どこかの世界にいる、とある
────それは、救いだったのだ。
「や〜い、ポコ助〜!」
「は〜い!」
こんにちは!
わたしは"ポコ"。
いや、本当の名前はちゃんとあるんだけど田中のおじちゃんがそう呼ぶから、"ポコ"なんだ!
「はっはっは、今日も元気だなぁポコ助」
「ゼッコーチョーですよ!フンスフンス」
「『絶好調』が漢字になってないんだよなぁ!」
「ムムっ!ダイジョーブですもん!きょー返ってきたテスト、10点でしたもん!マエより倍です!」
「倍でも赤点じゃねぇか!」
「「えへへ〜」」
ニヘニヘするわたしたちを周りのみんながすごい目で見てます!
わ、わァ…!注目されてるって…コト!?
で、でも、注目されて当然ですよね!
何だってわたし!
「三冠バですもん!」
*
"ポコ"と出会ったのはただの偶然。
担当していた娘たちが全員卒業し、そろそろ引退かと頭を悩ませていた時に出会っただけだった。
『よう』
『…はい?』
『お疲れ様。随分と走ってたな』
『は、はぁ…』
その時の"ポコ"は…、まぁありたいていに言うと
フォームだけを見ると速く走っている風に見えるが実物を見ると…といったように。
のちに、他のトレーナーから笑われている"ポコ"を見た。
───勝てないウマ娘。
───あんなのじゃ、地方でも勝てないよ。
見ていたトレーナーからも、一緒に走っていたウマ娘からも笑われている。
それに"ポコ"は…、諦めたように笑うばかりで。
『…どうして、笑う?』
『え?』
『言い返せばいいだろう。あんなの』
『…へへへ』
毎度のようにジュースを奢りながら話をすると"ポコ"は相変わらずの笑みを見せながら、ポツポツと喋り始めた。
『…わたしは、ばかなので』
『ばかで、ドジで、まぬけで。
…だから、お母さんにもみはなされちゃった』
『それで。…あの、スペシャルウィークさん、って知ってますか?』
『あぁ』
『…わたし、あの人にユメをみたんです』
『ユメをみたから、
『やっぱり、…ドジでグズでまぬけなわたしには』
むりでした。
そう動くだろう口を見た俺は、
『できるさ』
『へ?』
咄嗟にそう、動いていた。
何を根拠でもない。直感でもない。
でも、俺は…"ポコ"に、いや───"トゥデイズアンサー"に走ってもらいたかった。
『俺がお前の担当になる。…見たところ、トレーナーはいないよな?』
『え…。そ、それは、そうですけど…』
『よし。明日に書類を…』
『ま、待ってください!』
『お?』
『あ、あなたは。…わ、わたしで、ほんとうに、い、いいんですか…?』
不安げに揺れる瞳。
今にも決壊しそうな瞳。
希望を見た、瞳。
それに、俺は、
───────あぁ。
ポコ:
本名『トゥデイズアンサー』。スペシャルウィーク産駒の牡馬であり三冠馬。母馬から育児放棄されてた生まれ。
ファンからは本名で呼ばれずもっぱら"ポコ"、"ポコ助"などと呼ばれている。アホの子。
史実では人呼んで『田中のおじちゃん専用機』。
田中のおじちゃん以外では決して動こうとせず、ズブズブしていた。
ズブズブというよりもゲート入りから嫌がるというか…。
でも田中のおじちゃんがひとたび乗るとすごくつよい。
顔立ちはスペ似でカッコイイのに普段がぽやぽやし過ぎているせいでそこまでカッコよく見えない。逆に可愛い。某プボ味ならぬポコ味。
娘ではそのぽやぽやっぷりから母に見捨てられ他人に笑われ続けたために自信の無い娘になっている。
アホの子ではあるがヒトの本質を見抜く力はちゃんとあり、三冠バになったあとで自分をチヤホヤして、利用してこようとする過去の人々にちゃんとNoを突きつけた。
田中のおじちゃん:
史実ではうだつが上がらない昼行灯系おじさん騎手。
だが担当した馬の競走生活を無事にやりきらせることに関しては天才的な才覚を持つ。担当した奴ら全頭生涯無事是名バしてる。
そろそろ引退か〜と思っていたところで幼き日のトゥデイズアンサーと出会い、コンビに。
するとあれよあれよという間に初G1を獲り、三冠騎手となった。
だが自分の力量で三冠を獲れたとは1ミクロンも思わなかったので三冠後に他の騎手に乗り替わり、と告げられた際には素直に従った模様。
けれどトゥデイズアンサーが『ヤ!』したので主戦騎手に逆戻り。
トゥデイズアンサーをはじめに"ポコ"と呼んだ人。
"ポコ"の"ポコ"はすっぽこの"ポコ"。
で、"ポコ"の競走引退とともに騎手引退。
そのあとは競馬関係のコラムニストとかやってる。
もちろん"ポコ"産駒を応援しまくる余生を送る。