―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》 作:えぴっくにごつ
高地に設けられた野営陣地内の、指揮所天幕には、再び井神や小千谷、主要な陸曹空曹が集い、今後の方針が話し合われていた。
「知っての通り我々は流浪の民状態で五里霧中の状況にある。これは少しでも改善するには、先日も言った通り偵察行動と情報収集が不可欠と考える」
天幕内で、長机の前に立つ井神が発する。
「――なんですが、その前に当面の懸念事項として、我々は補給の問題を抱えています」
井神の言葉を引き継いだのは、需品科隊員で補給隊所属の長沼二曹だ。
「補給地点にある物資だけでは足りないんですか?」
長沼の言葉を受け、一人の隊員が挙手をし、質問する。
「燃料弾薬はそれなりに備蓄がある。なにせ、中央補給地点の燃料弾薬区画が丸ごと一緒に飛ばされて来たからな。ただ――不安があるのは糧食の類だ」
長沼は手にしていたバインダーに目を落とし、現在隊が保有している糧食の総量を読み上げる。それは、100名近い隊員の今後の食を支えていくには、お攻辞にも余裕のある物では無かった。
「糧食関係の区画はなぜか欠け落ちていて、一緒に飛ばされては来なかった。燃料弾薬と違い、毎日消費する物だし、現有量だけでは近いうちに底をつく」
「いっそ総出で狩りでもしますか?」
長沼の説明を聞き、一人の陸曹が、冗談交じりに発する。
「最悪それも考える。しかしできる事なら、どこか町などから補給が望めればと思っている」
隊員の言葉には、井神が返した。
「麓の村から……は無理そうですね」
河義は麓の芽吹きの村を候補に上げようとしたが、すぐにそれを自ら否定する。
「あの村に我々100名強もの隊員に、食を提供できるキャパシティは無いだろう」
河義の言葉に返しながら、井神は長机に置いてあったタブレット端末を手元に寄せ、画像閲覧機能を立ち上げる。
画面に映し出されたのは、河義等が持ち帰ったこの攻界の地図の画像だった。
「地図と、村から聞けた話によれば、ここより東に行った所に比較的大きな町があるそうだ。偵察、情報収集も兼ねて、この町を当たってみたいと考えている」
井神はタブレットに映る地図の一か所、町の記された位置を指し示しながら、発した。
「あの――調達するにしても、資金はどうするんですか?」
そこで別の隊員が発する。
当然のことながら、隊はこの攻界で使用されているであろう通過など、持ち合わせてはいなかった。
「こちらでこの世界の通貨を得る方法があればいいが――とりあえず有効なのは物々交換、もしくは物の換金だろう。申し訳ないが、各員から貴重品の提供を募りたいと思う」
「げ」
井神のその言葉に、誰かが思わず言葉を零した。
井神は引き続き、向かわせる部隊の概要説明に入る。
向かわせる部隊の要員は、54普通科連隊からを主体に、各隊から必要と思われる人員を抽出し、編成。先日の騒ぎがあったばかりであることを鑑み、部隊には89式装甲戦闘車を随伴させることを、井神は説明した。
「人員は追って知らせる、それまでは各員、引き続き割り振られた業務作業に当たるように。質問は?」
各員から、特に質問が上がる様子は無い。
「では、解散」
翌日。
隊は偵察分隊を編成し、分隊は早朝に高地を出発した。
目的地は高地より東の方角に存在する、〝昇林の町〟という名の町。
小型トラック1両と89式装甲戦闘車1両からなる偵察分隊は、地図と平坦な草原に出来た轍を頼りに進み、町を目指していた。現在は小型トラックが先行し、少しの合間を取って装甲戦闘車が続く布陣を取り、行程を進めている。
「エンブリーへ、こちらジャンカー4。視界に不審物無し」
制刻はインカムに報告の言葉を発する。
《エンブリー、了解》
相手は後続の装甲戦闘車の車長だ。報告に対する返答が、各員のインカムに伝わる。
元々演習時に各隊、各車両に割り振られていた無線識別名は、この異世界で集結した各隊で部隊を再編するにあたり、新たな物へと変更されていた。一緒に飛ばされて来た本部管理中隊の隊員が考え、割り振った物だった。どうにもゲームの用語から取られたらしいそれ等のネーミングは、各隊員に若干訝しまれながら受け止められていた。
偵察分隊は20分程轍に沿って進んだ所で、一つのなだらかな丘を越える。そしてそれまで遠くに山や森等しか見てこなかった分隊の各員の目が、視線の先に久しぶりの人工物を捉えた。恐らく石造りであろう城壁に囲まれ、その内側には建造物がひしめいている。まごう事なき町であった。
「あれじゃねぇか」
「あぁ……」
制刻が発し、鳳藤が返す。
待望の目的地をその目に映した各員だが、しかし、一様にその表情は険しかった。
「……煙が上がっている」
双眼鏡を除いて町を確認していた河義が、零すように発する。
町の各所からは、火の手が上がっていた。
「エンブリー、
《あぁ、見えている》
河義は小型トラックの斜め後方に停車した、装甲戦闘車に振り向き、視線を送る。
装甲戦闘車の砲塔上に、キューポラから半身を出して双眼鏡を除く、穏原と呼ばれた装甲戦闘車の車長の姿が見えた。
「一体何が起こってるんだ……」
「まぁ、待ってんのは、十中八九厄介ごとだろうな」
鳳藤の言葉に、制刻が返す。
「穏原三曹、どうしますか?」
河義は、同階級ではあるが自身よりも年上で自衛隊歴の長い、この場の先任者である穏原へ指示を仰ぐ。
《ここで引き返したら偵察の意味がない。行ってみるしかあるまい……》
「了解です……」
偵察分隊は町の南側にある門の前まで来る。
普段がどうかは分からないがその門は今現在開け放たれ、そして周辺に人の姿は無かった。
少なくとも、生きている人間の姿は……。
「冗談だろう」
目に映った光景に、河義は思わず言葉を零す。
門の周辺には、多数の人間の体が横たわり、散乱していた。
「策頼、周辺を警戒しろ。制刻、調べるぞ」
「了ぉ解」
河義と制刻は小型トラックから降車。周辺を警戒しながら、散乱する体の一つへと近寄る。
横たわっていた体は、脈を調べるまでも無く死体だと判別できた。胸に矢が突き刺さり、見開かれたその眼は濁り、虚空を見つめていた。
そして他の横たわる体も、体を切り裂かれている等死因に違いはあれど、どれもすでに事切れている事に代わりは無かった。
「ここの衛兵のようだが……何者かの襲撃を受けたのか?」
「昨日の皺共か、はたまた別の何モンか」
河義の疑問の言葉に、制刻が分析の言葉で返す。
「町の中を調べてみるしかないか……」
河義は開け放たれた門の先を見ながら発した。
制刻と河義は小型トラックに乗車し直し、偵察分隊は門をくぐる。
門をくぐった先には、建造物の密集地帯になっていた。城壁沿いに左右に大きな道が伸び、密集地帯の合間には小型トラックがギリギリ通れそうな小道が伸びている。
「装甲戦闘車は通れないな」
装甲戦闘車の砲塔上から、小道を確認した穏原が発する。
「私達で町の中心部に行ってみます」
「了解、こっちは城壁沿いに行ってみる」
偵察分隊は二手に分かれ、町内の探索をする事となった。
小型トラックは立ち並ぶ建造物の間を通る小道を、徐行速度で慎重に進む。
その理由は、道に散乱する死体を踏まないようにするためであった。
「ひどい……」
この町の住人であろうか、いくつもの死体が進路上に点在している。
鳳藤はそれを横目に呟きながら、おそるおそるといった様子でハンドルを操り、死体を避けながら小型トラックを進めていた。しばらく小道を進むも、以前として生きている人間との接触は無く、やがて小型トラックは十字路に差し掛かる。
「鳳藤、そこを右折しろ」
「は」
河義の指示で、鳳藤はハンドルを切って小型トラックを右折させようとする。小型トラックの前に、建物の死角から何かの影が飛び出してきたのはその時だった。
「うわッ!?」
突然飛び出して来た物体に気付き、鳳藤は反射でブレーキを踏み込む。幸い徐行速度であった小型トラックは難なく停止し、飛び出して来た何かとの衝突は間逃れた。
「なんだ!?」
各員の視線が前方に集中する。そこにいたのは、10歳前後と思われる一人の少年だった。
「子供だ……!」
「生存者がいたのか……君、大丈夫か?」
鳳藤は驚きの言葉を零し、河義は生存者がいた事に少しの安堵を覚えながら、少年に向けて安否確認の言葉を掛ける。
「あ、あ……」
しかし少年は河義の言葉に返事を返す様子は無く、怯えた目をこちらへ向けていた。
「あぁ、怖がらせてしまったようだな」
ファーストコンタクトの失敗に、河義は悪態染みた言葉を吐きながら、制刻と共に小型トラックを降車し、少年に近寄る。
「よぉ坊主、そんなにビビるな。俺等は、別にお前さんに危害を加えるモンじゃねぇ」
「お前の顔で言ってもなんの説得力もないだろう……」
制刻が少年に向けて発した言葉に、運転席の鳳藤は呆れた様子で呟く。
「――!、河義三曹、前方から人が来ます。複数です」
その時、策頼が報告の言葉を上げる。
小型トラックが右折しようとしていた方向に視線を向ければ、その先からこちらに向けて走ってくる、複数の人の姿が見えた。
「彼等も住人か?」
その姿を目にし、疑問の声を上げる河義。
「いや、どうにもこの町の有様の原因のようだ」
しかし制刻が河義の言葉を否定する。
よく見れば、こちらへ走って来る集団は、皆その手に剣や斧、クロスボウ等の獲物を握っている。
「待ちやがれ小僧!」
「逃げられると思ってんのか!」
そして少年に向けて投げかけられたであろう、そんな言葉がはっきりと聞こえて来た。
「うわ、き、来た……!」
迫りくる集団を目にした少年の顔は、一層の恐怖に染まり、少年は制刻の脇を抜けて逃げ出そうとした。
しかしそんな彼の襟首を、制刻が片手でむんずと掴み上げる。
「う、うわッ!?」
「坊主、乗れ」
そして掴み上げた少年の体を、小型トラックの荷台へと荒々しく投げ入れた。
その間にも集団は接近し、そして彼等はこちらの存在に気付いた。
「おい、なんだあいつら?」
「なんだぁ?妙なナリしてやがる。まぁいい……やっちまえ!」
集団の内の一人が荒げた声を張り上げ、そして彼等はそれぞれの得物を手にこちらへと向かって来た。
「河義三曹」
「ッ――こちらは、日本国陸隊です!その場で停止して、武器を置きなさい!」
制刻が河義に、集団が脅威である事を促し、河義は集団に向けて小銃を構え、警告の言葉を張り上げた。
「あぁ?何言ってんだあいつ?」
「何意味わかんねぇこと言ってんだ?――いいから、そのガキ渡せやぁッ!」
集団は河義の警告の言葉に取り合う様子を見せなかった。そして集団の内の一人は、叫ぶと同時に、その手に握った手斧のこちらへ向けて投げ放った。放たれた手斧は回転運動を伴って飛来。そして小型トラックのボンネットに当たってバウンド、地面に落ちてその場に突き刺さった。
「ッ!」
「まぁ、だろうよ」
集団の見せた反応と攻撃に、河義は表情を険しくし、制刻は淡々と発しながら、それぞれ角にあった建物と小型トラックの影に身を隠す。
「うらぁ!」
「やっちまえ!」
集団は手斧の投擲を皮切りに、得物を握りしめこちらへ迫って来た。
「河義三曹」
小型トラック上のMINIMI軽機に付く策頼が、発砲許可を求め、河義の名を呼ぶ。
「糞……今度はゴブリンじゃない……人が相手だぞ」
しかし河義は、今回の相手が明確な人である事を前に、発砲指示をためらう。
河義がためらっている間に、今度はクロスボウの矢が飛来し、河義の身を隠す建物の壁に突き刺さった。
「河義三曹」
策頼が再び河義の名を呼ぶ。
「ッ……発砲を許可する!各員、彼等を無力化しろ!」
「了」
河義は意を決したように命令を下す。策頼は河義の言葉に返すと、MINIMI軽機を集団に向けて旋回させ、その引き金を引いた。連続的な発砲音が響き出し、撃ちだされた5.56㎜の群れが集団へ襲い掛かった。集団の内、先頭を走っていた数人が掃射を諸に受け、「ぎゃッ」「ぐぁッ」といった悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
「な、なんだぁ!?」
突然の異質な何かが破裂するような音と、それと同時に崩れ落ちた同胞の姿に、集団の後続の者達は驚き、狼狽えた。
「繰り返します、こちらは日本国陸隊です!その場で停止して、武器を置きなさいッ!」
河義は建物に身を隠しながら、再び集団に向けて警告の言葉を発した。
「ふざけやがってッ!」
「殺してやる!」
しかし警告の言葉は集団の感情を返って逆撫でしたらしく、彼等はこちらへ向ける殺意をより増長させ、得物を手に再び駆け出した。
「ダメか、糞!」
「弾くより他、ないでしょう」
悪態を吐く河義に、制刻は淡々と言葉を掛けながら、集団の内の一人を狙って、安全装置が単発に合わせられた小銃の引き金を引く。集団の端でクロスボウを構え、こちらを狙っていた一人が、もんどり打ち崩れ落ちた。
「うぎゃぁ!?」
「な、なんなんだアイツ等!?」
MINIMI軽機による掃射を中心とした攻撃に晒され、集団はあっという間にその数を2割以下へと減らす。そして残された者達は攻勢の勢いを失い、狼狽えだした。
「く、糞……逃げようぜ!」
「あ、あぁ……あいつらおかし――グェッ!」
逃走の様子を見せた集団だが、その内の一人が小銃弾を首に受け、奇妙な悲鳴と共に倒れ込む。
「おい!もういい、逃げる者まで撃つな!」
「いえ、逃がすと俺等の事を、仲間に知らせるかもしれません」
河義の命令に、しかし制刻は異議を唱え、そして背中を見せて逃げ出した最後の一人に向かって引き金を引く。最後の一人はその背中に5.56㎜弾を受け、悲鳴と共に前のめりに倒れ込む。
それを最後に、各員の視線の先には死体のみが散らばり、動く者の姿は無くなった。
「静かんなったな」
それを確認した制刻は、簡単な作業でも終えたかのように、シレっと一言発した。
「お前……懸念は認めるが、指示には従え……!」
「えぇ、失礼しました」
制刻に対して河義は、表情を険しくして、釘を刺す言葉を発する。対する制刻は態度を変えず、淡々とした謝罪の言葉で答えた。
「人を……撃った……」
一方、運転席では鳳藤が小銃を降ろした姿勢で、震えた声を零していた。
こちらに明らかな敵意を向ける存在だったとはいえ、初めて人を撃ち、殺傷したという事実に、彼女の心は動揺していた。
「鳳藤、大丈夫か?」
そんな状態の鳳藤に、制刻は変わらぬ淡々とした口調で声を掛ける。
「大丈夫なわけ……あるか……!お前とは違うんだ……!」
制刻の言葉に、鳳藤は険しい表情と震えた声で言葉を返した。
「まぁ、ちょっと休んでろ。でだ――坊主、大丈夫か?」
制刻はその禍々しい眼を、鳳藤から、荷台に放り込まれていた少年へと向ける。
「ひ……」
しかし制刻の恐ろしい顔と眼を向けられ、少年は縮こまり小さな悲鳴を上げた。
「……君、心配しないで。大丈夫、私達は君の敵じゃない」
河義は返って少年を怖がらせた制刻の存在に若干呆れながら、両者の間に割って入り、少年に向けて発する。
「え……?は、はい……」
制刻と違って人並みの風貌である河義から発せられたその言葉に、少年は未だ状況を飲み込めていない様子ながらも、ようやくその顔から恐怖の色を少しだけ消して返事を返した。
「君はこの町の人かい?この町で一体何があったんだい?」
少年の様子が少しではあるが落ち着いた事を確認した河義は、少年に向けて尋ねる。
「あ、あの……助けて下さい!お、お兄さんが……ッ!」
しかし少年は河義の質問の言葉には答えず、逆に何か焦った様子で河義へと訴えて来た。
「落ち着いて。そのお兄さんというのは?」
「坊主の兄貴か?」
河義は少年に落ち着くよう促してから訪ね、隣にいた制刻が言葉を付け加える。
「い、いえ……僕を山賊達から逃がしてくれた、猟師のお兄さんがいるんです!でも……僕を逃がす代わりに山賊に囲まれて……!」
少年は焦りながらも、必死に彼の身に起こった出来事を伝えて来る。
「山賊というのは、今しがた交戦した彼等のことか?」
「また、分かりやすい奴らが出て来たな」
河義が視線の先に散乱する死体を一瞥しながら発し、制刻が続いて低い声で発する。
「お願いです!お兄さんを助けてください……!」
少年は焦った様子で懇願して来る。
「河義三曹、どうします?」
制刻は河義に尋ねる。
「――放っておくわけにはいくまい」
「ですね……」
河義は一瞬考えた後に言い、鳳藤も以前青い表情ながらもそれに同意する。
「君、大丈夫だ。その人は私達が助けよう」
そして河義は少年に向けて言った。
「で、肝心のその兄ちゃんが囲われてるってのはどこだ?」
続いて、制刻が少年に向けて尋ねる。
「役所……あそこに見える建物の前です……!」
少年は北東の方向を指さす。他の建物より若干大きな建物の屋根が、町の中心部付近に見えた。
「あれか、分かったよ」
河義は役所の建物をその目で確認すると、身に着けていた指揮官用無線機のハンズフリーマイクに向けて話し始めた。
「エンブリー願います、こちらジャンカー4ヘッド河義。この町の住人らしき子供を一名保護。彼の話によると、この町は山賊の襲撃に遭っているとのことです」
《山賊だって?》
河義の発報した通信の内容に、装甲戦闘車の穏原から若干の驚きが含まれた言葉が返って来る。
「そうです――さらに彼の話によると、危険な状態に陥っている人がいるとの事。 場所は町の中心部に見える役所の近くです」
《役所――ああ、あれか?こちらでもそれらしき建物を確認した、なんとかそちらに合流する》
「こちらは先行して、その人の保護に向かいます」
《了解、無理はするなよ。エンブリー、終ワリ》
更新を終えた河義は、そこで少年が訝し気な視線を自分に向けている事に気付く。
「あの……何を……?」
そして少年は突然一人で喋り出した河義を不可解に思ったのか、困惑した表情でおずおずと尋ねてくる。
「あぁ、私たちの味方と連絡を取ったんだ。ともかく、今はその人の所へ急ごう」
河義と制刻は再び小型トラックに乗車。
「鳳藤、急いでくれ」
「は」
鳳藤の操作で小型トラックは発進する。
「う、うわ……ッ!?」
動き出した小型トラックに少年は驚く。そんな彼を乗せて、小型トラックは役所を目指して速度を上げた。