―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》 作:えぴっくにごつ
陸隊、車輛隊の現在位置より少し先の地点。
凪石通りと命名された一角。その通りに面する各建物に、多数の警備兵が配置していた。
凪美の町警備隊の中でも、中心部の警備を担当する中央区域隊と呼ばれる隊の彼等は、これよりここを通ると予測される、侵入者の隊列に待ち伏せ攻撃を仕掛けるべく、備えていた。
「フラナシン区域長。各隊各員、配置に着きました」
一軒の建物の屋根の上。そこに立つ一人の壮年の男に、副官の警備兵が報告を上げる。
「近隣住民の避難は?」
「完了しています。突然の事なので、少し混乱が見られましたが」
「そうか……朝から、住民の生活を乱す事となってしまったな」
報告を受けたフラナシンという名の、区域隊長である壮年の男性は、少し愁いを帯びた顔で呟く。
「まったく、忌々しい侵入者共です……!」
それに同調するように、憤慨した様子で言う警備兵。
「だが、侵入者はどうにも、我々が追いかけている勇者一行を回収に来たようだ。元を辿れば、侵入者を引き入れてしまった原因は、我々にあるのかもしれない」
「ッ……」
しかし、引き続きのフラナシンのそんな言葉に、警備兵は現実を思い返して表情を曇らせた。
「――いや。何にせよ、侵入者の撃退が我々の役目だ。心して掛かるぞ」
「……はッ!」
そんな警備兵の心情を察してか、フラナシンは鼓舞の言葉を紡ぐ。それに警備兵は、気持ちを切り替え答えた。
「フラナシン区域長、後方より箒が」
フラナシン達に声が掛けられたのはその時であった。声の主は背後に位置していた別の警備兵。警備兵は、背後上空を指し示している。フラナシン達が振り返りそれを追えば、背後上空に、こちらに向かってくる一機の箒の姿が見えた。
箒はやがてフラナシン達の陣取る建物の屋根の上へと飛来。箒に横向きで乗っていた人物は、優雅に屋根へと足を着く。その人物は、露出の覆い扇情的な衣装を纏った、エルフの少女ルミナであった。
「件の、エルフの娘達か」
「気色の悪い格好を……」
ルミナの姿を確認し、フラナシンは呟き、警備兵は嫌悪感を露わにした表情で零す。
「君が、協力者であるエルフの子か?」
降り立ったルミナの前に立ち、尋ねるフラナシン。
「何?アンタ?」
しかしルミナから返って来たのは、不機嫌そうでぶっきらぼうな返事であった。
「失礼。この場の指揮を預かる、中央区域隊長のフラナシンだ」
対して、あくまで礼節を保って接するフラナシン。
「ふーん、あっそ」
しかしルミナの対応は、そっけなくそして失礼極まりない物であった。
「な!君なぁ!」
「よせ」
ルミナの態度に憤慨の様子を見せたのは、副官の警備兵。しかしフラナシンはそれを差し止めた。フラナシンも内心では良くない心情を抱いていたが、指揮官である者が冷静さを欠いて憤慨しては元も子もない事から、それを押し留めていた。
「で、敵は?」
そんなフラナシン達をよそに、ルミナは退屈そうな態度で尋ねて来る。
「もう間もなくこの通りを通過する。君には、そのタイミングを見計らって、術を発動してもらいたい」
「ふん。アンタの指示なんて聞いてないわよ。あたしはマイリセリアお姉様から仰せつかった仕事をするだけ」
答え、そして要請したフラナシンだったが、ルミナから返って来たのはそんな突っぱねる言葉。
「貴様――!」
それに対して、副官の警備兵は再び怒りの声を上げようとした。
「区域長!侵入者の隊列ですッ!」
しかし、響き割り行った大声がそれを遮った。
隣接する家屋の屋根に立つ観測役の警備兵が、通りの先を指し示している。
その先を見れば、町路を唸り声を上げて駆ける異質な物体の隊列が、こちらへと向かう姿が見えた。
「ッ――来たか!各員、備えろ!」
それを目にしたフラナシンは、周辺に配置した各警備兵に、指示の声を張り上げる。
「ふぅん、変わってるわね。まぁ、なんでもいいけど」
一方のルミナは、対して興味もなさそうに言うと、建物の屋根の縁へと立つ。
「で。今からミル・ダーウを発動するけど、アンタ達その中でも動ける訳?」
そこでルミナは、ついでと言った様子でフラナシンへ尋ねる。
「配置した各員には、対抗魔法を施している。君の魔法下でもう行動に支障はない」
「ふーん、そ」
答えたフラナシンに、ルミナはつまらなそうに返す。
その間にも異質な隊列は接近し、そして警備隊の配置した一帯へ間もなく踏み込む。
「――愚者共よ。負に囚われ、膝を折れ――」
それを眼下に見ながら、ルミナは詠唱を紡いだ。
車輛隊は、しつこく纏わりつく警備隊の箒隊に向けて、対空砲火を撃ち上げながらも、進行を続け、町路を駆け抜けていた。
「先頭ハシント。もう少し速度を上げられないか?」
車列の4輌目に位置する、指揮車兼ガントラックである大型トラックの助手席。そこに座す長沼が、無線で先頭を走る指揮通信車に向けて要請を送る。
《これ以上は無理です!道が狭く、真っ直ぐじゃない。さっきから色んな物を轢き飛ばしてる!》
しかし指揮通信車車長の矢万からは、そんな言葉が返される。
「了解、仕方ない」
長沼はそれ以上の無理強いはせずに、端的に返した。
「上からのいい的です」
無線でのやり取り横で聞いていた、運転席の舞魑魅が難色を示す声で言葉を寄越す。
「だが、危険な無理強いもできん。対空戦闘に当たっている各員に、尽力してもらうしかない」
「ですがこれが続――」
長沼の言葉に対して発せかけられた舞魑魅の言葉は、しかし不自然に途切れる。
不審に思った長沼は、周囲に向けていた目を運転席へと移す。
「――!舞魑魅一士!?」
そこで目に飛び込んで来たのは、上体を倒してハンドルに突っ伏す、舞魑魅の姿であった。
「ぁ、体……が……」
力なく声を零す舞魑魅。
明らかな異常事態。
そしてハンドルを操る主を失ったガントラックは、車体を大きく揺らして進路を反れる。
「ッ――!」
長沼は慌てて運転席側に手を伸ばし、ハンドルを掴む。
しかし体勢を持ち直すにはすでに遅く、次の瞬間に、ガントラックは道の建ち並ぶ家屋の内の一軒に、その巨体の頭を突っ込んだ――
ほぼ同じ瞬間。
先頭を行く82式指揮通信車の車上で、12.7㎜重機関銃を可能な限りの射角を取り、対空戦闘を行っていた矢万。
その彼が、異常事態を目の当りにしたのは次の瞬間だった。
車体前方助手席上で、MINIMI軽機に着いていた宇現が、突如身を崩して、ハッチから車内に力なく崩れ落ちたのだ。
「ッ!宇現、どうした!?」
尋ねる言葉を張り上げる矢万。
しかし直後、その耳に後方より鈍い衝撃音が聞こえ届く。
「――なッ!?」
キューポラ上で半身を捻り振り返れば、指揮車兼任のガントラックが、道を反れて家屋に突っ込んだ様子が見て取れた。
「鬼奈落、止まれッ!」
《全車停車!停車しろッ!》
矢万が操縦手の鬼奈落に向けて叫ぶ。そして、最後尾の装甲戦闘車に搭乗する、長沼に続く先任者の穏原からの、全体への指示が無線越しに聞こえ来たのはほぼ同時であった。
車輛隊全車は急停止し、進行を止める。
「ッ――何が……!?」
突然巻き起こった事態に対して、声を上げかけた矢万。しかし彼は瞬間、頭上に現れた複数の気配と、向けられる殺意に感づく。
そして視線を上げれば、周辺家屋の屋根上より、得物を携え現れる多数の人影を、その目に見た。
《――待ち伏せだぁーーッ!》
そしてインカムより、誰かが叫んだ声が飛び込んで来た。
「ッ……――」
家屋に突っ込んだガントラックのキャビン内部。
長沼は衝突時に体を襲った衝撃の余波に、顔を顰めつつも顔を起こす。フロントガラスの向こうには、突っ込んだ家屋内部の様子が見て取れる。幸いにも、家屋は無人のようであった。
「舞魑魅一士……!大丈夫か!?」
長沼は視線を運転席側に向けけ、舞魑魅に向けて尋ねる。
「に、そう……体が、動か、ない……」
しかしその舞魑魅は、依然としてハンドルに顔を突っ伏し、力ない声を上げてその旨を訴えて来た。
「これは――」
その姿に、襲い来た現象がなんであるかの察しを付け、言葉を零し掛ける長沼。
しかしその時、ガン、ガン、と。外部よりトラックの表面を叩くような音が聞こえ来た。
《――アルマジロ1-1!長沼二曹、無事ですか!?こちらエンブリー!》
そして同時に、穏原よりの安否確認の声が、インカムより飛び込んで来た。
「――エンブリー、私は無事だ。だがドライバーの舞魑魅の身体に異常発生!各所、状況を知らせ!」
長沼はそれに返信し、そして各所へ報告を求める声を上げる。
《ハシントよりアルマジロ1-1!我々は待ち伏せ攻撃を受けました!異常現象により搭乗員一名ダウン!》
《ジャンカー2!こちらも一名ダウン。現在、周辺より攻撃に晒されている!》
《こちらデリック・カーゴ!車長の身に異常!指示を!》
長沼の声に対して、各所各員より立て続けに無線報告が舞い込んでくる。
《ッ――各隊、無事な者は応戦行動を取れ!》
長沼は無線に向けて発し上げると、助手席ドアを開いて外へと出る。敵の攻撃下に身を晒す行為だが、状況を把握するには必要な行動であった。
車外に出て地面に足を着き、身を低くして周囲に視線を走らせる。
通りには間延びした車輛隊の各車が、隊列を乱して停車。各車の搭乗していた各員は車上より、あるいは降車して、各家屋に陣取った警備隊兵に向けて応戦している。
長沼の搭乗していたガントラックの荷台からも、数名が降車し展開。車外戦闘にあたっていた。
「富士(ふじ)三曹、そちらに被害は!?」
「6分隊からは被害ありません!」
長沼は車外戦闘を繰り広げる隊員の中に、ガントラック搭乗分隊の分隊長の姿を見止め、尋ねる。分隊長からは、幸いにも搭乗分隊に被害の無い旨が返された。
「よし。舞魑魅一士の身を荷台へ。誰か代わりに運転を!」
「了!安良(あら)、錫薙(すずなぎ)、かかれ!」
分隊により長沼の指示が下達され、指名された分隊員等は作業に掛かって行く。
「ッ――」
それを見届けた後に、長沼は苦い表情を浮かべつつ、周辺家屋を見上げる――
車輛隊の車列中段に位置する装甲トラック。
その傍では4分隊の河義、そして竹泉、多気投等。さらに同乗していた2分隊の隊員数名が、降車展開し戦闘に当たっていた。
《各所各員へ。異常の原因は、おそらく警備隊からの魔法現象攻撃と思われる。異常を発した隊員を回収収容し、代役を配置しろ!》
各員の装着するインカムへ、長沼の指示の言葉が飛び込んでくる。
「畜生!脅威存在はいないんじゃなかったのかよッ!」
出動前のミーティングでは、警備隊には特殊能力を扱う脅威存在は居ないであろう旨が伝えられていた。しかし現状、車輛隊は特殊能力の脅威に襲われた。
事前通達との相違に、2分隊の隊員から荒んだ声が上がる。
「んなこったろぉとは思ったよ」
一方、竹泉は皮肉気に吐き捨てつつ、装甲トラックを遮蔽物にして小銃を構え、家屋上の警備兵立を相手取っている。
《エンブリーより各ユニット。これより家屋に機関砲攻撃を行う》
そこへ今度は、装甲戦闘車の穏原の通達の声が、インカムより飛び込む。
そして車列殿の装甲戦闘車が、その砲塔を旋回させ、35㎜機関砲の仰角を取る姿が見えた。
《ダメだ、エンブリー!撃つな!》
しかし瞬間、長沼からの差し止める声が無線通信上に上がった。
《各家屋に民間人が残っている可能性がある。機関砲他、強火力での攻撃は許可できない!》
「あぁ?悠長な事言ってる場合かよ?」
長沼の可能性を懸念する言葉と指示。それを聞いた竹泉は苦言の言葉を呟き零す。
《各分隊、家屋に侵入し内部より制圧しろ!ジャンカー6は車列西側の家並み。ジャンカー2及び4は東側だ!》
「マジかよ」
続け聞こえ来た指示に、面倒臭そうな様子を隠そうともしない竹泉。
《6、了解》
《2ヘッド、了》
「4ヘッド、了解!」
竹泉をよそに、無線上には各分隊指揮官より了解の返答が上がり、さらに竹泉の傍らにいた河義も同様に了解の声を上げる。
《かかれ!》
そして長沼から、行動に掛かるよう合図が聞こえ来た。
「聞いたな?竹泉、多気投、行くぞ!」
「あぁ、へいへい」
「お宅にお邪魔しますだなぁ!」
河義の指示の声に、竹泉は気だるそうに、多気投は陽気な声で答える。
4分隊の3名は大型トラックを飛び出し、最寄りの家屋の側面に飛び込む。
そして玄関扉を破り、内部へ突入した。
町の上空で警戒監視飛行を行っていたCH-47Jの、搭乗する各員にも、車輛隊が襲撃された旨は届いていた。
「支援に行くべきじゃないのか?」
副機長の維崎が、淡々とした声で小千谷に向けて発する。
「あぁ、そのつもりだ。――ライフボートよりペンデュラム。当機はこれより車輛隊の支援に向かう」
草風の村の指揮所へ向けて小千谷は無線で一報し、そして操縦桿を操り機体を旋回させようとする。
《ダメです。ライフボート、許可できません》
しかし直後、指揮所より返されたのは、支援を差し止める言葉だった。
声の主は井神。聞こえ来たそれに、小千谷は目を剥く。
「何……!なぜです、井神さん!」
《車輛隊の襲撃があった一帯は、敵魔法現象の影響が広域に及んでいる可能性があります。さらに敵の航空勢力も集まっている。危険です》
問い詰めるように発し送られた小千谷の言葉に、井神からは淡々とした説明が返って来る。
「その危険な一体で、車輛隊が危機に陥っているんだ。向かわなくてどうする!」
しかし小千谷は訴え、そこからさらに言葉を続ける。
「井神さん。私と副機長の維崎は、どちらも検査では魔法現象の影響は見られなかった。そして敵航空勢力下での、作戦行動訓練も受けている。危険性は低い」
小千谷は井神に向けて説得の言葉を発する。しかし、井神から返答は帰って来ない。
「同胞の危機に赴かずに、何が航空支援かッ!」
小千谷は畳みかけるように、訴え張り上げた。
《――いいでしょう、許可します。ただし、現場上空では一定の高度を保ってください》
少しの沈黙の後に、やがて井神から許可の声が返された。
「あぁ。ありがとう、井神さん」
それに、小千谷は礼の言葉を送り、通信を終える。
「――よし、各員聞いたな。これより車輛隊の支援に向かう」
そして小千谷は搭乗する各員へ告げると、操縦桿を操り機体を傾ける。機体は進路を変え、車輛隊の元へ向けての飛行を開始した。
「どういうこと?」
エルフの少女ルミナは、家屋の屋根の上で、訝しむ声を上げながら眼下を見降ろしていた。
異質な侵入者の隊列は、彼女の発動した魔法、ミル・ダーウの効果範囲へと踏み込んだ。
このミル・ダーウという魔法は、効果範囲内にいる人間の力を奪い、尋常でない倦怠感、脱力感により捕らえ、動くことを不可能としてしまう魔法だ。
しかし、降下範囲に飛び込んだ眼下の者等には、その効果がほとんど見られなかった。
異質な乗り物の一台が家屋に突っ込み、隊列が停止した所を見るに、何名かの者に効果は発現したらしい。が、多くの者には影響が見られず、敵は通りに展開。配置した警備隊に向けて、異質で苛烈な攻撃を撃ち上げて来ていた。
「ッ!一体この攻撃は!?」
「ハルエナがやられたッ!」
「落ち着け、身を晒すなッ!2隊、対応できるか!?」
周囲では警備兵達の狼狽、焦燥の声が上がり、フラナシンがそれを落ち着かせ、指揮を取っている。
「まさか、あたしの術が効いていないって言うの?ッ――」
そんな彼等をよそに、光景から不愉快な事実を察し、不機嫌そうに表情を歪めるルミナ。
「なら――愚者共よ、愚者共よ――」
そしてルミナは、その口で詠唱を紡ごうとした。
「ッ!待つんだ、何をする気だ」
しかしそこへ、フラナシンが差し止める声を発し上げた。
彼は、ルミナの行為の不穏さに感づいたのだ。
「邪魔しないで。ミル・ダーウをもう一度掛けるのよ。今度はもっと強力に、広範囲で」
「ふざけているのか!?そんな事をすれば、町の住民を巻き込むッ!」
ルミナの言葉にフラナシンは目を剥き、却下の言葉を投げつけ、ルミナに詰め寄る。
「うるさい。あんたの考えなんて効いてない」
しかしルミナは突っぱねる。そして彼女はフラナシンに向けて手を翳す、次の瞬間、彼女の手中より強力な風圧が発生し、フラナシンを襲った。
「ッヅ!?」
「区域長!?」
打ち飛ばされたフラナシンは、咄嗟に反応した副官達警備兵に支えられる。
フラナシンを襲ったのは、エルフが本来得意とする風魔法であった。
「貴様!」
副官はルミナを睨み、声を荒げる。
しかしルミナは、彼等の方向には見向きもしない。
「――愚者共よ、愚者共よ。大いなる負に囚われ、膝を折り、頭を垂れろ――」
そして彼女の口より、悍ましい魔法の詠唱が、紡がれた。
場所は車輛隊襲撃地点を離れ、町の南側を走る城壁の上へと移る。
城壁上の通路に、四人分の隊員の姿があった。
町に進入した際に車輛隊より分派し門を押さえた、田話率いる増強第4戦闘分隊1組の四名だ。
本隊が作戦変更により警備隊本部を目指す事となり、その上で脱出ルートも変更の必要性が発生した。
そこで田話等は抑えた門を放棄。より警備隊本部と近い別の門を制圧するため、城壁上通路を用いて東に進行を始めたのだ。
「――ッ!」
しかし今現在。四名は城壁上通路に置かれた木箱や樽等を遮蔽物に、身を隠し進行を停止していた。そして時折それぞれの火器の銃身を突き出し、発砲音を響かせている。
増強第4戦闘分隊1組は、城壁上通路を行く途中で、町の警備隊と会敵。
現在戦闘状態にあった。
「ねばりますね、奴さん達」
木箱に身を隠した威末が呟きつつ、身を出し小銃を構え、数発撃ち込む。そして威末が身を隠すと、クロスボウによる矢の応射が襲い来た。
「あぁ、チクショ!」
門試から荒げた声が上がる。
会敵した警備隊は中々の抵抗を見せ、田話等はその場を突破できずにいた。
「航空支援を要請しますか?」
近子が田話に進言する。
「いや、ヘリコプターは車輛隊の救援で手いっぱいだろう……私達だけで突破したい」
近子の進言に対して、それを否定する言葉を発する田話。
「しかし、この――」
それに対して、さらに進言しようとする近子。しかし、その言葉は不自然に途切れた。
「近子三そ――な!?」
それを訝しみ横を向いた田話は、そこで見た物に目を剥いた。
「……ぁ……ぅぁ……」
そこには、その場に崩れて力ない声を零す近子の姿があった。
「威末士長!?」
さらに門試の張り上げた声が聞こえ来る。そちらを見れば、同様に崩れた威末の姿があった。
「近子三曹、威末士長!どうした!?」
「ぁ……身体……力、が……」
田話の問いかけに、威末は力ない掠れた言葉で訴える。襲い来た現象が何であるか、推測は容易であった。
「車輛隊を襲った異常現象か!?まさか、ここまで!?」
「冗談だろ!」
発し上げる田話。そして無事であった門試が、再び声を荒げる。
「ッ……門試一士、君は交戦を続けろ!」
田話は、現在相手取る警備隊に対しる対応を門試に命じると、インカムに向けて発し始める。
「ケンタウロス4-1より各ユニット。こちらは二名がダウン。敵、異常現象の効果がここまで来た物と思われる!何らかの応援、対応を乞う!送レ!」
捲し立てた田話。それに対して、少しの間を置いた後に返答が来た。
《ケンタウロス4-1、ペンデュラムだ。現在、そちらに向けられるユニットがいない。襲撃地点で、異常現象の原因を索敵対応中。原因排除まで、固守できるか?》
「……なんとか、可能です」
《なんとか堪えてくれ》
「了解。ケンタウロス4-1、終ワリ……聞いたな、門試一士」
通信を終え、田話は門試に視線を送って発する。
「畜生、外れクジだぜッ!」
「この場で固守する!」
門試しから上がる悪態。
両名は、ダウンした威末と近子を遮蔽物に押し込み、戦闘行動を再開した。