―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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18-10:「Hard Flight Chinook」

 町の東側の城壁近くにある警備隊の分所。

 その二階から屋上に繋がる梯子を、一人の警備兵が魔導書を片手に登っていた。

 彼は天井扉から屋上へ這い出ると、そこには敵の異質な飛行物体に対して魔法攻撃を行ってる、二人の警備兵の姿があった。

 

「すまん!遅くなった」

 

 屋上へと這い上がった警備兵は、先の二人に向けて声を上げる。

 

「ルーブン警備兵長!」

 

 魔法攻撃を行っていた内の片方の女警備兵が、彼の名と役職を口にする。

 

「どうだ、状況は?」

「有効打は確認できていません。敵もこちらを警戒はしているようですが。それと……他の魔法隊から攻撃が上がる様子が見られなくなりました……」

「やられたのか……糞……!」

 

 報告の言葉に、苦い声を零すルーブン。

 

「レフス。スティア・ニューヅはもういい。今からスティア・ハルスをリムントを掛けて撃つ」

 ルーブンは魔法詠唱を行っていたもう一人の警備兵に声を掛ける。

「了解です」

 

 ルーブンの言葉を受け、レフスと呼ばれた警備衛は詠唱を中断。

 そして一呼吸置き、それまでとは別の詠唱を開始した。

 すると、彼等の間に割って入るように、中空に三つの鉱石が生成され始めた。

 氷が解ける様子を逆再生しているかのように、鉱石はみるみる大きくなり、柱の形を成してゆく。

 そして最終的に、2mを越える長さの鉱石柱が三つ、中空に形成された。

 

「よし、待ってくれ」

 

 本来であれば生成された鉱石針や柱は、すぐさま目標へ向けて撃ちだされるが、ルーブンが指示したように、今しがた生成された三つの鉱石柱は、中空で静止したままだ。

 そしてルーブンは、持っていた自分の魔導書を屋上の床へと置いて広げる。そして開かれたページの文字列に目を落とし、そして詠唱を開始した。

 

「召喚に答えし万物の現れよ!汝は我が命の従僕なり――」

 

 詠唱を開始されて数秒経過した所で、それぞれの鉱石柱の先端に、薄白い紋様が浮かび出した。

 そしてそれはやがて、それぞれの鉱石柱の全体へと広がってゆく。

 

「――汝は我が命に従がいしものなり!よし、射出してくれ!」

「は。――鋼よ、心をも貫く鋼よ!愚かなる者達のその身に、冷徹な裁きとして打ち込みたまえ!」

 

 警備兵レフスの詠唱を合図に、三つの鉱石柱は勢いよく撃ちだされた。

 

 

 

《左、市上です!機体左側よりデカブツが来ます!》

 

 コクピット内の両名の耳に、ロードマスターの市上からの報告が届く。

 

「あぁ、こちらでも確認した」

 

 小千谷は示された方向に視線を向けながら返す。

 該当方向に、こちらに向けて飛来する、複数本の鉱石の柱が確認できた。見るに、その速度はこれまでの鉱石針よりも遥かに低速だ。

 

「回避する」

 

 維崎の操作により機体は向きを90度変え、向きを変えた機体の脇を、三つの鉱石柱は飛び抜けて行った。

 

「ふぅ。でかい分、遅くて助かったな」

「――いや、まだだ」

 

 小千谷の零した安堵の声を、しかし副機長の維崎は否定する。

 

《操縦室へ警告。デカブツが反転して戻って来た》

 

 二人の耳に再び届いたのは、後部に居る制刻からの報告だ。

 

「ッ、反転!?」

 

 小千谷が驚いて操縦室から振り向くと、開かれた後部ハッチの向こうに、旋回する鉱石柱の姿が微かにだが見えた。

 

「チ、やはりそういうオチか」

 

 淡々と悪態を吐きながら、維崎は操縦桿を操り、機体はもう一度向きを変える。

 しかし今度は完全回避とはならず、鉱石柱の一つが、機体の脇をゴリと掠めた。

 

「ッ!」

「ぬるい、回避運動じゃ駄目だな」

 

 言うと維崎は操縦系を操作し、エンジンの出力を上げる。

 操作は反映され、ローターは回転数を上げて機体は急上昇を始めた。

 

「ッ!?おいッ!」

 

 再びの独断による操縦に、小千谷は維崎を咎める声を発するが、維崎は操縦に意識を向けて小千谷に見向きもしなかった。

 

「ッ――急上昇する、各員掴まれッ!」

 

 仕方なく小千谷は、慌てて機内の各員へ急上昇に備えるよう、無線に向けて叫んだ。 

 

 

 

 機体は一定の高度まで上昇した所で、維崎はエンジンの出力を一気に低下させる。揚力を失った機体は上昇を止め、機首をより下に向けて、落下するような降下に入る。

 機体一つ分降下した所で、追いかけて来た三つの鉱石柱が、入れ違い、ほんの一瞬前まで機体があった空間を掠め、上空に飛び去って行った。

 

「うっわ!」

「ギリギリだったな」

 

 その様子を後部ランプから見ていた鳳藤と制刻が、それぞれ驚き、あるいは端的な声を上げる。

 

《後ろ。魔法のミサイルは撒けたか?》

 

 コックピットの維崎から、状況を訪ねる通信が届く。

 

「――いえ。上空で反転して戻ってきます」

 

 それに対して制刻が返答する。

 制刻の言葉通り、三つの鉱石柱は飛び抜けて行った先で宙返りにより反転、再びこちらを追いかけて来ていた。

 

《この程度じゃ駄目か――。これより急降下し、その後再度上昇する。各員、しっかり掴まれ》

 

 維崎からの他人事のような淡々とした口調での警告が、無線を通じて機内の各員の耳に届く。

 

「こりゃぁ、ハードなフライトだな」

「言ってる場合かぁ!」

 

状況にも関わらず、シレっと発された制刻の言葉に、必死に一番後ろの座席にしがみ付いている鳳藤が叫び声を上げた。

 

 

 

 機体を一定の高度まで急降下させた所で、維崎は再び出力を上げて、同時に操縦桿を引き起こす。

 機体は降下速度を低減。やや斜めに傾いた機体は、町並みの上空ギリギリを滑るように掠めてゆく。その様子は、まるで波に乗るサーフボードのようであった。

 そして機体は、再び上昇に転じる。

 降下により上がった速度を保ったまま上昇に転じた機体は、機首が上を向き、開け放たれている後部ハッチからは眼下の町並みがはっきりと見える。

 そして搭乗している各員は、そこから落下してしまわないよう、懸命に各重機や手すり、突起部等にしがみついていた。

 

「ッ――無茶だ!CHは、戦闘機じゃないんだぞッ!」

 

 維崎に向けて叫ぶように発する小千谷だが、対する維崎は操縦に意識を向け、返事を返そうともしない。

 

「後ろ……どうだ!?」

《まだついて来ます》

 

 小千谷の報告を求める声に、無線越しに制刻の端的な返答が返って来る。

 

「地面に突っ込んでくれりゃよかったが、そううまくはいかんか」

 

 どこかつまらなそうに発する維崎。

 

「フレアだッ!フレア放出ッ!」

 

 小千谷は操縦系からフレアを選んで操作。

 機体に装備されたフレアのランチャーから、多数のフレアが盛大に機体後方に撒き散らされる。

 

「観測手、どうなった!?」

《ダメです。動きに少しムラがあるトコを見るに、おそらくこりゃぁオペレーターによる目視誘導でしょう。そいつを潰さんとダメかと》

「ッ――!」

 

 しかし残念な事にフレアによる成果は無く、状況にも関わらない制刻の淡々とした報告と進言に、小千谷は顔をより顰めた。

 そうこうしている間に、機体は再び一定の高度まで上昇。

 そして維崎の出力及び機体姿勢操作により、機体は後部を持ち上げるようにし、逆に機首はさがって下を向く。

 そして機体はまたも追って来た鉱石柱と入れ違い、二度目の降下を始めた。

 

「ラチが空きそうにないな」

「ッ……このままじゃ、そのうち墜落してしまうぞッ!」

 

 機体を降下させながら淡々と発する維崎と、険しい表情で発する小千谷。

 小千谷の言う通り、このままではいずれ鉱石柱が命中して墜落するか、回避機動を失敗して地上に激突するかのどちらかだった。

 小千谷は片手で必死に操縦桿を操りながら、もう片手で無線のスイッチを入れ、声を張り上げる。

 

「ライフボートよりペンデュラム!こちらは誘導兵器による追尾攻撃を受けている!オペレーターはトロイカ3と思われる、地上ユニットによる排除願いたい!至急――!」

 

 

 

 草風の村、空き倉庫の指揮所。

 

「井神一曹」

 

 算域に呼び掛けられ、井神はホワイトボードに向けていた視線そちらへと移す。

 

「どうした」

「ヘリコプターが急激な回避行動を行っています」

 

 ノートパソコンの画面に視線を落とせば、算域の言葉通り、激しい機動飛行を行うCH-47Jの姿が。そしてCH-47Jを追いかける飛行物体の姿が映像上に確認できた。

 

「これは――ミサイル?……いや、話に聞いた鉱石兵器に追われているのか?」

 

 画面上の光景から、状況を推察する井神。

 

《ライフボートよりペンデュラム!こちらは誘導兵器による追尾攻撃を受けている!オペレーターはトロイカ3と思われる、地上ユニットによる排除願いたい!至急――!》

 

 直後、その推察を肯定するように、置かれた無線機より、小千谷の声での要請の通信が飛び込み聞こえて来た。

 

「まずいです。トロイカ3は地上の各部隊からは遠すぎる。対応手段がありません……!」

 

 映像上に視線を走らせつつ、苦い口調で発する算域。

 

「……いや、確か装甲戦闘車の誘導弾は、無人機経由での誘導が可能だったな」

 

 しかし井神は思い返す言葉を発する。

 

「オープンアーム・コントロール。トロイカ3の位置をズームアップしてくれ――ケルケさん」

 

 井神は無人観測機の操縦室に指示を送ると、背後に振り向き、そこに居た人物の名前を呼ぶ。

 井神の背後には、村人の一人であるケルケの姿があった。

 昨晩、凪美の町へ鷹幅達を送り届けた小型トラックに同行していた彼は、今は村に戻り、引き続き助言人として指揮所に立ち会っていた。

 

「ん、なんだい……?」

 

 井神等の背後から不思議そうにノートパソコンの画面を注視していたケルケは、突如声を掛けられ、若干戸惑いながらも返事を返す。

 

「この建物が、何の施設か分かりますか?」

「んん……?あぁ、これは警備隊の分所だよ」

 

 指し示された映像上の一部。それにケルケは最初、引き続きの戸惑いの顔で注視。しかしやがて判別がつき、回答の言葉を発した。

 

「警備隊――ということは、建物に一般の住民の方がいる可能性は低いですか?」

「あぁ、所用で分所を訪ねる住民がたまにいる程度だ。今は早い時間だし、それも無いと思う」

「そうですか。ありがとうございます」

 

 井神はケルケに礼を言うと、インカムに向けて言葉を発し始める。

 

「オープンアーム・コントロール及び車輛隊のエンブリーへ。トロイカ3に対する誘導弾攻撃の実施を要請する――」

 

 

 

 車輛隊は警備隊本部への進行を一時中断し、停止する。

 そして車列の殿を務めている89式装甲戦闘車は、誘導弾攻撃の準備を始めた。

 

「目標位置は現在位置の東南東か――砲塔を4時の方向へ向けろ」

 

 装甲戦闘車車長の穏原三曹が、車内のモニターに映る無人観測機からの上空映像を注視しながら、指示の声を上げる。

 

「了解」

 

 それに髄菩が答え、彼の操作により砲塔が旋回する。

 

「誘導弾発射用意」

「了」

 

 該当方向を向いた砲塔。その側面に搭載された、中距離多目的誘導弾を収めた発射機が作動。仰角を取り、発射口の蓋を開口する。

 

「エンブリーよりオープンアーム・コントロール。誘導弾発射準備完了、誘導操作をそちらに渡す」

《オープンアーム・コントロールよりエンブリー。受け取った、合図と共に発射願う》

 

 準備が完了した旨を、草風の村の無人観測機の操縦室に送る穏原。それに、八島の声で返答が来る。

 

《マスターアーム、オン》

「マスターアーム、オン」

 

 操縦室側からの、安全装置を解除する声。

 同時に砲手の髄菩も復唱し、そして装甲戦闘車側の安全装置を解除。射撃装置のグリップを掴み、トリガーに指を掛ける。

 

《――ライフル》

「ライフル――」

 

 そして射撃の合図が降りる。

 それを聞き、復唱すると同時に、髄菩は射撃装置のトリガーを引いた。

 ――直後、瞬間的な轟音が響いた。

 誘導弾の推進装置が点火し、発射。誘導弾は発射機を飛び出し、推進音と煙を盛大に立てて、上空へと撃ち出された。

 

 

 

 草風の村。無人観測機操縦コンテナの内部。

 内部に設けられた座席に座す八島と縣は、多数あるモニターの内の一つに注視している。

 そこに映し出される、凪美の町の上空映像。

 その一角、装甲戦闘車.の位置よりで煙が上がり、そして軌跡を描いて飛翔体が飛び出した。

 

「発射確認。誘導開始」

 

 上空に撃ち出された誘導弾は、この操縦室に誘導を委ねられた。

 発した八島は、握っていた操縦スティックを細かく操作し、誘導弾の操作誘導を開始する。

 映像上で噴煙の軌跡を描く誘導弾は、八島の微細な操作で飛翔方向を変え、町の上空を飛び越えてゆく。

 誘導弾を導く先は、今まさにCH-47Jを襲っている、魔法現象のオペレーターの所在と思しき建物。

 操縦室内に一定間隔で鳴る電子音に合わせて、誘導弾はみるみる内に、マーカーの付けられた建物との距離を詰める。

 

「弾着まで、10秒――8、7、6――」

 

 八島は弾着カウントを開始する。誘導弾は吹かす尾部を煌めかせながら、目標建物へと降下してゆく――

 

 

 

「ッ、当たらない……!」

 

 警備兵の焦る声が上がる。

 警備兵長ルーブン率いる魔法隊の一隊は、打ち出した鉱石柱を遠隔操作で操り、上空を飛ぶ異質な飛行物体を墜とそうと、懸命にその姿を追いかけていた。

 

「巨体の割に、機敏に動くな……」

 

 しかし上空の異質な飛行物体は、その巨体に似合わぬ動きを見せ、鉱石柱の追撃から逃げ続けていた。

 その姿に、少し苦い口調でルーブンは零す。

 

「このままでは決め手に欠けます、兵長」

「いや、現状維持でもいい。俺達が追いかけておる内は、あの飛行物体の眼は地上には向かない」

 

 進言の言葉を上げて来た術師警備兵のレフスに、しかしルーブンは説く言葉を発する。彼の言葉通り、飛行物体を追いかけてその眼を地上より外し、他隊をその脅威から逃すだけでも、意義は十分にあった。

 

「あとは根気勝負だ、いずれは――」

「ルーブン兵長!西側を!」

「ッ!」

 

 しかし、補佐の女警備兵が声を張り上げたのはその時であった。

 女警備兵は上空の、今追っている飛行物体とは別方向を指し示している。

 

「あれは――?」

 

 それを追ったルーブンの目に飛び込んで来た物。

 それは、煙による軌跡を描いて飛ぶ、また別の異質な物体であった。

 

「こちらに来ている――!?攻撃か!?」

 

 ルーブンは瞬時に、それが自分達を狙う攻撃である事を察する。

 

「レフス!攻撃を中止、あれを迎え撃て!」

 

 即座に術師警備兵に、上空の飛行物体の追尾中止を命じ、こちらへ迫る新たな物体への迎撃行動を命じるルーブン。

 

「隊長――来ます――」

 

 しかし補佐の女警備兵が、微かに震えた声を寄越す。術師警備兵が体制を移すよりも早く、その飛行物体は、信じられぬ速度でルーブン達の元へと迫って来る。

 

「ダメだ――間に合わない――」

 

 ルーブンの口から零れる言葉。

 飛び込んで来た飛行物体の先端の、光る眼のような物と、ルーブンの目が合う。

 それが、警備兵長ルーブンの見た最後の光景となった――

 

 

 

「4、3――弾着――今――」

 

 八島の静かなカウントが終わりを告げる。

 カウントが終着点に達すると同時にで、誘導弾はマークされた建物に飛び込み、着弾。

 ――無人観測機から送られる映像上の一角で、盛大な爆煙が上がった。

 

「――各ユニットへ。誘導弾の目標への着弾を確認した。効果確認願う」

 

 着弾を確認し、無線を通じて各隊への報告を上げる八島。

 

「……」

 

 そして吹き飛んだ映像上の一角に、再び視線を向ける八島。

 淡々とした、そしてどこか他人事のような作業的な手順。

 しかし確かな、戦闘、殺しであるその行為。それに八島は不快感を感じ顔を顰めつつも、まだ続く仕事へと戻る。

 

 

 

 CH-47Jは、激しい回避行動を続けていた。

 何度目かの急上昇の後に、機体前部を起点に後部を大きく振るい、ターンを描く様に機体の向きを変える。

 まるでバンクを飛び出したスケートボードのターン行動のようだ。

 そして急激な姿勢変更を行った機体の後方を、またも鉱石杭の群れが飛び抜けていく。

 

「ッ、長くは持たないぞ……ッ!」

「しつこいな」

 

 操縦室では、小千谷と維崎が操縦桿を懸命に操りながらも、それぞれ言葉を零す。

 

「観測手!どうだ!?」

 

 小千谷は、観測手を務める制刻に向けて叫び尋ねる。

 

《また一度飛び抜けて行きました。ただ、セオリー通りなら反転して――待った》

 

 制刻の声で来た報告は、しかしそこで一度区切れる。

 

《――様子が変わりました。鋼の杭が、明後日の方向に行ったっきりです》

「何?」

 

 そして聞こえ来た制刻の報告。それに、小千谷も振り返り風防越しに背後を見る。

 見れば、機体の背後を飛び抜けて行った三本の鉱石杭は、飛び抜けたまま明後日の方向に散って行く姿を見せていた。

 

「あれは――」

《ライフボート、こちらペンデュラム。エンブリーの誘導弾が敵オペレーターの建物を無力化した。そちらに変化はあるか?》

 

 そこへ、指揮所の井神より、確認を求める声が飛び込んで来た。

 それにより、小千谷始め搭乗する各員も、オペレーターの無力化された事を知る。

 

「!――ペンデュラムよりライフボート。当機は敵の誘導兵器の追尾から逃れた。敵オペレーターが無力化された物と認む」

 

 そして無線に返す小千谷。

 その傍らで、維崎が機体操作を行い、機体は急激な回避行動から通常航行へと回復してゆく。

 

「各員各所、無事か?」

 

 小千谷は、搭乗する各員に安否確認を問う声を送る。

 

《右銃座、無事です!》

《左銃座、ヨシ》

《後部重機関銃、問題無し……》

《観測班二名。幸い、落っこちてはねぇ》

 

 機内各所各員より、無事な旨が無線越しに上がって来た。

 

「よし――搭乗各員も無事、当機は脅威より脱した。これより作戦支援に復帰する――助かった。各ユニットに感謝する」

 

 安定を取り戻した機体の上で、小千谷は微かに脱力し、無線に向けて言葉を送る。

 

《また、刺激的なフライトだったな》

《冗談……!もう二度と御免だぞ……!》

 

 そして無線越しに、制刻の淡々とした軽口と、鳳藤の苦い声での言葉が流れ聞こえて来た。

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