双子の妹にTS転生した邪悪概念   作:アライ

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卒業式のおはなし

 そして、三月の第三週。

 小学校の卒業式がやってきた。

 

「これでお別れだね」

「うう、寂しくなるなあ……」

「愛梨ちゃん、ほんとに別のとこ行っちゃうんだね……」

「私達、ズッ友だよ……!」

 

 卒業証書が入ったホルダーを手に持ちながら、仲が良かった女の子達と最後の挨拶をする。

 おお、まだ小学生の間でもズッ友という言葉が使われるのか。確か前世の私が中学生くらいの時に流行っていた言葉の様な気がするが……それでも、廃れずに残っているというのは何か感慨深いものがある。

 

「別に引っ越しするわけじゃないんだから、いつでも会えるよ」

「うう……だと良いんだけど……」

「だからね、元気だして?」

 

 別の中学に行く事になっても住んでいる所は変わらないのだから、会う分には困らないだろう。

 ……まあ、それはお互いの都合を何も考えないでの話なのだが。

 

 面と向かって顔を合わせるタイミングが無くなる以上、もし会うとなれば連絡を取る必要がある。高度な情報社会が発達した今では、その手間は極僅かなものだ。

 しかし、いざ連絡するとなると何となく遠慮してしまい……結局やめてしまう。そうなればもう、疎遠になるのは時間の問題だ。

 

 少し会わなくなっただけで、どう接していいのか分からなくなるのも割りと有る話。思いがけず旧友と街中で出会った時とかに、『元気にしてる?』といった社交辞令しか会話が繋がらない──私はそんな現象をよく知っているけど──ここで言うのは憚られた。

 

 だが、そういうものだろう。

 この子達は皆明るい子だ。私はもう置いといて、別の中学になってもたくさん他の友達を作って欲しい。

 口には出さないが、それが私の本心からの想いである。

 

「待って愛梨ちゃん……。わたし、言いたい事が……」

「あ、唯ち」

「おっ、これはもしかして……」

 

 そんな事を考えていれば、腰の前で合わせていた両手を突然優しく掴まれた。

 四年になってからできた友達の女の子、唯ちゃんである。四年になってから今に至るまでずっと同じクラスで、いつも良く話している人だ。

 

 ふわりとしたセミロングの髪が映える可愛い女の子で、そしてとても社交的な子である。当然の事ながらモテモテで、クラスの男どもも結構好意を向けているヤツは多かった。

 

 はて、唯ちゃんは一体どうしたんだろう。

 

「今ここでやっちゃうの、唯? ふーん」

「んん? どうしたの?」

「今唯はだな、アイちゃんに大切な用事が有って……」

「い、言わないで……わたしが、言うから」

「そう? じゃ、私達は影で見守っているから」

「お願い……」

 

 そうすると、その女の子を残して他の友達は校舎の脇へと駆けて行った。

 

 えっ、何が起こるんです?

 

「どうしたの?」

「えっと、その……あのね……」

「ん。いいよ、ゆっくりで」

 

 唯ちゃんは深く深呼吸をした後、ゆっくり話し始めた。

 

 

「ありがとう。その……知ってる通り、わたし前まではとっても引っ込み思案で……」

「うん」

「クラスの中でもあまり馴染めなくて、隅っこにいつも一人で居る様な暗い子だったの」

「……そう、だったかな?」

「言葉を濁さなくても大丈夫だよ。自分の事は、自分が一番分かっているから」

 

 唯ちゃんの話す言葉を以って、昔の事を想起してみる。

 んん、確かクラスの男子生徒にちょっかいをかけられている所を私が止めたんだったか。

 

 教科書を勝手に奪ったうえに、悔しかったら取り返して見ろよと豪語するかの者に対して、私の先生に言ってやろ攻撃が炸裂し──

 それ以来、男子の私に対する呼び名がチクリ魔になったのは記憶に新しい。

 

「でもね、あれから……わたし変われたの。愛梨ちゃんと友達になれて……」

「私と……?」

「愛梨ちゃんを通じて、たくさん他の友達もできた。わたし、とっても嬉しかったんだ……友達と、一緒に遊ぶのがこんなにも楽しい事だなんて……」

「そう、だったんだ」

 

 なるほど、私の何気ない行動がこの子を変えたのか。

 友達と一緒に遊ぶ事が心の底から楽しいと、そう思って貰える様になったのか。

 

 ふむ……。

 

 そう考えてみれば、私は何やら誇らしい気持ちになった。

 

 

 う~ん、友達はいいぞ。

 特に若い頃は、それはもう。

 

 歳を重ねるたびに、気の置けない友を作るのはとても難しくなる。くだらないプライドとか矜持だとか、色んな物が大人の世界には備わっているからだ。

 今あれこれ悩むよりも、友達に囲まれた楽しい毎日を送ったほうが良いに決まっている。

 

「全て愛梨ちゃんのおかげなの」

「そんな、大した事は……」

 

 絶対大した事やったと思っているに違いない。

 傍から見ればそう評価を下されるだろう、私は唯ちゃんの言葉を聞いて内心めっちゃにやけていた。

 

 いやあ、それほどでも。

 

「それで、わたし……隠してた事が有るの」

「隠していた、事?」

「うん。だけど、ずっと言って良いのか……わたし分からなくて」

「んん?」

「でも、愛梨ちゃんが卒業して……別の中学に行っちゃうって実感したら、わたし……」

 

 何やら思い詰めたような様子の唯ちゃん。

 

 大切な友達だったけど、まさかこれ程までに卒業する私の事を思ってくれるなんて。

 うぅ、最高だ。

 

 この上ない幸せ。TS妹、冥利に尽きるというものです……!

 

「迷惑かけちゃうかもしれないけど……もう、思いを抑えきれないの……」

 

 となれば、きっと後に続くのは私に対する感謝の言葉であろう。

 

 そう、感謝の言葉である。

 

 

 

 

 ふへへ……!

 

 普段は真面目で謙虚な子を演じているが、その本質やとても不遜なヤツ──それが今の私である。

 人並み外れた自己顕示欲を持っているし、一度褒められれば天高く雲を突き抜けて増長してしまう。

 図々しい人間であるのは分かっているのだが、どうにもこの性分は変えられない。

 

 だって人に称賛されるの、最高だもの。

 

「だから、ここで言っちゃうね……」

 

 唯ちゃんは、ありがとうの言葉を存分に拡張して私に伝えるつもりだ。

 

「私は愛梨ちゃんのことが──す……」

 

 いえ~い、ばっちこーい!

 私は母なる海の様な大らかさを以って、最大級の感謝を受け止める準備を整えた。

 

 

 

 ……ん?

 

「す、す、す……~っ!」

 

 す。

 

 そうしていれば途端に二の句が継げなくなってしまった唯ちゃん。

 一体、どうしたのだろう。

 

 様々な実体験から人の心情を読む事にそこそこの自負を持つ私だが、しかしいま目の前に居る女の子の気持ちを推し量る事はできなかった。

 深呼吸でもしているのだろうか。

 

「えっと……だいじょ」

「や、やっぱり無理ぃ~~~~~~~~~!」

「……!?」

 

 流石に心配になってきたので声をかけようとした私だったが、突然辺りに響いたのは嘆きにも近い悲鳴だった。

 肺に取り込んだ空気を存分に排出した唯ちゃん。

 

 普段の彼女からは考えられない奇行に思わず身構えたが、しかし──

 

 

 

「これからもお達者で~~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 唯ちゃんは何を思ったのか、校門の外へと全速力で走りだしてしまった。

 あっ、とても早い。追いつけねえ……!

 

 そういえば彼女、100メートル走がとても早かった気がする。

 

 普段より運動不足である私は、その健脚ぶりを見てすぐに諦めた。

 

 

 

「なんだったんだろう……」

「ああやっぱり……。唯ち、恥ずかしがりやだから無理だったか……」

「でもしょうがないよ……だって、とっても勇気の要ることだもん」

 

 隅っこから事の一部始終を見守っていたのだろう、友人達がいつの間にか戻ってきていた。

 う~ん、分からん。彼女の言いたかった事、さっぱり分からん。

 

「唯ちゃんが言いかけた事、なんだったの? 知ってるそぶりだったけど」

「え、いやそれは……」

「えっと……うん」

 

 何やらワケありという様子だったので疑問を投げかけてみれば、皆言い淀んでしまった。

 

「ごめん。知ってるけど、私達の口からじゃ言えないんだ」

「唯ちが言わないとダメな事だからね~」

「んん……? そうなの?」

「そうだよ」

 

 他の人の口を借りてはいけないお話……なんだろう、私には皆目見当が付かない。

 そう言われるととても気になってしまうのだが……当本人が何処かへ消えてしまったのでどうしようもできない。

 

 

 

「まあ、私達が言えるのは……卒業してからも唯ちと連絡を取り続けてやってくれという話だけだ」

 

 う~ん、それだけじゃよく分からないが……。

 多分、話を入れておいた方が良い事だけは分かる。

 

 後で唯ちゃんの家に押しかけることにしよう。

 私は比較的インドア派では有るが、そこそこ行動力は高いのである。

 

 

 

 

 そんなこんなで、私の卒業式は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──いや、まだ終わっていない!

 終わっていないだろう──!

 

 大切な事を私は寸前で思い出した。

 

 そうだ、今日は卒業式。

 卒業式という事は、恒例のイベントが存在するのだ──!

 

 私は気力に満ちたその身体を、春の訪れを感じる空の下で存分に振るった。

 たくさんの父母達で敷き詰められた道をなんとか進んでいく。

 

 確か目的地は、私達のクラスとは別方向にある場所。校内を通ればショートカットになるが、混んでいるので通り抜けるのは難しい。大きく外周を回る様にして、約束の地を目指していく。距離にしてみれば、高学年の持久走にも近い長さだ。私はいつも後ろから数えたほうが早かったのであまり良い思い出は無い。

 

 ……とにかく。

 

 余りの過出力、翌日からはほぼ筋肉痛確定のコースを突き進んでいるが気にしない。今はただ、邁進するのみ。

 

 

 息せき切って人混みの中をかき分けていけば、やがて道が開けた。

 そこには確かに、我が愛しの存在が──

 

 

 

「写真撮影終わりました~」

「ぐあっ……!」

 

 私はその言葉を聞いて、地へと倒れ伏した。

 

「ちょ、ちょっと愛梨どうしたの?!」

「アッ、お姉ちゃん……」

「こんなに息を切らして……な、なにかあったの?」

 

 出迎えてくれたゆー姉を、私はなんとか見上げる。

 ちょうど日が昇る時間なだけあって、まるで後光が差している様に見えた。

 

 光の輪が、一緒に見える……。

 

「ゆー姉のクラスが写真撮影をしていると聞いて」

「うん……」

「はいチーズで、満面の笑みを浮かべたお姉ちゃんを是非拝見したいなと」

「ええ……そんな事だけで、ここまで走ってきたの?!」

「そしてあわよくば、お姉ちゃんと私のツーショットも撮って貰おうかと」

「多分同じクラスの人だけしか撮ってくれないから無理だよ……」

「ぐぅ……!」

 

 私は再度、地にその身を付けた。

 そうか、ダメなのか……。

 

 私達の小学校の卒業式、そこではクラスの生徒達のふれあいの過程を残す為に集合写真とは別の構図が撮影される事になっている。その為にプロのカメラマンをどこからともなく呼んでいるとかなんとか。

 とは言っても相手は小学生なので、そこまで難しいものは必要とはされないが。

 例えば、友達と一緒に肩を組んでピースをしている写真とか。笑い合っている写真だとか。

 

 そんな感じである。

 結構ゆるゆるだ、ちょっと無理強いしてもバレへんか……。

 

「そういうわけで、プロの人に私達のツーショットを撮って貰いたいと思った次第です」

「どういうわけなの……ダメだと思うけどなあ」

「そ、そんな……」

「私は……もうみんなと撮り終えちゃったし。愛梨のクラスはどうしたの?」

「私のクラスの撮影はもう終わったよ。なので、全速力で走ってきました……!」

「そ、そっか……」

 

 私のクラスはゆー姉のクラスと違い、だいぶ前の方で撮影が開始されていた。

 

 だから十分間に合うと思ったのだが……現実は厳しいらしい。

 

「愛梨はちゃんと写真撮ったの?」

「はい! 時間掛かったけど、みんなと撮りました! ……あ、男子は入ってないです……」

「ふふ。愛梨は人気者なんだね」

 

 ──ハッ。そうだった、いけないいけない。

 

 ゆー姉にそこまで言われて、私は少しだけ落ち着きを取り戻した。

 ……かなり早計だった。

 

 もしまだ撮影が続いていれば、私は素知らぬ顔で乱入していただろう。

 ああは言っているが、お姉ちゃんも私と同じくらい……いや、それ以上の人気者だ。

 それ故に、沢山の時間を必要とされる。

 

 そんな中、写真を撮るだけならばいつでもできる妹がこっそり入ってきたら、一体どうなるだろうか。

 答えは──めっちゃ邪魔である。

 

 妹、反省しました……これからは心を入れ替えて生きていきます……。

 

 

「あっ、キミさっきの撮影の時に居たっけ? 見覚えの無い服着てるけど」

 

 そうやって心の中で強く自省していれば、彼方から声を掛けられた。

 女性の人だ。首から、レンズの幅がかなり広い一眼レフのカメラを引っ提げている。

 間違いなく、小学校に雇われたプロのカメラマンさんだ。

 

「いや違います。別のクラスの生徒でして……」

「そうなんだ! いや~良かった。お姉さん、もしかして撮影漏れがあったのかとヒヤヒヤしちゃったよ」

「私の所が終わったんで、お姉ちゃんに会いに来たんです」

「そうか、そうか~」

 

 一度家電量販店で撮影用のカメラを見たことがあるが、どれもリーマンの一ヶ月の給料を軽く超える値段で驚いた覚えがある。このお姉さんが引っ提げているそれは、何となくではあるがそれよりも更に高そうだ。

 きっと、いい写真が取れるんだろうなあ……。

 

「それにしても二人共似てるね~」

「双子の姉妹なんです。私が妹の愛梨で」

「姉の優愛です」

「ほうほう。服装は違うけど、こうして並ばれると見分けが付かなくなっちゃうなあ~」

 

 そう言うと、お姉さんはどうしてかじっとりとした目で私達を交互に眺めてきた。

 とても粘着質で正直少し気持ち悪かったのだが、何やら期待の念の様なものが込められている。

 

 これは、もしかして……。

 

「ふふーん、その目。何が言いたいのか、分かるよ~」

「……!」

「お姉さん、こっそり二人の事撮っちゃおうかな~?」

 

 思わず私は心の中でガッツポーズをした。

 

 やったぜ。

 ブラボー。

 最高だ。

 計画通り。

 ちょろいな。

 

 私は最大級の称賛を並べてお姉さんに答えた。

 流石に口には出していない。

 

「え、いやそんな。迷惑じゃ……」

「だいじょ~ぶ、だいじょ~ぶ。ちょっと撮るだけだからヘーキだよ」

「ゆー姉、一緒に撮って貰おう!」

「え、ええ? 良いのかな……」

「細かいセッティングとかは省かせて貰うけど、映りは最高だよ~。じゃ、はいチーズ!」

「……ひゃい!?」

 

 お姉さんがカメラを向けて来たので、ゆー姉と一緒に被写体になる事にした。

 肩を寄せて身をくっつけ合う。

 お互い身長も一緒なので、収まりはとても良いはずだ。

 

 ぱしゃりと無機質な音が連続的に鳴り響けば、何やら満足げな表情を引っ提げたお姉さんが顔を覗かせた。

 

「いいねえ、リテイク無しでここまで撮れるのはそうそう居ないよ」

「は、早すぎるよ……心の準備ができてなかったのに……」

「こういうのは自然体が良いんだよ~。ふふん、いい写真撮れちゃった」

「写真……写真は、いつ現像するのでしょうか……?!」

「そうだね~。他にも色々と作業が有るから数日後になるかな。一週間経てば確実に終わると思う。住所を書いた封筒を渡してくれれば送付するよ。フォトスタジオに来てくれれば、直接すぐに受け取れるけど……」

「すぐに行きます!」

「食い気味だね~。ほら、私の名刺だよ。週末の午後ならいつでも居るからね~」

 

 折角プロの方に撮って貰ったゆー姉とのツーショット。

 すぐに鑑賞しなければ妹がすたるというもの。

 

 現像したらすぐに取りに行かせて貰おう。

 

「あの、料金とかは……?」

「ホントは出張料とかが要るんだけど、今回はお姉さんのきまぐれだからね~。サービスだよ、サービス」

「あ、ありがとうございます」

 

 おお、なんて気前が良い人なんだろう。

 半ば強請った様なものなのに、費用無しで撮ってくれるなんて。

 

 かたじけなく存じます……!

 

 

「じゃ、もうそろそろお昼だし、お姉さんもお腹空いたからまたね~。君達ふたごちゃんは印象深いから来てくれればすぐに分かるよ~」

 

 そう言って、お姉さんは手を振りながら人混みへと紛れていった。

 

 

「嵐の様な人だったね……」

「よし、一週間経ったらすぐに行こう!」

「愛梨は元気だなあ」

 

 

 

 

 そんなこんなで、私の印象深い卒業式は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は外食にするかな。お父さん、この辺に美味しいうどん屋さん知ってるんだ」

 

 父さんが運転する車に揺られながら、私は少しだけぼーっとしていた。

 あれから校門の手前で待っていた両親に出迎えられ、今に至る。

 

 そうか、私。

 卒業しちゃったんだなあ……。

 

「春からは別の中学だね、愛梨」

「うう……泣けてきた」

 

 いつもは窮屈に感じるシートベルトも、今は全く気にならなかった。

 

 

 ここ数年は学年が繰り上がってもゆー姉とは違うクラスになっていたので、いつも一緒なワケでは無かったが、別にそれほど不自由では無く会おうと思えばいつでも会える環境ではあった。

 が、学校が違うとなると話は変わってくる。

 

「今生の別れとは、斯くも辛いものなのか……」

「いや、別に朝と夜いつでも会えるでしょ……」

 

 二十四時間お姉ちゃん成分を摂取しなければ私はどうなってしまうのか、想像に難くない。

 果たして耐えきれるのか、これからの数年間……!

 

「愛梨のこと心配だな。ちゃんとやっていけるのか?」

「そうねえ。ここまで優愛にべったりだと、離れ離れになった時不安だわ~」

「くぅ……自分の未来が、手に取る様に想像できる……!」

 

 そうか。早ければ高校卒業までしか、ゆー姉とは一緒に居られない。

 後、六年間である。

 

 長いようには思えるが、小学校での時間と同じだと考えれば……時が流れてしまうのはとても早く感じられてしまうだろう。

 

 いずれは確実に訪れる未来。

 耐性を、身に付けなければ……。

 

「頑張ります。この妹、演じるのは得意なんで」

「演じるってなんなの……?」

「ははは。よく分からんが、その意気だぞ」

「愛梨、頑張りなさい」

 

 

 私は宣言する。

 お姉ちゃんが居なくても生きていける様に……それが、私のこれからの課題だろう。

 

 そう、心の中で結論付けた。

 

 

 果たしてそれが本当にできるものなのかどうか。

 それは今の私にも分からない。




次から本編です。
一気に高校時代まで飛びます。
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