アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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アンケートの結果で書けというのが多かったので番外編という形で投稿です。

これから番外編はかげじつ!をリスペクトしてわからせ!でいきます。


わからせ!(番外編):とある従者のバレンタインデー

 

──バレンタインデー。

 

それはとある日にチョコを親しい友人や恋焦がれている人物に渡すイベントであり、人によっては勝負の日になったり、あるいは血涙を流す日でもある。

 

そして我らがルイスはと言うと。

 

「うーん、何を作ろうかな……」

 

貰う側ではなく渡す側として自室であれこれ考えていた。

 

 

 

*****

 

 

ルイスにとってバレンタインというのは、前前世から自身の日頃の感謝を相手に分かりやすく伝えられるイベントみたいなものであった。

 

そのため、前前世では身内の人間だけではなく学校の先生、前世では勇者パーティのメンバーやお世話になった人々にチョコを使ったお菓子やクッキーなどを作って一言添えた手紙と共に渡していた。

そして今世ではミツゴシ商会がバレンタインというイベントを世の中に浸透させ始めた頃からもやっており、エルとしてはシャドウガーデン構成員全員にというのは流石に無理だったが、七陰とメンバーの育成を担当しているラムダには手作りを渡しており、ルイスとしては実家の使用人たちには手作りを、アレクシアとアイリス、そしてクレアにはミツゴシ商会で売っている物を渡していた。

 

なお、初めて渡した時の一部の人たちの反応を抜粋すると。

 

金髪エルフのαさん

「あなたってお菓子作りも得意なのね。今度教えてもらおうかしら」

 

ワンコ系獣人Δさん

「エル様が作ってくれたものはやっぱり美味しいのです!」

 

とある教官

「エル様が自らの手で作ってくださったものを……?お、恐れ多いです!」(この後渡した本人が落ち込んだ表情を見せたため食べざるをえなくなった)

 

何も無いところで転ぶγさん

「チョコを使ったお菓子でこういうのもあるのですね……差し支えなければレシピをお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

アレクシア

「あら、自分の立場をよくわかってるじゃない。ご褒美としてチョコあげる」

 

アイリス

「ありがとうございます。ん?手紙が入って……後で読んで欲しい?ふふ、分かりました」

 

こんな感じであり、ルイスはその手紙を読んだとある王女からは1日中からかわれることになったのだがそれはまた別の話である。

 

閑話休題

 

 

去年も手作りで渡す人と市販の人は分けていたのだが、ひょんなことでルイスは料理が得意というのがアレクシアたちにも露見したことから、クレアを除いた女性陣から「今年は手作りにしてほしい」という意見を貰っていた。そのため、どういうものを作ろうか考えていたのだが。

 

「王族に上げても不敬じゃない手作りお菓子ってなんだ……?」

 

ルイスが材料も買いに行かずに頭を抱えている理由はこれであった。前世では、その王族のとあるお姫様の要望で彼女がリクエストしたものを毎年一緒に作って食べあいをしていたため特に考えていなかったが、今世ではそのようなことは出来ない。

だからこそこうして悩んでいるわけなのだが。

 

(クッキーはなんか違う気がするし、かといってトリュフもなんかダメな気がするし……)

 

これまでここまで悩んだことあったか?というレベルで中々いい案が出ず、ルイスは机に突っ伏す。

幸いなのはデルタたちとアンナに贈る物はもう作ってあることで、もし彼女らの分も決められず作れていなかったらルイスは徹夜する羽目になっていただろう。

 

「……あー、本当にどうしよ」

 

と、ルイスが呟いた直後「ぐ~」という盛大な音が鳴り響いた。ふと時計を見ると時間帯的にお昼時を1時間ほどすぎている時間帯であり、ルイスも空腹を感じていた。

 

「……丁度いいし、ご飯食べに行こうか」

 

ルイスはそう呟くと色々書き込んだノートを閉じてコートを羽織ると部屋のドアを開けて外に出るのだった。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「そういえば、ルイスくん量が多いの頼んでたけどそんなにお腹空いてたの?」

 

「ええ、朝は紅茶1杯で済ませてしまったので……」

 

「もー、そんな生活しちゃダメだよ?」

 

「はは、善処します……」

 

ルイスは街のレストランでアンナと同席して料理が来るのを待っていた。

何故こうなったのかというと至って単純で、たまには街の外でご飯を食べるのもいいかと思ってブラブラしていたところ、たまたまアンナと会い彼女もご飯を済ませてないとの事でそこから彼女に言いくるめられて一緒に食べることになったのだった。

 

「ところでさ、ルイスくん何か悩んでる感じだったけど大丈夫?」

 

「……よく分かりましたね?」

 

「ふっふー、あまりお姉さんを甘く見ちゃいけないゾ☆」

 

ふとアンナが心配そうに聞いてきたことにルイスは驚く。誤魔化そうかとルイスは一瞬だけ考えたものの、アンナの聞き方はどこか確信を持ったものであり、素直に認めた。アンナが盛大なドヤ顔を決める一方でルイスは「この人相手に隠し事は難しいかもしれないな」と冷や汗を流していたところで、彼の視界に料理を持ってきている店員の姿が入った。

 

「おまたせしました、こちらご注文の──」

 

(あー、タイミング悪いなー)

 

店員が注文した料理を置いていく中、アンナは内心残念に思っていた。彼女としては何かで悩んでいるルイスを助けて自分の評価をあげようと思っていたのだが、完全に聞くタイミングを逃してしまった。食事中に聞こうかともアンナは一瞬考えるも、先程ルイスが朝ご飯を食べていない話をしていたのを思い出し、そこから朝ご飯を食べれなかったのもその悩みが原因ではないかと結論づけて聞くのをやめた。

 

「すっごい美味しそうだね!それじゃあ頂きます!」

 

「頂きます……うん、やっぱりハンバーグは美味いな」

 

「ルイスくんってハンバーグも好きなの?」

 

「ええ、結構好きですよ。アレクシア様には子供舌だとからかわれましたけどね」

 

「へ、へえ~、そうなんだ~」

 

アンナはさらっと出たアレクシアとルイスの話を聞いて少しだけ胸に痛みが走るも、それを堪えて話をしながら食事を続ける。

 

「ルイスくんは今までバレンタインとか沢山貰ってたの?」

 

「そうですね……使用人の皆様から貰ってましたし沢山貰ってましたね。アンナさんの方は?」

 

「私?私も友達から結構貰うね~。でもその分渡すのも大変だったな~」

 

「あー……」

 

「あ、ルイスくん。ハンバーグちょっと貰ってもいい?代わりに私が食べてるやつで食べたいのあったら取っていいからさ」

 

「別にお返しはいいですよ。はい、ハンバーグどうぞ」

 

「ありがと~……って流さないでちゃんと選びな?じゃないとテキトーに選んであーんしちゃうよ?」

 

「それやられると色んな人に殺されそうなので選ばせてもらいますね」

 

「意気地無しだ~」と割と酷いことを言うアンナをスルーしてルイスは彼女が頼んだものを見る。マカロニサラダとムール貝のピラフと女性にしてはまあまあ多い料理を頼んでおり、そこから改めて自分の周りはよく食べる人が多いなと思いながらルイスはどちらを頂こうか考える。

 

(どっちも捨て難いなー……あ、そういえばマカロニって呼ばれてたやつが色々あってマカロンっていうお菓子と呼ばれたって話が──)

 

ルイスがそこまで考えた瞬間、彼の頭の中に電流が走った。これなら王族に渡す物としては不敬では無い。だが、ここでまた別の問題が出てくる。

 

(いや、でも2人とも同じなのは手抜きな気がするし、あと一つなにか……ん?そういや、貝殻みたいな見た目をしたお菓子があったよな。確か──)

 

ルイスはそこまで考えつくと頭の中がスッキリし、同時に偶然とはいえ突破口を出してくれたアンナのてを感極まって突然握る。

 

「へ!?る、ルイスくん!?急に──」

 

「アンナ先輩、ありがとうございます!先輩のおかげで悩みが解決出来ました!」

 

「え?そ、そうなの?ま、まあ役に立てたなら良かったけど……」

 

「本当にありがとうございます!先輩に今日会えて良かったです!」

 

「あ、あはは……さ、流石に恥ずかしいな……」

 

アンナは顔を真っ赤にしながら暫くそのままであったが、途中で我に帰って「先にご飯食べちゃお?」とルイスを促して何とかその場を切り抜けるのであった。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

バレンタイン当日。ルイスは覚悟を決めた表情でアレクシアとアイリスの元へ向かっていた。この時間帯は前から2人とも居ると言っていたため、すれ違いになることは無いし、個別で渡すのはなんか気恥ずかしかったからだ。

ちなみにシャドウガーデンのメンバーには朝に来たゼータに渡してあるため、ルイスはそっちの方の心配はしていなかった。尤も、デルタが明らかにやばいことになるだろうと察していたゼータはルイスに直接渡すよう食い下がっていたのだが。

 

それはさておき、ルイスの方はかなり緊張していた。

アンナとの昼食のお陰で王族に出しても不敬にならないものを作ったはいいが、2人の口に合うかはまた別問題ではある。

 

(味見はしたから多分大丈夫なはず……よし、いくか)

 

ルイスは中にいるであろうアレクシア達に声をかける前にノックを3回する。

 

「アイリス様、アレクシア様失礼します。ルイス・エアです。入ってもよろしいでしょうか?」

 

「いいわよ、入りなさい」

 

「ありがとうございます」

 

アレクシアが許可を出したのを聞いてからルイスはドアをゆっくりと開ける。

 

「思ったより早かったわね。それで、私には何をくれるのかしら?」

 

部屋の中にはソファーに座って優雅にコーヒーを飲むアレクシアと少したけ申し訳なさそうにしているアイリスの姿。ルイスはアレクシアの態度は予想通りだったものの、アイリスの方は予想してなかったため内心驚く。

そのアイリスはアレクシアの態度を見て顔を顰めた。

 

「アレクシア。ただ貰うだけでは無いのですよ?こちらのわがままでわざわざ手作りにしてもらったのですから……」

 

「アイリス様、気にしないでください。これぐらいは慣れてますから」

 

「……」

 

「姉様、その呆れたような目はなんですか?」

 

「いえ、なにも」

 

「……とりあえず先に渡しますね」

 

このままだと何時になっても渡せそうにないと判断したルイスはカバンから丁寧に装飾された袋を2つ出し、片方をアレクシアに、もう片方をアイリスに渡した。

 

「2人とも同じ物、というのも味気ないと思ったので別の物を作らせて頂きました」

 

「それは気を使わせてしまいましたね……すみませんルイス」

 

「気にしないでください、好きでやった事ですから」

 

アイリスの謝罪に対してルイスは即答する。普段作らないものを作れた楽しみというのもあるし、そもそも大事な人のために作れたのだから彼からしたら大変ではあっても苦には感じなかった。

 

「あ、私達も渡してしまいましょうか。私からはこちらを」

 

「私からはこれをあげる」

 

「ありがとうございます……ん?」

 

アイリス、アレクシアの2人からオシャレに装飾された袋を受け取ったところで──厳密にはアレクシアからのを受け取った時にふと違和感を覚えた。

 

一見見た目はミツゴシ商会で売られているバレンタイン限定のお菓子を包装しているものだ。だが、リボンの結びが少し雑であることにルイスは気がついてしまった。

 

そしてそれだけではなく。

 

(そういえば、ガンマが素直になれない人向けに包装だけのバージョンも売る予定って言ってたな……)

 

そしてその瞬間ルイスは察し、追求するのを辞めた。わざわざここまでして隠そうとしてきたのだ。それならばこの場では気付かないふりを通して、味の感想を言う時にちょっと遠回しに手作りお菓子をくれてありがとうと伝えればいいかと考える。

 

「それでは、私はここで失礼させていただきます」

 

「あら?なにかこの後予定でもあるの?」

 

「ええ、父とその隊員の人達にこれを渡しに行く予定でして」

 

「あー……」

 

ルイスがまだ膨らんでいるカバンを見せるとアレクシアは納得したような、そしてどこか呆れたような表情を向ける。

 

「それでは、失礼します」

 

ルイスはそう言うと、そのまま部屋の外へ出ていった。

 

 

 

 

アレクシアから貰った手作りのカップケーキは甘く、ルイス個人としてはかなり好きな味であった。

 

 

 

 

 


 

バレンタインは自分で買ったものがあるので0じゃないです。ブラックサンダーうめえ。

 

キャラ紹介

 

ルイス

本作オリ主。お菓子作りの腕前もそれなりに高く、子供時代にはイプシロンにお菓子作りを教えたこともあったとか。デルタからはトリュフ、アンナからはバウムクーヘン、アレクシアからはカップケーキを貰った。なお、送るお菓子の意味を全く知らない。

 

アレクシア

分からせ&曇らせ対象。当初はルイスが色んな女性から貰ってるのを見てぐちゃぐちゃにする予定だったが、流石に可哀想だったので没に。ルイスのためだけに2週間前からカップケーキを作ったり、さりげなく渡す練習をした。一応送るお菓子の意味は知っているため、ルイスから送られたお菓子であるマカロンを見て顔を真っ赤にした。

 

デルタ

今回はアプリ版のバレンタインイベの方に行っていたので出番はなし。ルイスから直接もらえると思ってたのにゼータを通して渡されたことで脳みそを破壊された。 ルイスのベッドに潜り込むまで○日。ちなみにルイスからはマフィンを貰った。

 

アイリス

マドレーヌ美味しい。ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"(๑´ㅂ`๑)ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹"ŧ‹

 

アンナ

オリキャラ。ルイスと昼食デートできたものの、そのせいで恋敵に塩を送るような形になってしまった。ルイスからはガトーショコラを貰った。基本的にはガンガンいこうぜだが、攻められると弱い。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからおまけです。とある人物の前世に関係する話になってくるので、嫌な方はここでブラウザバックして下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──木漏れ日が差す深い森の中、歴史から抹消された英雄が使ったとされる、翡翠色の刀身を持つ刀が刺さった台座の近くに一人の頭から獣の耳を生やし、腰から尻尾を生やした女性が現れる。

 

その女性は刀の近くによると懐から薄い長方形の箱を取り出し、台座の近くに置く。

 

「……今日、バレンタインデーだったから買ってきたよ。本当は手作りが良かったけど、ボクたちが住んでた屋敷は新しい代の子たちが住んでたからキッチン使えなくてさ……時が経つのって早いよね」

 

女性は寂しそうに笑うと、腰に差していた刀を取ると台座に刺さっている刀を見る。

 

「……もう、ボクが知ってる人間たちはみんないなくなっちゃった。死に目に立ち会えただけマシなのは分かってるけど、やっぱり寂しいよ……!」

 

彼女は自分の中にある全てを絞り出すかのように声を上げていく。

 

『はい、お前らの分のやつね』

 

『わ~!ありがとね!』

 

『ところでさ、こいつにチョコレートが混ざったお菓子ってあげてもいいのか?』

 

『え~?私より年上なのにそんなこと知らn『黙れメスガキ』ふんぎゃろ』

 

『……この子なら大丈夫よ。魔物は普通の狼とは違って有毒にはならないから』

 

『そなの?それならこれ食べていいぞ!』

 

女性の脳裏にはかつて大事な人たちと過ごした暖かい思い出が過ぎっていく。

 

女性は目からポロポロと大きな涙を零す。

 

「ねえ、なんで最後の戦いの時ボクを置いていったの……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ご主人……!」

 

 

女性の腰のベルトにかかっている「ポチすけ」と書かれたボロボロの首輪が、軽く揺れた。




キャラ紹介

謎の女性
ポチすけと書かれた首輪を持っていた謎の女性。発言や容姿からして人間ではないようだが……?なお、首輪は不朽の魔法がかかっており、魔法を掛けた本人が死んでも誰かが魔力を流す限り魔法がとけることはない。

歴史から抹消された英雄
とある代の勇者パーティにいたはずの「英雄」。彼は魔法を使えないメンバーのために努力を重ね殆どの魔法を覚え、更には魔物と心を通わし、多くの戦場を駆け抜けた。最後には勇者を守った正に「英雄」に相応しい人物であったが、ほとんどの国が出している歴史書では彼はいなかったことにされ、代わりにとある国の姫が魔物を初めて使役した賢者としてその代の勇者パーティに入っている。


需要があるみたいなのでおまけで追加しました。

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)
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