アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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ルイスの視点だけでは分からない部分が多かったのでその補足です。





17冊目(裏)

その1:デルタが見た夢

 

デルタにとってエルという存在は大きかった。ボスと慕うシャドウとほぼ同等の強さを持ちながら、自分のことをずっと見てくれた太陽のように温かい人。

デルタは気がつけばエルという人間のことを愛しており、彼女自身それを自覚していた。だからこそ会えた時は沢山一緒にいれるようにしていたし、一緒に寝ていたりもした。

 

ディアボロス教団を倒すのが目的とはいえ、デルタはエルとのそんな日々がいつまでも続くと思っていた。

 

だからこそ──

 

「エルが死んだわ」

 

突然アルファが言ったことをすぐに認識できなかった。

 

「……あ、アルファ様?何を言ってるんです?エル様が死んだ……?そんな訳あるはずがないのです!!いくら何でも言っていいことと悪いことがあるのです!」

 

怒りを滲ませながらもそんなはずがない、と言うデルタを見てアルファは表情を一瞬だけ歪ませ、だが次の瞬間には無表情に戻す。

 

「事実よ、デルタ。受け入れられないとは思うけど……」

 

「聞きたくない!!」

 

「………」

 

「そんなの嘘だ!エル様が死ぬわけない!!だって、デルタ、まだエル様との約束まだ残ってる!!」

 

遠い昔の約束だった。デルタがエルと最初に会い、そして彼が王都に戻ることになった時に約束したあの内容を彼女はまだ覚えていた。次に彼が帰ってきた時にお願いした内容はまた別物で、あの時の約束はまだ果たしてもらってない。エルが自分との約束を破るわけない、とエルを信じているからこそ出た必死の言葉。

 

「……デルタ、来なさい」

 

アルファはそんなデルタの服の襟を掴むとそのまま強引に引き摺っていこうとする。

 

「嫌!行きたくない、離して!!」

 

デルタは嫌な予感がし、アルファの手から離れようと何度ももがくも魔力で身体能力を強化しているのか、全く離れることが出来ず、そしてデルタ自身どこか全力で抵抗できずにいた。

 

そしてアルファはとある部屋の前で止まると息を吐いてからドアを開ける。

 

「デルタ、これが現実よ」

 

「あっ……」

 

そうして連れてこられた部屋の真ん中には、簡素な台の上で目を閉じて横たわっている大好きな人の姿。

デルタは彼が本当に死んでいると──

 

「嘘だ」

 

フラフラした足取りで横たわるエルの元へ向かう。

 

「デルタのことを驚かそうとしてるだけなのです」

 

自らに言い聞かせるようにデルタは言葉を紡ぐ。

 

「前にデルタのことを驚かして、楽しそうにしてたの覚えてるのです」

 

そうして辿り着いたエルの顔にデルタは手を伸ばす。

 

「エル様、早く起きるので──」

 

──自身の指先で触れたエルの頬は冷たかった。

 

「……今回はかなり手が込んでるのです」

 

デルタはエルの心音を聞くために彼の胸元に耳を付ける。

 

──心音は鳴っておらず心臓は動いていなかった。

 

「エル様が、やくそく、やぶ、るわけ、ない……おきてよ、えるさま……」

 

どうしよもない事実だった。シャドウガーデンのNo.2であるエルことルイス・エアは死んだ。

 

「うわああぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 

 

*****

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

デルタは飛び起きた。心臓が破裂しそうな勢いで鼓動し、体は汗まみれだ。

 

(……夢?)

 

先程見た思い出したくもない悪夢をデルタはそう結論づけようとして、直ぐにやめた。

エルとの特訓で更に磨かれたデルタの直感が囁いていた。

 

──あれは近い未来に起こるものだと。

 

 

「──ッ!!」

 

「ふぁぁぁ……デルタ?こんな時間にどこに──」

 

エル様が死んじゃう!!」

 

「は?ちょ、ちょっと!?」

 

たまたま起きていたイプシロンに対して悲鳴にも近い叫びを上げながらデルタは、静止の声をかけるイプシロンを無視して外へ飛び出す。

 

幸いにもデルタはエルの匂いがどんなに薄くても追跡できるほどに覚えており、彼女は自身の嗅覚と勘を頼りにエルを探す。

そして──

 

「エル様!!」

 

水路で力なく浮いて流されているエルを見つけた。

 

「!!」

 

デルタは躊躇せず水路に飛び込んだ。彼女がエルから泳ぎも教わっていること、並外れた腕力を持っていることが重なり彼女はエルを何の苦労もなく陸に連れてくることに成功した。

 

「エル様!しっかりして!エル様!!」

 

「……」

 

デルタは胸と腹部に怪我をしているエルに驚愕しながらも、彼から教わった魔力操作で止血する形で応急処置を施してから、頬を叩いて必死に呼びかけるも帰ってくるのは無言。それに嫌な予感がしてデルタは胸に耳を当て、目を見開く。

 

「いや、まだ!!」

 

デルタは諦めそうになる心を奮い立たせて、かつてエルに教わった蘇生処置を思い出しながら行う。胸の傷が再度開かないように注意しつつ心臓部分を口に出して数えながら30回押し、エルの口に自身の口を合わせ2回息を吹きかけ、起きる気配がないのを見て再度同じように行動する。

 

(エル様、デルタを置いていかないで──!)

 

デルタは祈りながら何度も心肺蘇生法を行い続けた。

 

「ごほっ!がはっ!」

 

「!!」

 

そして祈りは通じ、エルは息を吹き返した。急いでデルタはエルの胸元に耳を当てると弱々しいもののしっかりと動いている心臓。それにデルタは安心し腰が抜けそうになるも、すぐに気を引きしめる。

 

「待ってて、エル様。すぐにちゃんと治すから!!」

 

デルタはエルを背負うと王都にある隠れ家に向けて全速で走っていったのだった。

 

 

 

 

その2:ルイスが救助されてから治療まで

 

「ルイスの様態は?」

 

「胸を斬られた上にお腹を刺された挙句、水路に落とされて血が沢山出ていたはずなのに生きているのが不思議なくらいです。デルタ様が咄嗟に傷を塞いで心肺蘇生をしたとはいえ、奇跡ですよ」

 

アルファは医療方面に詳しいメンバーから聞いた情報に頷きつつ、思考する。ルイスことエルの実力はアルファもよく知っている。単純な剣技だけならあのシャドウより上ということもあって、その彼がここまでボロボロにされるとは思っていなかった。

教団からこちらに寝返った元ラウンズからそれ程の手練がいたという話は聞いておらず、アルファの思考は更に深くなる。

 

(それに、エルはシャドウより上手くないとはいえ魔力操作による治癒はかなり得意はず。それなのにすぐに治療できてないのは何故?)

 

アルファが疑問に思っていたのはそこだ。仮にエルがすぐに水路に落とされたとしても、傷を治せない理由にはならない。そうすると考えられるのは腹部を刺された時点、もしくは腹部を刺されたと同時に水路に落ちた時点で気を失っていたか、あるいは魔力操作に支障が出る何かがあったかのどちらかだろう。

 

(……前者ならともかく、もし後者であった場合は対策を立てる必要があるわね)

 

微量ながら彼から血を抜き、イータに毒かなにかが混入してないか解明する手筈はもう取ってあり真相が分かるのもそんなに遠くないだろう。

 

(……今はエルが早く起きてくれることを祈るしかない、か)

 

アルファは盟友でありながら大切な幼馴染でもあるエルが早く目を覚ますことを祈るのだった。

 

 

 

 

その3:謎の女性

 

「……シャドウガーデン、どのくらいかと思ってはいたが思ったよりやるな」

 

シャドウの放った『アイ・アムアトミック』を見ていたその女性は少し感心したように呟く。自分にあれと同じぐらいの芸当ができるか、と言われればあそこまで加減できず更に周りを破壊していただろう。

 

「しかしたかが次期12席程度では相手にならないか」

 

女性はため息混じりにそう漏らす。自身の記憶の中でもゼノンの才能はかなりあった。前世と言うべきあの世界で生まれていれば、剣聖と呼ばれるほどの剣の使い手になれるほどの可能性があった。少なくとも、自身が最後に取った弟子と比べれば圧倒的であったが。

 

「……いや、よそう。私を殺した英雄(救った弟子)はいないのだから」

 

女性は首を振って思考をおいやる。それよりも考えるべきことがあったのだ。

 

「ルイス・エアの死体が見つかったという情報が出ていない……あの状況から助かるとはあの男、よっぽど運が良かったと見える」

 

ある弟子と酷似した剣をしていた少年、ルイスを落とした水路は遅くとも流した半日後には人目に着くように水が流れている。そのため、数日間経過した今もその情報がないということはあの状況から一命を取り留めたということになる。

 

(前世で使っていた毒の再現に時間がかかり、即効性だけを重視して持続性が3時間程度であったのが仇となったか。いや、あの剣を通して感じた懐かしさに流され首を取らなかったのがそもそもの失態か)

 

課題はまだ沢山あるな、と女性は考えると即効性もあり持続性も最低半日はある毒のレシピを頭の片隅で考えながらその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

──その胸に、僅かな期待を持って。




細かい補足

ルイス(エア)の傷について
→まずデルタの応急処置は止血する程度で傷自体は完全には塞がっていなかった。その後ルイスが起きたあとは彼自身で傷をある程度治した、という感じ。(昔読んだ本で止血はできたが傷は完全に治ってない、と記されていた描写があったのでそれをそのまま活用しました)

女性が利用した毒について
即効性を重視したせいで持続性がない+刃に濡れたのも少量+最後に水路にドボンされたせいで元々少なかった毒が水路に落ちたことである程度流され、持続性がない(段々弱くなっていく感じ)こともあって起きた時にはほとんど残ってない感じに。

*毒の解釈については元々無知であったため、フグ毒を参考に。フグ毒は摂取量や適切な処置が出来たかによるものの8時間で分解されて体外に放出される、フグ毒の効果が出るのに最短でも20分ということから、斬られてから効果が1秒出る代わりに持続性も短くすると考えて単純計算すると持続性24秒という短すぎる感じになってしまったため、色々考えて3時間ほどに設定。フグ毒に後遺症は無いものの、それだと味気がないと感じたため若干操作しずらい、程度にしました。

今思えばスズメバチやマムシの毒を参考にすればよかったと反省しています……


中々納得できないところがあると思いますが、そこは目をつぶって頂けると幸いです。
この度は作者の甘い考えのせいで楽しく読んでいた読者の皆様に不快な思いや不信感を持たせてしまい、大変申し訳ございませんでした。

これからについてですが、プロットを再度見直し急な展開がないかどうかの確認、あった場合それの修正を行うため投稿はしばらくお休みさせて頂きます。

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)
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