お前(アンタ)と出会ったのが運の尽き   作:死神作者

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第9話 強くなりたい滅却師

「伊武紀、悪いけど当分学校行かないから」

 

ある日の夜。

 

唐突にバンビエッタがそう言いだした。

 

いきなりのことに、伊武紀は驚くも、すぐに冷静になり尋ねる。

 

「どうしたんだ? 急に?」

 

「大したことじゃないわよ。ちょっと浦原の奴に頼みごとがあってそれで少しの間、世話になるだけ」

 

「浦原さんに?」

 

浦原とは、伊武紀とバンビエッタがいつも贔屓にしてる店、《浦原商店》の店主“浦原喜助”のことだ。

 

日頃の買い物から、《尸魂界(ソウル・ソサエティ)》の品物の購入などなど、いろいろとお世話になっている。

 

そして、元“護廷十三隊”十二番隊隊長及び技術開発局創設者にして初代局長でもある。

 

伊武紀とバンビエッタにとっては、裏から手を回し、現世で暮らすために必要な手配をしてくれた恩人でもある。

 

「まあ、そんなわけだからしばらく学校は休むわね。じゃ、あたし風呂に入るから」

 

一方的に言うと、バンビエッタはそのまま部屋から出ていった。

 

「……なんだかよくわからねぇな」

 

一人残された伊武紀は、首を傾げるしかなかった。

 

翌日、伊武紀が目を覚ますとバンビエッタはもう《浦原商店》に向かったのか、姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間分の着替えを持ち、バンビエッタは《浦原商店》へと向かった。

 

まだ開店時間前で、店の前では店員の少女“紬屋(ウルル)”と店員の少年“花刈ジン太”が店先を掃除していた。

 

「ジン太ホームラン!」

 

最も、ジン太は掃除せずに箒を振り回して遊んでいた。

 

「ジン太君、ちゃんと掃除しないと怒られるよ……」

 

「うるせぇ!掃除なんて知るか!」

 

注意する雨を無視して、ジン太は叫びながら再び箒を振り回す。

 

そこにバンビエッタが現れた。

 

「あんたたち、何やってんの?」

 

「あっ、おはようございます。バンビエッタさん」

 

バンビエッタに気付いた雨が挨拶をする。

 

「なんだよ?店ならまだ開店してねぇぞ?」

 

「別に買い物しに来たんじゃないわよ。それより、浦原は?」

 

「店長ならまだ寝ていますぞ」

 

店から身長が2mの大男が現れ、答えるのは《浦原商店》の店員で、“元”鬼道衆総帥・大鬼道長“握菱鉄裁”だった。

 

「なら叩き起こしてくれる?こっちは用があるの」

 

「それなら大丈夫っすよ」

 

すると、下駄と帽子、甚平という格好で浦原が現れる。

 

「今しがた、起きましたんで」

 

そう言い、浦原は欠伸をしてバンビエッタを見る。

 

「それで、今日のご用は何ですか、バンビエッタさん?」

 

「実は少しの間、ここに泊めてほしいんだけど」

 

「それは構いませんけど……どうしたんですか、一体?」

 

「まぁ、泊めてほしいって言うかちょっと………」

 

何処か言い辛そうにするバンビエッタに、浦原はピンときた。

 

「ああ、なるほど。わかりました。そういうことならこちらへどうぞ」

 

浦原は店の中に案内する。

 

そして、そのまま店の奥へと行き、地下室へ向かう。

 

「バンビエッタさんがお望みなのは、買い物でも、ましてや当面の寝床なんかじゃない………修行、っすよね?」

 

帽子の下から鋭い視線を投げつけ、浦原が聞く。

 

バンビエッタは無言で、頷く。

 

「理由は察しがつきますけど、一応聞いても?」

 

浦原がそう聞くと、バンビエッタは重い口を開く。

 

「……知ってるでしょ?あたしは、昔より弱くなってる………」

 

バンビエッタは、元は見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)星十字騎士団(シュテルンリッター)滅却師(クインシー)だ。

 

星十字騎士団(シュテルンリッター)は、見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)のトップにして滅却師(クインシー)の始祖“ユーハバッハ”より、聖文字(シェリフト)によってユーハバッハの魂から刻み与えられたアルファベットの1文字から連想される能力を与えられる。

 

バンビエッタが与えられた聖文字(シェリフト)は《E》、能力は《爆発(Explode)》。

 

小規模なものから周囲を巻き込む大規模までの爆発を自在に起こし、バンビエッタから発せられた霊子に触れた物体そのものを爆弾に変えて爆破するため、防御自体できない。

 

この能力と、滅却師(クインシー)としての才能があったことで、バンビエッタは星十字騎士団(シュテルンリッター)の中でも上位に位置した。

 

しかし、バンビエッタは《見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)》を追放された。

 

加えて、処刑もされそうになり、元々死ぬのが嫌で戦っていたバンビエッタは、生きるために命からがら見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)から逃げ出したのだ。

 

運よく現世に逃亡成功したものの、追放された際に《E》の聖文字(シェリフト)は剥奪され、バンビエッタは大幅に弱体化された。

 

使えるのは滅却師(クインシー)としては一般的な《大気中に偏在する霊子を自らの霊力で集め、操る技術》と《血装(ブルート)》のみ。

 

おまけに《爆発(Explode)》の能力と、自身の才能に感けて鍛錬を怠っていた為、全盛期には遠く及ばないレベルにまで落ちていた。

 

「この前、織姫が(ホロウ)に襲われた時に実感したのよ。いくらなんでも弱くなりすぎてるって……まぁ、そのお陰で織姫と織姫のお兄さんが無事仲直りできたのかもしれないけど………」

 

「なるほど。それで、修行を?」

 

「そうだけど………嫌なのよ」

 

「何がっすか?」

 

「伊武紀に………心配されるのが」

 

そう言って、バンビエッタは俯いた。

 

ボロボロのバンビエッタを心配し、バンビエッタが怪我したのは自分の所為だと自身を責める伊武紀。

 

そんな伊武紀の姿を思い出し、バンビエッタは胸が痛んだ。

 

「だから、強くなりたいのよ。あいつに心配されないぐらいには」

 

「そうっすねぇ……」

 

バンビエッタの言葉を聞き、浦原は顎に手を当て考える。

 

「わかりました。バンビエッタさんの気持ちは十分伝わりました。そういうことでしたら、しばらくここで修業をしましょう」

 

浦原は、笑顔でバンビエッタを迎え入れることを決める。

 

「ありがとう、浦原」

 

「いいえ、貴女方はうちのお得意さんですからねぇ!これぐらいは当然ですよ!」

 

浦原は、満面の笑みを浮かべた。

 

「頼んどいてなんだけど、アンタが善意でするとは思ってないし、何か裏あるでしょ?」

 

「あ?バレちゃいました?」

 

「やっぱりね。まぁ、どうせすぐにわかるだろうし、別に構わないけど」

 

へらへらと笑う浦原に、バンビエッタは呆れた様子を見せる。

 




次回からバンビエッタの修行回?になります
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