはトーカ君と話している少女がいた。話を聞くに、どうやら学校の仲の良い友人らしい。
「それでね…って!?」
「…? どしたの?」
こちらを見つけたのか、その少女はものすごく驚いた様な声を上げる。
…何に驚いたんだ?
「どうしたんでしょう?」
「私に聞かれても困るなぁ。」
思わず金木君と顔を見合わせてしまう。
すると彼女はトーカ君に鍋を渡し、無言で親指を立てつつ去っていった。
「…何がしたかったんでしょう?」
「私にもわからん。…それより。」
トーカ君の持っている鍋の方が良くないだろう。
トーカ君がその鍋を持って行き、そしてそれを台所に置く。
鍋の中身を見ると、やはり食べ物…肉じゃがらしいものだった。
「…それ、どうするつもり?」
金木君がトーカ君に問う。
金木君も1度人間の食べ物を食べている。どうなるかは想像に難くないんだろう。
「食うよ! せっかく依子が作ってくれたんだから!」
と、当然のように言って、その肉じゃがを食べ始める。
…見ているとやはり時々吐きそうになっている。が、彼女はそれを吐き出さず、無理やり飲み込んでいる。
…流石にダメだね。
「待ちたまえ。流石に医療知識のあるものとしてストップだ。本当に倒れるぞ、トーカ君。」
「…でもっ! これは…依子が作ってくれたものだけは…」
トーカ君が悲しそうに言う。…おそらく彼女だってわかってるだろう、自分の体のことだから。
同時に友人として、作ってくれたものも残さず食べたいんだろう。
私としては反対したいが…
「…はあ。仕方ない。」
そう呟き、私は持ってきていた医療バッグの中から特製の薬を出す。
できればこれに頼り切りになって欲しくないから、出したくはなかったが。
「…これを飲んでから食べたまえ。味はなくなるが胃を強くできる薬だ。…これでマシにはなるだろうさ。」
「あ、ありがとうございます!」
「ただし。これを渡すのはこれ一回だけだ。私に頼んでも渡さないからな。」
「はい!」
トーカ君は嬉しそうにそれを受け取って飲んだ。
…はあ。医者としてはあまり嬉しくないねぇ…。
「…では。私はこの辺でお暇するとしようかね。…薬を飲んだから悪くはならないと思うが、やばそうだったら私の部屋に来ること。いいね?」
「はい。」
「では。」
バッグを持ち上げ、私はトーカ君の部屋から出る。
…友人関係が強すぎるのも考えものだな。
ちょっとトーカちゃんのキャラがブレてる感じしますが…まあ依子ちゃんのことだったらこれくらいは…なるかな?