実質ヴィランなので外道連中の命を沢山奪いますし、死者も出るでしょう。
綺麗事なんて裏世界には存在しません。
慈悲もなし。
天羽組の武闘派 中堅ヤクザ小峠、闇の剣豪と黒幕の連戦で絶対絶命!?
俺の名前は小峠華太。
『小峠、お前の最近の活躍はめまぐるしい。……そろそろメインでカチコミをやってみねえか?』
(とうとうこの日が来た。――正直な所、武闘派兄貴達の戦闘力は俺にはまだ到達していない。それでも俺にこの大役を任せてくれた親っさんの期待には何としてでも応えないとな)
俺がヤクザの世界に入って十数年。
様々な死線を乗り越えて、今まで武闘派兄貴達がこなしてきたカチコミのメインという大役を任されるまで辿り着いたアラサーの極道だ。
@@@@
俺は昔、とある組に属していたという元構成員のおっちゃんと出会った事がきっかけでヤクザの世界に憧れた。
ただ、俺がその世界に踏み入れた時、おっちゃんが話していた現在のヤクザの組織はまるで違っていた。
『この世界に誘っておいて何だが、このヒーロー飽和社会の中でよくヤクザの世界に入りたいと思ったな小峠。今のヤクザは"天然記念物"と呼ばれる程に衰退しちまったのに』
俺に極道のイロハを教えてくれた藪下の兄貴の話によると、ヤクザ組織は次々と摘発・解体され、とある男の登場により完全に時代を終えたとされている。現在では昔気質の極道などは、天然記念物と呼ばれるほどにその数は少ない。
何故、ヤクザの時代は終わってしまったのか。
その理由は、中国の軽慶市での「発光する赤児」の報道以来世界各地で超常現象が報告された事が始まりだった。
いつしか世界総人口の約8割が超常能力"個性"を持つに至った超人社会となり、その"個性"を悪用するヴィランに対し"個性"を発揮して取り締まる存在、ヒーローが現れた。
そのヒーローの隆盛によりヤクザ組織は次々と摘発・解体され、オールマイトの登場で完全に時代を終わらされてしまった。
俺はそのヤクザの歴史を兄貴から聞いた時、苦虫を噛んだ。
(また、"個性"と"ヒーロー"か……なんで奴等はいつも俺の人生を阻み続ける)
俺は"個性"と"ヒーロー"が大嫌いだった。
その理由は至ってシンプル。
先程説明した世界総人口で約2割は"無個性"で、俺もその内の一人だった。
そのお陰で、同年代の連中に小学校卒業までイジメられ、ヒーローごっこに呼ばれたかと思えばいつもヴィラン役だった。
両親はそんな俺を巡って毎日の様に不毛な罵り合いの大げんかを繰り広げていた。
そして年月が経ち、その中で両親は一度離婚したが、俺が中1の時、母親が別れたはずの父親となぜか一緒におり、唐突に"個性"を貰えるという話を切り出された。
「ふざけんな!!お前らは"子供"より"個性"がそんなに重要なのか?この糞親がぁぁぁぁぁ!!!」
その時、俺の何かが完全にキレて、完全にグレた。
この件にキレた理由としては理由としては俺という個人をあの二人はもう全く尊重していないと彼等の濁った目と話の断片の中で俺という"個人"を見ていないのを理解してしまったからだ。
その後は全力でグレてグレて、薮下の兄貴に出会って、天羽組に入り十数年間漢を磨き続けた。
まぁ、ヘマして警察に捕まり数年は刑務所にいたが……
「この十数年、出会いと別れと修羅場の毎日だったな。その日々これからも変わる事は無いだろうが……まぁ、世話になった人達や後輩達との別れに関してはできれば起こって欲しくねえな」
そうならない為に、俺はもっと強くならなければいけないんだがな。
さて、話はそれたが今の俺の属するヤクザ組織、天羽組の話だ。
俺が組に入った時は"天羽組"ではなく"田頭組"だったが、当時の組長が当時敵対していたヴィラン組織の連中に襲われて護衛の幹部の一人と共に、新米だった頃の俺の目の前で死んでしまった事により、現在の天羽組長が襲名する事になり組の名前も改名する事になった。
次にシノギに関してだが、田頭組長の時は仁義外れのシノギを取り入れていたが、警察とヒーローに勘繰られてしまい絶体絶命だった。
「ヒーローだ!!お前達、年貢の納め時だ!!!」
「ヒーロー!?こんな時に……」
「あ……あぁ…」
だが、
「お待ちしてました、ヒーローと警察の皆様方。どうぞ隅々まで組内を調べてください」
「あぁ、証拠が出たら即制圧だからな。天然記念物共」
「こらこら、私達は秩序を司っている。目の前のヴィランに腹を立てる気持ちは分からないでもないが……言葉は弁えてくれないと困るよ警察の皆さん」
(ぐぅぅぅぅ、警察もヒーローも言いたい放題だ……)
(不安だけど、親っさんは冷静だ。もう証拠は残してはいない……ですよね?)
天羽の親っさんが組長が入ってからは、今まで犯してしまった田頭組の悪事の証拠の隠滅を成功させて、事をうまく治めてくれた。
「お疲れ様です。ヒーローに警察の皆様方。我々の濡れ衣を晴らしてくださり本当にありがとうございました。お礼に一つ忠告を、証拠が無い状態で人やその組織の悪口を言うのはオススメしませんな。どこで誰に聞かれているか分かったものではありませぬからな」
「ぐぅぅぅぅ……」
「……労いと忠言、感謝します」(くそっ、とても爽やかな笑みを浮かべやがって!!)
それからは、仁義ある組織への改革を目指して、あからさまな違法なシノギやカタギへの暴力は組内で全面的に禁止になった。しかし血の気の多い構成員や新米構成員の若気の至りで暴走してしまったり、外道に堕ちる構成員が数名現れてしまった為、皆の奔走虚しく、何回かヒーロー達のガサが入れられてしまった。
流石に十数年の年月の中で数名の組員が逮捕されてしまったが、それも親っさんと姐さん。そして阿久津のカシラを中心に、どうにか天羽組という組織を存続させる事ができた。
しかしこの十数年ヒーローや警察を躱し続けるのはこのヒーロー飽和社会では、どんな組織でも困難の極みだ。
現に、前から敵対していた河内組が数年前にヒーロー達により壊滅して組員の殆どが逮捕された。
(俺もヘマをやらかして警察達に捕まった事があるが……本当によく一斉検挙という最悪の事態が起きなかったな)
一体どんな策を講じていたのか、それは俺が刑務所から務めを終えて復帰した時に知る事になる。
オールマイトが身をもって様々な人達に"正義"を示し続け、その心を紡がれ続けてきたヒーロー飽和社会。
しかし、俺が務所へ務めている間に最悪のスキャンダルにより、その正義にヒビが入った。
その内容は、1人のヒーローを"暗殺者"へと仕立てて、裏に隠れ続ける不正ヒーローやヴィランを殺し続けさせていたという。
それが日本中全てにバレてしまった事で、当時その闇に関わっていた人達は義憤に燃えたヒーローと警察達に全て逮捕され、上の連中は残された人員で回していったが、今まで社会の基盤を作ってきた人達がいきなり捕まったで徐々に粗が出始め、それは警察やヒーローに様々な悪影響を及ぼし……
人々はその変化に対し、"ヒーロー暗黒社会"と呼び始めた。
親っさん達はその波を利用して、この天羽組を存続させたという。
それを聞かされた時、ヒーロー・警察嫌いの俺でも真面目に働いている彼等を哀れんでしまった。
だけどその数ヶ月後、俺はヒーローと警察の暴走により殺されかれる事になり、ヒーロー・警察嫌いは悪化したが。
そんな事もあり改革は順調にいき、仁義を通す昔ながらの極道の組織として組員の殆どが活動するようになった。
……その影にヒーローと警察の腐敗化が進んでいるのは、俺にとって"複雑"としか言いようがなかった。
一体誰が、どうやってこの重大機密の情報を世に流したのか。
裏世界の帝王の仕業か、それとも……
奴が作り上げた状況を、組織存続の為に利用した親っさんとカシラ、そして狂人兄貴達も、その謎の存在に警戒し続けている。
出来れば絶対に関わりたく無い。
皆の警戒ぶりを見ると無理な話なんだろうが。
@@@@
次に天羽組のシノギについてだが今回は沢山あるシノギの中の一つを説明する。それは先程出た"ヒーロー暗黒社会"に関わる事だ。
空龍街の治安維持はプロヒーローが率先して行なっている事ではと疑問に思ったが、躍進していた有名なヒーロー達の不正が明らかになって挙句の果てに行方不明になった事件がメディアで報道されてしまうという前代未聞の大事件が起きた。
それは関東の中心を担当していたヒーロー達で、その地区に住む人達のヒーローに対しての怒りと失望は計り知れなかった。
そのお陰で、その街のヒーロー不足が深刻となり、俺達ヤクザを密かに頼る店が増幅してしまったり、ヴィランや外国マフィアが街に乗り込んできたりと治安が一気に酷くなってしまった。
そんな世間に衝撃を与えた事件だったが、実は"拷問ソムリエ"が深く絡んでいるがその話は彼等が話してくれるだろう。
だけどこの現象は、オールマイトを中心に鎮圧されるだろうと予測していたが……何故か7年前に活動時間が少なくなったと噂され、その数年後に静岡に活動拠点を移してしまった。
そのお陰で、関東のヴィラン達は全滅せずに生き延びてしまった。
そんな訳で、天羽組はヒーローが少なくなった空龍街の自警団の役割を担う事になった。
まぁ、基本は"守り代"を払ってくれる店や市民達を優先してだが、ウチのシマの"空龍街"で舐め腐った悪事を犯すならば………
@@@@
今回俺は親っさんに頼んで、一人でカチコミを行うことにした。
親っさんも了承してくれた。
「天羽組の本質は、敵を斃す剣。上に上がるには、力を示す必要がある」
今、求められているのは兄貴達の様にたった一人で盤石を覆す圧倒的な強さ。
ヤクザの世界に入り、今日まで様々な修羅場を乗り越え抜いた。
だけど、この劇的な今日を乗り越えても、また明日もこの修羅の世界は続いていく。いや、場合によっては……
「行くか……外道共の殲滅」
俺はこのカチコミで、己の限界を知り、超えて、更に強くなる。
@@@@
今回、俺単体で潰すのは"組織"だ。
かつての空龍街はヒーロー社会で組織犯罪は余り見かけなかった。
しかし、政府の暗部が機能しなくなった事とオールマイトの担当地区変更により、関東へ進出するヴィランが現れ、その手の奴等が増え始めたのだ。
「ここだな、臓器売買だけでなく"個性"を停止させる効果を持つ改造弾を売り捌いている奴等のヤサは……」
臓器売買か……
本来この手の糞も、暗部とやらが処理していたのかもな。
次に"個性"を停止させる弾。親っさんが特に警戒していた謎の武器。まぁ、奴等が迎え撃つ際に使用したとしても俺の場合"無個性"だから当たっても怪我を負うか死ぬか――少なくとも"個性"が使えずに混乱する事態にはならないだろう。
「まぁ、それは兄貴達も同じなんだろうがな」
兄貴達は"個性"を持っているが、戦闘で使う事は余り無い。
今回の粛正は、兄貴達でも問題ない。
だが、"個性"を戦闘で用いている舎弟達がそれを喰らったら―――
「舎弟達を連れて行くのはリスクしか無い。アイツらは"個性"中心で戦っているし精神も未熟だからな」
親っさんが俺一人でカチコミに行く許可をとってくれたのもその件があっての事だろう。
しかし"改造弾"か。
「違法薬物ではなく違法武器か。それを製造しているのはサポート道具の不良品を裏で売買しているデトネラット社の仕業か、或いは―――」
親っさんがこの弾丸の存在に気づいたのは、懇意にしているヒーローが死亡した際の状況が不可解であり、組が贔屓にしている情報屋によって調べ上げた事により、この弾丸を空龍街などの様々な街まで売り捌く組織までたどり着いた。
「製造元は不明。カチコミの際に奴等から情報をいただくしかない。親っさんかは無理はするなと言われてるが、生け捕りも視野に入れないとな」
そうして自身の目的を纏めている内に奴らのアジトへ辿り着いた。
そこは貴凛町の雑居ビル・S。
(組織の名は炉鬼。パイソンファイナンスと結託し、返済出来ない債務者から臓器を採取しては売買していた中堅半グレ集団。そいつらを率いる頭目は一体どんな型で戦うのか……)
「何にせよ、空龍街で舐めた商売をすればどうなるか――思い知ってもらう」
俺は迷う事なく奴等のアジトに突入した。
@@@@
炉鬼を率いる雛形は、とある男と電話で誰かと通話していた。
『"弾丸"の売り上げの方はどうだ?』
「驚くぐらいに順調ですよ、真先生」
その男は例の改造弾の製造元の組織に所属している者だった。
これは後に知る事だが、炉鬼は巨大なヤクザ組織の傘下に組した半グレ組織だった。
『本当だろうな?』
「先生に対して嘘はつけませんよ。しかし恐ろしい威力を秘めていますな、この弾丸は。粗悪品でもヒーローを重症にまで追い込んでしまう」
『当たり前だ。本来の力を持つ弾丸の増産と例の血精の製造と増産が成功すれば、いずれ、混沌を生み出し、世界の理を変える』
「ほう、世界の理ときましたか。それはそれは素晴らしい計画……ですが、そなた達の組長はそれを……」
『黙れ。貴様ら半グレ風情が何故俺達の領域に踏み込んでいる?』
その時、雛形の言葉を遮り、真という男はドスの籠った声で雛形を威圧した。
しかし雛形は奴の荒げた表情を想像し、笑みを浮かべながら「失礼しました」と謝罪しこの話を終わらせた。
しかし、真の怒りは収まらず――――
『そろそろお前のアジトに到着するが……なぁお前、前から思っていたが――――』
真は小馬鹿に振る舞う無礼者に対し、ある質問をぶつけかけた時だった。
「失礼、どうやら面白い客人が訪れた。また後程」
『何!?貴様、俺の質問は……!!』
雛形はそう言って電話を切り、扉の前で俺を待っていた。
(世界の理を変える"弾丸"か、くだらん。そんな物、実際に当たらなければ何の問題もないだろう。それに……)
「お前がここを率いる頭目か」
「あぁ、一人で襲撃をかけようとは、随分と肝が据わっているな。俺の知り合いでもそんな奴はそうそうおらぬぞ?」
奴は俺の登場に笑みを浮かべて刀を引き抜いた。
(組長に反旗を翻した若造共よ。既に世界の理とやらは、ちんけな弾丸がなくとも……もうとっくに変わりかけてるぞ?)
@@@@
炉鬼の頭目、雛形と対峙した瞬間、圧のような物が全身を叩いた。
背筋が凍りつくような怖気……
間違いない、この男こそ暗黒社会で名を挙げて始めた剣豪だ!
「俺は雛形という。お前の名は?」
「―――ヒットマンが身の上を話すと思うか?」
「いいや、死にゆく男への礼儀として聞いたまでよ」
まさか半グレ組織にこんな男がいるなんてな。
これは生捕なんて今の俺には不可能だ。
次の瞬間、奴は音もなく俺との間合いを詰めてきた。
「では、貴様の首には名を刻まぬ墓に葬ろう」
「うおっ!?」
くそったれ!
なんて踏み込みだ!?
しかし、俺とて奴より凄い剣術を持つ兄貴の剣を見てきた訳ではない!
「うおおおおお!!」
「ほう」
奴の刃をなんとか受け流した俺は、間合いをとりながら弾丸を放つ。
「ふむ、いい反応だ」
「死んどけ、ボケがあぁ!!」
奴の剣は達人クラスだ。
素人の俺では白兵戦に勝ち目はない!
「手の向きと目の動き、そして打つ瞬間の殺気を見れば……弾道は予測できる」
だが、奴は俺が撃った弾丸を躱しながら、まるで蛇のように距離を詰めてくる!
銃弾を躱すなんて神技、"個性"でも使っているんじゃないのかと初めは思った。しかし兄貴達はその技を使っていたのを目の当たりにして絶望したな。
「このバケモンが!!」
今度は先程とは違う、横薙ぎの一撃。
「シャアアアアア!!」
「グウウウウウウ!!」
腹の寸前で止めたが、ほぼヤマカンだ。
そして俺のドスから嫌な音が聞こえる。
「剣は素人であるが、業に目が付いている……腕の立つ剣士が近くにいるな?」
「ぐぅお……」
雛形の確信が籠った雛形の声に軽口を返す余裕もない。
正直言って、全く勝ち目が見えない。
このままではぶった斬られるのがオチだ。
「次はもうマグレはないぞ…」
(くそっ、ドスにヒビが!)
首の薄皮一枚先にある死。
それを超えるには、覚悟を固め、肚を決めるしかない!!
「うおおおおおっ!!」
チャンスは一度。
やり直しは無し!
掛け金は俺の命!!
「特攻か?いや、その目は……何か策があると見た!おもしろい!!」
「見せてみよ!貴様の秘策が我が一刀を打倒するに足るか!!」
@@@@
我の刃圏に奴が足を踏み込んだ瞬間、奴は手にしていたドスを我の顔に向けて投げた。
「オオオオオッ!!」
右眼へ向けて飛ばした刃は我が首を傾けただけで狙いが外れて後ろに消える。
「この程度の小細工が?」
愚かな、剣を振り下ろそうとする部分を狙えば我の一撃は止められた物を。
奴の気迫は中々に素晴らしい物だったが、実力が追いつけなかったか。
「ならば、飛沫と散れぃ!!」
残念だ。
我は、刃を雷霆の速さで――
「もらったぁぁぁーー!!」
振り下ろした。
「ぐぅぅぅぅぅぅ!!」
我が一刀で、奴は絶命しては……いなかった。
我はその事実に驚いた。
(まさか、右腕を犠牲にするとは!そうか、ドスを投げたのは体の中心を外すし即死を避ける為か!!)
何という勝利への執念だ。
「グォォォォォォォォォ!!」
奴は叫びながら、我へ銃口を向ける。
今の我は刀を振り下ろした直後で隙だらけ、勝負ありだ。
我の、"個性"がなければな!!
(卑怯などと思うなよ?己の内に眠る"個性"も貴様が扱う銃や小刀と同じ事。後一手……足りなかったな)
だが、その"個性"を発動させた瞬間、我の視界に――――
@@@@
俺は右腕を犠牲に、雛形に突っんで隙を作り銃を撃とうとした瞬間だった。
奴は笑みを浮かべていた。
(笑った?――――まずい!まだ奴の"個性"が!?)
俺はすぐに銃を撃とうと引き鉄を引こうとした瞬間――
ドォン!
ドォン!!
ドォン!!!
俺の背後から、銃声が鳴り響いた。
それは完全な不意打ち、しかし……
「――――ぐふっ」
「雛形!?」
放たれた弾丸の殆どは雛形の身体に刻み込んだ。
俺が撃たれる直前、雛形は俺の前に無理矢理割って入って"盾"になったのだ。
「お前、何者だ」
俺はすぐさま銃を下手人の男に向けた。
「これから死ぬお前に教える名なんてあんのかよ……"ヒットマン"」
男の方も銃を俺の方へ向け、憤怒の形相で俺を睨みつけた。
本当に何者だ?
建物の中にいた半グレ共は全滅させた筈だ。
仮にその中から生き残っていたとしても奴の身体は傷一つもついていない。
(どちらにしても、敵である事に変わりはないか)
雛形は俺を庇った所為で、瀕死の状態だ。
まぁ、奴の所為で右腕飛ばされた俺も瀕死の状態だが。
「全く、さっきまで殺し合いをしていた男を庇うとは……剣士のプライドってのはよく分からんな。外道な商売は平然とやっている癖に」
「……はっ、貴様が……割ってこな………ければ、それに、外道なら……お互い…様……グォっ!」
その時、謎の男は雛形を蹴り飛ばして俺と対峙する。
「仲間に……対して、散々な扱いだな」
「はっ、この男は前々から俺達の"組織"に反抗的だった。奴の奇行のお陰で俺の"個性"を使うまでもなかったが……」
俺の軽口に対して、謎の男は律儀に答える。
俺はその回答を経て、俺はある重要な二つの確信を得た。
まず一つ目だが、奴の"個性"は、相手の心の内を引き摺り出す事かできる事。
相手の"個性"を把握するのはどんな戦闘において基本中の基本。それを知っているか知らないかで戦況は大きく変わる。
それをこれから殺し合う相手に自身の"個性"を連想させる事をベラベラ喋るとは……
完全に俺を舐めてやがる。
逆に雛形は、俺を完全に警戒していたという事だ。
謎の男はそれを証明するかの様に醜悪な笑みを浮かべて俺を挑発する。
「今の内にお前の身の上を話した方がいいぞ。これから俺達に拷問されたくなければな」
「だったら……"お前は何者だ"と聞けばいいだろ?お前の"個性"なら可能な筈だ……お前に限っては、ここまで暴れた俺を痛めつけたいだけ……違うか、ぐぅぅ……」
俺の指摘に奴は動揺の表情を見せる。まさか見抜かれてないと思ったのか?
奴の危機管理の甘さに反吐が――――
ドォン!
ドォン!!
ドォン!!!
「ぐぅぅぅぅ!?」
「失血で死にかけの雑魚が何をほざく、状況すら分かっていない馬鹿の甘さに反吐が出る」
奴は俺の左腕と両足を弾きやがった。
しかも俺が思っていた事を似た感じ言った上でだ。
(くそっ、あの野郎……肘と膝を潰すつもりだった)
「ちっ、急所の中心だけは防いだか。だが、これで終わりだ」
だが、もう片腕をやられたのは不味い、これでは銃が撃てない。
――――ここまで、なのか?
俺は、命の終わりを――――
俺は、この運命を――――
俺は、この絶望を――――
「――――――――たまるか」
「何?」
「諦めて――――――――」
ドォン!
ドォン!!
ドォン!!!
奴は無慈悲に俺の身体に銃弾を刻みつける。
この銃弾は身体の中心だ。恐らく、致命傷かもしれない
だが、それでも――――――――俺は!
「諦めて、たまるかぁぁぁぁ!!!」
俺は、ボロボロの身体を無理矢理動かし、立ち上がった。
「馬鹿な!?銃弾6発も受けて、右腕も……右………腕!?」
奴は驚愕した。
それは俺の姿では無く、俺の"右腕"を見た時だった。
「まさか、奴の"個性"!?いや、ありえない。奴に撃った弾は"改造弾"だ!!!まだ効果は切れていない筈だぁぁぁ!!!!」
ドォン!ドォン!!ドォン!!!
奴はヘタレ混みながら俺を、俺の右腕を撃つ。
俺の腕に恐怖して、流れる涙と鼻水で表情をぐしゃぐしゃにしながら撃ち続ける。
その光景に、雛形は――――
「そうか、この小僧もか……"世界の理"を、―――か。ははははは……オール…フォ………、貴様の……時代はもう……」
狂喜のままに、笑っていた。
@@@@
…………どうなった?
気づけば、謎の男は消えていた。
俺の身体は――――
「貴様の……傷は、もう"治っている"」
雛形は変わらず瀕死の状態。
しかし、奴の一言はあり得ない事だった。
「何を言って――――!!??」
俺はそう言いかけた時、斬り飛ばされた筈の右腕がくっ付いているのを目にして驚愕を隠せなかった。
それだけじゃない。
謎の男に撃たれた弾傷も綺麗に無くなり、その弾が俺の周りに落ちていた。
その弾丸は、10発以上もあったのだ。
「……そうか、覚えて…おらぬか……愉快愉快」
「笑い事じゃ―― ……雛形、お前達に指示して弾丸を売り捌いたのは、さっきの男か?」
雛形には色々と吐いてもらいたい事が山程あるが、まずは俺の本来の目的を果たさないといけない。
俺は混乱する思考を抑えて、もうすぐ死にゆく雛形へ質問した。
「冷静だな……、答えは貴様の言う通り、奴の名前は根本真という男だ。奴の所属は、貴様と同じ……ヤクザで、幹部の位にいる」
「やけに素直だな。そんなにあの男が、いや、"組織"が嫌いか?」
「あぁ、気に食わん。外道の、俺でさえ……そう思う程…だから、タチの悪さは……」
雛形以上の外道か。
ぶち殺し甲斐があるじゃねえか。
「次に、その男が所属している組織の名前は?」
「…… 死穢は……ゲホッ」
くそっ、時間がない。
断片的だが、ウチの情報部の連中かフリーの情報屋に頼めば組織の特定はできる。弾丸の件は、俺の周りに落ちている弾のどれかが恐らくそうなのだろう。
俺達に襲いかかった男は幹部格。間違いなく改造弾は装備している筈だからな。その弾を解析すれば奴等の違法売買と製造の全容が分かる。
必要な情報は一先ずこんな所だろうな。
そして、つい先程発生した問題――――
「最後の質問だ。この現場で、何が起きた?」
俺は焦る気持ちを抑えながら雛形を問い詰める。
俺の記憶は、根本に身体の中心を撃たれた所しか覚えていない。
その間に、一体何が起きたのか――
「…………"世界の理"」
「――――は?」
「貴様の……"個性"、否、"バグ"は、裏世界の……帝王オール・フォー・ワン、……権威は…先の件で、やや落ちたが変わらず平和の象徴であろうと醜く……足掻くオールマイトすらも……凌駕する」
「オール・フォー・ワン?オールマイト!?何を言ってやがる!!??」
俺に、個性だと!?
馬鹿な、あり得ない!!
「奴等の後継が、現れようとも――それは変わらない。我はあの光景をみて……確信…し……ゲホッ、ゲホッ―― 」
「待て、雛形!!死ぬな!!!あの光景とは何だ!!??俺は………一体」
「貴様は、否、"バグ"を秘めた貴様達は……いずれ、この…世界の………こと…わり………を……――――破壊す……る」
それと同時に、奴の目は永遠に開く事はなかった。
奴の死に顔は、
「…………雛形。お前は、何を見て――歓喜したんだ?」
笑みを、浮かべていた。
@@@@
俺は雛形とその部下が死んだ事を改めて確認した後、すぐさま死体処理に連絡し、闇医者へ向かい、その担当医に俺の身に起きた事を説明した。
しかし、説明だけではどうしようもなく……
念の為、俺は検査入院となった。
「ヴィラン組織を全滅させ、闇の剣豪と死闘を演じ、始末し黒幕の正体を吐かせた。そこまでは別に良い。だが"黒幕"を逃した件について"大言壮語"を吐いて誤魔化す気か。華太、死ぬか?」
「華太くん、黒幕が生死不明じゃ火種は消えるどころか燃え広がる。わかっている筈だったが……ミス即ち何だっけ?」
「ミス即ち死!ミス即ち死!!ミス即ち死!!!あやふやな結果でも死ぃぃぃ!!!!申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!!!!」
実質無傷となった俺は、例の黒幕が生死不明というあやふやな結果になった事への厳しい詰問を、野田の兄貴と和中の兄貴からの全力の殺気付きで逃げ場もなく全て受ける羽目になってしまった。
俺の身体に異常が起きてる。しかし無傷だったのは事実なのでその状態で援軍も来てない状況で逃げられましたは、俺でもブチ切れる。なので兄貴達の怒りは必然なのだ。
こうして俺中心の初カチコミは後味が悪い結果に終わってしまった。
――――その後、親っさんとカシラが労いの言葉を掛けてくれたのがせめての救いだった。
@@@@
しかし、この一件で天羽組は、ある組織に目をつけられる。
「根本は見つけ次第始末しろ、何だ、幹部なのでは?か……ならお前達は訳の分からない"怪物"に殺されそうになったから"切り札"を無駄撃ちして証拠を残す羽目になった――――そんな言い訳をする奴、部下に欲しいのか?おい、何とか言ったらどうだ……役立たず共!!」
「落ち着いてくれ、廻。奴の個性は"真実吐き"。とても嘘を言う奴じゃ……」
「ふー、ふー……失礼した。生捕りだ。多少の制裁は構わん。何としてでも連れてこい」
その組織の名前は"死穢八斎會"。
本来、"改造弾"はオールフォーワンとオールマイトのどちらかが消えたら売り捌くつもりだった。
しかし、他のヴィラン組織が"ヒーロー暗黒社会"を利用し、台頭し始めた事によりリスクを承知で、計画を前倒しに動き始めた。
「………俺達の傘下組織、炉鬼を潰した男の正体は分かっているんだろうな?玄野」
「それが、根本を見つけ出さない事には……」
だが、焦って動き出してしまったツケは余りに大きかった。
粗を残し、自分達の正体が傘下組織を襲撃した敵にバレてしまうのも時間の問題だった。
その事実を治崎という男は知らない。
その傘下組織を潰した男の組織といずれ………
「……ウンザリだ。触れても無いのに蕁麻疹が出始めた。クソッ…こんなトラブル、京極組のアホ共に押し付けるに限る。玄野、"組長"にはしっかり圧をかけろよ?」
「了解しました。俺達には色々とやる事が多いですからね」
"抗争"になる事など、知る由もなかった。
小峠華太《ヤクザ》
ヤクザ編の主人公。
この世界の天羽組のヤクザ事情は大分ご都合な事に見えますが、組長やカシラ、狂人兄貴達が本当に頑張って存続させました。
どうやって頑張ったって?
それを聞くのは野暮って物です。
小峠華太の個性は"無個性"の筈だと今日まで本人は信じてきました。
ですが、雛形との死闘で……
彼の"バグ"はそのまま放っておけば善悪関係無く、沢山の人の運命を救い、壊し、捻じ曲げる事でしょう。
実際に今回の話で死穢八斎會の幹部の一人の運命が狂い、雛形は笑みを浮かべて穏やかに逝きました。
とはいえ、"無個性"を前提に戦うスタイルは例の"バグ"の状態に余程の事が無ければ変わる事はないでしょう。
次回の主人公は誰か、現時点では未定なので次回投稿まで楽しみに待っててください!
それでは、また!!