アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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誤字脱字報告ありがとうございます!そして遅くなってしまい、大変すみませんでした!



余談ですがルイスのイメージをキャラメイカーの「はりねず版男子メーカー2」を使用させてもらい作らせて頂きました。
あらすじの方にも載せていますが一応こちらにも載せさせていただきます。


【挿絵表示】




25冊目

アンナが地下通路にて轟音を聞く前。

その頃にはシェリーが制御装置を講堂に向かって投げ入れ、人質であった生徒たちが反撃し出してから数分も経たぬうちにトイレを理由に上手く抜け出したシャドウに扮したシドが講堂の天井を突破して乱入しており、加えてそれを合図にシャドウガーデンの構成員も中に入りすぐさまディアボロス教団との戦闘という名の蹂躙が始まっていた。

 

(凄いな、うちの子たちは……ここまで強くしてくれたラムダ教官には頭が上がらないな)

 

それを見ていたルイスはここまでシャドウガーデンのメンバーを強くしてくれたラムダに感謝の気持ちを抱いていた。尤もこのことを本人に伝えた場合、「そんな、エル様には指導のことで有意義な意見も貰いましたし、その上手伝ってくださったのですから恐れ多いです!」と慌てて言われるのだが。

 

(それにしても、デルタは相変わらず凄いな……対集団戦の方もある程度は教えてはいたけど、ここまで上手くできるようになってるとは思わなかったな……っ!)

 

ルイスは下で一撃でディアボロス教団の構成員を倒していくデルタを見ながら内心苦笑いを浮かべ、その直後とあることに気がつくと隣で呆然としているシェリーのことを片手で抱えるように持った。

 

「ふぇ!?る、ルイスくん!?」

 

「この場を離れます。口閉じててくださいね」

 

シェリーがどういうことかと聞こうとしたが、どこからか起こった爆発と講堂を包み込むように炎が燃え上がったことによってそれは出来なかった。

ルイスはシェリーを抱えた状態で元の方向へ来た隠し通路へ滑り込み、自分たちを包みこもうとしていた炎から難を逃れた。

 

「た、助かりました……ルイスくん、ありがとうございます!」

 

「いえ、気にしないでください」

 

シェリーのお礼を聞いてルイスは間に合ったことにほっとしつつも、状況があまり好ましくないことになってるのに内心舌打ちをする。

ルイズとしてはなるべく早くシェリーを外にいる騎士団に渡したかった。だが副学園長室まで戻るというのは下策すぎる上、下手すれば今回の事件の黒幕に出会う可能性もある。それに加えて火の回りが予想以上に早そうだったため、ちんたらしてたら火のせいで脱出できませんでしたというオチになりかねない。

 

(仕方ないか)

 

ルイスは内心でレイたちのことを笑えないな、と思いながらシェリーを下ろすと彼女に質問を投げかけた。

 

「シェリー先輩、ここから最短で廊下に出れるところはありますか?」

 

「え?ありますけど……」

 

「ふむ……失礼を承知でもう1つ聞きたいのですが壁などを無視した直線距離だとどの方角ですか?」

 

「それならこちらですけど……」

 

「ありがとうございます。ではシェリー先輩、少し下がっててください」

 

「は、はい……」

 

ルイスはシェリーが下がったのを確認してから魔力を右手に集める。

 

「え?ま、まさかルイスくん!?」

 

そしてそれを見たシェリーはルイスが何をしようとしているのか察し、慌てて止めようとするも──

 

「はあっ!!」

 

その直後にルイスの無駄のないストレートが壁にぶつけられ、轟音ともに壁は吹き飛び人1人なら余裕で通れるほどの穴を空けた。

 

「時間が無い時はこれしかないのがほんとなぁ……シェリー先輩、行きま……シェリー先輩?」

 

「ルイスくんって乱暴な人なんですね……」

 

「心外です」

 

本当に心外だとルイスは思いながらも壁をどんどんぶち抜いていき、そして壊した壁が4枚目になったところで2人は隠し通路から出た。

 

(思っったより壁ありましたね。ここは2階か……火の手は匂いからしてそんなに余裕はない。階段は東口の方が近いしそこからなら出口もそんなに遠くない)

 

「ううっ、お義父様になんて言えば……」

 

「ちゃんと私から説明するので安心してください。さあ、早く脱出しま──っ!」

 

 

ルイスのあんまりな行動によって隠し通路が隠し通路でなくなったことに、義父になんて説明すればいいのかと悩むシェリーに声をかけた直後、ルイスはシェリーを庇うように前に立つと剣を抜いてこちらに猛スピードで迫ってくる黒い影に向かって剣を振るった。

 

その直後、ガキン!という金属と金属がぶつかり合う甲高い音が通路の中を響き、黒い影はそのままルイスを通り過ぎて5m先のところで立ち止まった。

 

「きゃあ!?」

 

「ほう、レックスなら反応できない攻撃を防ぐとはな……」

 

「お前は……!」

 

悲鳴を上げてしゃがむシェリーをよそにルイスは黒い影──否黒ずくめの格好をした人物を見て冷や汗を流した。先程受けた剣と女性の声は忘れたくても忘れられないほどルイスの脳裏に焼き付いている。

 

「久しぶりだな、少年」

 

その人物はまるで最近会った長年の友人のような話し方でルイスに声をかけた。しかし、声をかけられた側のルイスからすれば溜まったものではなかった。

 

「……シェリー先輩、早く逃げてください」

 

「え?」

 

「いいから早く!あいつ相手だと貴方にまで気を配る余裕は無い!!」

 

「は、はい!どうか無事で……!」

 

ルイスはシェリーが慌てて後ろの階段に向かって走っていくのを音で察しつつも、目の前の女性から目を全く逸らさずに注視していた。

 

「まずはよく生きていた、と言うべきか」

 

「……シャドウガーデンっていう組織が運良く助けてくれただけだよ」

 

「ふむ、そしたら私の部下が助けたのかもしれんな」

 

「そしたら笑えない冗談だね、とんだマッチポンプだよ」

 

「そうかもしれんな」

 

二人の会話はそこで止まり、その直後互いの姿が消え1秒も経たぬ間に刀と剣がぶつかりあい、先程消えた2人の姿も現れた。

 

「なるほど、レックスを殺ったのはやはり貴様のようだな」

 

「俺が来た時にはもう死んでた、よっ!」

 

ルイスは女性の言葉を否定し押し返すと、その勢いのまま剣を叩きつけるもそれはあっさりと受け流されお返しと言わんばかりに一瞬のうちに女性の剣が1回振られたが、ルイスの目は斬撃が2つ自分へ迫っているのを捉えていた。

 

「くっ!」

 

ルイスは瞬時に剣を動かして2つの斬撃を防ぐも、その直後に今度は3つの斬撃が放たれたように見えすぐさま防御の構えを取り1つ目の斬撃を受け流し、2つ目を防ぎ、そして最後の3つ目を弾くように防いだ。しかし、その隙を女性が見逃すはずもなく、ルイスの腹に蹴りを入れそのまま隠し通路へ続く穴へと吹き飛ばした。

 

「私の剣を防いだ褒美も兼ねて()()()思惑に乗ってやったが……どう出る?」

 

女性は不敵な笑みを浮かべながら、ルイスがどう出てくるのか楽しみに待った。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

(スライムスーツに加えて魔力の防護すら貫通してくるなんて、パワーもだけど技術もバケモノクラスだな……でも、賭けには勝った)

 

ルイスは傷ついた内臓を魔力を使って癒しながら立ち上がる。

彼は最初からこのような状況になるのを狙っていた。あの女性の実力はルイスの前世込みで考えても、自身の師を除けば、いやその師を入れても1番強い相手と断言出来る。彼女相手にまともに戦えるのは今世だとシドか自分くらいで、七陰でもアルファとデルタなら辛うじて30秒ほど持ち堪えられるかどうか、とルイスは推測していた。

そしてこの推測が当たっていれば、万が一あの女性に会った場合デルタたちは殺されてしまう。

 

故にルイスはここであの女性を全力で討つと決断した。

 

だが、そのために普通の剣では分が悪すぎた。先程まで使っていた剣は以前女性と戦った時より品質は良くなってはいるものの、たった数回受けただけでヒビが入っており、あと2回も受ければ砕け散るだろうとルイスは予想していた。

だからこそ、女性と渡り合うには彼が持つ武器の中で尤も耐久力があるスライムソードが必須であり、それには魔剣士の1人であるルイス・エアではなくシャドウガーデンのエルになる必要があった。だが、あの場面でスライムソードを使うとシェリーに見られてしまう可能性があったため使うことが出来ず、かと言って女性がスライムソードを出す隙を作ってくれる可能性はなかったためこうして姿を1度消す必要があった。

尤もあの女性は自分の考えに気づいていただろうとルイスは考える。それでも彼女なら自分が楽しむためにこちらの考えに乗ってくるだろうと、ルイスはそんな彼女の自信と慢心の2つに賭けた。

 

結果は無事にその賭けに勝ち、気になることはあれど後はインナーとして纏っていたスライムスーツをエルとしての服装にしてあの女性を倒すだけである。

ルイスは早速魔力を操作してスライムスーツを全身に纏い、念の為フードで自身の顔を隠すと手に刀の形をしたスライムソードを作り、足に必要最低限の力を入れて床を蹴る。

女性は突如穴から飛び出してきたエルの攻撃を受け止め鍔迫り合いの状態に持ち込んだ直後、その剣から伝わる本気の殺意を感じ取り笑みを浮かべ、同時にルイスと目の前の男の剣が同一であることを瞬時に理解した。

 

「なるほど、このためにわざわざ蹴飛ばされに来たわけか!いいぞエル、この私……『凶星』ネメシスの渇きを潤してみろ!」

 

漆黒の刀と白銀の刀がぶつかり合い火花を散らす。

とてつもない速さで聞こえる剣戟の音は永遠に続くのではないかと錯覚するぐらい、全く途絶える気配がない。

そしてそれは女性のあらゆる斬撃をエルが全て凌いでいるという事実でもあった。

 

だからこそネメシスはとある違和感に気がついた。

彼女は先程から自分の攻撃が全て防がれているのに気づいてから、所々フェイントを混ぜたり、スピードの緩急や足さばきを絶妙なタイミングでズラしたりしているのだが、自身の刀を異様に刃を通さない黒い外套に刃を当てるのが精々であまり通用していない。

 

(どういうことだ?まるで()()()()()()()()()()、いや()()()()()()()()()()ような感覚だ……ここまで防がれる可能性として挙げられるのいくつかあるが……ふむ、ここは試してみるか)

 

ネメシスはこの違和感を突き止めるために距離を大幅にとった。

これから放つ一撃はまだ教団の人間にすら見せていないものだ。先程感じた違和感から立てた推測が当たっているかどうかを確認するには、これが手っ取り早い。

彼女は左手に魔力を練りながら目の前のエルがどう出るか、楽しみでしょうがなかった。

 

 

 

刀というのは近距離で戦うことを想定されている武器だ。そのためお互いの間合いであった距離を離すというのは仕切り直しとしてはありではある。

しかしエルの長年の戦闘経験と直感がそうではないと警告していた。距離を離すという行為は仕切り直し以外にも取られることがある。

そう、例えば新たな攻撃を加えるために必要だった場合が正にそうだ。

 

(手に魔力を集めてる?……まさか!?)

 

エルはネメシスがしようとしていることをすぐに察知した。何故ならそれは、前世の自分がよく使っていた技の発動準備に酷似していたからだ。

可能であるならば魔力の収束を阻止したいところではあるが、阻止する前に至近距離で放たれたらスライムスーツの防護を貫通するのは必然。

ならば取る手段は回避ではあるが、もしそれが原因で外にいる騎士団やデルタたちが来たらかなり厳しい戦いになるため却下。

回避の手段は取れず、かといって剣を使ってはじき飛ばしてしまえば外にバレてしまう可能性がある。防ぐにしても今から防御の姿勢をとって間に合うかはギリギリだ。

 

ならばこちらも同じもので迎撃するしかない。

 

「ちっ……!」

 

エルは魔力で自身の身体能力と視力をさらに強化し、更に左手とスライムソードに魔力を収束させる。

 

「さあ、どう凌ぐか見せてもらおうか……はっ!」

 

それと同時に紫色の光弾が連続で2つがネメシスの手から放たれ、エルを貫かんと廊下を抉りながら凄まじい速さで迫る。

そしてエルはその光弾2つを見て再度目を見開くもすぐに意識を切り替え、光弾を見据える。

 

一発目。

──左手に溜めていた魔力を4割使って魔力弾を放ち相殺する。

 

二発目。

──先程より大きい光弾のため左手に残っている魔力を全部使って魔力弾を放ち迎撃する。

 

そして三発目。

──予想通りこちらが魔力弾に対応している間に放たれた紫色の魔力の斬撃波を、前世でもやったようにスライムソードを振り下ろし魔力の衝撃波によって打ち消す。

 

「やはりそう対処してきたか……!」

 

ネメシスはエルの対応を見て自身の予想通りだったと獰猛な笑みを浮かべる。

だが一方でエルの表情は強ばっていた。先程の三連撃は前世で自身の手札として多用した技であり、そして嫌という程叩き込まれたものであったせいで、ネメシスが誰なのかはっきりしてしまったからだ。

 

(これを使えるということは、やっぱり……!いや、今は()()()を倒すのが優先だ!)

 

しかしそう考える時間さえ惜しいと言わんばかりにエルは地面を蹴ってネメシスは接近し、強烈な刺突を放つ。ネメシスはそれを体を逸らして回避するも、エルは踏み込んだ片足を軸に回転し横に薙ぎ払う。しかしそれも容易く剣で受け止められ、そのまま鍔迫り合いになる前にネメシスは力任せに刀を振るいエルを吹き飛ばした。地に足をつけた状態で吹き飛ばされながらも、バランスを崩さないように堪えたエルは接近してきたネメシスの嵐のような斬撃を的確に防いではいるものの、内心穏やかではなかった。

力、技共に自分より上の相手ではあるが、彼女の剣技をよく()()()()()というアドバンテージのおかげでこうして互角に持ち込めている。だがそれをもってしても、五分五分に持ち込めるのがやっとというのが現状だ。そしてこの均衡も些細な事でも一瞬で崩れるのを、加えてその要因が起こりやすいのも自分の方だとエルは確信していた。

ただでさえ格上の相手をしているのにも関わらず、向こうはまともに食らえば魔力が練れなくなる毒を使っているためかすり傷を許容することも出来ず、加えて剣技が読めるとは言ってもデタラメな速さとパワーのせいで全神経を注ぐ必要があるため消耗はエルの方が激しい。

さらに付け加えると、この攻防をしている間に今彼らがいる校舎にも火の手が回り始めており、エルが壊した隠し通路の方からとある人物だと思われる魔力反応があることも踏まえると、あまり時間をかける訳にもいかない。

 

だからこそすぐに打開策を考えなければならないわけなのだが、先述したとある人物を巻き込む恐れがあるため思い切った手段が取れず苦戦していた。

 

「どうした、その程度では私を殺すことはできないぞ?」

 

「チッ……!」

 

ネメシスの煽るような発言にエルは舌打ちをつきながらも、意識は彼女の嵐のような斬撃に向けていた。そしてもう何度目かも分からないほどの斬撃を捌いた直後、エルの目は一瞬の隙を捉え勝つための糸筋をすぐに掴んだ。

 

「そこっ!」

 

瞬きする間すらあったか怪しい一瞬の隙に無理やりねじ込んだルイスの斬り上げをネメシスはバックステップで躱そうとしたが、すぐに悪寒を感じ身体を捻った。すると先程ネメシスがいた位置を伸びた漆黒の刃が通り過ぎ回避が間に合わなかった彼女の右腕を斬り飛ばした。

そしてエルはそのままスライムソードを上段に構え振り下ろそうとして──スライムソードを手放し、左肩を突き出すように体当たりを行った。

明らかに虚をついた攻撃であり、体当たりした直後にスライムスーツを変形させ、左肩から剣を出して突き刺す。それがエルがネメシスの隙を捉えてからすぐに導き出した必勝の道筋であった。

 

「お前ならそう来るだろうと思っていた!」

 

「なっ!?」

 

だが、その体当たりを女性はそう来ると知っていたように屈むとエルの襟首を左手で掴み、力任せに投げ飛ばした。

 

「くっ……」

 

エルは空中で体勢を立て直しながら着地する。投げられたせいで距離ができてしまったものの、片腕を切り落としたというのは変わりない。両手で武器を持てないというのは、武器を振るうスピードや威力が落ちる。油断は出来ないものの、状況はエルの方に傾いており彼もそれを理解した上で攻撃を仕掛けようと彼女に視線を向け、舌打ちをした。

 

「あの僅かな隙から勝ち筋を見つけるその目の良さと自身の装備を余すことなく使うその器用さ、賞賛に値する」

 

「……嫌味か?」

 

「まさか、素直に褒めてるだけだ」

 

エルは切り落としたはずのネメシスの右腕があるべき場所に戻っているのを見て、自身の想定が甘かったことを後悔する。魔力制御の練度によっては四肢をくっつけて治すことを彼はシャドウから聞いていたが、ネメシスがその域に達していることを考えていなかった。

 

「私としてはこのまま続けてもいいが……ここで退散するとしよう。この校舎もそろそろ限界みたいだし、『痩騎士』の方も終わったみたいだからな」

 

「……逃がすとでも?」

 

「このままやりあえば自分が負ける、というのを理解していないお前ではないだろう?」

 

「………」

 

それはこのまま戦い続けていた場合起こりうる1番高い可能性であった。そもそも、エルがネメシスの片腕を切り落とせたのはスライムソードという武器の特性を活かした初見殺しのおかげだ。初見殺しの手札が1枚減った上に、体力や集中力を消耗しているのはエルの方なため、このまま続けるのは得策ではない。だが、それでもエルには引けない理由があった。

 

「あなたを野放しにするわけにはいかない」

 

「安心しろ、別にお前の正体は報告せんし、お前の仲間と遭遇しても殺しはしないでおいてやる。それに、考えてみたらここでお前を殺したらまた退屈な日々を過ごす羽目になるからな……そらっ!」

 

「このてい……っ」

 

ネメシスが不意に左手から出された魔力弾。反応が僅かに遅れたエルはそれを躱そうとして、自分の後ろの壁の裏に魔力反応があることに気がついた。もし、エルがこのまま躱してしまえば魔力弾は壁を貫きその後ろにいるであろう人物をも貫くだろう。

だが、エルという人間は助けられる命を見捨てるということを選べない人間であった。彼はすぐさまスライムソードを新たに生成し、込められるだけの魔力を流し込み、魔力の斬撃波を飛ばして相殺することに成功したのだが。

 

「……撤退されたか」

 

魔力弾を飛ばしたネメシスの姿はもうそこにはなく、エルは自身の正体をバラしたのにも関わらず仕留めきれなかったこと悔やんだ。他にも考えるべきことはあるが、まずは壁の裏にいる人物の救出が先だと判断し、そちらの方へ向かおうとして──

 

「誰かいませんかーっ!?」

 

(どうして)

 

アイリスの声が聞こえたと同時に、タイミングの悪さにエルは思わず顔を上に向けて額に手を当てた。本来であれば隠し通路の中にいる人物を回収して外へ出ようと思っていたのだが、今からそんなことをすればアイリスと戦闘になる可能性が高い。

ここから逃走するのもありだが、そうするとルイス・エアとして帰還する方法がかなり限られてくる。

 

(待てよ、考えてみたらルイス・エアっていう人物はそこまで重要な人間じゃないよな?)

 

ふとエルはそう思った。ミドガル王国内部にも教団の手があるのは分かったが、いくら第2王女のとはいえ一介の従者であるルイスではあまり探りを入れることは出来ない。それにネメシスの言うことがあまり信用出来ないというのもあるし、彼女の言い分を信じたとしても「殺しはしない」という発言は「殺さない程度の怪我は負わせる」という風にも受け取れる。

それならばルイス・エアという人間はここで退場して、シャドウガーデンのエルとしてこの先生きていき、ネメシスの警戒とアルファたちの補助に回った方がいいのではないか。

 

と、エルがそこまで考えて早速死んだように痕跡を残そうとしたその時だった。

 

「ルイスーっ!いるなら返事しなさい!!」

 

「アレクシア……!?」

 

予想していなかった人物の声を聞いてエル(ルイス)は動揺した。後から学校に来る、という話は聞いてはいたもののまさか突撃してくるなんて全く思っていなかったからだ。

だが状況は困惑するエルを置き去りにしていく。

 

「アレクシア!?外で待ってなさいと言ったでしょう!」

 

「そんなことはいいのです!それより早くルイスを助けないと!!」

 

「そんなことって……いい加減にしなさい!ルイスは私が──」

 

「待つのは嫌なんです!それに、まだあいつとやりたいことも伝えたいことも伝えてないんです!」

 

「ちょっと、アレクシア!」

 

(…………)

 

アイリスとアレクシアの口論を聞いたエルはすぐさま近くの空き教室に入り込みスライムスーツを解除、ルイスの姿になると腰からヒビが入った剣を取り出した。

 

「ごめん、シャドウガーデンの皆。次は絶対に仕留めるから……っ!」

 

ルイスは燃える壁の近くで懺悔するように呟くと、手に持っている剣を思いっきり突き刺した。

 




長かった……

キャラ紹介

エル(ルイス)
なんか最後急に切腹しだしたヤベー奴。理由はちゃんと次回で判明します。今回の事件の黒幕に気がついており、取り敢えずシェリーと会わせないように行動したが結果は……
また、今回の戦闘を通してネメシスが誰なのかハッキリとわかった。

『凶星』ネメシス
アレクシア誘拐事件の際にルイスを破り、痩騎士に対してあれこれ意見した女性の名前。今回はエルとして対峙したルイスに片腕を切り落とされるもすぐに修復し、あれこれ理由をつけてそのまま撤退。目的は未だに不明である。
そんな彼女の強さは修行、戦闘経験ともに3桁年数いってる+ライバルと言えるほどの強さを持つ相手とも戦う機会に恵まれていたシドだと思ってくれたらわかりやすいかも?

シド
ルイスもなんかやってるなーと思い、乱入しようとしたところで終わってしまったのでネメシスとはまだ顔を合わしてすらない。ちなみに個人的には、原作のこの話で彼がシェリーの母親も殺した黒幕に対して不快な気持ちを顕にしたところは結構好きです。

隠し通路の中にいた人物
一体どこのアンナ先輩なんだ……


シェリー
どうしてこんな良い子があん酷い現実を味わなきゃならんのだ……

社会人になったので更新はこんな感じでかなり遅くなると思います。大変申し訳ないです……

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)
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