ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 バベル30階。

 巨大な柱に囲まれた神殿を思わせる巨大な空間に33柱もの神々が 

 一堂に会していた。

 

 いつもであれば和気藹々の雰囲気で不真面目且つふざけた内容の討議を

 行い、命名式ではより面白がって奇抜な二つ名を進呈するような事を

 する流れを見せるはずだが、今回は違っていた。

 

 何故ならフレイヤを拝めたり、イシュタルに踏まれてもらったりなど

 していないからだ。

 頬を染めながら涎を垂らしているアポロンを除いて。

 

 尚、そのイシュタルも化粧をせず素顔で静かに座っていた。

 更に本来、参加が可能性なのはレベル2以上の上級冒険者を眷族に

 持つ主神のみのはずなのに1柱だけ該当しない神物が居た。

 

 眷族がたった1人しか所属していないヘスティアである。

 リリルカはまだレベル1のままであり、二つ名を進呈されない。

 それなのに、何故ここへ呼ばれたのかロキやヘファイストスは疑問を

 抱きながらも沈黙を守っていた。 

 

 しばらくして突如、ガネーシャが沈黙を破った。

 

 「俺はガネーシャだ!」

 「うわもう知っとるわボケアホビックリするやろがい!

  何や急にぃ、ホンマもう~...で、何やねんガネーシャ?」

 「うんっ!間もなく時間なのだが、ネフテュス先輩とアストレアの姿がまだ見えない。

  もしかすると道に迷ってしまっている可能性があるので、迎えに行こうと思う!」

 「...いや、行けるんなら行ってほしいけども...

  アストレアはともかくとしてネフテュス先輩の居場所知っとるん?」

 「いいやっ!全く存じないっ!」

 「ほなら黙って座っといてぇな...」

 

 まだ開始されてもいないのに余計な疲労を溜め込む羽目になったロキ。

 幾柱の神々も同様に項垂れていた。

 その時、ミアハが袖から何かを取り出すとそれを見て、立ち上がると

 手を数回叩き自身に注目させた。

 

 「皆に聞いてほしい。間もなくアストレアを連れてネフテュス氏が来る。

  もう少し待っていてくれとの事だ」

 「...え?ミアハ、何でわかるん?」 

 「それは...ネフテュス氏が来てから詳しく話そう」

 

 その発言に神々はミアハを訝り、困惑するしかなかった。

 そして、待つ事5分後に扉が開かれて神々は一斉に口を閉じる。

  

 ヒタヒタ...

 

 足音が聞こえ始めミアハの言う通り、ネフテュスがアストレアを連れて

 やって来た。

 その瞬間、先程までの空気が一変する。

 冷たい風が吹いている訳でもなく鳥肌が立ち、熱風が吹いている訳でも

 なく汗が垂れた。

 加えて、誰もが身動きが取れなくなっていた。まるで蛇に睨まれた

 蛙の如くである。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「ごめんなさいね、遅れてしまって。

  じゃあ...ロキ、司会の挨拶から始めるのかしら?」

 「あ、あぁ、はい。...んんっ!えー、第ン千回、デナトゥスを開かせてもらいます。

  司会進行役はうちことロキや。よろしくなー」

 

 ロキが右腕を上げると神々は拍手を送る。

 少ししてから上げていた右腕を降ろすと拍手は止まった。

 

 「えー...ほんなら、まず何から...話せばええんやろか...」

 「私の事は最後にしてもらえると助かるわね」

 「さいですか...ほなら、何か報告するもんおるかー?」

  

 ネフテュスの事は後回しという事になってロキは少しばかり胸の

 締め付けが緩んだように思えた。

 しかし、この場にはフレイヤとアポロンという問題神が居る。

 

 どちらかが下手な事を言えば、一巻の終わりであるが幸いな事に

 フレイヤはただ見つめているだけで、アポロンもネフテュスを視界に

 捉えた途端に白目を剥いて動かなくなっていた。

 

 「えっと、いいか?ソーマがギルドに警告食らって、唯一のご趣味を没収されたそうです」

 「ソーマの趣味って何だっけ?」

 「全く知らねぇ」

 「何でも今は膝抱えて隅から動かないらしいぞ」

 

 ソーマの話を皮切りに神々がガヤつき始めた中、アストレアが挙手を

 したのを見てロキが手を叩き鎮める。

 アストレアはロキに感謝の意を込めて目を配ると、椅子から

 立ち上がった。

 

 「ソーマの件に関しては私達、アストレア・ファミリアが取り締まったわ。

  彼の趣味は酒造...それが災いして団長であるザニス・ルストラが首謀となって同じ眷族達を争わせていたのよ。

  身勝手に利益を貪るだけに留まらず...彼は犯してはならない事をしてしまった」

 「何をしたと言うのだ?オラリオを脅かす程の事か?」

 「ええ。彼は...あろう事か、イヴィルスに肩入れをしていたのよ」

 

 それを聞いた途端に神々は予想もしていなかった発言にザワついた。

 イヴィルスに加担してしまえばギルドから指名手配され、処刑対象と

 なるのにザニスは自ら愚かな事をしてしまったのだと幾柱の神は

 呆れていた。

 そんな中、ヘルメスがアストレアにソーマについて問いかけた。

 

 「けど、ソーマは酒の事しか興味なかっただろ?

  善神、とも言えないが...どうして彼がイヴィルス何かに肩入れをしたんだ?」

 「いいえ、彼自身は直接関係していない。

  ザニスが彼の酒造にしか興味がない事を利用して...

  ファミリアを意のままに操っていたからイヴィルスと繋がってしまったのでしょうね」

 「...なるほど、そういう事か...」

  

 ヘルメスが納得していると、ネフテュスも口を開いた。

 

 「それだけじゃないわ。

  ダンジョンで捕獲したモンスターをオラリオ外の国々へ密売を手伝っていたのよ」

 「は、はぁ!?モンスターの密売!?」

 「おいおい...そんな事してギルドが黙ってないだろ...」

 

 モンスターをダンジョンから外へ出す事が許されるのは唯一、

 モンスターフィリアでテイムを披露するための時だけだ。

 地上のモンスターと違い、ダンジョンで生まれたモンスターの危険度は

 雲泥の差があって逃がしてしまえば、その被害は想像だに出来ない。

 

 「まぁ、その密売自体は別のファミリアがやっていた事で...

  それにザニスは目が眩んだようね」

 「その別のファミリアというのは...イケロスですか?ネフテュス先輩」

 「ふふっ...正解よ。ヘルメス」

 

 微笑みを浮かべて、ネフテュスはパチンッと指を鳴らす。

 扉が開いたのに気付き、ヘスティアがその方を振り返って驚きの声を

 上げる。

 その声に反応した神々は同じ様に振り返って驚愕した。

  

 件のイケロスとセクメトが宙に浮かぶ檻に閉じ込められたまま、

 運ばれて来たのだ。

 檻の中で口の周りを硬質なマスクのような物で覆われている両神は

 寝転びながら神々に手を軽く振る。

 

 「イ、イケロス...?それにセクメト...?」 

 「お喋りが過ぎ無いように口をチャックしてもらっのよ、セトお兄様。

  さて...まずはイケロスのファミリアが何をしてきたのか、1から話すわね」

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 ゼノスの事は伏せたまま、ネフテュスはイケロス・ファミリアの

 実態を暴露した。

 モンスターの密売だけでなく、その密売で手にした金でクノックスを

 拡大しながらイヴィルスがそこを根城にして暗躍している事を。

 ダンジョンを人造的に造っている事に驚いたりして様々な反応を見せる

 神々だったが、またしてもガネーシャが突然テーブルを叩きて、

 イケロスに指を指しながら叫んだ。

 その声色は普段のガネーシャからは想像出来ない程、怒りに満ちて

 いる。

  

 「お前は...!お前という奴は許さん!

  眷族達に犯罪を楽しませるなど言語道断だ!」

  

 神々は押し黙って息を荒くするガネーシャを見る事しか出来なかった。

 イケロスは冷たい目で鼻を鳴らし、そっぽを向いていた。

 大きく息をつき、ガネーシャは座り直してすまん、と一言だけ言い頭を

 下げて謝罪する。

 「...で、イケロスの眷族はそこにまだ居るんか?」

 「...いいえ。というよりも...ネフテュス様の眷族が殺めてしまったわ」

 「あぁ...ほんなら、まぁ...うん...」

 

 実際にあったイヴィルスの異常死体の件よりも先に以前から聞いている

 あの言葉が脳裏を過ぎり、ロキは全てを察していた。

 そうしてイケロス・ファミリアの実態について話が終わると、

 立ち上がったネフテュスは神々の背後を移動しながら話し始めた。

 「皆、何年も前にイヴィルスの死体が見つかった事があったよね?それから少し前にもダンジョンで。

  どちらも私の子供達がやったのよ。

  私達はイヴィルスを見つけ次第、抹殺対象として見ているの。

  もしも...この中にイヴィルスに手を貸している子がいるのなら...」

 

 ネフテュスは瞼を閉じ、ゆっくり見開くと瞳の色を真っ黒に染めた。

 怒りを表わす赤ではなく、無慈悲な殺意しか感じ取れない濁った黒。

 その瞬間、空間が凍てつくような冷気に包まれる。

 神々は言葉を失い、身動きが取れずにただ恐怖するしかなかった。

 あれほど会えるのが楽しみだと呑気にしていたヘスティアでさえも。

 そんな神々を見渡して、フッとネフテュス様が笑みを浮かべると冷気が

 消え去る。

 

 「ギルドに出頭する事。いいわね?

  あぁ、それから...タナトスの他にエニュオと名乗る神も居る事を教えておくわ」

 「エニュオ...?都市の破壊者、って意味でしたよね?

  そんな名前の神なんて...会った事がないですけど...」

 

 ヘファイストスの返答に神々も同じ様に知らない事を告げる。

 移動していたネフテュスは目の前に居たデメテルの背後で足を止め、

 ポンと両肩を添えた。

 隣に座っているディオニュソスは困惑した様子で見ていた。

 

 「当然、それは偽名よ。真名ではないけれど...

  それが手掛かりとなるわね。

  このオラリオを破壊して何を企てているのか、というヒントのね」

  

 その言葉の意味を理解出来ず、神々は顔を見合わせて首を傾げるしか

 なかった。

 ネフテュスはデメテルの肩から手を離し、席へ戻ろうとした際に

 ウインクを見せる。

 それにデメテルは微笑んで頷き、何かを承諾したように見えた。

 

 「以上が私の知っている情報よ。とりあえず...

  イケロスの処罰はガネーシャに任せて、セクメトはファミリアの暗殺稼業を止める事。

  いいわね?」

 

 檻の前で目線を合わせながら諭すネフテュスにセクメトは肩を

 竦めながら頷くのだった。

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