アレクシア様を分からせたくて!   作:ゆっくり妹紅

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誤字脱字報告してくださった方、ありがとうございます。
こんな作品を見てくださってる方が居るんだな、ということが分かりやる気が出てきましたので頑張りました。

補足:この段階ではまだシャドウガーデン設立から半年しか経っていません(アニメ的には2話のアルファ救出からクレア誘拐までの空白期間のところをやっています)


3冊目

 

%月☆日

 

俺がタマと呼ばれて約半年がたった。あの日から俺は人目がないところでは犬扱いされており、段々とストレスが溜まって行ったのだが、今日ふとアレクシア様の方を見た結果とあることに気がついてしまった。

 

──あの王女、人をペット扱いすることに愉悦を見出し始めてる!

 

いや、何で10歳で性癖を開拓してるんだよ。確かにアレクシア様は王女だが、あっちの意味での女王になっちゃマズイだろ。こんなのが王族、特にシスコンのアイリス様にバレたら凄い飛んだ話だとは思うけど、最悪その原因であろう俺の首が飛んでしまう可能性がある。いや、素質はあったと思うけどさ?

とりあえず性癖だけはノーマルのままにしてもらう為に、何とかしないといけない。でもどうしたらいいのか分からないのも事実であり、あの腹黒性悪王女様の実態は言わないようにご本人から命令されているから周りに相談もできない。しかしこのまま放置したらそれはそれで問題になるわけで……分からせの方もどうすればいいか全く思いつかないし……正に八方塞がりだ。

 

早く地元に帰りてぇ~

 

 

%月♪日

 

ついに出来た!アレクシア様に見つからないように隠れて練習していた魔力の斬撃が出せるようになった!──有効射程は10mだけど!

前世の経験ありでその体たらくかよ、とツッコミが入りそうだが言い訳をさせて欲しい。いやね?最初の日記に書いたようにこの世界の魔力って、人体から少しでも離れると途端に制御が効かずに霧散しちゃうっていうバグみてえな性質しちゃってるんだよ。前世ではそんなことが無かったから、剣から魔力の斬撃出すためには剣に魔力を圧縮させて纏わせた後に剣を振って振り終わりと同時に魔力を止める、というふうにすれば良かった。……こっちはこっちで習得するのに10年かかったし、バカみたいに難しかったけど。

 

まあ、それは置いといてこちらの世界で再現出来たのは大きな進歩だ。射程こそ今は短いものの、あとは細かい調整や考察を重ねて将来的には50mぐらいにはしたい所だ。

斬撃ですらこんなに時間かかってるのに魔力弾や魔力砲はいつになったら実現できるのか、正直不安ではあるけども焦らずゆっくり確実に行こう。焦ったところですぐに上達するわけじゃないしね。

 

 

 

 

%月→日

 

今日はシドとアルファから手紙が届いた。それを知ったのが今日のお昼あたりで、しかも休憩時間の終わり間際だったせいで読むのは仕事が終わってからになった。

癖が強いとは思っても数少ない友人からの手紙というのはやはり嬉しいもので、そしてそれが顔に出ていたのかアレクシア様に理由を聞かれた。素直に答えたらなんか考えるような素振り見せてたが……まあ俺の主様のことだし、どうせ幼少期の弱みでも聞こうと思っているのだろう。というか日に日にドS王女の階段を昇っている気がする。俺が金貨を咥えて持ってくる度に顔を赤らめて笑みを浮かべるのはやめて欲しい、マジで頼むから。

 

まあ、それは置いといて2人からの手紙だ。

シドの方からは、どうやら俺がこっちに来てからも『悪魔憑き』の人たちを見つけては治していたこと、遊びとして作った『シャドウガーデン』を心を休めるための拠り所の場所としてそのままにしとくということ、ついでに彼の前世の武術とかを教えているということが。

アルファの方は『シャドウガーデン』の人員確保が順調であること、そして新しく加わった仲間たちのこと、いつか俺に会わせたいということが書かれていた。

元気にやっているようで安心したけど、ふと『悪魔憑き』のことが気になった。俺はアルファの一件があるまで『悪魔憑き』というのは知識としては治せない病、というふうに解釈していたが実態は魔力暴走によるもので、それを制御できるほどの魔力操作が出来れば治すことが出来るということであり、この長い歴史の中で誰も治療法を出せなかったとは考えづらい。それに、教会が積極的に『悪魔憑き』を集めているというのも今思えば何かきな臭く感じる。

 

……少し調べてみた方がいいかもしれない。こういうのは前世の経験上、特に教会関連は裏があることが殆どなわけだし、手紙で感じたシドとアルファの『シャドウガーデン』に対する熱量の違いももしかしたら関係しているかもしれない。

 

 

 

 

%月○日

 

1週間ほど日記を書くのが空いてしまったが、その成果はあった。結論から言うとシドのホラ話は全て事実である可能性が高い。この結論に至った時は信じられなくて読んだ文献の重要な部分を書いたメモを何度も見直したり、考察をやり直したりもした。それでも間違いである確率は低かった。

 

……正直頭が痛い。アルファは恐らく独自に調べた結果シドの話が本当だと確信し、あれほど積極的に動いているのだろう。じゃないと手紙に『シャドウガーデン』に関することがあんなに書かれている理由が分からない。あと、シドが自分の話したことが本当だというのは分かってないと思う。もし分かってたらもっと色々書くと思うし。

 

さて、問題はこのことをシドに伝えるかだが……恐らく放っておいていいだろう。これがまだ少人数だったら良かったのだが、それなりの数になっていることがアルファの手紙から分かるし、何よりシドに救われた人達があいつのことで幻滅して欲しくないというのがある。もし、バレたらその時は俺からも説明して何とかするしかない。

とりあえず、俺の方でも組織の運営とかで手伝えることがあったら手伝うようにしよう。今の労働環境でやれるかは別として、だけど。

 

 

 

%月*日

 

今日アレクシア様の稽古に付き合ってる最中にぶっ倒れてしまった。

医者からは疲労が原因と言われた。従者兼護衛としての激務、親元を離れて知り合いがいない所で働いている精神的疲労が主な所だろうと診断されたが、最近は寝る間を惜しんで書物を漁っていたことがあるから恐らくそれもあるだろう。つい、全盛期と同じ感覚でやってしまっていた……

これからは自身の体力をしっかり把握した上で動かないと。

 

そして執事長がそんな俺の事を気遣ってくれて、明日から暫く地元に帰って休むように言い、馬車の手配までしてくれた。本当は断りたかったのだが、上司命令となったら従う他なく、先程荷造りを終えて日記を書いている。

 

俺の帰省のことはアイリス様がアレクシア様に伝えてくれるらしいので、そこは安心していいだろう。それに休みを出してくれた執事長には申し訳ないけども、『シャドウガーデン』の新しい仲間やシドたちに会えるのは楽しみではある。

 

……でも、アレクシア様のことがやっぱり気になってしまうあたり、俺の中では彼女の存在がかなり大きくなっているんだろう。朝一で出るから一言言えないのもちょっと寂しいところではある。1週間後には戻れるようにしたいところだな。

 

 

 

****

 

 

 

──ここ一週間、ルイスの様子がどこかおかしかったのは気づいていた。休憩時間中に鍛錬をせずに色んな本を読み込んではメモをしていたからだ。最初は気まぐれかと思っていたけど、5日間も本に穴が空くような気迫で読み込んでいて、目にクマが出来ているのを見れば流石に違和感を抱く。勉強なら邪魔するのは悪いだろうとちょっかいをかけるのを止めてはいたものの、流石に気になってしまい声をかけてみた。しかし返ってきたのは「ちょっと気になることがあって調べ物してるだけですよ」の一辺倒で、それならば一緒に調べ物を手伝ってあげると言っても「自分のことにアレクシア様を巻き込むことは出来ません」と断られてしまった。

そのこっちの気遣いを無にするような態度にムッとしてその日からあいつの休憩時間の時に探しに行くのを止めた。──止めてしまった。

 

そして昨日、ルイスは私との剣の稽古の途中にふらついたかと思ったらその場で倒れ込んでしまった。

──あの時のことを思い返すと、今でも背筋が凍る。どんなに大声で呼びかけても、どんなに体を揺すっても全く反応しないルイス。幸い、その時居合わせていた師範代のお陰ですぐに適切な処置をとることが出来、医者の診断でも大きな怪我などはなく、疲労が原因ということで他の人たちは一安心していた。

 

が、私はそうでは無かった。私は今回ルイスが倒れた原因に心当たりがあったからだ。普段から休憩時間中に剣の稽古をしていること、最近はクマが出来るほどに何かを調べていたこと。これらが原因というのはすぐに分かった。

 

──もし、私が意地を張らずにしつこくルイスに手伝うことを、もしくは休養をとることを伝えていたらこんなことにはならなかったんじゃないか。

無論、ルイスが自身の体調管理を怠っていたことも問題ではあると思うが、主である私が気づいていたのにも関わらず何もしなかったのは問題だ。

 

あいつのことだから私が謝っても「悪くない」と言うだろうが、気づいていたのにも関わらず放置していたケジメをつける必要がある。

そのため、朝起きてルイスに謝罪と労いの言葉をかけるために彼を探している私の元にお姉様がやってきて。

 

「ルイスなら早朝にもうここを出て、地元に帰ったわよ」

 

「え──」

 

頭が真っ白になった。




アレクシア様ってこんなに丸かったっけ……?(にわか)

キャラ紹介+補足

ルイス
本作主人公。つい前世のノリであれこれしてたらぶっ倒れたが、結果として『ディアボロス教団』の話が事実っぽいことに気がつけた。帰省期間は無期限ではあるものの、1週間後には戻れたらいいなーと呑気に考えている。

アレクシア様
分からせ&曇らせ対象で、やっと曇らせることが出来た。ルイスがありのままの自分を見てくれてるからそれなりに気に入ってはいて、だからこそこちらの心配を無碍にされたことで意地張ったらあんなんになっちゃって落ち込んでるところに、「ルイス帰ったよ(直球)」という知らせでトドメを刺された。アレクシアからみたら自分のことが嫌になる心当たりありまくりだし、それが原因で帰ったみたいにも取れちゃうからね。
ちなみにルイスが犬のようなことをするのを見る度に、背筋がゾクゾクするような未知の感覚が最近の悩みでもあった。

アイリス様
言葉不足。

ルイスの秘密:3
実はペット扱いに段々抵抗がなくなってきている。

番外編としてバレンタインの話を……

  • これもまた愉悦(書く)
  • やめろカカシ、それは効く(書かない)
  • 撃沈もまた愉悦(どっちでもいい)

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