―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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10-2:「取り巻く状況」

「セノイさん、皆さん。ありがとうございます。――そして、申し訳ないのですがもう一点、お伺いしてもよろしいでしょうか」

 

 地図から視線を上げて、周りセノイ始め村人達に向けて礼を言う長沼。しかし長沼は、そこから続けてセノイ達に、さらなる質問の許可を求めた。

 

「えぇ、構いません」

 

 対して了承の言葉を返すセノイ。そのセノイの表情は、そこから少し険しく神妙な物と変わる。

 

「村を襲った傭兵共の正体。そして、村が襲われた理由ですな――?」

 

 そしてセノイは、先んじて長沼の質問に察しを付け、発して見せた。

 

「この国の政府――商議会が魔王軍と繋がっている。商議会の雇った傭兵が、口封じに差し向けられた。――そっちの兄さんの口からは、そんな事を聞いた」

 

 それに対して、長沼の横に立つ威末が、天幕の端に視線を向けながら発した。

 天幕端の簡易ベッドには、偵察捜索隊が最初に保護した村人――未だ目覚めぬイノリアの寝かされる姿があった。

 威末はイノリアのその姿を見ながら、彼が保護した時に訴えていた事を、思い返し口にする。

 

「差し支えなければ、詳しくお聞かせ願えますか?」

 

 そして長沼は要望の言葉をセノイに向ける。

 

「えぇ。どこから話しましょうか……あなた方は、この国が良くない内情にあることは、御存じですかな?」

 

 セノイは長沼の要望を承諾。少し考えた後に、まず長沼等に向けて質問を投げかける。

 

「はい。漠然とではありますが、聞き及んでいます――」

 

 隊は、事前の情報収集でこの紅の国が安定しているとは言えない内情にある事。さらには月詠湖の国で遭遇した野盗に関わる各種案件から、この国が野盗行為や人身売買に関与している疑いがある事を掴んでいた。長沼はそれ等の事を思い返して、セノイに告げる。

 

「その通りです。加えて商議会――この国の政府は昨今怪しい動きを見せ、さらには国内でも妙な失踪が相次いでいます――私はそれらについて探るため、この国の中央府――紅風の街の商議会にて、かつての部下に調査を託しました」

「かつての部下?」

 

 説明が始まり早速の所で、長沼が気になるワードを聞き留め、疑問の声を上げる。

 

「村長の、商議会議員時代の部下さ」

 

 そこへ、天幕端の簡易ベッドのケルケから説明の言葉が飛ぶ。

 話によれば村長セノイは、数年前までは国の政府組織、商議会の議員であり、そこで派閥の一つを率いる立場にいたとの事であった。

 

「ほう、村長さんはこの国の政府の要人だったのか」

「今は隠居したただの老いぼれさ。歳には敵わん……」

 

 なされた説明に威末は感心する言葉を上げたが、対するセノイ自身は、どこか自嘲気味に言葉を零した。

 

「続けましょう――その部下から、ひと月ほど前に便りが届きました。その時の便りに記されていたのが、魔王軍関係者らしき者を確認したとの報でした」

「魔王軍の、関係者ですか?」

 

 長沼は聞き留めたワードを復唱する。

 

「えぇ、便りの記載によれば、どうにも獣人――それも種の定かではない者だったとの事。さらに部下は、何か異質な物を感じたとの事でした」

「――魔王軍の基幹の者かも」

 

 セノイの詳細を説明する言葉が一区切りした所で、天幕の端から、静かな声色で紡がれた言葉が聞こえ来る。村の女、ゼリクスの物だ。

 

「基幹?」

 

 紡がれたゼリクスの言葉に、威末が振り向き疑問の一言を発する。

 

「魔王軍の主力や中核を成す、幹部や将に類する魔族や魔物達は、皆強大な力や魔力、能力を有すると聞くわ。ユレン――その部下の子は、それを感じ取ったのかも……」

 

 疑問の言葉に対して、ゼリクスは変わらぬ静かな声で紡ぎ、説明して見せた。

 それを聞き届けた後に、セノイは言葉を再開する。

 そのセノイの部下は、それ等の事から不審を抱き、その魔王軍関係者の疑いがある者の近辺を調査。結果は当たり――その者は魔王軍から送り込まれた者である事という事実が、追報によりセノイ達の元へもたらされた。

 さらに、その魔王軍の者は、この地翼の大陸への侵攻に先だった下調べ、並びに内部からの工作活動のためにこの地に訪れている事。

 そして、商議会はその魔王軍の者に活動の場を提供し、それ等の活動に協力しているとの事実も届けられたという。

 

「それに伴って、不審な失踪を始め各件も、商議会が関与している事が判明したわ」

 

 そこでゼリクスが説明を引き継ぎ、静かにしかし険しい顔で発する。

 隊も遭遇した各地で活動する野盗被害は、商議会が支援する、この大陸に対する破壊工作活動の一環である事。不審な失踪は、商議会の活動を知った者や、商議会の活動の上で存在しては都合の悪い者が、口封じや始末に遭ったものであるとの事だ。

 

「真っ黒だな。そして政府が主犯で裏には魔王軍とは、また大きな話だ」

 

 そこまでの説明を聞き、威末は驚きというよりも呆れに近い口調で発して見せた。

 

「魔王軍は各地で快進撃を続け、こちらの旗色は良くない」

「商議会は、今から魔王軍側に媚びを売り協力し、この大陸が陥ちた後の立場を保障してもらうつもりなのよ――全ての企みはそのため」

 

 そこでケルケが、続けゼリクスがそれぞれ忌々し気な口調で、商議会が魔王軍に協力する理由を述べて見せる。

 

「人類側の連合体を見限り、魔王の軍勢に与する国が少なからず現れているというお話は、私達も聞いています」

 

 以前に、自由や河義等が勇者のハシアから聞き及んだ、この世界の人類側が抱える問題に関する話は、隊員等にも報告周知されていた。ケルケ達が発された言葉から、長沼はその事を思い返して口にする。

 

「えぇ。しかし我が国がそのような状況になろうとは……議会に身を置いていた立場としては、お恥ずかしい話です……」

「村長がそのように苛まれる必要はありません!臆病風に吹かれ、醜態を晒しているのは今の商議会の奴等だ!」

「村長が現役であったならば、まず国の中枢に、魔王軍の手の者など、立ち入らせる事すら許さなかったはずです」

 

 村長の己を恥じる言葉に、しかしケルケやゼリクスは庇う声を上げた。

 

「すまないな……ともかく、そういった国があるのも事実ですが、しかし多くの国々は魔王軍の脅威に懸命に抵抗しています。それを裏切り寝返る行為は、許される者ではありません。私は部下にさらなる調査を命じました。しかし……」

 

 セノイはそこで声のトーンを再び落す。聞くに半月程前を最後に、その部下との音信は途絶。さらに時を同じくして、先に話されたナイトウルフの被害が巻き起こり出したと言う。それにより、それ以上の商議会に対する調査は頓挫。どころか、普段の生業にも影響が出始め、さらには村は孤立し始めた。

 周辺の町に駐留する警備隊に出した対応要請は、漠然とした理由で突っぱねられ、その事からセノイ達は、警備隊にも商議会の息が掛かっている事。そしてナイトウルフの活性化が、商議会からの工作である事を察した。

 しかしそこへ偶然にも現れたのが、邦人――水戸美とファニール達勇者一行であったという。彼女等の手に寄りナイトウルフの脅威は取り除かれた。

 そしてそれを同じくして、セノイ達は自分達のみでの活動の限界を判断。まだ集められた証拠や情報は不完全ではあったが、それを国外へと持ち出し知らせる事を決めた。

 

「しかしそのタイミングで、口封じのための襲撃が来てしまったって事か――しかし、村ごと葬り去ろうとするとは、また乱暴だな」

 

 そこまでを聞き、そして威末はそこから先、自分等も遭遇した事態を思い浮かべて発する。そして商議会側の取った大胆で乱暴な行為に、感心しないといった風な言葉を零した。

 

「彼奴等は、すでにそれくらいは隠蔽できるまでの、準備や手回しを成しているのでしょう。……私の対応は、遅すぎた……」

 

 セノイは発し、そして手を討つ事が後手に回ってしまった現実に、悔いる言葉を零した。

 

「痛ましい事になってしまったが、まだ終わってしまったわけではないです。長沼二曹――」

 

 そのセノイに威末はフォローの言葉を入れ、そして長沼に振り向く。

 

「あぁ――村長さん。その一連の案件は、私達の方から月詠湖の国に持ち込み、伝えましょう」

「この件が明るみに出て、周辺の国々が動き介入すれば、事態の解決が望めますかね」

 

 長沼はセノイに向けて、伝達を肩代わりする旨を伝える。そして威末は、それにより一連の事態の解決される事を期待する言葉を発する。

 

「えぇ……であればいいのですが……」

 

 しかし長沼言葉に、対するセノイは歯切れの悪い言葉を零す。

 

「そう簡単には、いかないかもしれないのよ――」

 

 そして背後から、ゼリクスの声が聞こえ来た。

 

「どういうことだ?」

 

 その言葉に、威末は疑問の声を上げる。

 

「皆さんは、この紅の国の成り立ちや立ち位置というのは、御存じですかな?」

 

 威末の疑問の声に、しかしセノイはそんな質問の言葉で返す。

 

「?――えぇ、大まかには。確か、周辺国家の緩衝地となるべく、独立した国であると」

 

 長沼はその質問に肯定し、事前の情報として得ていた、この国の背景事情を口にする。

 それを聞いたセノイは、そこから続けて長沼等に説明の言葉を紡ぐ。

 セノイの言葉によれば、この紅の国、そして国境を接する三大国の間では、紅の国の緩衝地帯としての機能を保つための、条約が定められているとの事であった。

 そしてその中に、紅の国政府――商議会からの正式な、そして必要と見止められる事由無い限り、周辺各国は紅の国への軍の派遣、及び進駐を一切禁止するとの事項があるとの事だ。

 

「そんな事を言っても――その政府が魔王軍を誘致し、この地を危機に晒しているんでしょう?村もその一環でこうして被害に遭っている。最早条約に囚われている場合じゃないのでは?」

 

 なされた説明に、しかし威末がそれを疑問視し、訴える言葉を上げる。

 

「そうなんだけど――」

 

 そこへケルケから、歯がゆそうな声が零される。

 政府商議会と魔王軍を関係づける情報は、今の所その調査に赴いたセノイの部下からの便りによる物のみ。ナイトウルフ騒ぎや今回の村への襲撃も、偶発的な野生生物被害や、あくまで紅の国内部に限る事件と判断される可能性もあり、その裏の魔王軍の存在、関係と結びつけるには弱い物であるらしい。

 そして明確な証拠の無いまま――例えば月詠湖の国が紅の国に介入した場合、それは条約に反した不当な介入と、周辺各国に判断される可能性があるという。

 最悪、他の二大国や周辺各国はそれに武力対応で応じ、軍事衝突の可能性もあるとの事であった。

 

「間違えば最悪、魔王軍の前に、大陸内の国同士で戦争が始まってしまう」

 

 苦々しい口調で続け発するケルケ。

 現在、どの国も対魔王戦線への出兵でただでさえ体制に不安を抱えている。そんな中で戦争内乱のリスクがある行動には、どの国も躊躇いを見せるであろうとの事であった。

 

「ま。魔王軍側からしてみれば、そうやってこの大陸内が混乱に陥るのも、歓迎的なことなんでしょうけど」

 

 さらにケルケの説明に補足するように、ゼリクスが静かにそしてどこか冷めた様子で呟いた。

 

「気持ち悪い話だな」

「その魔王軍にとって、複雑な事情のこの国、この地は、内部工作の絶好の隠れ蓑という事ですか」

 

 成された説明に、威末は言葉通り気持ち悪そうに言葉を零し、長沼は感心と呆れの混じった言葉を紡ぐ。

 

「どうにか、他国の介入、保護を実現する術はない物ですかね?」

「難しいわ……。さらなる、確固たる証拠を掴めれば、各国の対応を招けるかもしれない。でも、今の私達にはそんな力は無い。それに何より――」

 

 続け尋ねた長沼の言葉に、ゼリクスの説明の言葉が紡がれる。

 

「――……時間が……無い……」

 

 そこへゼリクスの言葉に割り入り引き継ぐように、天幕内に、これまでしなかった掠れるような声が割り入り上がった。

 長沼等隊員、そして村人達は一斉に声の方向、天幕の一角へ視線を向ける。

 そこにあった簡易ベッドの上。そこに、それまで眠っていた村人イノリアの、目を覚まして状態を起こそうとしている姿があった。

 

「イノリア!」

「イノリア!気付いたんだ……!」

 

 その姿に、村人の男女、ネウフとネイがそれぞれ声を上げる。そして比較的軽傷であるネイは、自身の座っていた簡易ベッドを飛び降り、イノリアの傍に駆け寄る。

 

「時々意識は戻ってた……朦朧としてて、何もできなかったけどな……」

 

 言いながら、イノリアは上体を起こして天幕内を見渡す。

 

「誰が……やられた……?」

「……まだ分かってない……子供たちは無事だったけど、戦いに出た皆は、多くがやられて、まだ見つかってない人もいる……」

「ッ、そんな……」

 

 イノリアの尋ねる言葉に対して、ネイは悲観の表情を作って発し伝える。そしてそれを聞いたイノリアの表情は、ショックで強張り、青くなる。

 

「糞……畜生ッ!」

 

 しかしそのショックはやがて怒りへと変わり、彼は拳を握り、それを簡易ベッドに叩き付けた。

 

「お兄さん、落ち着いて。傷が開く」

 

 威末は、手負いのイノリアのそんな姿行為を見止め懸念し、イノリアの簡易ベッドの傍へと周り、彼を宥める。

 

「まだ横になってた方がいいよ」

 

 そして寄り添っていたネイが同様に宥め、イノリアの体を抑えて促し、彼を再び簡易ベッドへ横たわらせた。

 

「すまない……だが、いつまでもこうしてはいられない。奴等はまた来るぞ……」

 

 イノリアは簡易ベッドへ体を預けながらも、言葉を発する。

 今回の、商議会に雇われた傭兵による、この草風の村への口封じのための襲撃は、隊の介入により不完全に――言い切れば失敗に終わった。

 しかし商議会がこれで手を引く事等考えられず、すぐにでもまた、次の手勢による襲撃が村へ差し向けられるであろう事を、イノリアは訴えた。

 

「分かってる……奴等がこのまま、放っておいてくれるわけは無い……」

「でも、それこそどうするの?ただでさえ申し訳程度の戦力の小さな村。その上多くが犠牲になって、生き残った皆も深手を負ってるわ。……もう到底守れる状態じゃない……」

 

 イノリアのその言葉に、ネイは顔を暗くして承知している言葉を零す。

 そしてゼリクスが、村の現状を訴える。

 村の置かれた現実、状況の困難さが突き付けられ、村人達の表情は一様に暗く、険しくなる。

 

「……奴らめ……!」

 

 先に村人達を説いて見せたセノイも、現実を前に同様の様子を見せる。そしてついにはその顔に剣幕を見せ、事の元凶たる商議会と魔王軍に向けた、悪態の言葉を吐いた。

 

「再度の襲撃か――防護、迎撃態勢を整える必要があるな」

「偵察行動も必要でしょう」

 

 そんな村人達の一方、長沼や立ち会っていた各陸曹等は、相談の言葉を交わし合っている。

 

「――皆さんありがとうございます、状況は分かりました。私達の方で、対応を取らせていただきたいと思います」

 

 そして長沼は、セノイに向き直り、そして天幕内の皆に向けて言葉を発した。

「――……はい?」

 

 しかし、長沼のその言葉の示す所がすぐには呑み込めなかったのか、セノイは若干目を見開き、疑問の言葉を零す。

 

「あぁ。もしかしたら、少しご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが――」

 

 そのセノイの言葉を懸念の色と取った長沼。

 それに対して長沼は、村への展開及び防護態勢構築の上で、少し迷惑や不自由を掛けてしまうかもしれないが、村を守るために承諾をもらいたい事。そして、その上で可能な限りの配慮に努める事を説明した。

 

「そんな、迷惑など……!いえ、そうではないのです……!」

 

 長沼のそこまでの説明に、そこでようやく理解の及んだセノイは、自身が長沼に誤解を与えている事に気付き、慌て返す。

 

「……君達、どうしてそこまでしてくれるんだ?」

 

 そしてセノイの言葉を引き継ぐように、ケルケが尋ねる声を上げた。

 

「君達の目的である、その国民の彼女の居所は掴めたんだろう?もう、この村に関わる必要はないはず……」

 

 続け、疑念の声を上げるケルケ。

 

「必要も何も――こんな状況に出くわして、放っておけるとでも?」

 

 それに対して、威末が逆に問う声を返す。

 

「この村は孤立し、周辺からの応援保護が望めず、その上で今も脅威に晒されている――知り得た以上、放っておくことはできません」

 

 続け、長沼が言葉を紡ぐ。

 

「善意だって言うの?――少し人助けをするのとは、話が違うのよ?」

 

 今度はゼリクスから、警告にも似た色の言葉が飛ぶ。

 

「もちろん、心得ています」

 

 対する長沼は端的に返す。

 

「加えて言えば、その政府と魔王勢力の繋がり、企みは、私達にとっても脅威と成り得るからです」

 

 しかし消えぬ村人達の訝しむ顔色。

 それを見止めた長沼は村人達に、自分達が月詠湖の一地域で長期に渡る見積もりの展開を行っている事。その上で、この紅の国を起点に行われている各国地域に対する各種工作、及び将来的に予想される魔王軍の進出は、自分達にとっても脅威と成り得ること。

 それ等脅威に対する予防措置として介入の必要性を見止め、村の保護もその一環であるという、利害的な面を説明して見せた。

 その説明に対して、村人達は半分は納得した様子を見せたが、しかしまだどこか釈然としない色を見せている。

 

「――何より、それが私達組織の役割だからです」

「役割?」

「はい。救うべくはできる限りを、取れるあらゆる手段を用いて救う。戦闘はもちろん、それに限らずの救護、保護、支援を。――それが私達、日本国隊の任務であり、使命なのです」

 

 そんな村人達に、長沼は最後に、毅然とした口調でそう述べて見せた。

 

「使命――」

「……何か、軍隊としては変わってるわね」

 

 長沼の言葉に、感心、あるいは特異なものを見る視線を向ける。

 おそらく戦争以外の軍事作戦という概念が、まだこの地では活発でないのであろう事か発せられたと思しき彼等の言葉。

 

「そうかもしれません」

 

 しかし日本国隊が、軍に類する組織として少し異質な面を持つこともまた事実であり、長沼はその事をから、村人達に対して肯定の一言を返した。

 

「唐突に現れた私達を、すぐに信用いただく事は、難しいかと思いますが」

「いえ、とんでもありません!願っても無い事です……!」

 

 それから長沼の発した言葉に、セノイは慌て返す。しかしその顔には未だ、戸惑う様子が浮かんでいる。

 

「少し、色々起こり過ぎだわ……整理させて……」

「目まぐるしい夜だな……」

 

 そして村人のゼリクスやケルケから、そんな言葉が零され聞こえて来る。

 見れば、村人達の顔には困惑と共に、疲労の色が浮かんでいた。

 

「本日の話は、ここまでにしましょう。皆さん、ご無理をさせて申し訳ありませんでした。よくお休みください」

 

 村人達のその様子を見止めた長沼は、話し合いをそこで終わりとする一言を発する。

 その言葉でその場はお開きとなった。


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