―異質― 日本国の有事防衛組織、その異世界を巡る叙事詩《邂逅の編》   作:えぴっくにごつ

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7-6:「巨大な肉薄戦」

 森の中の空間の西手。そちら側に周った策頼と竹泉もまた、掘っ立て小屋の密集する空間で、野盗達を相手に戦闘を行っていた。

 

「に、逃げろぉ!」

 

 少なくない数の野盗を退け倒し、やがて生き残った者達が逃走を始める姿が見える。

 

「はッ、奴等逃げてくなぁ」

 

 小銃の照準の向こうに逃走して行く敵の姿を見ながら、どこか安堵の色の含まれた声を発する竹泉。

 

「逃がしはしない――」

 

 しかし一方の策頼は、静かに、だが怒気の含まれた言葉で零す。そしてショットガンを構えて遮蔽物から飛び出すと、逃げて行った野盗達を追って駆け出した。

 

「あ、おい!」

 

 制止の言葉を掛ける竹泉だが、策頼の脚は早く、直後に彼は掘っ立て小屋の影へと駆け消えてしまった。

 

「ったく、やだねぇ。頭に血が登ってやがる!」

 

 悪態を吐きながら、竹泉は自身も遮蔽物を出て、策頼を追いかけようとした。――だがその竹泉の進路を遮るように、傍にあった掘っ立て小屋の影から、ヌッと巨大な影が現れたのは次の瞬間であった。

 

「――はぁ!?」

 

 思わず声を上げる竹泉。現れたのは巨大な体躯の大男。その肩には巨大な大斧が担がれている。

 

「ッ――!オォラァァッ!」

 

 そしてその大男は竹泉の姿を見るなり、手にした大斧を掲げ上げ、そして竹泉目がけて振り下ろした。

 

「ッ!」

 

 それを目にした竹泉は、咄嗟に横へと飛ぶ。直後、それまで竹泉が場所に、大斧が叩き下ろされ突き刺さった。

 

「――オイ、洒落になんねぇぞ!?」

 

 飛び退き回避した先でそれを見た竹泉は、顔を若干青くして言葉を零す。

 

「野郎ぉ……ッ!」

 

 一方の大男は竹泉を目で追いながら忌々し気に零し、そして地面に突き刺さった大斧を引き抜こうとする。

 

「カスがッ!」

 

 竹泉はその大男の姿を隙と見止め、咄嗟に小銃を構えて、大男に向けて発砲した。――しかし直後に、驚くべき光景が竹泉の目に飛び込んだ。

 

「うがッ!?」

 

 丁度引き抜かれた大斧が射線上に重なり、三点制限点射で撃ち出された5.56㎜弾の群れが阻害されたのだ。弾が大斧を叩いた衝撃で、大斧の向こうからは大男の声が聞こえ来たが、大男への実害が無いのは明らかであった。

 

「な――ありえねぇだろッ!」

 

 竹泉は困惑の声を上げながらも、大男の無防備な部分を探し、再び銃撃を試みようとする。

 

「痛ってぇ……グォラァァァッ!」

 

 だが竹泉が引き金を引くよりも早く、大男は大股で竹泉の前へと踏み込み、そしてその手の大斧を横へ薙いだ。

 

「ッ――」

 

 発砲しても大斧は防げない――そう判断した竹泉は発砲を中断。身を屈め、そして再び横へと飛んだ。

 飛び退いた先で体を起こし、竹泉は大男へと振り返る。

 しかしそこで竹泉は目を剥く。先程大斧を薙ぎ終えたばかりの大男は、しかしすでに竹泉へと向き直り、またも大斧を振り降ろそうとしている。竹泉が一撃を回避する事を見越しての、連撃であった。

 

(ヤベェ――!)

 

 内心で声を上げる竹泉。今現在の体勢は飛び退いた直後で不安定であり、再び体勢を取り直して飛び退くよりも前に、大斧は竹泉の体を切り裂くであろう。

 

「ッ!」

 

 瞬間。竹泉は咄嗟の思い付きで、小銃を両手で掲げ上げた。大斧の軌道上に掲げられたそれは、直後に振り降ろされた大斧と接触。鈍い衝突音が響き渡った。

 

「ヅッ!」

 

 同時に小銃を通して竹泉の両腕に、衝撃が伝わる。小銃はどうにか大斧の振り降ろしに耐えたが、その威力により銃身は湾曲し、最早本来の銃としての役割は果たさないであろう。

 

「ウガァァァッ!」

「あぁ、チクショ――ッ!」

 

 両者はそのまま鍔競り合い状態に陥る。大男は握る大斧に力を込め、竹泉は懸命にそれを押し返そうとする。

 

「オラァァ!死ねやぁぁ!」

「ヅッ……コイツうぜぇ……ッ!」

 

 しかし体躯、質量では大男が勝り、竹泉は不利な状況にあった。大男から浴びせかけられる言葉に悪態を零しながらも、竹泉は少しづつ押されてゆく。

 

「――!」

 

 しかしその時、竹泉は大男の体越しにわずかに見える背後の景色の中に、何かを見る。そして竹泉は直後、大男の腹部に蹴りを入れた。突然の蹴りに男はわずかに体勢を崩す。その隙を突いて竹泉は鍔競り合いを解き、横へと飛び退いた。

 

「ッ――ヤロォ……そんなモン利くかよぉォッ!」

 

 武泉の咄嗟の蹴りは、一瞬大男の態勢を崩した物の、それ以上の効果は成さずに大男はすぐに立ち直る。怒りの声を上げながら大男は竹泉の姿を追う。一方の竹泉は、飛び退いた直後の無防備な状態にあった。

 

「ガハハッ!死ねやぁぁッ!」

 

 その竹泉の姿に、大男は勝利を確信。そして笑い声を上げ、大斧を振りかぶる――

 

 

「ウワァーォゥッ!!」

 

 

「――ぎゃげぇッ!?」

 

 が――突如掛け声が響くと共に、大男の体躯をさらに超える巨大な存在がその場に襲来。

 大男に背後から激突した。

 

「ぎぇぇッ!?」

 

 突然の背後からの凄まじい衝撃に、大男は受け身を取る事もままならずに地面へと叩き付けられる。

 そして先程まで大男が立っていた場所に、別の存在が立ち構える。

 

「イェーイッ!俺様参上だずぇッ!拍手喝采で迎えてくれよなぁッ!」

 

 その正体は他でも無い多気投であった。

身長200㎝越え、体重100㎏以上。――異質なまでに常人離れしたその存在の衝突には、流石の大男も一たまりもなかった。

 

「フゥーウィーッ!」

 

 ポーズを決めながら陽気な掛け声を上げる多気投。

 そしてそんな彼の横を、別の人影が駆け抜けて来る。

 

「げぇ、がぁ……!?なぁ……!?」

 

 一方の大男は、不自然な体勢で地面に叩き付けられ体の各所を強打したせいか、倒れたその巨体をビクつかせていた。それでも尚、懸命に藻掻き、立ち上がろうとする様子が見て取れる。

 

「ぐげッ――」

 

 しかし直後、その大男の首に戦闘靴が叩き込まれ、大男はまるでカエルのような声を上げ、そして気絶した。

 

「無力化した」

 

 そして足元に大男を見ながら静かに発したのは、多気投の横を駆け出て来た人影――策頼であった。

 

「竹泉、大丈夫か」

 

 大男の無力化を確認した後に、策頼は竹泉へ視線を向けて尋ねる言葉を掛ける。

 

「ッ――あぁ、おかげ様でなぁ、オメェがとっとと行っちまわなけりゃぁ、もちっとスマートに済んだだろぉよッ!」

 

 それに対して竹泉は返し、そして策頼が先行して行ってしまった事に対して、文句の言葉を上げる。

 

「あぁ、すまなかった」

 

 竹泉の文句の言葉を受けた策頼は、しかし変わらぬ静かな口調で端的な返事を返して見せた。

 

「ったく――それと多気投!オメェ、俺に気付かずに突っ込んで来やがっただろ!?」

 

 そして竹泉は相手を多気投へと移し、言葉を投げ掛ける。

 

「ハハァッ!ソーリィだぜ、このデカブツの影に隠れて見えなかったんだぁッ!」

 

 言葉に反して悪びれなく返す多気投。

 

「ま、無事だったようで何よりだ」

 

 そこへさらに声が割り込む。各員が声の方向へ視線を向ければ、そこに制刻の姿がある。さらに制刻の片腕には、その腕で首を締め上げられた野盗の体が見えた。

 

「――ったく、どいつもこいつも……ッ」

 

 その光景、そして立て続いた事象の数々に、竹泉は疲れ呆れた様子で吐き捨てた。

 

「自由さん。この男を見てください」

 

 一方、大男の姿へ視線を降ろしていた策頼は、そこで制刻を呼ぶ。

 

「どうした?」

「この男、他の野盗とは様相が違うようです」

 

 近づき横に立った制刻に、説明の言葉を発する策頼。

 

「あぁ、ホントでけぇよなぁ。最初はゴリラかなんかかと思ったずぇ」

「はッ。オメェと比べりゃコレもカワイイお人形だよッ」

 

 背後からは多気投の声や竹泉の皮肉が聞こえてくるが、制刻と策頼はそれには取り合わずに会話を続ける。

 

「巨体もですが、身に着けた装飾が多いのも気になります」

 

 策頼は大男の体や、横に転がった大男の使用していた大斧を指し示しながら発する。言葉通り、大男の体には装飾品などが目立ち、大斧にも意匠が施されている様子が見えた。

 

「ここの頭かもしれません」

「成程な。で、コレはまだ生きてんのか?」

「一応は」

「そんじゃ、拘束して監視しとく必要があるな」

 

 制刻は発すると、足元に転がる大男の首根っこを掴み、乱雑に持ち上げる。

 

「一度コレをシキツウのトコまで引きずってって、拘束しよう。監視を矢万達に任せて、俺等は戦闘索敵を続行する」

「やれやれ……」

 

 そして制刻は各員にその後の動きを説明。それを聞いた竹泉は、倦怠感を露わにして呟いた。

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