結束バンドのメンバーと周りの人たちの、幕間の物語。作者は原作五巻+アンソロ一巻を読んでいますので、ネタバレ注意です。
ガールズラブは保険です。

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うおおおおおおおおおぼざろおもしれえええええ

せや!本編の幕間を妄想して書いたろ!←いまここ
というわけで初投稿です。


伊地知虹夏は歩き出した。
歪な線


「はぁ…………」

 

 町をぶらつきながら、深くため息をつく。

 

(どうしてこうなったんだろう)

 

 結束バンドのグループLOINEを何の気なしに確認する。

 

I.Kitaが退会しました』

 

 無情な現実を叩きつける表示に、再度ため息をついて携帯を閉じる。そのまま道の端にうずくまった。今日は結束バンドの初ライブの日だ。幼馴染のベーシスト・リョウと企画して、難航したメンバー探しの末に、ギターボーカルの喜多ちゃんを迎えた結束バンド。私の夢を託した、大事なバンド。その割にはあまりに安直な名前だと思うけれど。お姉ちゃんに頼み込んでブッキングしてもらった今日のライブは、その夢の第一歩になるはずだった。

 

 でも、今日になって喜多ちゃんと連絡が取れなくなった。

 

 初めは「当日に寝坊するなんて頂けないなぁ」なんて笑いながらリョウと駄弁っていたけれど、出番が近づくにつれて、もしかして今日来ないつもりなんじゃ、と不安や後悔が募り始めた。そうだ、今考えれば、思い当たる節はあった。

 

────楽譜を渡した時に少し難しい顔をしていたこと、連絡もどんどん素気なくなっていったこと。合わせ練に一回も来なかったこと。

 

 苦手なフレーズがあるのかなとか、友達多そうだしきっと忙しいんだろうな、とかその時は思っていた。はっきり言ってそのことに疑問を持たなかったことは私のミスでしかない。私は結束バンドのリーダーであると同時に連絡役だ。それだけじゃない。もしかしたら連絡の時に何か不満があったのかもしれない。リョウに憧れて入ったと言っていたけれど、その後で私に幻滅して抜けたかったのかもしれない。時が経てば経つほど、そんな考えが脳内をぐるぐると支配していく。そこから、もしライブが出来なかったらどうなるだろう、と言う方向に思考がシフトした。

 

────素人のリズム隊だけでライブが成り立つわけがないよね。メンバーが来なくてライブができませんだなんて、お姉ちゃんやスタッフさんや見にきてくれる友達にどう顔向けすれば良いんだろう、メンバーがバックれるバンドだと知られたらもう誰も組んでくれないかもしれない、優しいけれど、それ以上にドライなお姉ちゃんに「諦めろ」と言われちゃうかもしれない。

 

 そんな苦慮から逃げるように立ち上がり、下北の町を早足で、どこか祈るような気持ちで代わりのギタリストを探し歩いた。けれど、いくら下北が音楽の街だからと言ってフリーのギタリストがそんなうじゃうじゃいるわけじゃない。声をかけた全員に断られ、とうとう賑やかな中心街を抜けてしまった。目に見えて通行人の数が減った。そこからは、あてもなくとぼとぼと市街を歩いた。

 

 しばらく歩いた時、携帯の着信音が鳴った。お姉ちゃんからだった。ぼーっとその画面を見つめながら、無意識に拒否のボタンを押してしまった。お姉ちゃんと撮ったロック画面が映し出される。ふと、確認していなかったオーチューブの通知が残っていることに気づいた。

 

(あ、guitarheroさん新作上げてたんだ)

 

 通知を押して動画を開く。昨日投稿されたものだ。沢山のハッシュタグと、高校生になってどうとか、充実したリアル事情で埋め尽くされた概要欄が表示され、遅れて動画が読み込まれる。殺風景な押し入れを背景に、飾り気のないジャージを着た女の子と、ヴィンテージ物のレスカスにミニアンプという、概要欄を疑いたくなるお決まりのセットが映し出される。内容は流行りのバンドの曲に、彼女のエッセンスを乗せたカバー。確かな技術に裏打ちされた、繊細なのに力強い旋律が耳朶を打つ。一体そこに至るまでにどれだけの練習をしたのだろう。パート違いではあるが、私のバンドマンとしての目標だ。

 

 動画が終わり、意識が現実に引き戻される。帰らなきゃいけない。こんなことになったのは、メンバーとの交流を怠ったリーダーの、私の責任だ。腹を括ってみんなに謝罪しよう。お姉ちゃんやPAさんにこってり絞られるかもしれないけど、頑張って耐えよう。リョウは────別に気にしないと思うけど、謝ろう。バンドメンバーはまた探せば良い。この一件で負うだろうダメージは大きいけれど、私の夢が消えるわけじゃない。そこまで覚悟して、ほう、と息をついたところで、目の前を楽しそうな親子が通り過ぎた。なんとも言えない気分でそれを見ていた時、視界の端に1人の女の子が映った。公園のブランコに座り、俯いていてその表情は見えない。無遠慮に伸び切ったピンクの後髪と、二色のキューブゴムに纏められた一房のハネッ毛。無地なのに、悪目立ちしてしまうピンクのジャージ。普段であれば絶対に近づかないような風体の彼女は、それでも私の目を引いた。

 

 真っ黒なギターケースを背負っていたから。

 

 それを認めた瞬間、縋るような気持ちで一目散に走り寄りながら叫んだ。

 

「ギタ──────!!!!!!!!!!!」

 

 ────その日、私は運命に出逢った。


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