ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
何とか落ち着いて来たので再開したく存じます。
『グォ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!』
「...うぶっ」
「おい、リオン吐くなよ?」
「い、いえ、これは流石に...」
吐き気に襲われ、思わず口を押さえながら目を背けるリュー。
ゼノモーフ・バトル、ドッグからスネーク、バット、ブルとの狩猟を
終えたベルが治療する場面が映し出されたからだ。
リューだけでなくアスフィやその場に居る全員も、その光景には顔を
青ざめさせている。
自分達もダンジョンで負った深い傷の痛みを忘れてはいない。
だが、そんな痛みなど今、映し出されているベルの治療と比べてみれば
生易しいものだと思えた。
治療が済み、凭れている壁が壊れるまで叩く姿も彼女達からすれば
想像だに出来ない様子だった。
「...その、ポーションは持ってなかったの?」
「ポーションを使う事は許されない。応急処置としてあれを使う」
「そ、それにしても...よく意識を保っていられたな...」
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『ギ シャ ァ ァ ァ ァ ァ ア ア ア ア アッ!!』
『...Nain-desintye-de』
死闘の末、ゼノモーフ・アルビノを見事に仕留め、7匹を狩る事に
成功したベル。
アリーゼ達は脱力してため息をつくも、次の瞬間に映像が乱れて
驚愕した。
『ギ シ ャ ァ ァ ァ ア ア ア ア ア ア ア...!』
これまでベルが狩ったゼノモーフの産みの親であるクイーンが姿を
現した。
4Mを優に超える体高、尻尾を含めると全長は10Mにもなる異形の
怪物だとアリーゼ達は思った。
ベルとクイーンとの戦いの火蓋が切られ、想像を絶する戦いが映像の
中で繰り広げられていく。
戦いの中盤、クイーンを倒したかと思えばそれが擬死であり不意を
突かれたベルは腕を落とされてしまった。
その光景を目の当たりにしてフィルヴィスとレイは口元を押さえ、
悲鳴を上げるのを必死に堪える。
アリーゼ達も少しだけ顔が蒼褪めていて小刻みに震えていた。
斬り落とされた尻尾に巻き付かれ、倒れているベルを何度も踏み付ける
クイーン。
ヘルメットに亀裂が入り、怯ませて何とか抜け出したものの巻き付いて
いる尻尾を勢いよく振るい回され、最後には壊そうとしていた箇所が
千切れて尻尾が解けるとベルはそのまま投げ飛ばされてしまった。
壁の最上部にある観戦室の窓を突き破り、ベルの姿は見えなくなる。
我が子の仇を討ったとクイーンは咆哮を上げると出口となる扉に
近付いて行った。
「...ネフテュス様よ。アンタ...ベルを助けようとしなかったのか?」
「ええ。手出しは無用と、皆にも伝えておいたわ」
「っ!何でだよっ!?どう見ても死にかけてるってのにっ...
ふざけんなっ!」
「ライラ...っ」
激怒するライラをアストレアがその小柄な肩に手を置いて制止させる。
手を退かそうとするライラだったが、その表情にはありありとした
不服の色が見え隠れしていた。
自身の主神も同じ気持ちであると理解し、ライラは悔しそうに
押し黙りながらも怒りを抑え込んだ。
リューも同様に複雑そうな顔色となっていた。
が、次の瞬間、映像から流れてきた雄叫びが耳を劈き鼓膜を叩く。
『ヴオ゙オ゙ォォオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!!』
それは紛れもなく、ベルの声びだった。
何が起きたのかわからずリューは混乱していると、再び同様の雄叫びが
聞こえてようやく我に返り、映像を見て唖然とする。
今までに感じた事のない威圧感を醸し出し、ヘルメットの亀裂から
赤い光を溢しつつ下に居るクイーンをベルは見下ろしていた。
闘技場へ降り立つと、足元に転がっていた自身の腕を拾い上げて徐ろに
上腕部の切断面に重ね合わせた。
「...そんな...」
ナァーザが呟いたのは合わさった部分から大量の血が溢れて、同時に
接合部の切れ目が消えていく場面だった。
そして、瞬く間に切断された腕が癒着してしまう。
信じられない光景を目にしてリューだけではなく誰もが驚き、目を
大きく見開いていた。
それから怒濤の反撃が始った。
震われて来る手の攻撃を片腕だけで受け止め、槍で突き刺し、仕返しの
如く右腕を斧で斬り落す。
そして、最後は青白い光を纏ったダガーによる一閃で斬首した。
「...すごい...」
そう言葉を溢したのはアリーゼだった。
リューやアスフィ達もその言葉を聞いて同意見なのか静かに首肯する。
映像の中ではベルが首の無いクイーンの胴体を祭壇から投げ落とし、
ダガーに刺した首を高々と掲げるベルの姿が映っていた。
それを最後に立体映像は消え、部屋の中は静寂に包まれる。
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「以上の事があって、ベルは見事に立派な狩り人になったのよ。
それと同時に長としての資格...所謂、団長の地位も得たと言えばいいわね」
その場に居る口を閉ざして呆けていると、突如としてアリーゼがベルに
抱き着いた。
それに驚いたのは、ベルとネフテュスを除くリュー達だった。
「ベル...すっごく格好良かったわ!本当に勇敢で...!」
「...ん」
「頑張ったご褒美あげないとね!ほらほら、ちょっと目を瞑ってもらって」
「「また何しでかそうとしてるんですか!」」
ベルからアリーゼを引き離そうとするリューとアスフィ。
しかし、腰にしがみついて意地でも離そうとしないアリーゼに輝夜と
ライラはため息を吐いて、フィルヴィスは苦笑いを浮かべ、レイは
オロオロと戸惑うのだった。
一方でナァーザは右腕をマジマジと観察し、本当に完治しているのに
興味津々となっていた。
「...ネフテュス様、ベルは...あの子は一体...」
「そうね...英雄も神智さえも超越した人間...かしらね」
アストレアはハッとその言葉だけで秘められた意味を察した。
この世界において有り得ない存在であり、それは神々にとって
最も恐ろしい存在でもあるのだと。
だからこそ、それ以上何も言えなくなってしまった。
「じゃあ、お祝いしましょう!それならいいでしょう?」
「はぁ?おいおい、今から用意するってのか?」
「当然じゃない!私とリオンは買い出しに行って来るから、皆は他の事お願いね!」
「な、えっ?ア、アリーゼ!?」
そんなアストレアの心情を気にする事なく、アリーゼはリューを
引っ張ってどこかへ行くのだった。
「...ロキやヘルメスに知られたら、大変な事になりそうね」
「いいえ、ロキには既に教えているわ。ベルの事について、何もかもをね」
「え...?」
「だって...誰かに言いふらしたりなんてしないわ。
ロキは賢いから...私を怒らせたくなんてないでしょうし」