ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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,、、,< 捧呈

 フォシュンッ!

 

 『ッヅゥ...!』

 

 プラズマバレットを発射した反動で、アイシャは体を仰け反らせる。

 

 狙っていた的である手頃な壺に命中する事はなく、プラズマバレットは

 そのまま進行方向にある建物の外壁に被弾した。

 場所はベーレト・バビリの2つ離れた空き地。

 そこに隣接している宿なので、壊れても問題はないとの事だ。

 

 爆発の威力で被弾箇所はコンクリートの破片が飛び散り、窪んでいた。

 その窪みが至る所に見受けられる所からして、これまでにアイシャが

 狙いを外してしまっている事が伺える。

 

 鈍い痺れを感じる肩を装甲越しに擦りながら、顔を顰めつつアイシャは

 背後に居るケルティックに苦言を呈した。

 

 『やっぱりあたしには向いてないよ、この武器は...

  よくもまぁアンタ達は使い熟してるね』

 

 カカカカカカ...

 

 『別に褒めてるんじゃ...まぁ、いいや』

 

 呆れているとは言えず、アイシャはため息をつきながら左肩の装甲ごと

 プラズマ・キャスターを外した。

 

 左肩の装甲とプラズマ・キャスターはケルティックがアイシャのために

 用意した装備であり、彼女の体格にフィットするよう調整されている

 そうだ。

 

 普及されている物との違いとして、上部に三角形の機械が付いている。

 それはヘルメットに搭載されているレーザーサイトであり、エルダーが

 使用している物と同じモデルなのだ。

 

 最初こそはプレゼントという形で貰い受け、普段では見られない様な

 笑みを浮かべつつ、アイシャは嬉しそうにしていた。

 が、いざ使用してみると一番初めに砲撃した際は肩が脱臼してしまう

 という事態に。

 ケルティックが外れた肩を戻した事で治ったものの、アイシャは既に

 プラズマ・キャスターを使い熟す事に困難を極めると察していた。

 

 「(あたしの戦闘スタイルに飛び道具は必要ないし...

  このヘルメットと肩当ては貰うとして、これだけは返しておこうかな)」

 「アイシャ~。どうどう?上手く使えてる?」

 

 コップを2つ運んできたレナがそう問いかけてきて、アイシャは

 振り返ると肩を竦めて見せる。

 

 それにレナはそっか、とだけ呟いてコップをアイシャとケルティックに

 差し出した。

 最初に砲撃した時、彼女もその衝撃を目の当たりにしているので色々と

 察しているようだ。

 

 余程、喉が渇いていたのかアイシャは受け取るなりヘルメットを少し

 ズラして一気にコップの中の水を飲み干す。

 ケルティックも同じ様にズラして、飲み干した。

 

 2人同時にコップを返すと、アイシャは息をつきながらその場に胡座を

 掻いて座り、ケルティックに先程まで考えていた事を話そうとしたが、

 ふと思い留まる。

 

 「(でも...お揃いって考えたら、返すのもねぇ。

   ケルティックだってあたしのために見繕ってくれたんだし...

   うーん...もう少し頑張ってみるか)」

 「うひゃ~!こんなに穴開けちゃったの?

  中がまる見えだし、ホントに使い物にならなくなっちゃったね。

 『まぁ...新しく立てるのを考えたら壊す方が手っ取り早いさ。

  ほら、また始めるから離れてなよ』 

 「頑張って~。あたしはチョッパーと愉しんでくるから~」

 

 空になったコップを手にルンルン気分でレナはその場を去って行く。

 若干、呆れているアイシャだったが、レナを見送ると左肩の装甲を

 装着して再び立ち上がると壺を狙い始める。

 

 「(柄じゃないけど...もう少しだけ意地になってみるかね。

   情け無いって思われるのは嫌だから)」

 

 出来ない事をやっても意味がないという意識は誰にでもある事だ。

 しかし、意中の相手に意識されるとなれば俄然誰しも意欲的となって

 それを成し遂げようという気になるしかない。 

 

 なので、ケルティックに愛想を尽かしてほしくないとアイシャも

 その通りの事をしているのだ。

 

 ケルティックはその懸命な姿を見つめるのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ゴォーーーンッ...

 

 夕暮れに染まったオラリオに鐘の音が響き渡り、夜になる事を告げる。  

 数時間が経ち、狙撃を続けた結果として建物の外壁は消滅し、半壊して

 しまっていた。

 

 それを気にする事なくアイシャは額の汗を手で拭う。

 

 ピ ピ ピ ピ ピッ...

 

 赤い三点のレーザーが壺に照射される。しかし、すぐには砲撃しない。

 未だに反動で体が振り回されるため、少し下へ動かしながら発射される

 プラズマバレットの軌道を考えなければならないからだ。

  

 「(この辺りで...いけっ!)」

 

 フォシュンッ! 

 

 『っぐ!』

 

 やはり反動が凄まじく、足腰に力を入れて身構えているはずである

 アイシャは吹き飛ばされそうになる。

 しかし、すぐに体勢を立て直すとプラズマバレットが命中するか、

 成否を見届けた。

 

 ...ガシャーンッ!

 

 一直線に飛んで行ったプラズマバレットは壺を粉々に砕く。

 青白い残り火が土台にしていた木版の上でメラメラと燃えている。

 

 その光景を見てアイシャは目を瞑りながら天を仰ぐ。

 これまでにない達成感。初めて両親に褒められた時以来だった。

 男を喜ばせた時よりも、モンスターを倒した時よりも。

 

 カカカカカカ...

 

 『ああ。手間取ったけど...やってやったよ』

 

 肩に手を乗せて称賛してくれているケルティックにアイシャは微笑む。

 いつもなら蛇の如くその巨体に纏わり付く抱擁をする彼女だが、今は

 腰に腕を回しているだけだった。

 

 ケルティックが嫌がって離れはしないという信頼の表れだ。

 対する彼もまたアイシャの背中に両腕を回している。

 

 『...頑張ったあたしにご褒美をくれるかい?』

 

 カカカカカカ...

 

 『ふふっ...ありがとう。ケルティック」

 

 ヘルメットを脱ぎながらアイシャはお礼を述べる。

 そして、手を少し上に動かし、背中に移すと上半身を引き寄せようと

 した。

 ケルティックがそれに従って前屈みになり、アイシャは爪先立ちと

 なって背伸びをしながら顔を近付け、ヘルメットに口付けを落とす。

 それに満足そうな低い顫動音を鳴らすケルティックなのだった。




尚、ナァーザさんも初めて使った際には同じく脱臼してます。
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