―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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---:「鼓動」

 新たに転移して来た豊原基地の、その中に出現した第54普通科連隊、第2中隊の隊舎。

 その内部に存在するいくつもの部屋の内の一つ、第5分隊の居室。

 その居室内に、第5分隊隊員、超保の姿があった。

 本来は4人部屋であり、4人分のベッドやロッカーが置かれているはずの室内は、しかし今現在、1人分――超保の分のロッカーとベッドがポツンと片隅に置かれているだけであった。

 どうにも隊舎は、元あった形そのままではなく、飛ばされてきた者の分だけがピックアップされるように転移して来たようなのだ。この結果、元の世界で元の隊舎がどうなったのかは、皆目見当が付かない。

 ともかく隊舎はそのような変形した形でこの異世界に現れていた。そしてそれ故、第5分隊ではただ一人飛ばされてきた超保の居室は、一人部屋となっていた。

 他の隊員からはそれをからかい混じりに羨まれたが、超保自身は、内心そんな事はどうでも良かった。

 

「――これ以上は、付き合い切れん」

 

 ロッカーの前で、そんな一言を呟く超保。

 その姿は、支給されている3型迷彩服を纏っておらず、私服姿であった。そしてベッド上には、中身の詰められ膨らんだ二つの旅行鞄がある。

 それをおもむろに両手に取る超保。

 

「抜けさせてもらう」

 

 そしてそんな一言を呟きながら、身を翻す超保。

 ――その次の瞬間であった。超保の姿が、忽然と消えたのは。

 音もなく、映像加工で消し去るように、超保の姿は消えた。

 そして居室からは人の気配が完全に消え去り、静けさが支配した――

 

 

 

 この異世界の地、ある場所。

 明かりがガラス越しに入ってはいるが、ほんの薄暗い空間で、一人の男性が仰向けに寝そべっていた。

 厳ついが端正な顔立ちをし、整えられたスポーツ刈りに揉み上げ、顎鬚が特徴的な男性。その身には、濃い青色のツナギを纏っている。

 男性が身体を預けるは、倒されたシート。男性の足元には、ハンドルやアクセル、ブレーキペダル等が存在している。そこは、自動車の内部であった。

 ガチャ、という音と共に男性の寝そべる運転席側のドアが開かれたのは、その時であった。

 

「こんな所にいらっしゃったのですね、〝解放(はなつ)〟様」

 

 開かれたドアの向こうに現れたのは、一人の女性だ。

 ハーフと思しき色白で整った顔立ちが真っ先に目につき、次いで緩やかなロールを掛けた、長く淡い色の金髪が目を引く。そんな美少女とも言える女性は、しかし男性と同様に、濃い青色のツナギを纏っていた。

 そして彼女はシートに寝そべっていた男性を見つけると、彼を〝解放(はなつ)〟という名で呼んだ。

 

「んぁ?どうした〝(よろい)〟ちゃん?なんかあったか?」

 

 呼ばれた男性は、気だるげの声色で女性を〝鎧(よろい)〟と呼びながら、半身を起こして尋ねる言葉を返す。

 

穂播(ほはり)様が、私たちに来てほしいそうですわ」

「あぁ、一佐さんがお呼びか」

 

 女性からの告げる言葉。

 それを聞いた男性は、「よっこらせ」と声に出しながら、運転席シートを発って車外へと繰り出した――

 

 

 

― HETEROGENEOUS 第一部 完 ―




皆さま、日頃より大変お世話になっております。

説明いたします。
第一部 完、とか仰々しく付けましたが、ブツ切りにして枠を別に持って行っただけです。

第二部を小説家になろうの方で投稿中なのですが、まだ途中、更新スピードが落ちている等の理由から、こちらでの掲載は少し様子を見させていただきたく思います。
もしも続きを気にしてくださる方がいらっしゃいましたら、お手数ですが小説家になろうの方を覗いていただけると幸いです。

そして厚かましくも我儘を言わせてもらえば、ここまでの感想や評価等いただけますとありがたいです。


それでは、お付き合いいただきありがとうございました。
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