―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》 作:えぴっくにごつ
「ぐぁ!」
「ラウス!?――ぐぅッ!」
車輛隊襲撃地点――凪石通りに面する一軒の家屋の上階一室。
そこで二人の警備兵が、立て続けに打たれるように崩れ落ちた。
「――クリア!」
「あぁ、クリアだよ!」
扉の奥や、蹴とばし倒したテーブルに身を隠し、各火器を構えていた河義や竹泉が、無力化確認の声を上げる。
通りに並ぶ家屋に突入した4分隊の河義等は、たったいまその上階をクリアし、家屋の制圧を完了させた所で会った。
「どこまでもご遠慮願いたい事の立て続けだね!」
竹泉は、崩れ倒れた警備兵達の亡骸を。そして部屋内を見渡しながら悪態を吐く。
「アルマジロ1-1、こちらジャンカー4ヘッド。家屋内クリア、民間人の存在は確認できず」
傍ら、河義は長沼に向けてインカム通信にて報告を上げている。
《6、西側一帯制圧完了。民間人の存在無し!》
《4ヘッド、同じ!》
さらに、他の家屋を押さえに向かった別分隊からも、続々と報告が無線上に上がり聞こえ来る。
《了解、各ユニット。これより、周辺家屋へ強火力を投射する。ただちに上階より一時退避せよ》
そしてそれを受けた長沼より、要請の言葉が返された。
「よし、竹泉行くぞ」
「あぁ、了解了解」
河義の促しに、不躾に返す竹泉。両名は一室を後にし、家屋の階段を駆け降りて行った。
地上、車輛隊の元に残った各隊員は、重火器、強火力投射の準備を整えていた。
82式指揮通信車や対空仕様大型トラックに搭載された12.7㎜重機関銃が。ガントラックに搭載された96式40mm自動てき弾銃が。そして89式装甲戦闘車の主砲の90口径35㎜機関砲KDEが、周辺家屋の屋根に狙いを付けていた。
《6、退避完了》
《2、退避良し》
《ジャンカー4、退避良し!》
無線上に、家屋制圧に向かった各分隊より、退避完了の報が届く。
《了解。――各ユニット、重火力投射を許可する。各個に攻撃しろ!》
そして長沼の許可の声が響く。
同時に、各重火器が咆哮を上げた。
まず真っ先に火蓋を切ったのは、40mmてき弾銃だ。屋根上に向けて投射された40mmてき弾が、炸裂してそこに居た警備兵達を屍に変えた。
続き、各12.7㎜重機関銃が順次発砲を開始。屋根の上に配置していた警備兵達を、撃ち上げ貫き始める。
極めつけは89式装甲戦闘車の35㎜機関砲。
仰角を取った砲身より撃ち出された機関砲弾群は、家屋の屋根に届き、そこを貫きあるいは炸裂。砲塔の旋回により、砲火は家並みを舐めて行き、配置していた警備兵達を、家屋共々貫き吹き飛ばして言った――
数十秒前。
「何よ……どうなってんのよ……!」
ルミナは不機嫌な、そして焦れた声を零した。
より強力な魔力を乗せて、強力に、そして広範囲に向けて発動した侵食魔法ミル・ダーウは、しかし眼下の敵に影響を与えた様子は見られなかった。
「術を解くんだ!住民達にどんな影響がでているか分からないッ!」
そのルミナに、フラナシンは声を荒げ訴える。
彼の懸念は当たっていた。
強力さと効果範囲を増したミル・ダーウは、眼下の敵にこそ影響は見られなかったが、それ以外の各所に被害が波及。
先の増強第4戦闘分隊の二名をダウンさせただけでなく、効果範囲に住まう住民達多数が影響を受け倒れる被害を及ぼしていた。
「うるさいわね!私に命令を――」
しかしフラナシン訴えを、ルミナは一蹴しようとする。
――が、瞬間。それを遮り爆音が。そして両者の視線の先、通り挟んだ反対側の家屋の屋根で、いくつもの小爆発が上がった。
「ッ!」
目を剥く両者。
それをよそに、さらなる多数の暴力が、周辺を襲った。
それまで撃ち上げられていた異質な鏃を越える、強力な撃ち上げが襲来。多数の配置した警備兵達が射抜かれ、崩れ落下してゆく。
そして、中でも破格の威力の撃ち上げ。そして炸裂が、フラナシン達の傍で上がった。
その場に居た警備兵が、破片を受けて、酷く傷つき打ち倒される。
「――ッ!」
咄嗟の行動を最初に取ったのはルミナだった。
彼女は片手に携えていた箒を繰り出し、柄に体を乗せたかと思うと、次の瞬間には上空へ飛び出した。
一方フラナシンは、目の前で弾けた部下の姿に、目を剥き硬直している。
「区域長ッ!」
そんな彼を、声と共に衝撃が襲ったのは次の瞬間であった。
副官の警備兵が、フラナシンの体を押して突き飛ばしたのだ。
「――がぁッ!」
そして直後、副官の警備兵は襲い来た炸裂の暴力の餌食となった。
突き飛ばされ屋根の上に倒れたフラナシンの体に、一拍置いて、彼を庇った副官の体が倒れ込んでくる。
「な――エラニ副官!?おい!?」
倒れ込んで来た副官の肩を掴み、彼の名を叫ぶフラナシン。
しかし副官は目を見開き、口から血を零して、呼びかけに答える事はなかった――
「なんなのよ……なんなのよこいつ等ッ!」
箒に乗り、すんでの所で敵の攻撃を逃れ、上空へ退避したエルフの少女ルミナ。しかし彼女は、怒りに全身を煮やしていた。
自身の自慢であった、闇属性の侵食魔法。それが、眼下の相手にはほとんど通用した様子が見られなかった。それがまるで自信をコケにされたようで、彼女のプライドを逆撫でしたのだ。
「ッ……いいわ。なら直接仕留めてあげる」
八重歯を剥き出しにして、口角を上げるルミナ。そして彼女は箒を操り、急降下を始めた。
「風の刃よ、わが手に――」
そして片腕を突き出し、短く詠唱するルミナ。すると彼女の手先に、全長2mを越える、ぼんやりを発行する鎌の刃のような物が発現した。
これは風属性の魔法。
集約された風が魔力を纏った事によりが可視化され、鎌の刃を形作った物だ。ただの刃ではなく、これが命中すれば堅牢な砦すら貫通し、そして同時に風の巻き起こす暴風が、狙った獲物を傷つける効果を持つ。
発現された風の鎌を維持しながら、ルミナは通りに沿って飛行降下。敵の隊列に急接近する。鎌を放ち込むだけなら急降下は不必要な行動であったが、より精度威力を上げるため。何より、敵が無残に吹き飛び、あるいは真っ二つになる姿をその眼で見るため。彼女はギリギリまでの降下を選択した。
そしてやがて彼女の高度は、立ち並ぶ家屋の屋根と同じ位置まで近づく。
「ほら、無残な姿を晒しなさい――!」
瞬間、高らかに発し上げ、そして彼女はその手先に発現した風の鎌を、放とうとした――
「――?」
しかし瞬間。ルミナの視界の端に、何かがチラついた。それが彼女の意識を引き、彼女は顔をそちらへ向ける。
「え――?」
そして彼女の目に映ったのは、自身のすぐ横で、宙空に身を置く何者かの姿。そしてその者の履く靴――陸隊隊員に支給される、戦闘靴の靴裏。
「――ぎぇぅッ!?」
靴裏は――ルミナの頭部横面には入り、直撃。
ルミナを鈍痛が襲い、彼女の口からえげつない悲鳴が上がった――。
数秒前。
街並みを形作る家並み。その屋根の上を駆ける人影がある。
レンジャー隊員の不知窪だ。
彼はフリーランニングの要領で、屋根の上を駆け、家と家の合間を飛び越え、かなりの速度で家並みの上を進んでいた。
目指すは車輛隊の襲撃地点。視線の先に、町並みの一角上空を回遊飛行する、いくつもの箒に跨る警備兵の姿が見える。地上の敵への対応に追われているのか、対空砲火は散発的だ。
そして直後、内の一機が急降下を開始する様子を捉えた。
その手には、何か半透明の刃のような物が形成された様子も見える。その狙いがまず間違いなく地上の車輛隊であろうと、不知窪は確信。不安定な屋根上で、しかしその駆ける速度を上げる。
速度を上げた不知窪は、程なくして車輛隊襲撃地点である通りに到達。家並みは一度途絶え、眼下に車輛隊の立ち往生する通りが広がる。
――瞬間。不知窪は途絶えた屋根の上より飛び出した。
そこに速度を落す様子は無く、そして何の躊躇も無かった。
通りの真上の宙空に飛び出した不知窪の体。飛ぶ彼のその先にあるのは、丁度屋根の高度まで降下して来たエルフの少女、ルミナの体。
「え――?」
呆けるルミナの顔が、不知窪を向く。
直後、そのルミナの横面に、突き出した不知窪の片足。その戦闘靴の靴裏が叩き込まれた。
「――ぎぇぅッ!?」
ルミナから悲鳴が上がった。
激突した両者の体は、ほんの少しだけ高度を下げ、不知窪の飛び出した勢いを維持したまま、通りの反対側の家屋二階の窓に衝突。
窓を破り盛大な音を立て、不知窪とルミナは家屋二階へと突っ込んだ。
「ッ!」
「ぎゃぅッ!」
家屋内の一室へもつれ合うように転がり込んだ両者は、そのまま床を滑り、そして家屋内の家具を蹴散らし飛ばし、壁にぶつかってようやく停止。
不知窪は受け身を取ったが、ルミナはダイレクトにぶつかり再び悲鳴を上げた。
「何事だ!?」
「あんだあんだぁ?」
そこへ一拍置いて、下階へ続く階段より声と共に数名が駆けあがって来る。
下階で一時退避していた、河義や竹泉等だ。
河義等は上がり踏み込んだ室内で展開し、目の留めた人影にひとまず各火器を向ける。
「っと――」
そんな河義等に囲われつつも、不知窪は起き上がり周囲へ視線を走らせ、状況を確認する。
「き、君は……!?」
「あぁ。11分隊の不知窪です」
その場の人影が見覚えのある隊員である事に気付き、河義は困惑しつつ尋ねる声を上げる。対して不知窪は端的に、54普連在籍中の所属分隊を名乗った。
「あぁ、確か鷹幅二曹と一緒に動いていた……一体何が――君、後ろッ!」
困惑気味に発しかけた河義は、しかし次の瞬間に言葉を変えて叫ぶ。
不知窪の背後に、その手の平に風魔法による刃を発現させ、襲い掛かるルミナの姿があったからだ。そしてその風の刃が、不知窪の首に突き立てられる――
「――ッ!?」
しかし直後。不知窪の姿がそこから消える。
鬼の如き怒りの表情を浮かべていたルミナは、しかしその顔を驚愕の物に変える。
「――ぱり゛ぁッ」
そしてルミナは、おかしな悲鳴を上げて横方向を打ち仰け反った。彼女の米神から、血飛沫が飛び散る。
ルミナの横には、9mm機関けん銃を片手で構えた不知窪の姿があった。
不知窪は半身を屈め反らしてルミナの刃を回避。そして片足を起点にまるでダンスのように身を回転移動させ、ルミナの側面を取り、彼女を排除したのだ。
ルミナは床にばたりと崩れ落ち、動くことはなくなった。
「ッ――!君、大丈夫か?」
一連の動きが終わった後に、河義は一応の尋ねる言葉を掛ける。
「えぇ」
対する不知窪は、何でもない事の様に端的に返した。
「あぁー?どういうことだっつーねん?」
一方、竹泉は一連の出来事に、呆れ混じりの疑問の言葉を上げながら、無力化されたルミナの体に観察の視線を向ける。
「このガキはんだよ?コスプレイヤーか、それとも変態かぁ?」
ルミナのその露出の多い特異な外観に、気色悪そうな顔を浮かべて発する竹泉。
「耳が……長い?エルフってヤツか?一体……?」
続け考察の言葉を零す河義。
「車輛隊に攻撃を仕掛けようとしていました。少なくとも、敵の様です」
それ等に対して、淡々と淡々と答える不知窪。
「まーた気色悪そうなのが出て来たなぁ。――でぇ?それはそれとして、お三曹殿はなして窓からぶっ込んで来たんですかねぇ?」
「それが通り沿いに降下を掛ける姿が見えた。降下して来た所を狙って、飛び出したらうまく蹴りを入れられた」
竹泉の皮肉交じりの問いかけに、不知窪は引き続き淡々と答える。
「………」
「おかしいんじゃねぇの?」
それを聞き、河義は返す言葉が見つけられず、竹泉は皮肉一杯に答えた。
《――不知窪!応答しろ、おい無事か!?》
そこへ各員の装着するインカムに、声が飛び込んで来た。声の主は鷹幅だ。
「不知窪、無事です。敵の――箒、でしたか?を一機無力化しました。屋内で車輛隊分隊と合流」
聞こえ来た安否確認に対して、変わらぬ調子で返す不知窪。
《まったく、一人で先行した上に無茶を……!一度地上で合流するぞ。車輛隊とも調整をしたい》
「了解、そっちに行きます――そういう訳です。お騒がせしました」
通信を終えた不知窪は、河義に向けて言うと、その場を後にして家屋の階段を降りて行った。
「ぶっとんでやがる」
「……お前も人の事を言えた義理か」
その背に、嫌味気に発した竹泉。しかし竹泉に、河義から呆れ混じりの言葉が飛んだ。
家屋上階から天井に繋がる梯子を上る河義。
開かれていた天扉を潜り、上半身を屋根上に出すと同時に、小銃を手繰り寄せ構え、周囲に視線を走らせる。
「――ッ!」
そこで河義は、屋根上に人影を見止めた。
警備隊の制服を纏うその人物は、屋根上で立膝を着き、亡骸となった別の警備兵の体を膝上で抱えている。
警備隊、中央区域隊隊長のフラナシンだ。その腕中で支えるのは自身を庇い、命を失った副官の体。
その視線を副官の亡骸に落とし、その顔を悲観に染めていたフラナシンは、しかしそこで侵入者――河義の姿に気付く。
「ッ――!」
その姿を目の当りにし、フラナシンは肩より下げていたクロスボウを手繰り寄せ、構えた。しかしそのクロスボウから矢が放たれる事は無かった。
破裂音が屋根上に響き、フラナシンの体を噛みつくような激痛が襲う。
「ッぁ……」
そしてフラナシンは身を崩し、屋根上にその体を倒した。
「ッ……!」
一方では、小銃を構えた河義の姿があった。その小銃の先端からは、うっすらと煙が上がってる。河義の撃った弾が、フラナシンを襲い打ち倒したのであった。
河義は険しい顔を作りながらも、天扉より這い出し、屋根上を踏んでフラナシンの体へ近づく。そして、口から血を一筋零し、虚空を見つめるフラナシンの眼を見止め、彼の死亡を確認した。
「……申し訳ない」
味方を失い悲観の中にあったであろう人物への、追い打ちを掛けるような自身の行為に、後ろめたさを覚える河義。河義が立膝を着いて、呟き、そしてフラナシンの虚空を見つめる眼を閉じる。
刹那。直上を支援のために飛来したCH-47Jが、ローターの轟音を立てて飛び抜けて行った。
襲撃地点上空へと飛来したCH-47Jは、旋回行動を始める。
ローターを激しく回転させながら割り行ってきた飛行物体に、車輛隊上空にしつこく取りついていた警備隊の箒編隊は、蹴散らされるように距離を取って行く。
CH-47Jからはさらに箒編隊に対して、搭載の74式7.62mm車載機関銃や12.7mm重機関銃による射撃が開始され、交戦が開始された。
待ち伏せを仕掛けて来た警備隊の大半は無力化され、さらに上空より襲い来ていた箒隊は、駆け付けたCH-47Jが引き付けてくれた。
まだ散発的な戦闘。発砲音は続いているが、車輛隊を襲う脅威はほぼ収まり、車輛隊は体勢の再構築、再編成に掛かっていた。
魔法現象により倒れた数名の隊員も、警備隊側に居たのであろう魔法現象オペレーターが排除されたためか、回復の兆しを見せていたが、念のためポジションを他の隊員と交代する。
町の南側城壁上を進行していた、増強第4戦闘分隊の田話からも、ダウンした威末等が回復した旨が、報告により寄越されていた。
そして、家屋に突っ込んだ指揮車兼任のガントラックは、後進によりそのキャビン部を家屋より引き抜き、車列へと復帰した。そのサイドミラー等は損壊していたが、走行に影響は無かった。
「今度はエルフか――」
そんな各車各隊が再編成を急ぐ傍ら、タブレット端末に視線を落とす長沼の姿がある。
そこには、先に不知窪により無力化された、奇抜な格好のエルフの少女の亡骸が映っていた。
「想像の範疇をでませんが、先の異常現象の大元かもしれません」
傍らにいた、画像の撮影者である河義が、少し気分の悪そうな表情を浮かべながら発する。
「もっとはっきりとした情報が欲しい所だが……とにかく、類似存在にも注意するしかないな」
そして長沼は、少しもどかしそうな声で零した。
「鷹幅二曹、不知窪三曹。よく駆け付けて、脅威を無力化してくれた」
そして長沼は、立ち会っていた鷹幅、不知窪両名に向けて発する。
「どうも」
「まったく……」
それに対して、当事者である不知窪当人は端的に返し、そんな彼の姿に鷹幅は呆れ声を零した。
「では長沼さん。私達は行動を再開します」
「ん?こちら――車輛隊に合流するんじゃないのか?」
そして次に鷹幅から発せられた言葉。それに長沼は訝しむ声を上げる。
「いえ。遊撃、及び高所からの監視狙撃支援が必要と見ています。私達は別働、徒歩による行動を続けたいと思います」
そんな長沼に対して、鷹幅はそう進言した。
「ふむ――いいだろう。しかし今の状況で、君達2名のままでは危険と見る。――河義三曹」
長沼は鷹幅の進言を受け入れるが、同時に懸念事項を零す。そして傍らの河義に向き直る。
「人員火力を増強する。君達4分隊の3名は、鷹幅二曹等に合流してくれ」
「分かりました――聞いたな、竹泉、多気投。ここから徒歩だ、補給を受けて置け」
長沼の指示を河義は了承。そして傍で警戒態勢を取っていた、竹泉と多気投に呼びかける。
「おんげッ。また面倒事の更新かよ!」
「過激なドライブから、ワクワクウォーキングにスライドだなぁ!」
河義からの指示の言葉に、竹泉等はそれぞれ悪態と、陽気な言葉を上げて返した。
《――ライフボートへ、こちらジャンカー1!こちらは、上流より4番目の橋で、2個小隊規模の敵と対峙中!》
無線上にジャンカー1――1分隊の峨奈からの叫び訴える声が上がり、各員の耳にそれが届いたのは、その時であった。
《敵は防衛体勢は強固!こちらだけでの突破、無力化は困難!再びの航空火力支援を要請するッ!》
《ライフボートよりジャンカー1。現在当機は車輛隊に上空支援を提供中。少し待つんだ》
続く峨奈の要請の声。それに対して、現在車輛隊上空で支援に当たっているCH-47Jの小千谷からは、そんな旨の言葉が返される。
「いえ、アルマジロ1-1よりライフボート。こちらは大丈夫です。」
しかし、長沼はそこへ言葉を割り入れた。
「車輛隊も間もなく現在位置より離脱します。そちらは、ジャンカー1の支援に向かってください」
《――了解、アルマジロ1-1。ジャンカー1、少し辛抱しろ。これより向かう》
長沼からの言葉を受け、無線上に小千谷の声が上がる。
《ジャンカー1、了》
峨奈からも声が返される。
そしてCH-47Jは車輛隊の上空を離れ、第1分隊の方向へと飛び去って行った。
「――よし、我々も――」
CH-47Jを見送った後に、言葉を発しかける長沼。
しかしその時、車輛隊の後方近くに、火炎弾が飛び込み燃え上がった。
「近弾ッ!」
そして近場に居た隊員から声が上がる。
CH-47Jが去った所を狙い、警備隊の箒が進入し、火炎弾を放って来たようだ。
「――ッ、行動再開する。急ぐぞ、各再乗車せよ」
顔を顰めつつ、改めて行動再開の旨を発する長沼。
「車輛隊が移動するぞーーッ!」
近くに居た6分隊長の富士三曹が、それに呼応し、全体に伝わる声で発し上げた。
「私達も行動を再開する」
「了――行くぞ!」
そして引き続き別行動を取る鷹幅が発し、同行する事となった河義が、竹泉等に促す。
「やぁれやれだぜ……!」
気だるげに呟きながら、駆け出した鷹幅等に続く竹泉。
そして鷹幅等、再編成された別動隊は路地裏へと駆け込み姿を消す。車輛隊各車は再びエンジンを吹かし、ゆっくりと走り出しながら隊列を組みなおし、襲撃地点を離脱。行程を再開した。