―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

214 / 223
20-5:「急転」

 場所は再び、制刻等とポプラノステクが相対し、戦いの舞台となった古城の南棟ホールへ。ホール空間では、激しいぶつかり合いが続いていた。

 

「――うわぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

 ホール空間の壁面に設けられ通る、中二階通路。

 その上を、泣き声に近い叫びを上げながら、必死の形相で駆ける鳳藤の姿があった。そして彼女の後方には、中二階通路の床面や、壁に広がり浸蝕しながら這い進む、黒い影が見える。鳳藤は、この黒い影に追われていた。

 現在制刻と鳳藤が対峙する、黒い影を操る存在である、警備隊長ポプラノステク。しかし彼は、制刻の性質が黒い影を消失、無力化させる事に気づいてからは、黒い影を繰り出す頻度を目に見えて減らし、得物による直接攻撃にその比重を置き出していた。

 それまで安全圏である制刻の傍を離れられず、ほぼお荷物状態であった鳳藤は、そこにチャンスを見出した。黒い影の出現しない状態であるならば、ホール空間中を機動し、ポプラノステクの隙を突けるのではないかと考えたのだ。

 そして制刻の元を飛び出して、ホール空間中を縦横無尽に飛び駆けるポプラノステクと、相まみえようとしたまでは良かった。

 しかし、鳳藤自身は魔法に耐性が無い――すなわち魔法が効く身である事は、それまでの動きを注意深く観察していたポプラノステクに、早々に看破される。そしてポプラノステクは、鳳藤に向けて黒い影を発現させて放ち、こうして現在黒い影に追いかけられている状況に陥ったのであった。

 

「――ッ!」

 

 鳳藤は自身を追いかける黒い影から逃れるべく、中二階通路の手すりに手を掛け、飛び越え下階へと飛び降りた。

 

「――ヅゥッ……!」

 

 そして下階の床へ転がるように着地。

 受け身は取ったが、落下のその衝撃を消し切れずに、身体に鈍い痛みが走る。その影響で鳳藤は軽いダウン状態に陥り、床についた四肢を必死に動かし這い進む。そしてその先で立ち構える、安全圏である制刻の元へ、這う這うの体で辿り着き転がり込んだ。

 そんな所を狙うように、ホール中を跳び駆けるポプラノステクより、連弩による矢撃が襲い来る。

 

「うぜぇな」

 

 しかし制刻は手にした鉈を薙ぎ、襲い来た矢の群れを、呟きながら易々と払って見せた。

 だがその矢撃も、牽制に過ぎなかった。

 続け見れば、制刻の真上宙空にあったのは、肉薄したポプラノステクの大剣を振りかぶる姿。

 瞬間、鉈と漆黒の大剣が衝突し、金属音が鳴り響いた。そして互いの刃は滑り合い火花を上げる。わずか一瞬のぶつかり合いの後、ポプラノステクは再び、消え切らぬ勢いを利用して離脱。飛び去って行った。

 制刻とポプラノステクのこのぶつかり合いは、すでに6回を数えていた。

 

「……ッ!どうすれば彼を倒せるんだ!?」

 

 制刻が襲撃を凌いだ所で、ダウン状態からどうにか回復した鳳藤が声を上げる。

 

「焦るな。おっさんの性質(タチ)は見えて来た」

 

 しかし対する制刻は、ポプラノステクの姿を姿勢で追いながらも、淡々とそんな声を発する。

 

「そろそろ、とっ捕まえられねぇか、試してみるか」

 

 続け、そんな言葉を零した制刻。

 そして制刻は、手にしていた鉈を弾帯に挟んで収めると、入れ替わりに特徴的な左腕を、ゆらりと翳し上げた。

 制刻の左腕は、酷く異質であった。

 右腕と対比して長さ1.5倍を超える、人の物とは思えぬ大きさ。しかし反して、骨が浮き出た老婆の肌ような不気味な外観。手先の五指は手の平に対して異質に長く、一つ一つが尖っている。

 制刻は、そんな自身の左腕を掲げ、迎撃の構えを取った。

 一方、まるでそれを挑戦と受け取ったかのように、制刻の視線の先に――前方の階段上に、ポプラノステクが飛び来て姿を現す。

 ポプラノステクは一度踊り場に脚を着いた後に、身を切り返して制刻の方向へと飛んだ。

 

「やる気のようだ」

 

 その姿に、制刻は呟く。

 ポプラノステクは、跳躍して制刻等の真上へと飛来。そして漆黒の大剣を、振りかぶる姿勢を取る。

 

「――ッ」

 

 しかしその時、制刻は気付いた。

 ポプラノステクから伝わりくる〝気〟が、それまでとは異なる事に。

 

「――おい、何かまずいぞッ!」

 

 隣の鳳藤もそれに感づいたらしい、彼女は制刻に向けて警告の声を寄越してくる。

 

「あぁ。デカいのを、ぶちかます気のようだ」

 

 対する制刻は、変わらぬ様子でそんな言葉を返す。

 真上のポプラノステクからは、これまでとは違う、明らかにこちらを突き崩そうとする意志が感じられた。

 

「退避を――」

「いや、プランは変えねぇ。このまま試す」

 

 しかし退避を促した鳳藤に対して、制刻は構えの姿勢を解かずに、そんな旨を発した。

 対するポプラノステクは、すでに急降下に入っていた。

 1秒も経過せぬ間に、ポプラノステクの身体は、制刻へと肉薄する。

 ――漆黒の大剣が、制刻目がけて迫る。

 ――迎え撃つ、制刻の左腕が青筋を作る。

 そして――

 

 

 ドッ――と、爆発的な音声が、ホール空間中に鳴り響いた。

 

 

 ――結論から言えば、制刻は漆黒の大剣を受け止める事に成功した。

 制刻の左手の指先は、振り下ろされた漆黒の大剣の刃を、見事に掴み捕まえ、止めて見せた。

 しかし、ポプラノステクの剣撃もまた、とてつもない威力を有しており、それが押し留められた影響は、外部周辺に衝撃現象となって零れ発言した。

 制刻自身はその強大な剣撃を受け止めたが、しかし制刻が足を着く床は、その威力に耐えきれなかった。

 制刻が漆黒の大剣を受け止めたと同時に、制刻の戦闘靴を履く脚は、ドッ――と床にめり込み数cm沈む。そしてそこを中心に、ホールの床面の四方八方に、巨大な亀裂が走った。

 さらに二人を中心に、爆発的な衝撃波が発生。

 

「――ッぁ!?」

 

 衝撃派は傍にいた鳳藤を吹き飛ばし、彼女は宙で一回転して床に叩き付けられる。

 さらに衝撃波は、手すりなど比較的脆い周辺構造物を、その圧でひしゃげさせた。

 

「――」

「……」

 

 超常的な現象が立て続いた周囲に反して、その中心である制刻とポプラノステクは、反した酷く冷静な様子で対峙していた。

 制刻は大剣を掴み捕まえたまま。

 ポプラノステクは柄を放さず、宙に身を置いたまま。

 両者は睨み合う。

 しかしそれも一瞬。直後に、制刻はそのまま大剣ごと、相手を捻じり叩き付けるべく。

 ポプラノステクは、ここから押し崩し、相手を断ち切るべく。

 互いにさらなる一手を打つべく、その身を動かそうとした――

 

 

「ストォォォォォォォップッ!!」

 

 

 そんな叫び声が、ホール空間中に響いたのは、その直前であった。

 

「あ――?」

「――?」

 

 音の発生源は、制刻の背後。ホール空間への出入り口のある方向。

 

「え?」

 

 制刻と鳳藤は、それぞれ訝しむ、あるいは疑問を浮かべる色で、そちらへ振り向く。そしてポプラノステクの視線も、制刻の身体越しに、扉の方向を向く。

 

「タンマだタンマッ!こぉの、オドロキ轟きモンスターズがぁッ!」

 

 そこに見えたのは、何か驚きそして呆れた様子の言葉を張り上げながら、ホール空間に駆け込んでくる竹泉の姿であった。

 

「隊長!」

 

 そして続け、その背後から一人の警備服を纏う少女が飛び出して来た。

 

「ヒュリリ?」

 

 それが副官である少女である事に気付き、ポプラノステクも声を零す。

 

「もういいんです!戦わないで!」

「あぁ、取り合えず離れろ!ぶつかり合いはキャンセルだ!」

 

 そして両者は制刻とポプラノステクの元へそれぞれ駆け寄り、互いに訴え促す声を上げる。

 それを受けて、制刻は漆黒の大剣を捕まえていた左手を解き、そしてポプラノステクは床に足を着いた。

 

「隊長!大丈夫ですか!?」

「あぁ――」

 

 ヒュリリはポプラノステクに寄り、彼の身を案ずる言葉を上げる。それにポプラノステクは、少し戸惑いつつも答える。

 

「――ったく。また、とんでもねぇ現象起こしやがって」

 

 一方の竹泉は、沈む足元に、床に走った巨大な亀裂。損壊したホール内各所を見ながら、呆れた声を上げる。

 

「おい、どういう事だ?」

「何があったんだ……?」

 

 一方の制刻は、左腕の特徴的な指先をユラユラ動かし解しつつ、竹泉に向けて尋ねる声を発する。そこへ鳳藤も駆け寄って来て、声を挟む。

 同時に二人が視線を再び出入り口方向に流せば、そこには別ルートでの退避を命じたはずの、多気投や水戸美。ファニールにクラライナや子供達。さらにはそれを追いかけて行った、オークのヴェイノの、駆けこんでくる姿が見えた。

 

「停戦だと。向こうさんが、戦闘の停止を呼びかけて来た」

 

 そんな制刻等に、端的に回答の言葉を述べる竹泉。

 

「停戦?」

 

 それを聞き留め言葉を発したのは、ポプラノステクだ。

 彼は疑念の色をその顔に浮かべ、そして自身に抱き着いたヒュリリや、駆け寄って来たヴェイノに順に視線を向ける。

 

「町長のご判断らしい。俺も大まかな所しか、まだ聞かされていないが……」

 

 ヴェイノが、彼もまだ困惑しているのだろう、その様子が見て取れる顔色で発する。

 

「もうこの人達と戦ってはダメ……それよりも、大変な事が……!」

 

 ヒュリリからは、必死の様子で訴える声が上がる。

 そしてそこから、彼女の口から何が起こっているのかが、紡がれ伝えられた――

 

 

 

「――そんな事が……しかし、これまでの犠牲は……」

 

 エルフのマイリセリアが――魔王軍側がこの町を不穏分子の見なし、切り捨てた事。

 それを受け、町長ルデラは国の方針より離脱。抵抗を行う選択をした事。

 他、関わる事柄についての説明を、ヒュリリより受けたポプラノステク。

 しかし、これまで町のためと選択した道に付き合わせ、多くの配下を犠牲として来たポプラノステクにとって、それはすぐに納得し受け入れられる物ではなかった。

 

「お気持ちは分かります。でも、今は――」

 

 ヒュリリはそんなポプラノステクの気持ちを汲み取り、しかし次いで急かし促す声を発しかける。

 

「――そう。今は、それどころじゃないものねぇ」

 

 しかしヒュリリの言葉は、彼女の意思に反して、無理やり何者かに代弁された。

 声はポプラノステクの背後、上方から聞こえ来た。ポプラノステク達、そして制刻等やファニール達の視線が、一斉に声を辿りそちらを向く。

 

「だって今から、この町はみせしめに始末されるんだもの」

 

 ホール中央の階段の、中程の踊り場。そこに声の主は居た。扇情的な格好に身を包んだ、エルフの女――マイリセリアであった。

 

「貴様――」

 

 ポプラノステクはマイリセリアの姿を前に、漆黒の剣を再び構える。

 

「アレが、件の女か」

 

 一方、制刻はマイリセリアに対して、あまり興味はなさそうな様子で視線を送りつつ、呟く。ここまでの出来事の詳細を、すでに制刻等も掌握していた。

 

「厄介そうな女感プンプンだなぁッ。ヨォ。神話のセオリーじゃぁ、エルフっつーのはお綺麗な存在じゃぁねぇのかよ?」

 

 続け竹泉が面倒臭そうに言葉を吐きながら、傍らのポプラノステク達や、背後のファニール達に目を配り、尋ねる声を上げる。

 

「彼女達は、堕ちているんだ」

 

 竹泉の声には、ヴェイノから回答が返った。その彼も、言葉を返しながらも階段上のマイリセリアを睨み、警戒の姿勢を見せている。

 

「そんな……!」

「エルフが魔王側に堕ちるなんて……そんな事が……?」

 

 ヴェイノのその回答に、後ろで同様に警戒している、ファニールやクラライナから、困惑混じりの苦い声が上がる。

 

「なんぞ気色悪ぃ存在だってのは、理解できた」

 

 そんなヴェイノやファニール達の言葉様子から竹泉は察し、そして言葉通りの気色悪そうな顔を、再びクラライナに向けた。

 

「ふふ、それにしても賑やかね。警備隊の皆さんに勇者様達。そして――不思議なお客さん達」

 

 一方のマイリセリアは、こちらに視線を向けて流しながら、場違いな笑みを浮かべて発する。

 

「特にお客さん達には、ルミナやエイレスがお世話になったみたいだし――徹敵的に苦しんでもらわなくちゃ――」

 

 そこでマイリセリアは、口角を釣り上げたまま、その眼から微笑を消した。

 

「愚かな町長さん達みたいに、簡単に楽にさせてはあげないわ」

 

 そして続き、そんな言葉を紡ぐマイリセリア。

 

「え――ど、どう言う事!?父さまに何を!?」

 

 その言葉に反応したのはヒュリリ。彼女は一歩前に出て、急く様子でマイリセリアに追及の言葉を投げかける。

 

「言葉のままよ、お嬢ちゃん。愚かな上、なかなかに面倒な人だったわ」

 

 そんなヒュリリの詰問に、マイリセリアは返しながら、その片腕を翳して見せる。よくよく凝視すれば、彼女の腕には血のような物が微かに付着していた。

 

「あ――」

 

 瞬間、青ざめるヒュリリの顔。

 

「――ぁ……あぁぁぁぁッ!!」

 

 直後、ヒュリリは腰に下げていた剣を抜剣。そして床を蹴り、飛び出した。

 

「ヒュリリ!」

 

 ポプラノステクが制止の声を掛ける。しかしヒュリリは叫び声を上げながら、階段を飛ぶように駆けあがり、踊り場のマイリセリアへ迫る。

 

「ふん」

 

 しかし、マイリセリアがそんなヒュリリに向けて手を翳す。そしてマイリセリアの手中より強力な風圧が打ち放たれる。

 

「ッ――ぅあッ!?」

 

 風圧はヒュリリの身に直撃。彼女は、マイリセリアに近寄る事もままならずに、階段の途中より身を吹き飛ばされ、落下する。

 

「ヒュリリッ!」

 

 幸い、階段元に駆け付けたポプラノステクにより、ヒュリリの身は受け止められた。そしてポプラノステクは彼女を支えつつ、マイリセリアを見上げ睨む。

 

「クラライナ!」

「承知!」

 

 後方では、ファニールとクラライナが、マイリセリアに対応すべく飛び出していた。

 

「ッ――!」

「ヘェイッ!」

 

 さらに鳳藤や多気投が、各々の小銃やFN MAGを構えて、その銃口をマイリセリアへと向ける。

 ――しかしそれ等の行動を遮るように、巨大な崩壊音が突如として響いた。

 音の発生源は、ホール空間の天井。マイリセリアの背後真上。天井の一角が、突如として爆破するように崩壊したのだ。

 

「うわッ!?」

「おっぇッ!?」

 

 突然の天井の崩壊と共に、発生した瓦礫類が落下し降り注ぎ、制刻等を襲う。襲い来たそれに、鳳藤や竹泉、他各々から驚きと困惑の声が上がる。

 

「なんぞぉ!?」

 

 どうにかそれを凌ぎ、多気投始め各員は、困惑しつつも再び天井を見る。見れば、天井の一角が、外側より叩き壊され崩落し、そこに大穴が空いていた。

 そしてその向こうに見えるは、空――否。大穴の向こうには大きな何かのシルエットがあり、それが向こうに見えるはずの空を隠していた。

 

「――あぁん!?なんだありゃッ!?」

「鷹……いや鷲……?だが……」

 

 竹泉が荒げた声を上げ、鳳藤は見えた物の正体を推察する声を零す。大穴の向こうに見えたシルエットは、鳳藤の零した言葉通り、鷹や鷲の物に酷似していた。しかし、問題はその大きさであった。

 天井に空いた穴は、直径4~5m程。そしてその鷹や鷲に似た鳥獣は、距離から換算推察しても、その大穴と同じ程の大きさを持っていたのだ。

 

「メチャでっけぇホークオアイーグルかぁッ!?」

「あれって……グルフィ……!?」

 

 驚きの声を発する多気投。その横で、ファニールがその鳥獣の名であるらしき物を零す。

 

「ぶっ飛ばしての踏み込みは、こっちの専売特許のつもりだったんだがな」

 

 驚く各々の中、制刻だけが変わらぬ様子で、少しずれた呟きを零す。

 そんな一方、グルフィという名称らしきその大型鳥獣は、天井に空いた穴をその巨体に反した繊細な動きで潜り、階段の踊り場に立つマイリセリアの真上にまで飛来する。

 

「姫様」

 

 そのグルフィの背には、また別の女エルフの姿があった。

 

「素敵な登場よ、ミュスク」

 

 声を掛けて来た女エルフに、マイリセリアはそんな称する言葉を返す。

 

「他の子達は?」

「すでに、始めております」

 

 続き問いかけたマイリセリアの言葉に、ミュスクと呼ばれた女エルフは、そんな言葉を返す。

 

「ふふ、いいわ。それじゃあ、その様子を特等席で眺めるとしましょうか」

 

 返された言葉に満足げに微笑むと、マイリセリアはトンと飛び、鳥獣グルフィのその巨大な爪足に飛び乗る。彼女が乗った事を確認すると、ミュスクはグルフィに繋がれた手綱のような物を操る。そしてグルフィはその巨大な翼を羽ばたかせ、上昇を開始する。

 

「ッ――!貴様!」

 

 その姿に、ポプラノステクが声を張り上げる。

 

「ふふ、せいぜい藻掻きなさいな。そして無惨に苦しみ死んでゆく姿を、見せて頂戴」

 

 しかしマイリセリアは嘲笑う言葉を寄越す。そして彼女を乗せたグルフィは、天井の大穴を再び潜って、外へと飛び去った。

 

「――ッ!ヨォ、自由。ありゃチト面倒なんじゃねぇかぁッ!?」

 

 鳥獣グルフィが姿を消した直後に、竹泉が天井の大穴を指し示しながら、制刻に向けて荒げた声を上げる。

 

「言われるまでもねぇ」

「車輛隊に一報を!対空戦闘を――」

 

 制刻はそれに端的に返す。そして鳳藤はそれに急く様子で言葉を続ける。

 

「――ねぇ……ちょっと待って……」

 

 しかしそこへ、割り込むように声が上がる。これの主はファニールだ。彼女は目を見開き、そして少し震えるその腕で、先の天井の大穴を指し示している。

 

「あ?」

 

 竹泉から訝しむ声が上がる。そして各々は、ファニールの視線を追って、天井の大穴を、その向こうに見える上空大空を見上げる。

 ――そこにあったのは、空を翔け飛ぶ無数のグルフィの姿であった――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。