ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 その場に居る誰もが目を見張った。

 普段、落ち着いた立ち振る舞いをしているアストレアや輝夜でさえ。

  

 今まで誰にも見せる事もなく、ヘルメットに隠されていた素顔。 

 穏やかな顔立ちでありながらも捕食者の如く真っ赤な鋭い眼光。

 

 その眼光に思わずレイは本能的に危険だと思ってしまっている。

 それは彼女だけでなく、冒険者として養われた勘でアスフィや

 リュー、ライラも警戒心を抱いていた。

 

 沈黙がしばらく続いたが、それを破るかのようにベルが咳払いをする。

 

 「...改めて名乗らせてもらう。僕の名はベル・クラネル。

  我が主神、ネフテュスに誓いを立てた狩り人だ。

  ...そちらが良ければ、今後ともよろしく頼む」

 

 そう名乗り終えたベル。すると、すぐにアリーゼが答えた。

 その第一声が...

 

 「思ってたより、声が低いんだね」 

 「「「...そこ(ですか/かよ)!?」」」

 「私も顔立ちからして、てっきり高い声かと思っていましたよ」

 「し、失礼ながら私もだ...」

 「左右に同じく」

 

 先程までの真剣な雰囲気はアリーゼの発言によって一変し、警戒心を

 抱いていたレイ達は気が抜けてしまう。

 その様子を見てネフテュスは可笑しそうにクスクスと笑っており、

 アストレアは苦笑いを浮かべていた。

 

 「まぁ、それはそれとして...

  こちらこそ改めてよろしくね!ベル!」

 「カカカカカカ...」

 「ホントそれどうやってるの?」

 

 初対面の時と同様にアリーゼはベルと握手を交わすのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ...やはり彼女の性格は、ずば抜けて天真爛漫だと思った。

 それ故に遠慮が無い...いや、無さすぎるという事も。

 らしいと言えばらしい、のかもしれない。

 

 そう思っている中、フィルヴィスとアスフィ、ナァーザとレイが

 近寄ってくる。

 先程まで警戒していたようだが、今はそうではないみたいだった。

 

 「私もアリーゼ同様によろしく頼む、ベル」

 

 彼女も握手を求めてきたので、その細く白い手を握った。

 

 「...っ」

 「...?」

 

 しかし、妙な事に彼女は顔を逸らし、慌てるように手を離した。

 何か不都合な事をしてしまったのか...?

 それを問いかける前にアスフィ達に話しかけられた。

 

 「こうして貴方と顔を見合わせるのは、何というか...

  不思議に感じますね。ですが、嬉しくも思います。クラネルさん」

 「うん。ずっと顔は見れなかったからね...

  やっと見る事が出来て、よかった」

 「リド達より先に見てしまいましたガ...そノ...

  私もベルさんの顔を見られテ、嬉しいでス!」

 

 ...そんなに、皆は僕の顔を見たかったのか。

 確かに隠し続けていたとはいえ...嬉しく思う事なのか、僕には

 理解が及ばない。

 

 ただ、輝夜は面白がって質の悪い方法で脱がそうとした事が幾度も

 あるが、アスフィ達は純粋に見てみたかったというのはわかる。

 

 その輝夜とライラがいつの間にか僕の前に立ち、顔をマジマジと

 覗き込んできていた。

 

 「...んー?...よくよく見ると...貴様の顔、どこかで...」

 「奇遇だな。あたしも何か引っ掛かる気がしてならないんだ」

 

 ...きっと、アルフィアさんと重なって見えてるんだ。

 近親者でいえば伯母という、血がとても濃い血縁関係なので顔が

 似るのは不思議ではない。特に母さんは双子だったらしいから。

 

 両親には似ず、別の血縁者と似る事は遺伝子上十分にあり得る事だ。

 

 今ここで僕がアルフィアさんの事を言えば、色々と厄介な事になるのは

 明白だろうな... 

 それなら...一番認めたくない事だが、この際仕方ない。

 

 「...兎のモンスターか?」

 「「...あぁ、アルミラージか」」

  

 納得したような様子の2人だが、僕は念のため我が主神に確認して 

 いただこうとアイコンタクトを取った。

 

 すると、我が主神は頷いて嘘はついていないと教えてくださった。

 ...よかったと言えばよかったが、どうにも苛立ちそうだ。

 

 「か、輝夜、ライラ。クラネルさんに失礼ではありませんかっ」

 

 僕の機嫌が悪くなったのを察したのかリューがそう指摘する。

 

 自ら気に食わない事を言ったのだから、気にする事はないんだが...

 彼女なりの気遣いんだろう。

 

 「...確かにそれもそうだな。申し訳ない」

 「ああ、悪かったよ。...けどよ、リオン。

  お前も謝っとけよ?何にどう似てると思ってたのか」

 

 僕は2人が浮かべているにやけ面を見て、何か企んでいると察知する。

 大方、彼女をからかうつもりなんだと。

 

 「え?は、はい。アルミラージに似ていると思い、申し訳ございませんでした」

 「おやおやおや?このポンコツエルフときたら私達の命の恩人に何と失礼極まりない事を」

 「お前、酷いな」

 

 理不尽にも程がある...

 

 「なっ!?ふ、2人に言われる筋合いは!」

 「はぁ?あたしら似てる、なんて一言も言ってないだろ」

 「ええ、似てると言ったのは貴様だけだぞ?」

 

 リューは悔しがって何も言い返せずにいた。

 彼女は純粋に謝罪したのだから反論はいくらでもしていいというのに。

 

 ...僕がフォローしないといけないか。  

 

 「気にしなくていい、仲間にもよく兎だとからかわれるんだ。

  ...それとクラネルではなく、ベルと呼んでくれていい」

 「あ...そ、そうですか。わかりました、ベル」

 

 リューが名前で呼んだ後、輝夜は意外そうな顔をしていた。

 さん付けをしていない事が予想外だったのかと思ったが、どうやら

 そうではなく...

 

 「おやまぁ、何とも...アリーゼ並に寛大な事」

 「フフーン♪ベルは何も言わずとも察してくれるイケメンだもんね!」

 「何故、貴女が得意気に言ってるんですか...」

 

 全くだ。...そろそろ話の本題へ移ってもらおう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「それじゃあ、彼がこれまでどんな修練をしてきたのか...

  皆にも見せてあげるわね」

 

 ネフテュスはテーブルの上に小型のスクリーンデバイスを設置し、

 ベルが被っているヘルメットにワイヤレスコネクトをガントレットで

 操作する。

 

 そうする事でヘルメットに記録された映像をスクリーンデバイスに

 直接送信する事が可能となるのだ。

 

 ソファに座り、期待を膨らませてソワソワしているアリーゼと

 フィルヴィス、そしてレイ。

 輝夜、ライラ、ナァーザは無表情ながら椅子に座って、見る気は

 あるようだった。

 一方、何を見せられるのか少し不安げになっているアスフィとリュー。 

  

 やがて、スクリーンデバイスの中央にあるレンズが点滅すると放射光を

 照らし、立体映像が映し出される。

  

 最初に映し出されたのは暗闇に点々と小さな光が輝く光景だった。

 その光景を見て、アスフィがネフテュスに問いかける。

 

 「これって...星空ですか?」

 「んー...正確に言うと難しいから詩的に言えば、星空の中よ。

  別の言い方では宇宙空間という名称になるわ。

  神々はこの空間の遥か向こう側から流れ星となって、この大地へ降りたってくるの」

 「へぇ~、星空の中ってこんな感じなんだ」

 

 映像は進んでいき、突如として赤い球体が出現する。

 

 「あ、今見えてるこの...

  何かすっごく大きい赤いボールみたいなのは何ですか?」

 「これが星そのものよ。遠くから見ると輝いて見えるけれど、近くではこんな風に見えるの」

 

 その赤い星へ近付いていき、映像の視点からでは地表が見え始める。

 着陸すると同時に、今度はベルのヘルメットの映像へと切り替わって

 一人称視点となる。

 

 「これはベルから見えている視点よ。

  臨場感たっぷりだから、楽しんでね」

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