―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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19-4:「Snipe Support」

 ――町の上空を旋回飛行する、無人観測機〝オープンアーム〟。

 その機体下方に備えられたカメラは、十字路で戦闘行動を行う、制刻等エピックユニットの姿を捉え、その映像を草風の村の置かれた操縦室へと送っている。

 エピックユニットの位置はマーカーで記され、その所在を明確にしてる。

 そのエピックユニット所在地点の近くで、また別のマークされたユニットが動く様子があった。

 無人観測機のカメラはその動きを見せるユニットへ動き、捉え、ズームアップする――

 

 

 

 数分前。

 町中に存在する一軒の建造物。その内部に設けられた階段を駆け上がる、鷹幅、不知窪、そして河義の三名の姿があった。

 ――竹泉と多気投を分派させて別れた、鷹幅率いる潜入狙撃班――ロングショット1。

 追撃の多くが竹泉と多気投を追って行ったという事も助けてか、鷹幅等は進行の最中で追撃を撒くことに成功。そして再び路地に入り、縫い進んで行った先で、彼等は鐘楼を有する廃屋と思しき建物を発見した。

 鷹幅は、そこを新たな高所監視地点として利用することを決定。目立つ建物であるため発見され狙われるリスクも高かったが、鷹幅はそれよりも他隊への狙撃火力支援の提供を優先した――。

 そして建造物内部へと侵入した鷹幅等三名は、鐘楼へと繋がる階段を見つけて、それを駆け上がっている所であった。

 程なくして彼等は鐘楼の上部空間へと踏み込み、そこからすぐさま周辺の状況を確認掌握するための、観測行動を開始。各々はそれぞれ、双眼鏡あるいは装備火器のスコープを構えて覗き、そのレンズ越しに周囲へ視線を走らせる。

 

「――北西方向、第1分隊を確認」

 

 最初に声を発したのは鷹幅。彼の眼は、鐘楼より北西の方角に、水路沿いに進む第1分隊の姿を見つけた。

 

「進行中の模様。障害と接触の様子無し」

 

 続け発する鷹幅。その言葉通り、第1分隊は今の所、障害に見舞われる事無く、目的地への進行を進めているようであった。

 

「西方、町並み上空に複数の〝箒〟」

 

 そこへ今度は、西側へ視線を向けていた不知窪が発し上げる。

 鷹幅がそちらへ振り向き同様に視線を向ければ、その言葉通り、先にある町並みの上空に、旋回し飛び交う複数の〝箒〟の姿が見えた。見える各箒は入れ替わり立ち代わり急降下する様子を見せ、攻撃行動と思しき姿を見せている。そして同方向から聞こえ来る数多の銃声と、町並みの向こうより上がる曳光弾の光。それ等の光景が、そこが車輛隊本隊の現在位置である事を示していた。

 

「――車輛隊は、苛烈な攻撃を受けているようだな……!」

 

 見える光景。聞こえ来る音から、車輛隊が苛烈な攻撃に晒されている事が、嫌でも分かる。

 それに、鷹幅は表情を険しくして零す。

 

「――鷹幅二曹ッ」

 

 しかしそこへ、鷹幅を呼ぶ声が響き上がった。声の元は、反対側で東方向に観測の視線を向けている河義。呼ばれた鷹幅は、身を翻してそちら側へ移り、河義の向けている視線を追う。

 

「制刻等が、激しい攻撃に遭っているようですッ」

 

 河義は双眼鏡越しの視線を先に向けたまま、隣に来た鷹幅に、見える光景を言葉にして告げる。

 その説明された光景を、次には鷹幅も双眼鏡越しに確認した。

 先に見える、中心部に噴水を置く十字路。その噴水の内側に、縁を利用してカバー態勢を取る、二名の隊員の姿が確認できる。特徴的なその容姿から、すぐさまそれ等が制刻と剣である事が、判別できた。

 彼等の頭上や近くを、矢や鉱石の針が飛び抜け、あるいは落ち刺さる様子が見える。それ等に対して、制刻や鳳藤が小銃を突き出し構え応射する姿を見せ、それに合わせて発砲音が聞こえ来た。

 そこから鷹幅は視線を移動させ、南側の十字路入り口に、家屋の影に身を隠す別の隊員ん二名の姿を捉える。内の一人はその異質なまでの巨体から、すぐさま多気投である事が判別でき、続いてもう一人が竹泉である事もすぐに確認できた。

 両名はカバー態勢を取りながらも、時折各装備火器を構え突き出して、射撃行動を行う姿を見せる。

 その様子を確認していた鷹幅の視界に、パリ、と光が一瞬瞬いたのは次の瞬間だ。

 同時に、竹泉と多気投が、慌て遮蔽物を飛び出して飛び退く姿を見せる。――そして直後に、その現象は起こった。

 竹泉と多気投が身を隠しているそのすぐ傍に、轟音を立てて一本の稲妻が落ちたのだ。

 

「ッ……!?――今のは、落雷か!?」

 

 走り届いた閃光と轟音に、鷹幅は思わず微かに身を竦ませた。そして落雷の落下地点に視線を向け直し、推察の言葉を発する。

 

「相手方の魔法現象のようです。先に、車輛隊に随伴中も、同種の攻撃を受けました」

 

 すでにその落雷の魔法現象攻撃を、目撃体験していた河義が、鷹幅に向けて補足説明の言葉を向ける。

 

「ッ、厄介だな。まずは彼等に支援が必要そうだ――不知窪三曹」

 

 鷹幅は、まず制刻等の方へ支援の提供を優先する事を決める。そして選抜射手である不知窪を呼ぶ。

 

「は」

 

 反対側で観測監視を行っていた不知窪は、それを解いて鷹幅の傍に来る。

 

「河義三曹。君は見張りを」

「了」

 

 河義は代わりに監視の指示を受け、不知窪と場所を代わって、反対側で監視体制に付く。

 そして河義に代わってその場に陣取り配置した不知窪は、装備火器である99式7.7mm小銃を構え、スコープを覗いて先の十字路の観測掌握を始める。

 

「――エピック、こちらロングショット1。狙撃支援が可能な位置に付いた、そちらの姿を捉えている」

 

 そしてその隣で鷹幅は、インカムを寄せて制刻等に向けての通信を開き、発して言葉を送る。

 

《――こちらエピック。丁度いい、こっちは現在、落雷をぶち落とす摩訶不思議攻撃に遭ってる》

 

 鷹幅の呼びかけに、独特な重低音での、状況を説明する不躾な返答が返って来る。当然制刻の声であった。

 

《屋根の上に、オペレーターらしいヤツは見えませんか?いるようなら、排除してもらいたい》

 

 続き、要請の言葉が寄越され届く。同時に、インカムに銃声が混じって聞こえ来た。

 

「了解、エピック。対応する――聞いたな、不知窪」

「あれか?」

 

 鷹幅は要請に対して了承の旨を返答、そして隣で狙撃体勢を取る不知窪に促す。対する不知窪は、すでにそれと思しき存在を見つけたのか、一言声を零した。

 

「北西側の家屋。屋根の上」

 

 同時に不知窪は、確認した存在の位置情報を、言葉にして寄越す。鷹幅がそれを受けて双眼鏡を動かせば、示された場所、十字路に並ぶ家屋の内の一つにそれは見えた。

 家屋の屋根の上に、屋根の傾斜を利用してその影に身を隠して配置した、3名の警備兵の姿があった。内の一人はクロスボウを構えて、地上の制刻等に向けて攻撃を加えている様子。そして残る二名は、一人は屋根の影から視線を出して地上を観察する姿を見せ、もう一人は屋根上に置いた書物と思しき物に視線を落としていた。

 

「――可能性は高い。彼等を排除しろ」

「了」

 

 鷹幅の指示に、端的に答える不知窪。

 彼は99式7.7mm小銃のその銃身を動かし、屋根上に配置した警備員の内の一人、書物に視線を落とす者にその銃口を向け、同時にその姿――頭部をスコープ内に収めて見る。

 一拍置いた後に不知窪はその呼吸を止め、引き金を引いた。

 パン、と乾いた音が響く。

 そして一瞬後に、そのスコープ内に収まっていた警備兵は、頭部をおもいきり打たれたように仰け反り、そして屋根上に崩れ落ちた。

 突然起こった事態に、残る二名の警備兵が振り向く。しかし何が起こったのかを飲み込めていないのだろう、その身を硬直させている姿を見せる。

 そんな警備兵達の姿をスコープ内に見ながら、不知窪は息を吸い、ボルトを操作して薬室に次弾を送り込む。スコープの向こうでは、仲間の身を何かが襲った事を理解したのだろう、崩れた警備兵に慌てて寄る、相方なのであろう別の警備兵の姿が見える。

 不知窪はそんな彼の身に照準を合わせて、再び引き金を引いた。

 再び響く乾いた音。そして直後に、スコープ内に収められた警備兵が、身を打ち飛ばされるように倒れる様子が見えた。

 残るクロスボウをその手に構える警備兵は、狼狽の様子を見せながらも、その首を各方に向けて、襲い来た事態の元凶を探す様子を見せている。しかし不知窪は、その警備兵がこちらを認識するよりも前に、ボルト操作で次弾装填を終え、そしてその警備兵の身に銃弾を撃ち込んだ。

 クロスボウ持ちの警備兵は崩れ、その家屋の上に配置していた者達は、全員沈黙した。

 

「3名排除」

「了解。引き続き、敵の排除無力化に当たれ」

「了」

 

 報告の声を上げた不知窪に、鷹幅は返事と、引き続きの攻撃を命じる指示を告げる。

 まだ十字路周りの各建物の屋根には、いくらかの警備兵が配置している。不知窪は引き続き、それ等への対応狙撃行動に取り掛かった。

 

「ロングショット1よりエピック。敵、オペレーターらしきユニットを排除した。状況はどうか?」

 

 傍ら、鷹幅は制刻等に向けて、敵ユニット排除による効果の確認を要請する声を、通信で送る。

 

《――エピックよりロングショット1。どうやら、摩訶不思議の落雷は止んだようだ》

 

 要請に対して、制刻の声で攻撃が収まった旨が返され来た。どうやら予測通り、今しがた排除した警備兵達が、魔法現象のオペレーターであったようだ。

 

《こっちはこれから、家屋に踏み込み攫える》

「了解、引き続き支援する」

 

 制刻からは、これより家屋のクリアリングに入る旨の言葉が寄越される。鷹幅はそれに返す。

 そして一拍置き、噴水の内側に身を隠していた制刻と鳳藤の二名が、縁を越えて飛び出す姿が見えた。制刻等は警備隊からの攻撃が飛び来る中を駆け、十字路北側にある一軒の家屋の懐に駆け込み、壁に取りつく様子を見せる。そして正面玄関の両脇にスタンバイした二人は、息を合わせた後に、玄関扉を蹴破り突入する姿を見せた。

 そこから家屋内部で戦闘が始まったのだろう、単発射撃や三点制限点射での発砲音が、幾度も響き鷹幅等の耳にも聞こえ届く。

 それらの聞こえ来る音を聞きながらも、不知窪は別の家屋の屋根で、影より姿を晒した警備兵に、銃弾を撃ち込み無力化する。

 直後。今度は十字路の南側入り口付近から、家屋の内部や影より、竹泉と多気投が飛び出す姿を見せた。二人は十字路上を駆けて横断し、制刻等が突入した物とは別の家屋へと駆け込み、その壁際に取りつく。そして先の制刻等と同等、玄関扉を破って突入する姿を見せた。

 同時に小銃の。そしてFN MAGの発砲音が響き聞こえ始めた。

 並ぶ家屋を渡り、順次クリアリングして行っているのだろう、十字路からはいくつもの発砲音が上がり聞こえて来る。しかし次第にそれ等の音が聞こえ来る間隔は開き、散漫になって来る。

 一報、屋根上に残る警備兵は、傍らの不知窪の狙撃に寄り、一人一人と排除されてゆく。

 鷹幅はそれ等の音を聞き、光景を見ながら、状況をやや険しい面持ちで双眼鏡越しに見守っている。

 程なくして、十字路の方より聞こえ来ていた銃声は、完全に鳴り止む。

 

《――エピックよりロングショット1。クリアだ。周りの建物は、攫え終えた》

 

 それから間を置いた後に、制刻の声で報告の声が届いた。

 どうやら十字路周辺の家屋のクリアリングは、無事終わったようだ。

 

「了解、エピック。こちらも周辺家屋上の敵を、確認できる限りは無力化した。そちらに被害は無いか?」

《こっちは被害無し。引き続き、警備隊本部を目指して進行する》

 

 鷹幅の、無力化を伝える言葉と問いかけに、制刻からは被害の無い旨と、行動を再開する旨の言葉が寄越された。

 制刻や鳳藤、竹泉や多気投はそれぞれの家屋玄関より再び姿を現し、十字路の北側で合流して再編成する様子を見せる。

 そして制刻等四名は、十字路を発って離れ、警備隊本部の方向へと向かって行き、そこから続く町並みの向こうへと姿を消した。

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