―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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19-9:「Away In」

 上空の無人観測機は、進行を再開した車輛隊の姿を、そのカメラで捉え追いかけていた。

 そのカメラはある程度車輛隊を追った所で、一度ズームアウトする。

 そして町の北東、警備隊本部である古城のある一帯へとスライド。古城一帯の一点に映像の中心を合わせ、そこへズームアップする。

 そこでもまた、激しい戦闘が繰り広げられていた――

 

 

 

 警備隊本部である古城は、その周辺を水路と城壁で囲われており、その水路を越えて城内へ入るための橋を有する城門が、数か所に設けられている。橋はいずれも元は跳ね橋であったそれから代わり、頑丈な作りつけの橋に変えられており、その姿からこの古城がすでに、城塞としての機能が半分放棄されている事が見て取れた。

 その一つ、古城の一番南側に突出して位置する橋。その上では今、銃弾と矢、そして魔法が飛び交い合っていた。

 橋と水路を挟んで住宅街側――すなわち古城の外側には、制刻等エピックユニット4名の、展開した姿があった。

 各員は橋の傍にある、放置された荷車や水路の柵、隣接する建物の影などに身を隠している。

 制刻等4名は、通りを進んで抜けた末に、つい数分前にこの地点に到着。しかしこのアクセス口には警備隊の一隊が布陣して待ち構えており、制刻等はこの場に到着するや否や、激しい戦闘に突入するハメとなったのだ。

 各々遮蔽物にカバーしながら、制刻等はそれぞれタイミングを見つけては、橋の向こうに射撃行動を行っている。しかし橋の向こうの城門上等に布陣した警備隊も、負けじと矢や、火炎弾や鉱石針の魔法攻撃を撃ち返してくる。警備隊の拠点であり、そして住宅密集地からは離れている事もあってか、その勢いはそれまでよりも激しい様子であった。

 

「――ッ!」

 

 遮蔽物の一つである水路沿いの柵より、鳳藤が小銃を突き出して橋の向こうに数発撃ち込む。そして彼女が身を隠した刹那、その頭上を矢や鉱石の針が掠め飛び抜けた。

 

「敵の攻撃が、これまでより厚いッ!」

「ヤツ等のホームのホームだ。我武者羅だろうな」

 

 鳳藤が荒い呼吸で発し上げた声に、別の個所で荷車の影に身を隠していた制刻が、淡々と返す。そして制刻は鳳藤と入れ替わるように小銃を突き出し、発砲。橋の向こうの城壁上で、僅かに身を晒していた一人の警備兵を仕留めた。

 

「弾いた――竹泉、まだかかるか」

 

 一人仕留めた様子を見た制刻は、そこからすぐに再び身を遮蔽物に引き込み隠れる。そして直後に来た敵からの応射を凌ぎつつ、後ろに向けて尋ねる声を飛ばした。

 

「焦らすな、もうちょいだッ!」

 

 制刻の飛ばした声に対して、背後にある建物の間の路地から、苛立ち混じりの返答が上がり返って来た。そしてその路地の内には、今まさに84mm無反動砲に砲弾の装填を行っている、竹泉の姿があった。

 

「――おし、完了。そっち行くッ!」

 

 直後に装填作業を完了させる竹泉。そして竹泉は装填完了した84mm無反動砲をその肩に担ぐと、敵の応射の途切れるタイミングを見て、路地より飛び出す。そして制刻のカバーする荷車に向かって駆け、そして制刻の隣へと滑り込んだ。

 

「準備完了だ、ありがたく思えッ!」

「待ちかねた、とっととやれ」

 

 滑り込むと同時に、皮肉気な声を制刻に向けて張り上げる竹泉。対する制刻は、淡々と皮肉に返し、そして指示の声を発する。

 

「へぃへぃ、ヘタに後ろに出んなよ――ホレ、プレゼントだッ!」

 

 竹泉は投げやりな了解の言葉と、そして忠告を発する。そして荷車より身を出して、担いだ無反動砲を構えると、雑把に照準を付けると同時にその引き金を引いた。

 瞬間、砲身内で発射薬が起爆。

 そして砲の後部よりバックブラストが噴き出し、竹泉の背後に拡散。同時に砲口より多目的榴弾が飛び出す。飛び出した橋の向こうの城門に飛び、その城門の真上に架かる足場通路に飛び込み、直撃。

 轟音を響かせると共に、盛大な爆煙が巻き上がった。

 城門上足場に配置していた警備兵を巻き込み死傷させた爆発は、さらに足場通路を大きく損壊させ、足場通路は直後に崩落。音を立てて瓦礫と成り、直下に落ちて散らばった。

 

「いっちょ上がりッ」

 

 射撃を終え、荷車にカバーし直した竹泉が発し上げる。

 多目的榴弾の直撃炸裂により、城門からの攻撃の手は大きく減退を見せた。

 

「うまい事、カバー先が出来たな」

 

 さらに制刻が先を覗きながら零す。城門直下に崩落し散らばった瓦礫が、遮蔽物として有用だろうと見た上での発言だ。

 

「剱、押し上げるぞ。竹泉、投、援護しろ」

「あぁ……ッ」

「へぃへぃ」

「任せなぁ」

 

 制刻は周辺の各員に向けて指示の声を発し、各々はそれに応じる声を返す。

 

「――行け」

 

 制刻の合図と共に、制刻とそして鳳藤が、それぞれ身を隠していた遮蔽物より飛び出した。二人は身を低くして駆け、架かる橋上を渡り水路を越える。そして渡った先に散らばる足場通路の瓦礫に、それぞれ滑り込んだ。

 

「ッ!」

 

 二人が滑り込みカバー態勢に入ったのと、二人の真上を飛翔体が掠めて行ったのは、ほぼ同時であった。飛び来た攻撃であろうそれに、鳳藤は顔を顰める。

 

「――二段構えか」

 

 一方の制刻は身を隠した瓦礫より視線を出し、先の様子を確認して呟く。

 橋を渡り城門を潜ったその向こう、古城の敷地内のその一角は、周辺を建造物に囲まれた、あまり広くはない広場のようになっていた。

 重要なのは、囲む建造物の内の、正面に見える一つのその壁面。そこにはキャットウォークのような足場が走っており、そこに複数の警備兵が配置している姿が見え、そしてその警備兵達から矢が放たれて来る。

 さらに極めつけは、キャットウォークの中央部に見えた、石造りの小さな砦作りのようになった部分。その正面に設けられた小さな開口部から、次の瞬間に矢が連続して吐き出され、制刻等へと襲い来たのだ。

 

「うぁッ!」

 

 立て続けに襲い来て、頭上を掠める矢の雨に、鳳藤は困惑の声を上げる。

 

「ッ――なんだアレ!?まるで銃座だ!」

 

 そして続け、先に見える矢を吐き出す砦を、そう表現する声を発し上げた。

 

「あのトーチカモドキの向こうに、カラクリを隠してるようだな」

 

 一方の制刻は、冷静に推測の言葉を零す。その推測通り、小さな砦作りの向こうには、矢の連射を可能とする連弩が据えられていた。

 

「まーた面倒なギミックかよッ!――ヨォ、自由どうするよ?もっぺんぶっ込むかぁッ?」

 

 後方からは竹泉の悪態が聞こえ来る。そして続け竹泉は、再度の84mm無反動砲の使用を進言する言葉を寄越した。

 

「いや、本丸のどこ邦人がいるか分からん。本丸にぶち込むのは、控える」

 

 しかし制刻は、警備隊本部に拘束されているであろう邦人に、万一にも危害が及ぶ可能性を鑑み、無反動砲使用の進言を取り下げる。

 

「俺と剱で、押し上げて静かにさせる。――投!あのトーチカモドキに、制圧射撃しろッ」

 

 そして自分等で制圧に向かう旨を告げ、その上で、多気投に援護制圧射撃の実行を命じる。

 

「オーライッ!ぶち込んだるぜぇッ!」

 

 多気投はそれに呼応。そして直後に、彼の扱うFN MAGが射撃を開始。後方より、激しく重々しい射撃音が響き出し、そして撃ち出された7.62mm弾の成す火線が、制刻等の頭上を飛び越えて、先に見える小さな砦作りの正面を襲い叩き始めた。

 

「――おし、行くぞ」

 

 制刻は、砦に隠された連弩からの、攻撃の減退を確認。そして鳳藤に促し、直後に二人は遮蔽物としていた瓦礫をそれぞれ飛び出した。

 二人は、遮蔽物を飛び出して敷地内に踏み込むと同時に、左右に割れた。

 襲い来て掠める矢撃を掻い潜りながら、制刻と鳳藤はそれぞれの方向へ掛ける。そして二人は二人はそれぞれ、先にあった木箱や樽等の積載物の影に滑り込み、再びカバー。

 そこからそれぞれ小銃を突き出し、正面のキャットウォーク上に配置した警備兵達を狙って発砲した。

 

命中(はい)った」

 

 警備兵の一人が弾を受けて倒れる姿を確認し、零しながら一度身を隠す。

 

「っと」

 

 そこへ制刻の方を、連続した矢撃が襲い掠めた。警備隊側の連弩が、FN MAGの制圧射撃を受ける中でも動き、矢を放ってきたのだ。

 

「この中でも撃って来るか――投、もっと銃眼にプレッシャーを加えろッ」

 

 制刻はインカムを用いて、後方の多気投、さらに密な制圧支援射撃を要請する。

 

《奴さんズ、もっと激しく食らいたいってかぁッ!》

 

 多気投からそんな返事が寄越され、そして制圧射撃はより絶え間なく激しい物へと変化する。それに対応し、連弩からの矢撃はさらなる減退を見せた。

 

「おし、接近するぞ」

「あぁ――」

 

 それをチャンスと見止め、制刻はさらに押し上げる旨を鳳藤へ促す。鳳藤もそれに呼応。二人はそれぞれ小銃を遮蔽物より突き出し、突撃前の牽制射撃を先に向けて数発づつ打ち込む。

 そして制刻と鳳藤は、それぞれのタイミングで再び遮蔽物より飛び出した。

 次の遮蔽物を目指して駆ける二人。しかし連弩からの攻撃こそ制圧射撃により抑えられているが、配置した警備兵達のクロスボウによる各個弓撃が、制刻等を襲い掠める。

 

「ッ!」

「ちょいウゼェな」

 

 鳳藤と制刻はそれぞれ、顔を顰めあるいは呟きながらも、双方の射撃と矢撃が飛び交う中を、可能な限りの速度で駆ける。

 パーン――と、遠方より少し毛色の違う発砲音が響いたのはあ、その時であった。同時に、キャットウォーク上で一人の警備兵が倒れる姿を、制刻等は見る。

 遠方高所より制刻等への援護位置に着いている、潜入狙撃班の不知窪からの狙撃支援であった。

 

「まだ、向こうからも狙えてるか」

 

 狙撃支援の様子にそんな声を零しながらも、制刻等は遮蔽物間駆け抜け、次の遮蔽物へとそれぞれ飛び込む。

 

「――こんなモンか」

 

 そして視線を覗かせ、先の様子を確認する制刻。制刻と鳳藤は押し上げにより、配置した警備隊との距離をかなりの所まで詰めていた。

 そしてキャットウォーク中央の小さな砦作りの、その側面に通用口らしき開口部を目視した。

 

「放り込めそうだ――剱、手榴弾」

「あぁ、了解……!」

 

 制刻は、離れた位置で同様にカバーする鳳藤に促す。二人はそれぞれ、手榴弾を繰り出しそのピンを引き抜く。

 

「やれ」

 

 そして二人は、それぞれのタイミングで遮蔽物より身を出し、砦作りを目標に手榴弾投擲した。各方より投げ放たれた手榴弾は、放物線を描いてキャットウォークへと飛ぶ。そして到達し、砦作りの通用口よりその内部へと見事に侵入。

 ――一拍置いた後に、炸裂音が轟いた。

 そして銃眼や通用口等の開口部より、爆煙が零れ噴き出る。炸裂は砦作り内部ばかりでなく、近場に配置していた警備兵をも襲い、死傷させた。

 

「――おぉし、うまく吹っ飛んだ。残りをやれ」

 

 砦作りの無力化に成功し、不敵な様子で零す制刻。それから制刻は、インカム越しに各員に、残敵の掃討を命ずる。

 残った警備兵はほんの数名。そんな彼等も、制刻や鳳藤の各個射撃や、後方の多気投からの支援射撃。そして潜入狙撃班の不知窪からの狙撃により、撃破無力化されていった。

 

「――各員、射撃を控えろ」

 

 程なくして、警備隊側からの応戦の様子が見えなくなった。それを見止めた制刻は各員へ射撃中止の指示を送り、それに呼応する形で各射撃音も収まりを見せる。やがて、一帯に静けさが戻った。

 

「――収まったのか?」

「確認する」

 

 呟き聞こえた鳳藤の声に、制刻は返す。そして制刻は遮蔽物より出て立ち上がり、小銃を構えて周辺に、銃口と警戒の視線を走らせる。鳳藤もそれに習い遮蔽物より出て、周囲へ眼を配る。

 少しの間、警戒観察を続けたが制刻と鳳藤だったが、そこからそれ以上、警備隊側より攻撃のモーションが来ることは無かった。

 

「静かんなったようだな。――オメェ等、大丈夫だ。集まれ」

 

 周辺の安全を確認した制刻は、後方に居る竹泉と多気投に、インカムで集合の指示を送る。程なくして、橋の向こうに支援位置に着いていた竹泉等も、敷地内に踏み込んで来て、制刻の元へと駆け集い合流した。

 

「ハハァ、派手はノックになったなぁッ」

「一々いらん歓迎に出くわすぜッ」

 

 合流した所で、いつも通り多気投は陽気にそんな冗談を飛ばし、竹泉は苛ついた様子で悪態を吐く。

 

「――ヨォ、所でさっきの通信は聞いたよな?」

 

 しかし次に竹泉が発した一言に、その場の空気は変わった。

 竹泉が発現は、装甲戦闘車車長の穏原三曹が戦死したという一報を示す物だ。穏原の戦死の報は、全体共通の無線通信上に上がったため、制刻等の元へも届いていた。

 

「ッ……」

「あぁ――」

 

 愉快でないその報についての言及に、鳳藤は顔を暗く染め、制刻は多くは口にせず、独特の重低音で端的に返す。

 

「穏原のおっさんが逝っちまった」

「あぁッ、チクショウがッ」

 

 そして竹泉は今度ははっきりとその一件を言葉にし、多気投は悪態を吐く。流石の二人も、少なからず知る者の死の報に、その顔に険しい色を作る。

 

「昨日から、ずっとふざけた事ばっかしだッ」

 

 そして竹泉は、顰めたその表情で吐き捨てた。

 

「まったくだな――だが、しんどいトコだが、嘆くのは後だ。やらなきゃなんねぇ事がある」

 

 制刻は竹泉に同意するが、しかしそれから、まだ優先すべき行動がある事を、各員に促す。

 

「エピックよりペンデュラム、及び各ユニット。奴さん達の拠点の玄関口に踏み込み、クリアした。これより建物内に侵入し、邦人の捜索を行う」

 

 そして制刻は無線通信を用いて、指揮所及び各ユニットに向けて、これより警備隊本部へ侵入する旨の報告を上げる。

 

《ペンデュラムよりエピック、了解だ。しかししつこいようだが、くれぐれも無理はするな。間もなく、第1分隊と車輛隊もそちらに到着する》

「了解です」

 

 報告に対して、まず指揮所の井神より、了解の旨と忠告の言葉が寄越される。それに対して、制刻も端的に返す。

 

《ロングショット1よりエピック。屋内への侵入後は、そちらへの狙撃支援は不可能となる》

 

 続けて、それまで制刻等を支援していた潜入狙撃班の鷹幅より、制刻等が屋内に入った後には、狙撃支援が途絶える旨の通信が寄越される。

 

「了解、ロングショット1。以降そっちは、他隊の支援を」

 

 対して制刻は、そう要請の言葉を返した。

 

「――おぉし。奴さん達のホームに踏み込むぞ。邦人のねーちゃんをこっから見つけ出して、回収する」

 

 通信を終えると、制刻等は今一度、他3名を見渡し、そしてこれからの行動を改めて言葉にする。

 

「あぁ」

「へぃよぉ」

「いよいよ終盤戦だなァ」

 

 それに対して、各々はそれぞれ返事を返す。

 

「行くぞ」

 

 それを聞き、制刻は行動開始の言葉を発した。

 広場となっているその場を囲う、古城の建造物。その一つの一角に、制刻等はそれなりの大きさの通用門と思しき扉を見つける。

 制刻等4名は遮蔽物を出て、その扉の元まで駆けて、扉の左右に取りつき、スタンバイ。そして合図と共に扉を蹴り開き、制刻と鳳藤が突入。

 

「――クリア」

「クリアだ」

 

 突入先は奥へと通路が続いているのみで、幸い警備隊の待ち伏せ等は無かった。

 

「おぉし、二人づつ距離を取って行く。十分警戒しろ」

 

 制刻は各員に発し、各員は指示の通りの隊伍を組む。

 そして制刻等4人は、いよいよ警備隊本部へと踏み込み、ここに捕らわれているであろう邦人の捜索を開始しした。

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