俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!【完結】   作:秋月月日

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俺の日常に平穏が無いのはどう考えてもワンサマが悪い!

 ラウラとセシリアが服選びで盛り上がる中、洋裁屋から脱出した俺はショッピングモールの通路にあるベンチに腰を下ろしていた。今日が休日という事もあってかモール内は多くの人で賑わっていて、その中にはちらほらとIS学園の生徒と思われる女子生徒の姿が確認できる。

 背凭れに体重をかけ、携帯電話で時間を確認する。

 

「あー……もう昼飯の時間だなぁ。何故に休日はこんなに時間が経つのが早いのか」

 

 本当、世界の七不思議と言っても過言じゃねえかもしれんね、この現象は。楽しい時と辛い時の時間の経過のスピードは絶対に違うと思う。なんだ、これは神様の悪戯だったりすんのか? そうだとするなら俺は神を許しません。

 

『ラウラさん! こちらのワンピースなど如何でしょう!?』

 

『せ、セシリア? 背中が大胆に開いているように見えるのは私の気のせいか……?』

 

 昨日までだったら絶対に有り得ないであろう仲良さ気な会話をBGMに、俺は薄ら笑いを浮かべる。ああ、そうさ。俺が求めていたのはこの平穏なんだ。IS学園にいるときはあのワンサマーのせいで主に女子関連のトラブルに巻き込まれちまってるが、それは絶対に間違っている現実なんだ。俺に最も相応しいのは、この一息を吐く事が出来る平穏に決まっている。ビバ、平穏。ジーク平穏!

 

「あ。おーい、颯太! こんな所で会うなんて奇遇だな!」

 

「俺の平穏終了のお知らせ!」

 

「は? いきなり何言ってるんだよ、颯太」

 

 うるせえよ。何でお前は俺が楽しんでる時に限って登場すんだよ! 必要なときはいねえくせに必要ねえときにばっか現れやがって……お前はホモか! 俺の人生のヒロインか! いや、ヒロインはラウラだから譲らねえけどね!

 俺の睨みを軽く受け流しながら流れるように隣に座りやがった鈍感系男子ことワンサマーの肩を軽く小突き、俺は大きく溜め息を吐く。

 

「はぁぁぁぁぁ……今日はお前には会いたくなかったんだがなぁ」

 

「出会って数秒で酷いなお前!? 俺、お前に何かしたか!?」

 

 お前という存在が俺に危害を加えてます。主に周囲の女性陣を引き寄せるという形で。

 

「別に。……で? お前はこんな所で何やってる訳? 篠ノ之とかデュノアとか凰とかは一緒じゃねえの? 因みに、ラウラとセシリアはそこの服屋でラウラの服を選んでるぜ?」

 

「……お前、それって二股な」

 

「何か言ったかい、織斑一夏くん?」

 

「何も言ってないですハイだからパイルバンカーを喉に突き付けるのだけは勘弁してくれ!」

 

「ちぃっ!」

 

「やっぱりお前本当に酷いな!」

 

 ここで息の根を止めておいた方が今後の俺の為になったかもしれねえってのに!

 ……と、冷静になって思ってみりゃあ、ここで一夏を駆逐しちまったらブリュンヒルデの怒りに触れちまうことになりかねん。マジギレしたブリュンヒルデに勝てる人類なんてこの世界にゃいねえだろうから、ここはぐっと我慢して次の機会を待とうじゃないか。姉に命を救われたな、この鈍感野郎。

 部分展開モードだった『シュバルツェア・フォート』を粒子化し、俺は改めて一夏に問う。

 

「で? お前はこんな所で何やってる訳?」

 

「鈴の買い物に付き合わされてる。それで、何故か鈴が途中で箒とシャルルに拉致されて、しょうがないから今は一人で散歩してた」

 

「ハイ出ましたもうここで俺の死亡フラグが一本立てられました!」

 

 コイツのヒロインが三人そろって行方不明状態とか、もう騒動の予感しかしねえんだけど。なに? 神様ってやつはどこまで俺に試練を与えたいの? バカなの死ぬの? 俺のラウラへの愛の量を確かめたいの? 世界壊れちまっても知らねえよ?

 まぁ、後で訪れる可能性が九割ほどある未来について考えるのはやめておこう。噂をすれば何とやら、っていうぐれえだし、逆にそのことについて考えねえようにすりゃあ何も問題はあるまい。……問題ない、よね?

 凄く嫌な予感が拭えないが、とりあえずは話題を変えることにしよう。

 

「そういえばさぁ、一夏」

 

「なんだよ」

 

「お前って結局、本命は誰な訳?」

 

「は? 本命って……何が?」

 

「…………『シュバルツェア・バン――」

 

「ストォ―――――ップ! 流石に生身相手にISを使うのは非人道的すぎるだろう!? そして何故俺が殴られそうになっているのかが全く持って理解できない! 説明を、簡潔かつ分かり易い説明を求める!」

 

「うるせえ! とりあえず死ね! 篠ノ之とデュノアとオルコットと凰のために四回は死んどけ! そして生まれ変わってからアイツラを幸せにしてやれ!」

 

「ますます意味が分からない!」

 

 俺の両肩を抑えつけることで命の危機から脱したワンサマー。この野郎、度重なる死闘のおかげで防御だけは達人レベルになってやがる。そりゃまあ確かに、篠ノ之の竹刀スラッシュとか凰の双天牙月ブレイクとかを毎日のように受けてりゃ嫌でも防御が上手くなるってもんか。……今度からはちょっとだけ優しくしてやろう。部屋の掃除とか、少しは手伝ってやることにしよう。

 俺はISを粒子化(本日二度目)し、一夏にもう一度問いかける。

 

「だから、あれだよ。篠ノ之とオルコットと凰とデュノア――お前が恋人にするならこの四人の中で誰を選ぶ? って話だよ」

 

「あー……そういえば、この前も千冬姉に同じ質問をされたっけなぁ」

 

 だったら俺の質問にも早急に気づけやこの鈍感ハーレム野郎!

 

「で? 無駄な前置きとか言い訳とか必要ねえから、誰を選ぶんだよ? 言っとくが、『みんな大事だから選べない!』とか『興味がない』とかいうふざけた答えは無しだ。っつーか、俺が納得いかねえ答えだったらぶっ飛ばす。ていうか殺す。微塵切りにする」

 

「なんてバイオレンス! お前、ラウラと知り合ってからバイオレンスレベルが飛躍的に上昇してないか!?」

 

「はン! 毎日のようにバイオレンスな求愛行動をとられてりゃあ自分の危険度も上がるってもんだぜ!」

 

「…………今日の晩飯はハンバーグでも作ってやるよ」

 

「…………うん」

 

 嫌だなぁ、泣いてなんかないですよ?

 

「って、そんな茶番はいいとして、だ。無駄に話を逸らさんでいいからさっさと俺の質問に答えろや」

 

「うーん、そうだなぁ……」

 

 そう言って、一夏は顎に手を当てて考え込んでしまった。

 これはこれは、まさかの予想外の事態ですよ奥さん。俺としては一夏は篠ノ之に惚れてると思ってたんだが、コイツはまさかの熟考をスタートさせちまった。これは、コイツがあの四人を等しい価値として見ているっつー何よりもの証拠だ。大切な奴らだからランク付けは出来ない、って本心で思ってる奴特有の行動だと言える。え、俺? ラウラと妹と母親以外の女なんて女じゃねえと思ってますけど何か?

 

(……にしても、ラウラ、か)

 

 今思い返してみれば、IS学園に入学してからいろいろな事があったなぁ。高校入試を終えてから始めた宅急便のバイトでIS学園に寄って、偶然ISを見つけたから好奇心で触ってみたら何故かISが動いちまって、本当にびっくりしたっけ。

 そんで、その光景を偶然近くを通りがかった教師に見つかって捕縛されて政府に突き出されて、なんやかんやの内にIS学園に入学する事になって……高額な奨学金を貰った時、両親と妹が頬を引き攣らせていたのはいい思い出だなぁ。

 IS学園に入学してから、俺と同じ境遇の一夏と仲良くなって、入学したその日にドイツに強制連行されて――暴走タクシーで死ぬかと思った時にラウラと知り合ったんだ。あの時のアイツ、死ぬほど無愛想だったよな。本当、尖ったナイフそのものだった。

 でもまぁ、俺に無駄に多くの嫌がらせをした後に自分の行いを反省して落ち込んでたのは可愛かった。今思ってみりゃ、あの時のラウラを見て一目惚れしちまったんかもしれねえな。守りたい、この笑顔――って感じでな。

 防御と近接戦闘特化型のIS『シュバルツェア・フォート』を貰った時は本当にどうなるかと思ったが、まぁなんとか今日まで無事に生き残れてきてるんだよなぁ。流石はドイツの傑作品。我がドイツの科学力は世界一ィィイイイイイイッ!

 IS学園に戻ってきてからは、オルコットと対決したり篠ノ之のキャラを崩壊させちまったり、なんかもう一生分のトラブルに巻き込まれちまった気がするわ。っつーか、一学期の間だけでトラブルに巻き込まれすぎだよな俺たちって。やっぱりあれだ、全部一夏が悪いんだろうな。うん、きっとそうに違いねえ。

 ……でも、その騒動のおかげで、俺はラウラと本当の意味で仲良くなれたんだ。戦うことしか頭になかったあのラウラ・ボーデヴィッヒを、普通の女の子にしてやる事が出来た。アイツが今の自分をどう思ってるかは知らねえけど、俺は全然後悔してねえ。だって、やっぱり戦いに生きるよりも、普通の女の子として生きていく方がラウラらしいと思うからな。あんな可愛い女の子を戦場に送るだなんて考えらんねえよ。

 

「う、うーん……あーダメだ。やっぱり俺には決められない」

 

「相変わらずの優柔不断さが凄いっすね爆発しろ。篠ノ之が号泣しても知らんぞ砕け散れ」

 

「驚愕の語尾! しかもその全てが俺を標的にしているとしか思えない!」

 

 当たり前だろバカヤロウ。

 っつーか、俺の青春って主にこいつのせいでボロボロになっちまってる気がするんだが。一夏のルームメイトの権利を賭けて毎日のように篠ノ之たち四人と戦わされてるし……あれ? なんかイラついてきたぞ?

 

「いーちかくーん?」

 

「お、おい、颯太? 何で三度目のパイルバンカーを俺に向かって構えているんだ? う、嘘だよな、冗談だよな? その矛先は俺の首元じゃないよな!?」

 

「俺の平穏の為に一回死んではどうだろう?」

 

「目が怖い! 殺人鬼顔負けの視線が怖すぎる!」

 

「いっき! いっき! いっき! いっき! ワンサマの、ちょっと逝くとこ見てみたい!」

 

「そのちょっとが俺の人生のゲームオーバーなんだけど!? そしてワンサマって言うな! どうしてお前が俺の小学生のころの渾名を知ってるんだよ!」

 

「ええいうるさい! いいからその命を俺の為に散らせや馬鹿野郎ォォオオオオオッ!」

 

「うぉおおおおおおお!?」

 

 その命、頂戴する!

 ―――と、上手くはいかず、狭いベンチの上で暴れていた俺たちは体勢を崩し、そのまま勢いよく地面へと転げ落ちた。どうやら一夏を下敷きにする形で落下しちまったらしく、俺は一夏に覆い被さるように地面に手を着いていた。一応はギリギリで粒子化を解いていたため、パイルバンカーが一夏に突き刺さる事はなかったようだ。危ない、今のは本当にこいつを殺しちまう所だった……。

 だが、しかし。

 この世界を創り出したであろう神様は、俺たちに更なる試練を与えてくる。

 

「いーちーかー?」

 

 そんな、鈴のような声が、俺たちを戦慄させた。

 

「こ、これが伝説の男同士の組んず解れつというヤツか……ッ!?」

 

 そんな、漢口調な声が、俺たちを動揺させた。

 

「一夏? これはどういう事か説明してもらえるかな? かな?」

 

 そんな、中性的な声が、俺たちを追い込んだ。

 

 ギギギ、と声がした方向に二人揃って首を向ける。――そこには、二人の修羅と一人の腐女子が爆誕していた。

 あ、これヤバい死んだかも。

 

「ま、待て! これは誤解だ! 俺と一夏は決してそんな関係じゃ――」

 

「こ、これはどういう事態ですか!?」

 

「颯太? 貴様は私というものが在りながら、一体何を血迷っているんだ?」

 

 あえて言おう。今の状況は最悪であると。

 篠ノ之たちとは反対の方向から聞こえてきた、絶望的な二人の声。あえて見るまでもないが、少しでも許しを請う体勢になるために俺はあえてそちらの方向に顔を向けた。

 そこに居たのは、動揺しているオルコットと――

 

「へーい、ふぁっきゅー」

 

 ――アーミーナイフを色っぽく舐める我が恋人だった。

 ドイツ人の癖に何故か英語で俺に殺人予告をしているラウラに寒気を覚えつつも、俺は地面から腰を浮かせる。何のための行動かって? あははっ、勿論逃げるために決まっているじゃないか。

 と。

 逃亡の為にこっそりと体重移動を行っていた俺の下で、焦りがピークに達していた一夏がよせばいいのにこう言った。

 

「こ、これは、颯太が俺に(議論が白熱した末に)激しくしてきただけなんだ!」

 

 笑えねえんだよこのホモ野郎。

 ああ、これは最悪だ。追い込まれたら本当に余計な事しか言わねえこの馬鹿のせいで完全に人生が終焉に近づいちまった。とりあえず絶対にコイツは殺す。俺の平和のためにコイツだけは殺す!

 やるせない気持ちをぶつけようとワンサマーの襟首を掴んでがっくんがっくんと揺さぶる俺。

 しかし、怒れるガールズはそんな事では許してくれないらしく、

 

「―――よし、殺そう」

 

「私の一夏に色目を使うとはイイ度胸だな、颯太」

 

「悪い子たちにはお仕置きが必要だよね……?」

 

「ふふっ、うふふふふふふふ」

 

「こんな男よりも私の方が魅力的だという事を、その身体に教え込んでやるぞ――颯太」

 

 何でこの人たちがISをフル換装しているのかが俺には理解できません。

 各々の武器を構えた五人の少女に恐怖を覚える。っつーか、これはアレだ、マジで命が終わるまでのカウントダウンが始まっちまった気がする。このままじゃ―――死んじまう!?

 そうと決まれば何とやら。この場から早急に逃走を図る必要がある。

 そう、瞬時に判断した俺と一夏はダン! と勢いよく地面を蹴り、

 

「「ダッシュ!」」

 

 一目散に逃げ出した!

 

「この、浮気者ぉおおおおおおおっ!」

 

「一夏! ホモでもいいがせめて私をそこに混ぜてくれ!」

 

「あははっ! 一夏はいけない子だなぁ!」

 

「本当に、本気のお仕置きが必要のようですわねぇ!?」

 

「颯太ぁああああああああああっ!」

 

 うわぁああああああっ!? あの殺人鬼共、ここがショッピングモールだって事関係なしに追ってきやがったぁ!? 後で千冬先生にこっ酷く説教されても俺は知らねえぞ!?

 

「っつーか、お前が原因なんだからさっさと生贄になりやがれこの馬鹿野郎!」

 

「あははっ! 死ぬときはいつも一緒だぜ、マイベストフレンド☆」

 

「ウッゼぇええええええっ! その笑顔も英語も全てがウゼェえええええええっ!」

 

 ドガガガガガ! とか、ズッシャァアアッ! とかいう破砕音から目を逸らしつつ、俺と一夏は互いの足を引っ張り合いながらも自分の命のために走り続ける。

 あーもう、やっぱりこんなことになっちまうのか! せっかく十分ぐらい前までは平和でいい休日だったってのに!

 

「ええい、全てはお前のせいだぞ、この鈍感ホモ野郎!」

 

「誰がホモだこのマゾヒスト野郎!」

 

「「イイ度胸だ、表に出やがれこの大馬鹿野郎!」」

 

 ああ、本当に、この一言を神様に向かって叫んでやりたい。

 俺の日常に平穏が無いのは――

 

「うぎゃぁああああああああっ! れ、レーザー、レーザーが飛んできやがったっ!?」

 

「アイツ等、本当に俺たちを殺す気なのか!?」

 

『『Kill You!』』

 

「「まさかの殺害宣告!?」

 

 ―――どう考えてもワンサマが悪い!

 

 ってな。

 

 




 という訳で、今回でこの作品は完結となります。
 ラウラがメインヒロインという事もあり、二巻が終了したこのあたりが完結地点としては妥当だと思い、完結とさせていただきました。……というか、三巻以降にオリ主が活躍する場所なんて存在しないよね?
 この作品は自分のコメディ能力強化のために書き始めたのですが、お気に入り件数が千五百件を超えるというまさかの事態に。
 こんな状態で完結を迎えても叩かれないかな大丈夫かなー? と思いつつも、当初のプロット通りに完結とさせていただきました。
 ISはいろいろと問題がある(主に原作者)小説で、二次創作も意見が数多存在する作品です。アレはダメこれはダメ。いろんな人がいろんな意見を抱える作品だと思います。
 だから、私はどんな人でも笑って読んでもらえるように、この作品を書きました。
 できるだけ原作キャラを魅力的に見せるように心がけながら書くのは苦労がいる事でしたが、まぁなんとか完結にまでこぎつく事が出来ました。いやぁ、頑張った頑張った!(笑)
 そういう訳で、ここからは完結時お約束の感謝をば。
 コメディと勢いしかないこの作品をお気に入り登録して下さった皆様、呼んで下さった皆様、本当にありがとうございます。一か月未満という短い間でしたが、「面白い」という感想をいただけて本当に嬉しかったです。
 そして、この作品を書き始めてから、「コメディを書くコツを教えて欲しい」というメッセージが時々来るようになり、本当に驚きました。こ、こんな私でいいの? もっとベストな人がいるんじゃないの? と思ったのはいい思い出です。いや本当、私以外の人に聞いた方が良いんじゃないの? 嫌よ、そんな、自信ないんだから……。
 そういう訳で、とりあえずこの作品での筆はここで降ろさせてもらうとして。
 次は、他作や新作で皆さまを楽しませる事が出来るように頑張っていきたいと思います。
 それでは、皆さまの日常に平穏が存在しないことを祈りつつ、ここら辺でフェードアウトさせていただきます。

 ではではっ、またの機会に!

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