アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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今回めっちゃ時を飛ばします。理由は流石にそろそろ進めないといつまで経っても話が進まないからです。というか私が早くルイスをボロボロにしたくて我慢できません

時系列としてはクレア誘拐事件から1年後でアレクシアが武神祭で……というところです。


14冊目

 

°月☆日

 

クレアさんが誘拐されたあの事件から1年が経った。あの時は王都の方にいたから駆けつけるのが出来なかったとはいえ、何も出来なかった自分に対して腹が立つ。結果として、シドやアルファたちの活躍によってその事件に関わったディアボロス教団のメンバーは倒すことが出来、クレアさんも怪我こそ負ってはいたもののそこまで重くなかったのが幸いだった。それからアルファたちは勢力拡大のため世界のあちこちに散り、順調にメンバーを増やし、シドがボコして認めさせた霧の龍が守る古の都アレクサンドリアを本拠地として魔道具の開発やメンバーの強化をしているとの事。

そしてガンマを主導に『ミツゴシ商会』を立ち上げてシャドウガーデンの財源を担っているというのをアレクサンドリアに行った時に本人から聞いた。まあ、連絡役でゼータをよこすのはやめて欲しい。日記書いてる時に急に窓から入ってくるから心臓に悪いから。

そんな『ミツゴシ商会』は俺も何度か寄ったことがあるけども、品質がとてもよく、あと前世では結局完璧に味を再現できなかった某ハンバーガーチェーン店のハンバーガーが試作段階とはいえ食べれたあの感動は今でも覚えている。シドの話を聞いてそれを再現したガンマたちは本当にすごいと思う。今度、レシピとか聞こうかな……

 

それはそれとして、武神祭がもうすぐ始まる。何でも2年に1度行われる大会みたいなもので、刃を潰した剣で戦うというのがざっくりとした内容。ここで良い成績を収められれば色々と優遇がある、とも聞いた。アレクシアやアイリス様から俺も出るように言われたけど今回は断った。理由としては彼女のサポートに全力を注ぎたいということもあるが、一番の理由は自分がある意味ズルをしているような気がして出る気が無くなったからだ。

 

いや自分でも慢心な考えだとは思うけど、俺の戦闘技術は今世も含めれば人生を3回過ごした上で培われたものであり、同じ条件下であれば才能が皆無な俺は誰にも勝てるわけが無い。それを自覚しているからこそ、俺は断った。アレクシアとアイリス様は残念そうにしていたけど、こればっかりは譲れない。

 

その代わり、大会本番でも2人が後悔のない武神祭で終われるように精一杯サポートしていくつもりだ。

 

 

°月♪日

 

今日アレクシアに何故俺の剣がこんなに強いのか聞かれた。夢で前世で過ごした皆のことを見てしまったのもあって、前世のことは伏せたけどつい色々話してしまった。アレクシアは俺の答えを聞いて暫く考え込んでいたが、その後はいつもと変わらない様子だったし多分大丈夫だろう。

 

今日はもうこれ以上書きたいこともないし、書く気も起きないからこれで終わりにする。もう、皆には会えないのにあんな夢を今になって見るなんて

 

 

暫くアレクシアとの鍛錬や相手選手の情報集めの内容が続く。

 

 

 

☆月○日

 

最悪だ、よりによってやらかした。

今日が武神祭当日であったが、アレクシアは負けてしまった。前々から今のアレクシアでは勝つのが難しいとマークしていた選手の1人だったため、仕方ないことではある。けど気持ちはそう簡単に割り切れる話じゃないのは身をもって知っている。だからこそ、アイリス様にはアレクシアが気持ちを切り替えられるまで自分らは黙って支えることを伝えようとしたのだが、タイミング悪く俺は別のスタッフが倒れたせいでその穴を埋めるためにアイリス様に伝えられなかった。

 

その結果、アイリス様に何か言われたのかアレクシアは自身の剣に対して不信感、そして嫌悪感を抱いてしまっていた。武神祭が終わったあと急に稽古に付き合って欲しいと言われて打ち合った時に、それが伝わってきた。そして俺はそんな彼女に対して何も出来なかった。

 

俺はどうすればよかった?俺はどういう言葉を彼女に投げかければよかった?

 

俺は、彼女のために何が出来たんだ?

 

師匠ならどうしていた?何も出来ない自分が本当に嫌いだ。

 

 

 

 

****

 

 

 

──ルイスの剣は守りに特化した剣だ。

 

アレクシアはルイスと剣を打ち合いながらそう思う。

ルイスの剣は全くとは言わないが自分から攻め込むことはしない。基本的に相手が攻めてくるのを待ち、それを的確に防いでいきカウンターを入れる、というものでありかなりやりづらい。かと言ってこちらが待ちの姿勢を見せれば自ら攻め込んだり、フェイントを仕掛けてこちらの攻めを誘ったりと相手をしていてかなり厄介であり、アイリスもルイスの剣を賞賛していた。

 

だからこそアレクシアはルイスに武神祭に出てもらい、その剣を周りに見せつけて欲しかったのだが──

 

「私はアレクシア様とアイリス様のサポートに徹したいので遠慮させていただきます」

 

アレクシアの頼みはバッサリと斬り捨てられ、それを誰から聞いたのかアイリスもルイスに出るよう言ったのだが結果は同じであり、アレクシアはそれだけ彼が出たくないというのを察し、出場するように言うのをやめた。

 

「そういえば、ルイスの剣って何でそんなに強いの?」

 

「え?──あいたぁ!?」

 

「あっ、ちょ、大丈夫!?」

 

だが、次の日になってアレクシアはふと気になっていたことを稽古中にルイスに聞いた。そして聞かれた本人は聞かれるとは思わなかったのか、一瞬固まってしまったせいでアレクシアが放った縦振りを木剣で防げず頭に当たった。

その事にアレクシアは驚きつつも、頭を抑えるルイスに近寄る。幸いそこまで勢いよく振ってなかったことが幸いし、たんこぶが出来たりなどといったことは無さそうだった。だが、同時に稽古を続ける雰囲気でも無くなったため、休憩をとることになり2人は日陰に移動して腰を下ろした。無論、ルイスは急いで用意した氷袋を頭にあてながら。

 

「いてて……そういえば俺の剣がなんで強いか、だっけ」

 

「あ、うん。ちょっと純粋に気になったのよね。アイリスお姉様とも打ち合える秘密とかあったら聞きたいし」

 

「あー……」

 

アレクシアが聞いてきた理由を聞いてルイスはどう答えるか迷う。流石に前世のことを話す訳にはいかないので適当に誤魔化そうと思い──

 

──『私にもユウト様を守れるほどの実力があればよかったのに……』

 

「……守りたいものがあったから」

 

「え?」

 

「才能がない、って言われたけどそれでも守りたいものがあったから、俺は剣を振るい続けられたんだ」

 

気がつけば、ルイスは話していた。脳裏に自身が今の剣を目指そうと思ったきっかけをくれたとある姫の言葉を思い出したからだろうか。ルイスは自分ですら気が付かないほど懐かしむようにそう話し、アレクシアは1度も見せたこともなければ聞いたこともない顔と声を出すルイスを見て呆然としていた。

 

「……さて!痛みは引いたし、稽古の続きやろうか!」

 

「え、ええ。そうね……」

 

急にいつもの雰囲気に戻ったルイスにアレクシアは驚きつつも、腰を上げて日陰から出て再度木剣で打ち合った。

 

──そしてその日からルイスは宣言していた通り、アレクシアのサポートに徹しており模擬戦の相手を始めに、注意すべき相手の偵察や解析、鍛錬後のマッサージなど彼女がベストを尽くせるように多くのことをした。アレクシア自身それに対して過保護過ぎるとは思ったものの、自分のためにあれこれ手を尽くしてくれるルイスに対して感謝はしていた。事実、模擬戦の方はかなりタメになったこと、マッサージに関しても変な声を出して聞かれたことに目を瞑ればかなり良かったと言える。

 

 

「勝者、──!」

 

そしてそこまでされた上で挑んだ武神祭でアレクシアは負けた。

ルイスの事前情報で今の段階では勝てる可能性が低い相手というのはわかっていたが、それでも負けた事をすぐに割り切れる人間は中々居ない。アレクシアもその1人であり、気がつけば控え室で1人で蹲っていた。

 

「アレクシア……!」

 

そしてアレクシアの敗北を聞いてすぐに来たアイリスはそんな妹の姿を見て、何か言わなければと直感した。このままでは大事な妹が「凡人の剣」を嫌いになってしまう。

 

──なんて言えばいい?なんて励ませばいい?

 

アイリスの思考はどんどんドツボにハマっていく。最適だと思いついた言葉が逆に傷つけそうな気がしては頭から無くす、を繰り返した果てに彼女が言った言葉──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、アレクシアの剣が好きよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルイス、ちょっと付き合いなさい」

 

アレクシアに呼び出されたルイスはこちらの返答を待たずに木剣を投げてきた彼女に困惑する。こちらの都合を考えずに付き合わせるいつもの感じとは違うことに、ルイスは嫌な予感がしつつも木剣を構える。

 

そして──

 

「はあっ──!」

 

「!!」

 

全力でこちらに向かってきたアレクシアの剣を見て、すぐに察してしまった。その剣が自分が彼女を見直したきっかけでもある「アレクシア・ミドガルの剣」ではなく、「アイリス・ミドガルの剣」の模倣であることに。

 

「──くっ!」

 

そしてそれに気を取られたせいでルイスは反応が一瞬遅れ、その事に気がついたアレクシアは「アレクシア・ミドガル(凡人)の剣」では、ルイス(大事な人)に追いつけない可能性があると思ってしまった。

 

(……凡人()の剣じゃ、ルイスの隣にすらいられない)

 

アレクシアはその考えにたどり着いてしまったことに喪失感を抱きつつも、これまでを捨て去る勢いで剣を振るい続け、その頃にはルイスが自身に語っていた「強さの理由」など頭から抜けていた。





キャラ紹介

ルイス
前世の師匠から手ほどきを受けた際に「お前に戦う才能ない」と断言され、そしてそれを嫌というほど体感してきたため乗り越えたように思っているが実は拗らせてる。そんなルイスだからこそアレクシアの苦悩は全部とはいえなくても分かるし、自分のような挫折と絶望を味わって欲しくなかったが結果はコレ。お前のせいでアレクシアは原作通り「凡人の剣」嫌いになっちゃったよ、あーあ。因みにやろうと思えば攻め寄りの剣も出来る。

アレクシア
原作同様アイリスの発言のせいで「凡人の剣」が嫌いになった。ルイスが普段から本気を見せていた上で、今回アレクシアに話したことをはなしていたらこうはならなかった。つまり実質ルイスのせい。でも前世のルイスの絶望や挫折と比べたらまだマシだから頑張れ♡頑張れ♡

アイリス
ルイスのガバのせいで妹にトドメをさしちゃった。なお、ルイスが最初から本気だった場合先にこっちがメンタルやられる。どっちにせよ姉妹のメンタルを壊すからルイスは悪。

ルイスは前世の師と初めて戦った際、初めて一緒に仲間になった者たちを目の前で殺されている。その際に「お前の力では誰も守れない」と言われ絶望。それから鍛錬を重ねてかつての幼馴染の誘いで入った勇者パーティの一員として再度その師と戦った際は他のメンツがクソ強だったこと、その師がルイス達に自分の剣の「極地」を見せつけるだけだったこともあって、誰も死にはしなかったが、結局ルイス自身の力ではその師に対して出来たことはほとんど無く、剣を見るだけでかつてのトラウマと自身の無力さで吐くほど弱ってしまい挫折。が、レイたちの励まし(一部物理)によって吹っ切れ、更にとある姫の何気ない一言で「全てを防ぐ守りの剣」が自分が目指すべきものだと分かり、レイたちの稽古もあって「予備動作がなく殺意も、淀みも、力もなく、ただ自然のままに振るわれる剣すらも防ぎ切る守るための剣」を師が見せた剣と教えてくれた基礎をもとに習得。3度目の最後の師との戦いで「自分の剣」で「師の剣」を防いだ後にレイたちの奇襲で体勢を崩した師に自身の剣を突き立て、師の目的や過去、そして願いを聞いたルイスは周りの意見を蹴って、滲む視界の中、感謝の言葉を一言言って自身の手で引導を渡した

エアリアルのフレッシュトマト味、美味しいですね。(訳:3番目に書きたかったところ書けて満足)

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)

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