アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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遅くなってしまい、大変申し訳ございません。
今回かなり難産でした……

そして誤字脱字報告ありがとうございます。


24冊目

 

「人質のためにも今すぐにでも突入すべきです!」

 

「アイリス様、お言葉ですが敵の狙いが分かっていない上に、魔力が扱えない状況では無謀です!」

 

アイリスと増援としてやってきた部隊長の口論を聞いていたアレクシアは、自分でも驚く程に冷静であった。

増援が来るまでは学園内にいるルイスのことで頭がいっぱいになり、パニックを起こしてもおかしくないぐらい頭の中がグチャグチャであったが、焦るアイリスと突入を渋る部隊長の口論を聞いてからは、客観的に自分を見ることが出来、周りの様子を見れる程には落ち着くことが出来た。

 

「この調子だと、突入にはかなり時間がかかりそうだね」

 

そんなアレクシアにどこか疲れたような声でアイクが話しかけた。彼女の記憶が確かであれば、彼は突入部隊の編成を先程アイリスに任されたばかりだったはずである。

疑問には思うものの、まだ不安な気持ちは残っているため、それを少しでも感じないようにとアレクシアはアイクの方へ向き直った。

 

「アイクさん。部隊の編成はもう終わったんですか?」

 

「うん。一応今いる中での精鋭を選んだつもりだけど……魔力が使えないと考えると正直今突入することには不安なところがあるかな」

 

「……小隊長である人がそれ言っていいんですか?」

 

「だからこそだよ。僕は部下を死なせたくないからね」

 

「……」

 

アイクの決意を込めた言葉を聞いたアレクシアが思わず固まった直後。

 

「お取り込み中のところ失礼します!」

 

学園前で様子を伺っていた騎士の1人が飛び込んできた。息が上がっているところから、全力で走ってきたのだろう。ただならぬ雰囲気にアイリスと部隊長は口論を止め、アイリスは走ってきた騎士に続きを促す。

 

「何事だ?」

 

「先程、シャドウガーデンのエルと名乗った人物が──」

 

「そんなに遅くては助けられる命も助けられんぞ」

 

『っ!?』

 

その騎士が話そうとしたタイミングで急に割り込んできた黒ずくめのフードを被った男の姿を見て全員が驚き、そして戦闘態勢に入った。それもそうだろう、なぜならアイリスたちは男の接近にまったく気が付かなかったのだ。それに加えて、男が両肩に担いでいる2人が更にアイリスたちの警戒心を掻き立てた。

 

「グレンにマルコ……あなたがやったの?」

 

「いや、私ではない。それよりもこの2人の治療を早くしろ。応急処置はしたが、早急に本格的に治療しないとダメだ」

 

アイリスの問いに答えながら男はグレンとマルコを丁寧に地面に下ろすと、もう用はないと言わんばかりに背を向けた。

 

「待て!お前の目的はなんだ?学園を占拠したのはお前たちなのか?」

 

「……私らの目的は陰に潜むものを狩ること。そして学園を占拠したのは私たちではない……アイリス王女、敵を見誤るなよ」

 

「っ!話はまだ──!」

 

「時間切れだ。私も忙しいのでな」

 

「ぐっ!?」

 

エルは呼び止めようとするアイリスを軽く一瞥してから、指を鳴らすとそこから強烈な光が放たれ思わずアイリス達は目を閉じてしまった。そして光が収まり目を開けると、そこにはまるで最初から居なかったかのようにエルの姿はなかった。

 

「クソッ!」

 

「アイリス様、今は悔やむよりもグレンさんたちの治療を──」

 

(…………)

 

アイクがアイリスに進言し、それに伴って慌て始める現場の中、アレクシアは1つ気になっていたことがあった。それはエルという青年の存在とその実力の一端を前から知っていたこと、アイリスたちより比較的冷静に周りを見れたことだからこそ、気がついてしまったことであった。

 

(……なんであの人はエルがいきなり現れた時、動揺こそしてたのに──)

 

 

──全く警戒心を抱いていなかったのか。

 

 

 

 

 

****

 

 

 

 

 

「……まだ戻っていないのか」

 

学園の大講堂に出てきた仮面を被った黒ずくめの姿をした男は、部下であるレックスがまだ戻ってこないことに悪態をついた。

経過時間としてはもう戻ってきてもおかしくないというのに、未だに戻ってきて来ないところを見るに道草を食っているのだろう、と男は判断し大講堂の奥にある控え室に戻る。

 

「上の者がそう分かりやすく不満気な雰囲気を出すのはやめておけ。士気に関わるからな」

 

するとそこには入る前には居なかったはずの仮面をつけた黒ずくめの女性がソファーに座っており、コーヒーが入っているカップを片手に寛ぎながら男の態度を指摘した。

男は忌々しそうな目線を向けながら、イラつきを隠さずに問いをかける。

 

「貴様……いつからいた?」

 

「つい先程だ。何となく寄ってみたんだが、面白いことになってるじゃないか」

 

「……茶化しに来たのなら──」

 

「レックスが殺られた」

 

男が言うよりも早くその女性は男にとっては信じ難い情報をなんて事ないように告げる。

 

「……なんだと?」

 

「右腕を斬り落とされてから心臓を一突き。しかも室内の血の量からして殺した相手は騎士団の雑魚2匹ではなく、別の第三者でそいつは無傷と見ていい。相手はそれなりの手練だな……中々楽しめそうだ」

 

「……っ」

 

女性が出した仮面越しからでも伝わる殺気と歓喜の感情に男は動揺した。男は彼女のことを前から知ってはいるものの、ここまで分かりやすく感情を出したことは今まで無かったからだ。

 

「……それで、貴様はこの後どうする?」

 

「レックスを討ったやつと遊ばせてもらう。まあ、さっき講堂にいる奴らを見たからある程度予想は立てられたがな。ああ、それと貴様の計画には干渉はしないつもりだから安心しろ」

 

「……そうか」

 

「では私はもう出る。あと出来たら次来るまでに紅茶の茶葉を置いてくれ、コーヒーはあんまり好きじゃないのでな」

 

女性は言いたいことだけ言うと大講堂の方へ続くドアへと向かい、そのまま部屋を出ていった。それを見届けた男は長いため息を吐く。

先程の女性は実力だけは組織内では最強とも言える人物ではあったが、どこか近寄り難い雰囲気や組織に加入した経緯も相まってあまり会いたくない人物でもあった。そして、何よりも。

 

(あの女、見た目こそ10代後半から20代前半ではあるのに、そう思えないほど人格が完成しきっている)

 

それが不気味であった。

 

 

 

****

 

 

 

(……やっぱりそれなりに親しい人に敵意を向けられると結構堪えるな)

 

グレンとマルコを門にいたアイリスたちに引き渡したルイスは、学園内にある外の倉庫付近で変装を解いてため息を吐いた。前世で精神を乗っ取られ操られた仲間に剣を向けられた経験はあったが、それでもルイスにとっては慣れないものであった。

 

(さてと、とりあえずまだ捕まってないらしい女子生徒の捜索をしつつ敵も減らしてシドと合流。その後は魔力が扱えない原因を解明して、それから事件の解決か……しかも騎士団が動く前に片をつける必要があると……ハードスケジュールだな)

 

「離して!」

 

「………」

 

ルイスはやるべき事の多さに内心でため息を深く吐いていると、ルイスの耳に女性のものと思われる声が聞こえた。しかも内容的に、何者かに対して抵抗していると思われているため、急ぐ必要がある。

ルイスは音を立てないように注意しながら、声がした方向へ全力で走り出す。

その数秒後には見覚えのある女子生徒の腕を掴んで強引に連れていこうとする男と周りを見ている男の姿が入り、ルイスは後先考えず魔力を思いっきり込めて周りを見渡している男に対して強烈な飛び蹴りを浴びせた。

 

「なっ、おま──」

 

「黙れ」

 

「がっ!」

 

「至近距離なら剣より格闘術の方が早い。覚えておけ」

 

飛び蹴りを食らった男は声を出す前に吹き飛ばされ、それを1拍おいて気づいたもう1人が剣に手をかける前にルイスは鳩尾に拳を叩き込み、止めに顎を蹴りあげて気絶させた。

ルイス自身、本当であれば剣を使って確実に仕留めたかったところであるが、血に慣れていないであろう女子生徒にトラウマを植え付ける訳にはいかなかったため、格闘術で倒すことになった。

周囲を見渡し、念には念を込めて魔力探知を行った上で周辺に他の人間が居ないのを確認すると、呆然としている女子生徒──アンナへ声をかける。

 

「大丈夫ですか、アンナ先ぱ……アンナ先輩?」

 

「ひっぐ……ぐすっ……」

 

声をかけた瞬間に抱きつかれたルイスは戸惑いの声をあげるも、アンナが嗚咽を漏らしていたことに気づいた。普通に考えてみれば、アンナは争い事なんかに耐性がない普通の女性であり、しかも先程アンナに対して迫っていた男たちの特徴が前に彼女を殺そうとした人物と同じであれば恐怖を感じるのは当然の事だ。

 

「……大丈夫ですよ、もう怖い人はいませんから」

 

「……ぐすっ」

 

「大丈夫、あなたのことは俺が守りますから……」

 

ルイスはアンナの背に自分の腕を回すと、幼い子供をあやすかのように彼女の背中を優しく叩き、穏やかな口調で話しかけ続けた。

 

 

 

*****

 

 

 

 

「私は後輩に父性を感じたダメな先輩です……」

 

「で、結果ああなったと」

 

「うん……良かれと思ってやったのにどうして……」

 

僕は部屋の隅っこで体育座りして懺悔しているアンナ先輩という女子生徒と、頭を抱えるルイスを見てため息を吐いた。

僕とシェリーが副学園長室に入ってから1分も経たない内にあの二人が入ってきたんだけど、その時からアンナ先輩はあんな感じだった。まあ、理由を聞いたらある程度は分かったけども。というより、僕の相棒ことルイスはやはり主人公ムーブが上手い。知らないうちに新しい女性を堕としてヒロインにするとか、正しく主人公だ。

だから、僕の考えだと今回のイベントも本来はルイスとシェリー、そして恐らくアンナ先輩の3人が進めるべきはず。しかし、アンナ先輩は暫く使えなさそうだし、ちょっと疲れてる感じのルイスに全てを押し付けるのは流石に可哀想だ。

乗り気では無いけど、ここも手伝ってあげるべきなんだろう。あくまでゲームでいうところの名無しのお助けモブって感じで貫かせてもらうけども。

 

「ありました」

 

方針を決めた直後、シェリーが机の向こうから資料を抱えて戻ってきた。因みに彼女はルイスとアンナの事を前から知っていたみたいで、僕が先程の結論に至ったのもこれが理由になってたりする。

 

「えっと……アンナさんはそのままでいいんですか?」

 

「そっとしておいてください」

 

「わ、分かりました……現在学園は『強欲の瞳』という効果範囲にある魔剣士や魔力体から魔力を吸収して、一時的に溜め込むことが出来るアーティファクトの効果を受けています」

 

あ、ルイスが魔力を吸収するって説明聞いて嫌そうな顔した。前世でそれ関連で嫌な思い出あったのかな?

って、それよりも気になることがあったな。

 

「でもさ、黒ずくめの人達は魔力を使ってたよ?」

 

「そういえばそうだったな……シェリー先輩、なんでか分かります?」

 

「吸収させたくない魔力の波長を記憶させることも出来るんです。そうでなくては『強欲の瞳』を使用している本人の魔力まで吸収されてしまいますから」

 

「「なるほど」」

 

「シェリーちゃん、教え方上手いよね……そういえばその説明だと記憶させていない魔力なら何でも吸収しちゃうってことになるの?」

 

おっ、アンナ先輩復活した。

僕も考えていたことを質問したあたり、ただ黙って落ち込んでいたわけでは無かったみたいだ。

 

「どうでしょう……感知出来ない程の微細な魔力や、容量を超える強大な魔力なんかは吸収出来ないと思います。まあ、普通の人間にそんな魔力は使えないので無縁な話ですね」

 

なるほど、だから僕とルイスは魔力を使えるわけか。

 

「次に『強欲の瞳』の厄介なところは、魔力を溜め込むだけ溜め込むと一気に解放してしまう点にあるんです。膨大な魔力は爆弾と同じ、解放されてしまえばこの学園は跡形も無く消えてしまうでしょう」

 

「消える!?え、そんな危険な物を学園を占拠した奴ら使ってるの?」

 

「はい。だからこそお父様は『強欲の瞳』を国に預けて管理をしたのですが……」

 

「盗まれたとか、実はもう1つあったとか?」

 

「いや、今はその話をしたところで意味は無い。それにこれで黒ずくめたちの狙いはハッキリしたな」

 

「魔力を集めるのが狙いなら『強欲の瞳』があるのは皆が集められている大講堂ってことだね……でもなんかおかしい気がする……」

 

アンナ先輩の呟きが耳に入るがそれはスルーしよう。

 

「それで、解決策はあるの?」

 

「あ、はい!あります!」

 

僕の問いに対してシェリーは手を前に出して開く。そこには銀色に輝くペンダントのようなものがあった。

 

「これは『強欲の瞳』の制御装置です。解析した事で分かったんですが、本来『強欲の瞳』はこのアーティファクトを使い、魔力を長期保存するための物だったんです」

 

「「「長期保存?」」」

 

「魔力の解放を止められるってことです。凄いんですよ!この性能を上手く使えば──」

 

「と、取り敢えず!それを使えば魔力を使えない事態を何とかできるってことでいいんだよね?」

 

「あ、はい……」

 

アンナ先輩ナイス。止めなかったら多分シェリーはそのまま延々と話し続けてたと思うからね。

 

「それでは、そのアーティファクトを使って『強欲の瞳』の効果を打ち消し、その後大講堂の生徒と一緒に敵を殲滅という流れでしょうか」

 

「あ、その実はまだ調整が終わってなくて……しかもそれに必要な道具も全部研究室に置いてきてしまっていて……」

 

「そうでしたか……それなら俺とシドで取りに行ってきます」

 

丁度トイレ行きたいと思ってたから僕も一緒に行くことにしてくれるなんて、ルイスはやっぱり頼れる相棒だなぁ。

 

「え、シドくんもですか……?」

 

「その、出来たらどちらか1人は残ってくれた方が安心なんだけど……」

 

おっと、女子2名から反対の意見が出ちゃったか。うーん、これはどうしようかな。

と思っていたらルイスが先に動いた。

 

「確かにそうですね。そしたらシド、お前に道具の回収頼んでもいいか?本当なら俺が行った方がいいとは思うんだが、『紅の騎士団』の1人としてはシェリーさんの身の安全が最優先しないといけないからさ……」

 

「わかった、それなら行ってくるよ。丁度トイレ行きたかったしね」

 

「シドくん……」

 

ルイスのパスのお陰で何とかなったかな。

まあ、シェリーの顔を見た後に僕の方を信じられないものを見るかのように見てきたルイスはスルーしよう。

 

「それでは、お願いしますね。これがメモです」

 

「うん、それじゃあ行ってくるね」

 

 

 

****

 

 

 

「できました!」

 

「「「おお~」」」

 

シドがシェリーからのお使いを済ませ、外が暗い夜に包まれた頃に『強欲の瞳』の制御装置の調整が終わり、それを待っていたルイスたちは感嘆の声をあげる。

これは暗に彼らの作戦が次の段階に入ったことを示しており、次に取る手段も既に打ち合わせていた。

 

「えっと……確かこれとこれ……あとこれだったかな?」

 

シェリーは室内にある本棚の本を数冊抜き取る。するとその本棚は回転し、奥に地下への階段が現れた。

 

「すごいね」

 

「さっき聞いてたけど、こういうの本当にあるんだ……」

 

(……魔王軍の砦にあった隠し通路から雌のオークが飛びかかってきた時のこと思い出しちゃった)

 

「……お父様、必ず助け出してみせます」

 

三者三様の反応をする中、シェリーは決意を込めた様に手にある制御装置を握りしめる。

 

「お父様、ご無事だといいわね」

 

「はい……あの、シドくん道具を持ってきてくれてありがとうございました」

 

「ほんの少し助けただけさ。これ以上はもう僕に手伝えることはない。ここからは君の力で、世界を救ってくれ」

 

「……取り敢えず、シドとアンナ先輩はさっき打ち合わせた通り、これから5分経つまでは動かないで下さい。まあ、トイレは行ってもいいですが5分たったら互いを待たずにさっさと脱出してくださいね?」

 

「うん、分かった」

 

「分かったよ……ルイスくん、どうか無事で……」

 

「ありがとうございます……それではシェリー先輩、行きましょう」

 

「はい。それでは、皆さんまた!」

 

ルイスはシェリーと一緒に隠し通路の奥へと進み、シドとアンナはそれを見送ったのであった。

 

 

 

****

 

 

 

──違和感がある。

 

ルイスとシェリーが隠し通路の奥へと進み、その10数秒後にシドがトイレに行き、1人部屋に残っていたアンナは考え事をしていた。

これまで得た情報を彼女は改めて整理する。

 

(まず、『強欲の瞳』っていうのは元々はシェリーちゃんのお母様が研究していたもので、お母様の死後シェリーちゃんが研究を継いだ。そしてその途中で『強欲の瞳』の性能と危険性に気がついて副学園長に国へ管理するようにお願いし預けたわけだけど……)

 

アンナが引っかかっていることの一つが正にそこだった。

国が管理しているはずの『強欲の瞳』を何故テロリストたちが持っているのか、そのことに異様な違和感を彼女は感じていた。

 

(そんな危険な物が盗まれるほど杜撰な管理はしないはず。そうすると国の内部に協力者がいた事になるけど、それで盗んだとしても騒ぎにはなるはず。少なくともアイリス様が設立した騎士団にいるルイスくんが『強欲の瞳』の存在を知らないはずがないし、もう少し反応するはず。だから盗まれたっていうのはなし。そうすると、同じようなものがあったってことになるけど……)

 

──果たしてそんな都合のいいことがあるのだろうか?

そもそもアーティファクト自体、貴重なものであるため同じような物がたまたまあるという可能性は0では無いがかなり低い。

 

そして仮に同じようなものがあったとしてもまだ疑問は残っていた。

 

(()()()()()が分からない。生徒を人質にして金銭とかを要求するために学園を襲ったなら分かる。でもそんな素振りは無さそうだし、かといって『強欲の瞳』の性能を使って学園を吹き飛ばすのは正直メリットがない。吹き飛ばすにしてもやるなら城とかの方が国を乗っ取るには都合がいい。この、目的さえ分かれば少しは進展するんだけど……ダメだ、分からないや)

 

アンナはため息を吐きながらこめかみを抑える。あと一歩まで来ているような気がするのに、その一歩が遠い。

もう諦めてしまおうか、とアンナは一瞬考えるもそれをすぐに思考から消した。何故なら、漠然とではあるがこの違和感を放っておくととてつもなくまずいことが起こる予感がするからだ。

 

(でもこのまま考えてもなぁ……そういえば『強欲の瞳』は魔力を吸収して溜め込むことができるんだっけ。確かにそれを上手く利用すれば色々と応用できそ……う……)

 

アンナはシェリーの説明を思い出したところで目を見開き、同時に彼女の思考がスムーズに回り出した

 

(もし、今回のテロリストの目的が『強欲の瞳』に()()()()()()()()()()()ならあいつらの行動は納得が行く。それにそもそも最初から『強欲の瞳』が国に預けられてなかったとしたら……!)

 

アンナは最終的に信じたくない答えに辿り着くと、急いで紙にシドへの走り書きをし、カンテラを手にシェリーたちが通って行った隠し通路へと駆け込み全力で走る。

 

(あいつらの本当の目的は『強欲の瞳』に魔力の吸収をさせて、その魔力を制御装置を使って保存すること!学園を襲ったのはそのために魔剣士だけじゃなく大勢の人間がいて、尚且つ制御装置はシェリーちゃんが持っていたからだ!だから首謀者はあの人……!)

 

埃で出来た足跡を見ながらアンナは手遅れになる前に必死に走る。もし、自分の推理が正しければ──

 

「急がないと……!きゃっ!?」

 

自分を友人と読んだ女の子と、想い人のためち足を動かす彼女の耳に突然轟音が聞こえてきた。その音におもわず悲鳴をあげる。

 

「そんなに遠くなかったとは思うけど、一体何が……?」

 

アンナは何が起こっているのかという不安と恐怖に足が震え出すも、意を決して、足跡を頼りにまた走り出すのであった。




キャラ紹介

ルイス
覚悟していたとはいえ、アイリス様達に警戒されてちょっとショック。
また、アンナの目の前でトマトブシャー(意味深)しないように配慮できたのは前世の経験のお陰。
シドが陰の実力者ムーブしたいというのを察知して、それっぽい理由でシドとアンナを副学園長室に残した。ちなみに前世で隠し通路から飛びかかってきた雌オークは軽くトラウマ。

シド
どうして今回のイベントのメインキャラが最初から一緒に行動してないの?それはそれとして、陰の実力者ムーブ出来るようにしてくれたルイスには感謝。その調子で頑張って!

シェリー
ゆるふわ系の人。シドに対して淡い気持ちを抱いており、本人は隠しているつもりだが他人の恋には察しのいいルイスと、普通に察しのいいアンナには即バレした。

アンナ
推理で黒幕やその目的に辿り着けるほど頭の回転は早く、ひらめきもある。探偵になれる。

アレクシア
ルイスのことは心配だけどルイスなら大丈夫だと信じてる(大丈夫だよね?)

アイリス
エルを含めシャドウガーデンの狙いが全く分からない。それはそれとしてグレンとマルコの両名がやられたことを知ったから、未来の義弟候補のルイスのことが心配。

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)

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