―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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19-3:「Epic Stance」

 町の住民からは〝凪明通り〟と呼ばれる、町の東側を南北に走る通り。制刻と鳳藤はその通り上を、警戒の視線を周囲へ向けつつ駆け進んでいた。

 目指すは町の警備隊本部の古城。

 途中で、潜入狙撃班ロングショット1より分派し向けられた、竹泉と多気投を拾い合流再編し、警備隊本部まで進行。侵入を試みる手はずだ。

 

「前だ」

「あぁ」

 

 町路を進んでいたその途中で、制刻と鳳藤は視線の先に動きを見止め、それぞれ声を上げた。

 前方よりこちら向けて、およそ8名――一個分隊程の警備服を纏った集団が、こちらに向かって駆け迫る姿があった。

 同時に二人は、路上の端に置かれている小さな屋台小屋を見止める。

 それ等を確認した制刻と鳳藤は、そこからその身をやや低くし、駆ける速度を上げる。

 そしてその屋台小屋に滑るように駆け込み、その側面に吸い付く様に身体を預け、その身を隠す。

 直後、一本の矢が飛来し二人の頭上を掠めた。

 

「ッ!」

「っとぉ」

 

 襲い来たそれに、鳳藤は表情を険しくし、制刻は一言零す。

 

「……相手もばらけたぞッ」

 

 鳳藤は屋台小屋から最低限身を出して視線を向け、その先で散会した警備兵達の姿を見て発する。

 

「ゲーム開始だ」

 

 鳳藤の寄越した言葉に、淡々とそんな言葉を上げて返す制刻。

 そして制刻は、屋台小屋から半身を乗り出す。装備火器である小銃を突き出し構えると、その瞬間には引き金を絞り、発砲。

 撃ち出された5.56㎜弾は、その向こうで今まさにクロスボウを構えた警備兵の身を貫いた。

 

「命中(はい)った」

 

 警備兵の身が崩れると同時に、引いて身を隠す制刻。瞬間、そこに別方向より矢が飛来し、傍を掠めて行った。

 

「ッ――!」

 

 その直後に、今度は鳳藤が屋台小屋側面に身を乗り出し、小銃を突き出し、単射設定で数発発砲。彼女が狙うは、今しがた矢を放ってきた、別方にいる警備兵。

 矢を放ち終え身を隠そうとしていた警備兵は、しかしそれよりも速くに到達した5.56mm弾に射抜かれ、その場に崩れ落ちた。

 

「ワンダウン!」

 

 鳳藤はそれを見止めると同時に身を引き隠し、そして発し上げる。

 そんな折、今度は複数本の矢が各方より飛来し、制刻の頭上や側面を掠め通り抜けた。どうやら残る警備兵達が布陣を終え、本腰を入れて来たようだ。

 

「――一部射角が悪い――剱、俺ぁ反対側に移る。援護しろ」

「あぁ……!」

 

 制刻は先の様子を見て呟くと、鳳藤に向けて発する。

 鳳藤はそれに応え、そして小銃を突き出し、牽制のために2~3発発砲。その直後、制刻は屋台小屋の影より飛び出し、駆け出した。

 飛び出した制刻の身を狙い、矢が飛び来て制刻のその身を掠める。しかし制刻は気にする様子も見せずに駆け、路上を横断。道の反対側に到達して路地裏に飛び込み、建物の壁に身を預けた。

 

「――見えた」

 

 路地裏から、先の様子を観察する制刻。

 位置を変えた事で、先程まで死角になっていた箇所が明瞭になる。そこに身を置く警備兵の姿を確認し、そして制刻は小銃を突き出し一発撃った。

 遮蔽物に身を隠すも、制刻から見ればその一部が露出していた警備兵は、そこを狙われ射抜かれ、弾けるように後ろに飛び、そして倒れ動かなくなった。

 

「二つやった」

 

 制刻は戦果を口に零す。

 

「ダウン!」

 

 それとほぼ同時に、鳳藤の側からも声が上がり聞こえて来た。

 鳳藤もまた一人倒したらしい。そして見れば、鳳藤はさらに射撃を続ける様子を見せている。少し興奮しつつあるのか、その射撃数は多くなっているようであった。

 

「剱、落ち着いてやれよ」

「あぁ、分かってる――!」

 

 制刻の落ち着かせる言葉に、鳳藤は了解の返事を返すが、しかしその様子は依然として焦っているように見える。

制刻はその様子に小さくため息を零したが、すぐに意識を入り替えて戦闘を継続する。

 警備隊側は被害を受けてか、狙いを付けずにクロスボウを遮蔽物より突き出し、矢を放つ姿を見せる者が増えていた。身を晒す事を避け、しかし矢の手数は増やして来た警備隊に、制刻は少し鬱陶しそうな色をその顔に浮かべる。

 一方の鳳藤は、相手側の手数の増加に影響されてか、射撃の手数をより増やし、そしていささか荒くしている。

 

「――あん?」

 

 しかし制刻が、鳳藤の行う射撃の音に混じり、別方向より別の射撃音を聞いたのはその時であった。

 小銃よりも大きく重々しい射撃音。しかも、聞こえるそれから、その距離は現在位置より近いと思われる。

 ――相対する制刻等と警備隊の中間。そこにある路地の出入り口より、人影が飛び出て来たのはその瞬間であった。

 影は二つ。男性平均よりやや高めの身長の者が一人と、あまりにも巨大なシルエットが一つ。

 

「ぶぇッ!出たッ!」

「っとォッ!」

 

 それは他でも無い、竹泉と多気投の姿であった。

 路地の方向に視線と銃口を向けながら飛び出して来た二人は、そのまま路上の真ん中ほどに放置されていた荷馬車に、突っ込むように転がり込む。

 

「ッ!?」

 

 しかし間が悪かった。

 鳳藤は今まさに、その放置された荷馬車の向こうに居た警備兵に狙いをつけ、引き金を絞ろうとしていた瞬間であったのだ。そして中断は間に合わずに、鳳藤の指は引き金を二度ほど引いてしまう。5.56mm弾はその銃身より撃ち出され、そしてちょうど荷馬車の影に突っ込んだ竹泉等の頭上を掠め飛んだ。

 

「のわッ!?」

「ウォェッ!?」

 

 空気を切り裂く音と共に、自分等の頭上を飛び抜けて行った5.56mm弾。それに竹泉と多気投は、驚きと困惑の混じった声をそれぞれ発し上げた。

 

「――べッ!?ふっざけんなッ!」

「オォレは味ぃ方だボゲェッ!!」

 

 そしてその元が後方の制刻等からだと理解した竹泉等は、荒んだ抗議の声を上げた。

 竹泉からはいつものように悪態が。そして危機を感じた影響か、珍しく多気投からも怒号が飛んだ。

 

「――ッ!そこッ、邪魔なんだよッ!」

「邪ぁ魔だ、どけッ」

 

 しかし対する鳳藤は、突然射線上に現れた竹泉等に対して、表情を一層険しくして抗議の声を上げる。

 さらに竹泉等の体は、制刻側の射線も妨害する形となっており、制刻からも鬱陶し気な声色で、そこを退くよう要求の言葉が上がる。

 フレンドファイアが起こってしまったというのに、誰一人として謝りもしなかった。

 

「あぁ――畜生ッ!」

 

 竹泉等は悪態を吐きながらも、銃弾をばら撒く牽制射撃を行いながら、一度飛び込んだ荷馬車の影を飛び出す。路上を横断して、その先の商店らしき建物の店先に飛び込み、改めてカバーした。

 一方、竹泉等が飛び出して来た路地からは、それを追うように別の警備兵達が姿を見せた。

 彼等はそこが敵と味方のど真ん中である事に気付き、路地から飛び出して来る事はせずに、そこ場からクロスボウを突き出し戦闘に加わって来た。

 

「ったく、増やしやがって――竹泉、投。そのまま連れて来たヤツ等の相手をしろ」

「あぁ、了解了解、畜生」

 

 制刻の飛ばした指示の声に、竹泉から悪態混じりの声が返る。

 そして竹泉と多気投は、自分等を追いかけて来た警備隊を相手取り、各々銃撃を開始した。一帯は敵味方共に戦力が増加し、各方より銃弾や矢が飛び交い、さらなる苛烈さを見せる。

 ――しかし、その様子が見えたのはほんの一瞬であった。

 程なくして警備隊側の攻撃の手は、目に見えての減退を見せる。そして各方の警備隊は何か言葉を交わし合い、やがて順にその場より引いて行く姿を見せたのだ。

 警備兵達は通りを下がって行き、あるいは路地に消えて行き、完全に後退して行った。

 

「……敵影、ナシ」

 

 警備隊警備兵達が完全に姿を消し、通りの一帯には静けさが戻った。遠くの、おそらく別部隊の戦闘の音が、微かに聞こえ届く。

 

「引いて行ったな……」

「手勢が少ねぇようだった。後退再編成して、体勢を整える気かもな」

 

 そして制刻と鳳藤はそれぞれカバーを解いて、警備隊の引いて行った通りの先を眺めながら、考察の言葉を交わす。

 

「集まれ」

 

 制刻は、視線の先で同じくカバーを解いていた、竹泉や多気投に向けて発する。そしてそれから、インカムに向けて声を発し出した。

 

「ペンデュラム及び各ユニットへ、こちらエピック。ジャンカー4-2と合流した。再編して、こっから警備隊本部へ向かう」

《――ペンデュラムだ。了解エピック、くれぐれも無茶はするな》

「了解。エピック、終ワリ」

 

 指揮所の井神より来た了解と忠告の言葉に、端的に返して制刻は報告の通信を終える。

 そして視線を動かせば、こちらに歩いて来て合流した竹泉と多気投の姿があった。

 

「ったく、冗談じゃねぇぜッ!」

「危うく、クリティカルを食らっちまうトコだったずぇ」

 

 竹泉と多気投は、額に皺をよせ、または口を尖らせて、文句の声を発し上げる。先のフレンドファイアに物申すそれであった。

 

「突然飛び出してくるヤツがあるか!」

 

 対する鳳藤は、原因が竹泉等にあった事を指摘し、叱責の声を上げる。

 

「出てくる前に、通信くらい寄越せ」

 

 そして制刻は、淡々としかし呆れた様子で竹泉等に向けて言った。

 

「熱心な追っかけに付き纏われて、んな余裕無かったんですぅッ」

 

 対する竹泉は、文句混じりの説明の言葉を投げて寄越す。どうやら追撃への対応に追われ、合流の通信を行う余裕が無かったらしい。

 

「ったくぅ、いらんドッキリだったずぇ――で、ネクストは?」

 

 互いに文句苦言を飛ばし合った各々であったが、それもそこまでであった。

 多気投は最後に口を尖らせてやれやれと発したが、そこからするりと切り替えて、これからの行動を制刻に尋ねた。

 

「ここの警備隊本部を目指して、侵入を試す。んでもって、邦人のねーちゃんを見つけ出す」

 

 対する制刻もそれ以上の追及はせず、尋ねられた行動を淡々と答えて伝えた。

 

「はいはい、了解ヘッド」

「お邪魔しますと行くかぁ」

 

 伝えられた行動に、竹泉はやる気のない様子で答え、多気投はいつもの調子に戻って揚々と発する。

 

「まったく。気を抜くなよ」

「行くぞ」

 

 そして鳳藤が忠告の言葉を発し、最後に制刻が行動再開の言葉を告げる。

 合流再編した四名は隊伍を組み、そこから改めて進行を始めた。

 

 

 

 行程を再開し、制刻等四名は通りを北に向かって進む。

 四人は、制刻と鳳藤、竹泉と多気投でそれぞれ二名づつ組み、少しの距離を取って互いを援護し合う隊形を取っていた。周囲へ警戒の視線と銃口を向け、時折くるりと身を返して後方にも警戒を向けながら、通りを駆けて行程を進める。

 程なくして、制刻等は進行方向に開けた場所を見た。

 そこは広めの十字路であり、その中心には大きめの噴水が置かれている光景が見える。制刻等は駆ける速度を少し落とし、引き続き周辺に警戒の眼を向けながら、十字路一帯へと進入する。

 ――瞬間。制刻が先に見える家屋の屋根に動きを見、そして同時に殺気を覚える。

 

「ッ――」

 

 制刻が半歩分斜め前方へ踏み込み、同時に半身を軽く捻ったのは、同時であった。そしてそのコンマ数秒の差で、制刻の傍を飛来した矢が掠め、飛び抜けた。

 そしてほぼ同時に、十字路の周辺に並ぶ各家屋の窓や屋根上等、各所に警備兵が姿を現す。そこから各方より矢が、そして魔法現象により生み出された鉱石針が放たれ、怒涛のごとく制刻等を襲い始めた。

 

「散れッ!」

 

 制刻は回避行動を取った体勢を、即座に回復させると同時に発し上げる。そして身を低くして駆ける速度を上げた。

 

「ッ!」

 

 鳳藤は表情を険しく変え、そして同様に身を低くして制刻に追従。後続の、まだ十字路に踏み込んでいなかった竹泉と多気投は、そこから左右に割れて分散した。

 矢や魔法現象が襲い飛び交い始めた中、制刻と鳳藤はそのまま真っ直ぐ駆けて、十字路中心部に追われた噴水に到達。二人は縁を飛び越えて、枯れていて水の張られていなかった噴水の内側へと飛び込んだ。

 

「ッ!やはり待ち伏せか!」

「案の定だな」

 

 噴水の縁を遮蔽物として、その内側にカバーした二人。

 鳳藤は悪態を上げ、制刻は淡々と呟く。

 そこから制刻は、まず竹泉と多気投の姿を探して確認する。制刻等の位置より後方、十字路の入り口付近に、家屋の影に身を隠した竹泉の姿が。そして置かれた木箱の影にその巨体を収め、その上にFN MAGを展開させた二脚を用いて、置き据え構える多気投の姿が見える。

 

「各個に対応しろ。好きに撃て」

 

 確認した後に、制刻は雑把な指示を張り上げる。

 

「オーライッ!」

 

 それを聞くや否や、多気投のFN MAGが唸り声を上げると共に、銃弾を吐き出し始めた。

 十字路の北東側――制刻等から見て、前方右手に立ち並ぶ家屋の上階に火線が飛び込む。そして多気投の扱うFN MAGは旋回動作を見せ、それに合わせて火線は横に動き、家並みを縫い進むように攫い始めた。

 家並みに走り飛び込む銃火に、窓から姿を見せ得物を構えていた警備兵達が、餌食となって打ち倒れる姿が微かに見える。

 さらに別方、十字路北西側の家屋の屋根に陣取っていた警備兵が、打ち倒されて屋根をずり落ち、落下する姿が見えた。

 

「一体ッ」

 

 同時に声が響く。竹泉の小銃射撃が、こちらを狙っていた警備兵を仕留めたようであった。

 

「後方、左に一人ッ」

「こっちにも、数体だ」

 

 一方。正面への攻撃を竹泉等に任せ、制刻と鳳藤は十字路中央の噴水内より、竹泉等からは死角となっている各方向に向けて、射撃行動を行っていた。

 

「弾いた」

「ダウン、ダウン!」

 

 構図的に周囲を囲まれている状況でありながらも、制刻は変わらぬ淡々とした様子で、鳳藤も少し心拍数を上げながらも正確な動きで、戦闘対応行動を行っている。襲い掠めてゆく矢や魔法をカバーで凌ぎ、そして相手の隙を見逃さずに攻撃を行う。

 十字路周辺に並ぶ家屋の、その窓や屋根に銃弾を撃ち込みあるいは注ぎ、そこに陣取り構える警備兵達を仕留め倒してゆく。

 十字路上を制刻等の銃火と、警備隊側の攻撃が激しく飛び交いながらも、警備隊側は徐々に手勢を減らされ、制刻等の側が押し始める。

 

「――おん?」

 

 しかしそんな最中、制刻は視界の端に、異質な光景が映るのを見た。

 発生源は、後方。FN MAGによる掃射攻撃を続けている、多気投の背後。そこで何か、一筋の光がパリと瞬き走った様子を、その目が捉えたのだ。

 

「――ッ、多気投!飛べェッ!」

 

 脅威の襲来。制刻の直感がそれを叫び、同時に制刻は多気投に向けて張り上げた。

 

「ッ!」

 

 多気投は警告を聞くと同時に、遮蔽物としていた木箱を思い切り蹴り、その巨体をその場より飛び退かせる。

 ――衝撃音と共に、閃光がその場へ落ちたのはその瞬間であった。

 

「ウォゥッ!?」

 

 後方へ飛び退き側転しながら、多気投は襲い来た現象に驚きの声を上げた。そして飛んだ先を体勢を回復させた多気投は、そこで飛び込んで来た光景に目を剥いた。

 つい先程まで自信が身を置いていた場所。その地面が、抉られ穴を作っていたからだ。おまけに遮蔽物としていた木箱は、大きく欠けて損壊し、損壊部分は黒く焼け焦げていた。

 

「――あぁ、チクショウ!」

 

 その近く、家屋の影を遮蔽物としていた竹泉は、襲い来た現象を警戒し、射撃行動を中断して身を隠している。

 

「今のは……落雷!?」

 

 その一方、噴水に身を隠す鳳藤は、今しがた見えた現象に、推察と同時に困惑の声を零す。

 

「奴さんズのビックリマジックだよ!どこまでいらねぇバリエーションを取り揃えてやがんだ!」

 

 そんな鳳藤の声に答えて、竹泉より悪態と皮肉の混ぜられた説明の言葉が飛んでくる。竹泉等は車輛隊に同行している最中に、すでにこの攻撃を体験していた。

 

「ッ……当たればタダじゃ済まないぞ……!」

「当たれば、な」

 

 冷や汗を垂らしながら零す鳳藤。それに対して、制刻は端的に返す。

 

「予備現象がある、フラッシュが前もって走るようだ。それを見逃すな。そうすりゃ、回避できる」

 

 そして説明の言葉を、制刻は各員に向けて発し伝える。

 

「また、簡単に言いやがって」

「黒焦げになりたくねぇだろ。うまくやれ」

 

 竹泉の飛ばして来たウンザリとした言葉に、制刻は淡々と言葉を飛ばす。

 ――制刻と鳳藤のすぐ近くで、再び閃光が瞬いたのはその瞬間であった。

 

「飛べッ!」

「ッ!?」

 

 すかさず制刻が発し、制刻と鳳藤は同時に噴水の縁を蹴り、各方向へと飛んだ。

 そして一瞬後、制刻等がいた場所に、落雷が盛大な音を立てて落ち、噴水の底を削った。

 

「――っとォ」

 

 飛び退いた先で、制刻はその巨体を器用に着地させ、すぐさま体勢を立て直す。

 

「――ヅァッ!?」

 

 しかし鳳藤は、後先考えずに飛び退いたが故に、着地先での受け身に失敗。体を固い噴水の底に打ち付けるハメになる。

 

「ッぁ……、う、打った……!」

「おぉい、剱」

 

 打ち付けたダメージにより、軽いダウン状態に陥る鳳藤。それを見止め、先にカバー態勢に戻っていた制刻は、呆れた声を上げる。

 そこから制刻は噴水の縁を反って鳳藤に近づき、手足を着いて這い進んでいる鳳藤の、その後ろ襟を掴んで回収。鳳藤の身を引っ張って噴水の縁に寄せ、その身体を隠してやった。

 そんな間にも、周辺に布陣した警備兵達からの攻撃は、お構いなく続く。頭上を飛び交い、時折近場に落ちてそこを叩く、矢や鉱石の針あるいは杭。

 そんな警備隊側の攻撃の隙を見つけ、制刻も小銃を突き出し、狙いあるいは牽制射撃を行う。

 後方の竹泉や、そこに合流した多気投も、身を隠しつつ同様の応戦射撃行動を見せている。

 しかし直後、竹泉等の近くでまたも閃光が走り瞬く。

 竹泉等はそれに気づき、そして同時に慌てた様子で家屋の影を飛び出し、それぞれ各方に飛び退く。

 ――そして三度目の落雷がその場に落ち、竹泉等がそれまで居た地面を打ち、遮蔽物としていた家屋を損壊させた。

 

「デンジャラスすぎるずぇッ!」

「屋内だ屋内ッ!」

 

 それぞれ声を上げながら、多気投は少し下がって路地にスライディングで滑り込み、竹泉は近場の家屋の窓を体当たりで破り、屋内に飛び込む姿を見せる。

 

「ッ……オペレーターがどこかにいるんじゃないのか?」

 

 一方、噴水側では、ダウンより回復してカバー姿勢を取り直した鳳藤が、焦りながらも推察の言葉を発する。

 

「さっきから何人か弾いてるが、それっぽいヤツが見えねぇな」

 

 その隣で制刻はそう発しながら、小銃を突き出し構えそして撃ち、また一人家屋の窓奥に身を潜めていた警備兵を屠る。

 

「奥に引っ込んでやがるな」

「突入して、クリアリングする必要があるんじゃないのか……?」

「あぁ。チト手間だが、攫える必要があるか」

 

 制刻の続き呟いた言葉。それに鳳藤が突入制圧の必要性を促し、制刻もそれに同意する言葉を返す。

 

《――エピック、こちらロングショット1。狙撃支援が可能な位置に付いた、そちらの姿を捉えている》

 

 しかしそんな折、通る少年のような声で、そんな知らせの通信が飛び込んで来た。それは潜入狙撃班を率いる、鷹幅の声であった。

 

「あぁ、丁度いい――」

 

 飛び込んで来た通信に、制刻は端的に零し、そして返し始めた――

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