ある時、人々は新たな力“魔法”を授かった。人々は希望の力だと信じ、どんどん繁栄していった。そして、次なる世代へ引き継いで行くために魔法の学校を建てた。
与えられることの悲しみ
「ヒャッハー!!!!!うぃぃぃぃーん!!!」
アラームが部屋中に響き渡る。蓬莱は眠気で重いまぶたをなんとか開けつつアラームを止めに行く。
「……はぁ、あと2時間は寝ていたいよ」
「いつまでも呑気なこと言ってないでご飯食べなさい!」
リビングへ移動し朝食を
「時間を止める魔法とか無いかなぁ~」
蓬莱の向かいで一緒に朝食を食べている父親が興味深そうに蓬莱を見つめる。
「ほぉ、時魔法か!実はな父さんは時間を操る魔法について今、研究中なんだ。」
「んー、そっか」
「反応薄くないか?」
「どうせいつも通り“理論上は”で終わりでしょ」
「いや、今までとはちょいと違くてな。転移魔法こそが時魔法の技術の発展に……」
「はいはい、お仕事話はここまでにして早く朝食を済ませて下さい。蓬莱も急がないと遅刻するわよ」
「げ、もうこんな時間……」
蓬莱はさっさと朝食を食べ、学校へと向かった。
「ちょっと意地悪じゃないか?せっかく蓬莱が話を聞いてくれてたのに……」
「はいはい、あなたも遅刻しますよ」
蓬莱のすぐあとに父親も仕事場へ出発した。
いつもと変わらない登校ルートで学校へ向かってるときに反対側から見慣れない格好の男が歩いてくる。
「あっ!」
男は手に持っていた球状のモノを落としてしまい、それが蓬莱の方へ転がってくる。
「はい、どうぞ」
蓬莱は球状のモノを拾い男に渡した。
「ありがとうございます。それよりあなた、拾ってくれたお礼にひとつ教えてあげましょう。……もうすぐ“道”が開く。“裏の世界”へと通ずる“道”が」
「“道”?その“裏の世界”って?」
男はそのときが来ればわかると言い、どこかへ行ってしまった。
蓬莱が住んでる街“ヴェステン”。その中央に位置する魔法と魔術専門の学校“ヴェステン魔法魔術専門学校”。5年制で魔法の基礎を学ぶ、蓬莱は4年生だ!
蓬莱が教室へ入ると員嶠(いんきょう)が勢いよく蓬莱へ抱きつく。
「おっはよー!」
「朝っぱらから元気な人ね、羨ましいよ」
抱きついて離れようとしない員嶠を引き剥がし席に着く。
「よぉ、蓬莱!遅刻ギリギリだな」
岱輿(たいよ)が蓬莱へむかって挨拶する。
「うん、おはよう岱輿。今日はちょっとイベントがあってね」
蓬莱は登校中にあった出来事を岱輿に話した。
「その“道”ってやつが開くと“裏の世界”へ行けると……“裏”があるなら“表”もあるだろ?」
「“表”はもしかしたら、わたしたちの世界のことかも知れないね」
「ちょっと見てみたいかもな“裏の世界”!」
「わたしはいいかな……その世界とわたしたちの世界を繋げてはいけない気がする。」
「さっきから何の話をしてるんだい?」
瀛州(えいしゅう)が蓬莱の背中に寄りかかるようにして話に入ってくる。
「あの、重いんだけど!」
「失礼な!これでも痩せたんだぞ!」
「リバウンドしたんじゃない?リバウンドを制するはなんたらだっていうじゃん」
「こいっつは!」
「やめろ、無駄な喧嘩はじめるなよ、それより……」
「え!?なにあれヤバくない!?」
岱輿の話を遮るように蓬莱が身を乗り出すように窓から空を眺める。
「穴?なんだあれ。」
空にはヴェステンを覆うほどの巨大な穴が出現していた。蓬莱は吸い込まれるようにその穴を眺める。
『今宵に道は開かれた、汝の責務を果たす時が来た。欠けたモノどうしを繋げ…ひとつの完全体へ……再び』
「…蓬莱?…蓬莱!大丈夫?」
員嶠に肩を揺すられ我に返る。
「へ?あれ……わ、わたし……」
「独り言をぶつぶつと、なんか道が開かれた……とかなんとか言ってたよ」
道……今朝のことを思い出し、まさかと思い再び穴を見つめる。わずかにだが穴の最奥に小さな光が見えた。
《風属性魔法 飛べ!》
蓬莱は窓からジャンプし魔法で穴に向かって飛んでいく。
「あの穴がもし“道”ならあの先にある光は“裏の世界”!」
しかし、蓬莱は穴を突き抜けてしまう。
「触れられない、中に入れない……」
何度も行き来するが穴の中に入れない。
「まだ“道”が完全ではないからだ」
今朝の男が蓬莱の目の前に姿を現す。
「どうすれば完成するの?」
「向こうの世界で“心”を集めている。こっちの世界で“記憶”を集めればいい。各地に眠る“解放者”の“記憶”をな……」
「“解放者”?……なんなのそれは?」
「なんだ知らないのか?世界を両断した者のことだよ」
「それは“神”ではないの?」
「“神”だと?はははっ!笑わせる。“神”なんて見えない現象に対する恐怖の意味付けに過ぎない。」
「……あなた何者?どうしてそこまで詳しいの?」
男は蓬莱に背を向ける。
「予言の刻はまだ先だ、じきに世界の全貌をお前は知ることになる……いや、知らなければならない運命にある。」
そういい残すと、男は再び蓬莱の前から姿を消した。
「各地に眠る“記憶”……か」
「おーい、ほうらーい!」
員嶠と方丈(ほうじょう)が蓬莱のもとへ駆けつけた。
「急に飛び出て行くからびっくりしたよー!」
「お前、あの穴についてなにか知ってるのか?」
「……あの穴はまだ未完成らしい」
「“らしい”ということは張本人がいるんだな」
「うまくは言えないけどあの“穴”だけは完成させちゃいけない……」
「俺はお前の意見に賛成だ、どう見ても言い方向に進むとは思えないしな」
「(……妙な胸騒ぎがする。あの“穴”を完成させたくないけど……同時に悲しさを感じるのはなんでなの?)」
「いったん、みんなのところへもどろーよ!」
「そうだな、戻るか。みんな心配してるぞ」
「ごめん、ごめん」
員嶠に続いて方丈と蓬莱が続き、学校へ戻る。
戻った後も岱輿や瀛州から質問責め、そして窓からジャンプしたので先生から酷く叱られる蓬莱だった。
それから1週間の時がたち、“穴”はますます禍々しくなっていった。蓬莱は“解放者”すなわちおとぎ話の“神”について調べていた。しかし、それらしいことはどこにも書いてなく見つけられないでいた。
「蓬莱が本なんて珍しいな、風邪か?」
図書館の秘書が話しかけてきた。
「なのね……わたしだって本くらい読みます!失礼しちゃうわ!」
「しっかし、なんだ“神の所業”に“神様降臨!”……お前……変な宗教でもやるつもりか?」
「違うー!おとぎ話に出てくる神様について知りたかったの!」
「あぁ、あの“解放者伝説”ね。」
「その“解放者”ってのはなんなの?」
「それについてはあまり知られてないんだけど、もしかしたら世界がふたつに割れたときに呼び方も“神”と“解放者”のふたつになったんじゃないかって仮説があるよ」
「へぇ~」
「そもそも誰が作ったかすらわからない話だからね、なんでそんなものを調べてるんだ?」
「空に出現した“穴”とおとぎ話の“神”が深く関係しているらしい。そして、その“神”の“記憶”がこの世界の各地に眠ってるって……」
「なるほどねぇ、あ!そういえば一般公開してない秘密の書物があるってうちのじいちゃんが言ってたな。なんでもご主人を待ってるんだとか。」
「それ、みせてもらってもいい?」
「いいけど、多重に結界が張られていてページが開けないんだ。」
秘書に案内されるがままについていき、図書館の奥へと入っていく。
「これだよ」
祭壇の上に本が浮いている。周りの柱から魔法の鎖が祭壇へと繋がれている。
「……触ってみていい?」
「いいけど……慎重にね」
蓬莱が本に触れた瞬間、すべての鎖が弾けとんだ。
「な、なに!?まだ何もしてない!」
「……これは……封印が解けてる……」
『長らくお待ちしておりました、我が主よ』
「本が喋った!?」
祭壇にあった本がゆっくり蓬莱へ近づいてくる。蓬莱は手に取り、本を開く。すると、本の中から白い渦が飛び出し蓬莱へ入っていった。
『我が役目は果たした、約束の時は来たれり』
白い渦が消えると本はみるみる朽ちていき灰になっていった。
「え?待って待って!おとぎ話の伝説は?もー!何もかもわからないよー!」