€月$日
武神祭から2年が経ち、俺らが15歳になったことでミドガル魔剣士学園に入学してから2ヶ月が過ぎた。アレクシアはあの日からアイリス様の剣にまだ囚われている。本音を言えば俺が正してあげるべきなのかもしれないけど、今の彼女に俺の剣は嫌悪感を抱く対象なのだ。事実、あれ以来彼女と剣の鍛錬をしたことはない。
結局、どこかぎこちないところが治らないまま時が過ぎて行き、今や彼女には婚約者候補が現れるほどの年齢となった。まあ、その婚約者候補のゼノンって人は短所が見当たらなさすぎて警戒対象ではあるのだが。前世でもそんな感じの人がいてホイホイ着いて行ったら貞操の危機にあうのはまだマシな方で、ガチで死にかけたこともあったなぁ……貞操の危機の方に関しては今思うとそのまま卒業してしまえば良かったと思ってはいる。
いや人生2回連続卒業出来ぬまま死んでるって結構やばい気がする。流石に3度目の人生では卒業してから死にたい。でも、俺みたいな一般従者に対して「OK!!」と言ってくれる心広い女性はいないと思うし……。
そんな事よりアレクシアの方だが、色んな人から告白されている。有力貴族のイケメン息子からもあれば、騎士団で有力視されている期待大なイケメン男子学生と多くの男から告白されているのだが、「興味無い」の一言で散っている。そしてその事を振った本人から直接聞かされるのだが、反応に困る。強いて言えるのが、「モテますね」とか「ゼノン様のことを考えてて偉い」ぐらいしかない。なお、それ言ったら言ったらで不機嫌になって拳が飛んでくるか、椅子にされるし、無言を貫き通しても同じ目に遭う。
俺に一体どうしろと?デルタに聞いたら……いや、流石に分からなそう。今度ゼータが来た時に聞いてみるか……
€月€日
アレクシアに彼氏が出来た。それ自体は喜ばしいのだが、問題がいくつか出てきたせいで頭とお腹が既に痛い。
まず1つ目。相手が我らがシャドウガーデンの盟主であるシド・カゲノーであることだ。なんとこのアホあろうことか自身をモブっぽくするためだけに、わざわざアレクシアに嘘告をしやがったのだ。告白内容は……まあ、中々面白かったがアレクシアはそれをあっさりと了承。マジで何が狙いで彼と付き合い始めたのか分からないのもある。
2つ目。アレクシアが自身の本性を見せた時のフォローをどうするか。ないとは思いたいけど、万が一アレクシアが本性を露わにして自分にやってるようなポチ扱いをシドにしたら俺はどんな顔でシドやアルファたちに会えばいいのだろうか。
取り敢えずそんなことになった場合は俺からフォロー出来ることはフォローしないと……頭痛い。
3つ目。暫く従者として動くな、と言われたこと。恋人としてシドと過ごすというのに男の俺がいつまでもいたらおかしい、ということで言われたという命令されたのだが仕事が無くなる。一応速達で執事長に判断を仰いでいるのだが、まじでどうしよ。というか友人がシドとそのつるんでる2人ぐらいなんだよなぁ……他の人とも話はするけど何か見下してきて嫌だし。
他にも幾つかあるが考えるだけでお腹が痛くなるのでこれ以上はやめよう。胃薬あとで買いに行くか……
€月%日
はい、早速やらかしてくれました。執事長からの返事がまだ来てなかったから今日1日影ながら見守っていたんだけど、放課後にアレクシアが金貨をばらまいてそれをシドが地面を這いつくばって拾っているの見てしまったからだ。
うん、膝から崩れ落ちたね。このせいでシドへのフォローという仕事が追加されました、クソが。
そしてシドと付き合い始めた理由も婚約者候補のゼノンに対する当て馬というのが分かったのも頭痛いポイントだ。いや、ゼノンを婚約者にするというのは胡散臭いから反対なのは俺も同意見なのだが、もう少しやり方は無かったのだろうかと思ってしまう。見た感じゼノンの方は軽く流してるし……うーん、この。
そして帰ってきたら執事長からの返事が届いていたため、早速読んでみると陰ながら見守るようにとの事。
はい。というわけで暫く隠密行動することになりました、クソが。俺そこまで隠密行動得意じゃないってのに……
あと、俺が隠密してない時に限って行く先々でアレクシアがシドと仲良さそうにしてるところを見かけるのはなんでなんだろ。
****それから2週間ほどシドへのフォローやアレクシアからの話を聞いたりしたこと、胃薬が増えたことに関する内容が続く。****
*****
王都の人通りがほぼない路地裏にてフードを被り、気を失っているアレクシアを担ぎながら音もなく移動する集団があった。彼らは少女を攫い、王都にある自分たちの隠れ家にその少女を連れていくのが任務であった。その少女の恋人とされているシド・カゲノーと別れるのが案外早かったため、当初より少し早くなったもののこうして無事に彼女を気絶させることが出来、任務は順調かと思えたが。
「ちょっと待ってもらおうか」
「!」
隠れ家に向かう途中で帯剣している少年が1人で立っているのを見て先頭を走っていた男は止まる。男はその少年の顔を見て、作戦前に要注意人物として挙げられていた人物──ルイス・エアであることを認識し、内心舌打ちしていた。
ルイス・エアは当初幹部も含め取るに足らない存在だと結論づけていたが、自分たちが属する組織で『最強』と言われている女性が口を出し、シド・カゲノー同様に最も注意すべき人物だと断言したのだ。そしてその話は下っ端である彼らにも伝えられており、男は汗をかく。
「うちの主がいつまで門限過ぎても帰ってないから急いで探してみたら、あんたらが見つけてくれてたとはな……取り敢えずアレクシアを返してもらおうか?」
「っ!!」
話口調自体は軽いものの、同時に放たれた殺気と圧は凄まじいものだった。男たちは無意識に膝を地面につけようとし、ルイスもそれを見てすぐに踏み込んで男たちを半殺しにしようと剣の柄に手をかけ──
──その瞬間、ルイスは自分の首が飛ぶ姿を幻視した。
「っ!!」
反射的にその場から離れるように転がる。その刹那ルイスの首があった所を白い閃光が横切り、それを見たルイスは少しでも反応が遅ければ先程感じた光景が現実になっていた事実に冷や汗をかき、同時に驚愕していた。
(
そう剣を振るえば普通は生じるはずの気配が全くなかったことにルイスは驚いていた。それに反応できたのは彼が守りの剣の極地に至っていたこと、その『最強』の剣を何度も体感していたからだ。
「ほう?やはり反応してきたか……」
影より現れたのは全身を黒に染めたロングコートを身にまとい、片手に白銀に輝く片刃の刀を持った細身の人物だった。顔はフードを深く被り口元も隠しているせいで分からないものの、声の高さ的に女性だとルイスは考えた。
「ほら、お前たちいつまで休んでいる。早くその王女をつれていけ」
「っ!」
「行かせると思って──っ!?」
女性の言葉に気がついたその集団は急いで走り去ろうとし、それをルイスが阻もうと接近しようとした瞬間、視界に女性が自分に向けて刀を振り下ろすのが見えて反射的に剣を抜刀、それを弾いた。
「そんな玩具の剣で私と戦う気か?」
「はっ、逃がす気なんかないくせによく言うよ」
「そりゃあ、私たちのこと見られたからにはな?悪いけど死んでもらおう」
その言葉を契機に2人は一斉に動き出した。女性は流れる水を彷彿させるかのように剣を振るい、ルイスは自身の全神経を集中させて飛んでくる全てが必殺と言える斬撃を全てを防いでいく。
だが、ルイスは前世で魔王と戦った時のような身体能力をまだ手に入れておらず、体も全盛期には遠い。そのため徐々に防ぎきれなくなり初め、所々にかすり傷が出来始めた。
「ちぃ──!」
「ふむ、予想通りやるな……」
(こいつ……!)
女性はルイスの剣を通して懐かしむような声を出し、そしてルイスは打ち合う度に彼女の剣がますますとある人物に似ていることに焦りを感じ始めていた。しかし、そこで女性はルイスの剣を懐かしむ方に僅かながら意識が逸れてしまい、ルイスはその一瞬を見逃さなかった。
「せあっ!」
「むっ?」
ルイスからすれば千載一遇のチャンスでもあった渾身の突きは女性の頬を僅かに掠める程度で終わり、それを受けた女性はすぐに後ろに下がって距離を取り血が流れる頬を指で触る。
「女性の顔に傷をつけるとは、随分なことをするじゃないか」
「……」
「だんまり?つれないな……まあ、これ以上やってるとそろそろ人が集まってくるからな──」
──これで終わらせるぞ?
「っ!!」
反射だった。ルイスは女性の姿が見えなくなった瞬間自身の体と剣にありったけの魔力を流し、自身の本能が言うがままに剣を構えて防御の姿勢を取った。
そしてその直後──
「なっ──!?」
凄まじい衝撃が手に伝わると同時にルイスの体は吹き飛んでおり、構えていたはずの剣の刀身は粉々に砕け散っており、それを見て彼は先程の一撃の威力をまともに受けていたらどうなっていたかを想像し背筋を凍らせると同時に地面に転がった。
(なんて強さだ……まるで師匠と戦って──)
そう考えた瞬間、胸が焼けるような感覚がし視線を下に移すとそこには横に切り裂かれたのように傷が開き、血が吹きでている自身の体。それを見てルイスは完全に防ぎきれてなかったことを悟り、同時に応戦するために手に魔力を集めて魔力の剣を作ろうとして──
──ドスッ
「がはっ……」
ルイスの腹部を刀が貫いた。
「……中々強かったぞ、坊や。正直私以外で勝てる人間はいない、と思えるぐらいには楽しめた」
女性は刀を抜くと、血を吐きながら地面に倒れ込むルイスを見下ろす。万が一魔力を使って回復されないように腹部に刀を突刺す直前に、魔力操作がおぼつかなくなる誰にも教えていない特製の毒を刀に塗っていた。そのためこの少年が助かる可能性はかなり低いだろう。
「欲を言えば、周りのことや時間など気にせず、ちゃんとした武器を持ったお前と戦いたかったものだがな…」
女性は名残惜しそうにそう呟くと、ルイスが
「アレクシア・ミドガルの従者、ルイス・エアは行方不明……事件はシド・カゲノーを容疑者として進む……ふん、くだらん茶番だな」
僅かながら息をしているルイスを川に投げ捨て、興味なさげにその場を去った。
それから数分後、何かが水に飛び込む音が誰もいない空間の中響き渡った。
急展開だけどユルシテ....ユルシテ...
キャラ紹介
ルイス
アレクシアのネックレス奪われた挙句投げ捨てられた。おお、ルイスよ負けてしまうとは情けない!!正直な話、スライムスーツかスライムソード持ってれば負けることは無かった。
アレクシア
ルイスがそんな目にあってるとは知らずアジトに連行中
シド
自分が認めた相棒がそんな目にあってるとは知らない
デルタ
え?
謎の女性
アレクシアを攫った集団の関係者。その実力は前世で勇者パーティとして魔王を倒したルイスすら圧倒したが、その正体は……?
番外編としてバレンタインの話を……
-
これもまた愉悦(書く)
-
やめろカカシ、それは効く(書かない)
-
撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)