ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「おじさん、おまけしてくれてありがとう!」

 「ありがとうございました。また購入に来ますので」

 「ああ、いつでもおいで」

 

 商店が建ち並ぶ街角でアリーゼとリューは紙袋一杯に買い詰めた

 食材を持ち、ホームへの帰路を歩いていた。

 女性が持つには量が多い気もするが、そこはファルナを授けられた

 冒険者とだけあって軽々と持っている。

 

 道行く先に見かける人々も慣れているのだろうか、気にせず各々の

 購入したい物を見ていた。

 

 暫く歩いていると、突然2人を呼び止める少女の声が聞こえてきた。 

 2人は振り返ってみれば、そこには見知った顔があった。

 

 リリルカだ。その隣には見知らぬ前髪を切り揃えた少年も居る。

  

 「リリちゃん!久しぶりね!元気にしてた?」

 「はい、おかげさまで。命様やタケミカヅチ・ファミリアの皆様と...

  ヴェルフ様という方とパーティーを組んで頑張っています」

 「それは何よりですね。...ところで、お隣の方は?」

 

 そう言ってリューは隣に立っている少年に視線を向けた。

 中々に端正な顔つきをしており、美女2人を前にしながらも

 緊張している様子をみせず平然と名乗った。

 

 「オイラはルアン・エスペル。見ての通りリリの恋人だ」

 「ル、ルアン様っ、そんな前置きもなく言う事は...」

 「ほほ~~~っ?そっかそっか。年上の私よりも先に甘酸っぱい恋を満喫中だったって事ね...

  羨~~ら~や~ま~し~い~!」

 「ア、アリーゼ。落してしまいますから落ち着いてください...」

 

 地団駄を踏んで荷物を取り落としそうになるアリーゼをリューが宥め、

 リリルカはそんな2人のやり取りに苦笑いを浮かべるのだった。

 

 一方でルアンは2人を観察する様に見ているだけだった。

 やがて落ち着きを取り戻したアリーゼに、どこでどういった出会いを

 したのか問いかけられてリリルカは少し戸惑いつつも正直に答えた。

 

 「そんな事があったのですか...

  ですが、貴女に復讐を考えたゲド・ライッシュを釈放したのはやはり腑に落ちない気も」

 「いえ、リリの自業自得なのですから...

  それにルアン様のおかげで胸の支えが取れましたし、大丈夫ですよ」

 「...そうですか」

 

 その言葉にリューは怒りの表情を潜め、リリルカの意思を尊重する事にしたようだった。

 一方、アリーゼはというとルアンと目線を合わせるべく屈んで

 真っ直ぐに見つめる。

 ルアンは微動だにせず、アリーゼが口を開くのを待った。

 

 「ルアン。リリちゃんを助けてくれて、ありがとう。 

  とても勇気のある男の子なのね。リリちゃんが惚れるのもわかるわ」

 「ア、アリーゼ様...」

 「当然だろ?オイラ以外に惚れさせもしないし、誰にもリリを傷付けさせたりなんかさせないぜ」

 「あははっ!うんうん、それでこそ恋人よね!

  私も欲しいなぁ~、守ってくれる素敵な男の人...」

 「き、きっと...アリーゼ様にも出会いがありますよ。

  とてもお綺麗ですし、歴戦の冒険者様なのですから」

 「ふふ~ん♪それ程でもあるわよ!」

 「(自分であると言うのですか...)」

 

 そうして夜になる事を告げる鐘の音が響き渡ってきたのを境に

 アリーゼとリューはリリルカ達と別れる事となった。

 互いに手を振ってリリルカ達の姿が見えなくなり、再び歩き出す2人。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 先程まで人が行き交っていた道も次第に閑散とし始めてきた頃、

 アリーゼが唐突にリューへ問いかける。

 「リオン、もし恋人にしたいならどんな人が良い?」

 「はい?...申し訳ないですが、私はそのような話に興味はありませんので」

 「え~~~!」

 

 突然の質問に一瞬戸惑うも、すぐに冷静になって返答するリュー。

 だが、不満があるらしくアリーゼは頬を膨らませた。

 しかし、次にアリーゼが放った衝撃的な発言にリューは戸惑う事と

 なる。

 

 「私はベルがいいわね。正直言って、惚れ込んじゃったかもしれないわ!」

 「...え゙?」

 「ん?...はは~ん?さてはリューもベルを狙ってる感じなのね?」

 「は、はい!?い、いえ、そんな違」

 「ならこれからは恋のライバルって事ね!負けないわよ、リオ...

  いいえ、これからは名前で呼ばせてもらうわ、リュー!」

 「...人の話を聞けぇええ!」

 

 リューの叫びが木霊するオラリオの夜は今日も更けていくのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ベルにとって祝いの儀は厳粛なものだとあの頃から教えられていた。

 肉を喰らい、カントリップを煽り、氏族の長としての威厳を示すための

 儀式だと。

 それを覆すクラッカーの破裂音と拍手の音にハッとベルは我に返る。

 

 アリーゼ達が用意してくれた料理を前に、何故か被らされた三角帽子を

 脱ぎながら周りを見渡す。

 自分を祝うかのように全員が笑顔で祝福してくれている光景に若干、

 困惑した。

 こんなにも明るい雰囲気の儀式は今まで体験した事がなかったからだ。

 

 そんなベルを気にする事なくアリーゼは乾杯の音頭を取るのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 星屑の庭へは幾度となく訪れているがネーゼを含めてほとんどの

 団員達とは初対面という事もあり、最初の会話は自己紹介から始った。

 その中でイスカだけは名乗り終えるや否や、そそくさと離れてしまい、

 ベルは首を傾げたものの、気に留めずその後は料理に手を付けた。

 

 料理を作る際に好物が何かを聞かれ、ベルが生肉を主食としていると

 答えた際にはレイを除いて全員が引いていたのは言うまでもない。

 

 しばらく食べ進めて1番気に入ったステーキサンドを頬張っていると

 アリーゼが話しかけてきた。

 ちなみにそれを作ったのは彼女である。

 

 「ねぇ、ベル。ここだけの話なんだけど...

  ティオナの事、どう思ってるの?」

 「...女として好きだ」

 「お~...ドストレートね。

  って事はやっぱりそういう関係になりたいのかしら?」

 「...想像に任せる」

 

 アリーゼは数回頷いて納得したようだが、どこか残念そうな表情を

 浮かべた。

 何か気に障ったのかとベルが問いかける前にアリーゼは向き直った。

 いつも通りの明るい笑み、とは言えない切なさを残していた。

 

 「ティオナともこうして...楽しく食事をしてあげてね?

  もちろん生肉じゃなくて、ちゃんとした料理で」

 「...ああ。そうする」

 

 そう答えたベルはステーキサンドを食べ、味わうのだった。

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