ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
その後、ニョルズとイシュタルの件についても話した。
イヴィルスに手を貸していた事は確かだが、ネフテュスの説得で
咎めないという結論に至り、特に何事もなく収まった。
目の敵にされていたフレイヤも別段、気にしていないのか
イシュタルに謝罪を要求する事もなかったのだった。
タケミカヅチも春姫の事に関して、思う所はあったようだが
同様に何も言わなかった。
「(アカン...やっぱこの方を敵に回したらホンマにアカン...
牽制どころか皆殺し宣言しとるやん...)」
そんな中、顔を伏せたままロキは恐怖するしかなかった。
オラリオの二大派閥やガネーシャ・ファミリアの主神に有無を
言わせず、中小ファミリアを問答無用で忌避させた。
それに伴い、イヴィルスに関わっていると思われる神は内心冷や汗を
垂れ流してこの場から逃げ出したくなっているはずである。
「(というか、ウチらはイヴィルスと関係なしにネフテュス先輩を怒らせかねんかったんやから...
幸運なんて甘っちょろい言葉も出んわ...)」
「ロキ?」
「はいはいはい!?ど、どないしました?」
慌てふためくロキの反応にネフテュスは首を傾げながら問いかけた。
「ラキアがオラリオに攻め込む準備をしているって言ってるのだけど...
それはどこの誰なのかしら?」
「あ、あー、アレスを崇めとる王国の事です。
まぁ、アイツが来るんは恒例行事みたいなもんですから、ギルドに報告しときますわ。
ここにいるもんに召集かけられて侵攻を止めるよう言われるかもなんで」
「そう...わかったわ」
「(...あれ?わかったって言うてるけど...
え?ネフテュス先輩のトコの眷族が来るん?
それもう始まった直後にその恒例行事が無くなるんちゃう?)」
そう思ったのはロキだけではなかった。
イヴィルスの使者を数え切れない程葬ってきたネフテュスの眷族が
来るとなれば、戦場は血の海で真っ赤に染まり、ラキアが滅ぼされて
しまうのではないかと。
それを危惧したロキは心意を確かめるべく、恐る恐るネフテュスに
質問した。
「あ、あのー、ネフテュス先輩?それに参加されはるんですか?」
「そうね...呼ばれたら行くけど、それがどうかしたの?」
「い、いえ?ただ来はるんかなぁ、と思っただけです。ははは...」
終わったな、と神々はアレスに同情しつつ乾いた笑みを浮かべていた。
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「えとー、なら次に進もうか」
そうしてロキが仕切り直しをして次の討議へ移る。
命名式のために用意された資料が行き渡っている事を確認し、最初に
セトの眷族から決める事となった。
尚、前述でネフテュスが兄様と呼んでいたが、察しの通りセトは
ネフテュスの兄妹に当たり加えて夫になるはずだった男神でもある。
はずだったというのはネフテュスが婚約を拒否し、オシリスを選んだ
ためだ。
その話は天界で知らない神は居ない程であり、セトに同情する神々も
多かった。
そして、その2柱が顔を見合わせている。
緊張感が漂う中、称号の候補が幾つか挙がると、その中でネフテュスが
気に入ったらしき称号を挙げた女神を指した。
ロキは即決し、最も無難且つ捻りも無い二つ名だったのでセトは大いに
安堵したようだった。
恐らく、ネフテュスなりのお詫びで決めたのではないだろうか。
その後もいつもであれば、多数決で決まるはずの命名式もネフテュスが
独断で決めていった。
発言力の弱いファミリアの神々は痛い名前を回避してくれるネフテュスに
感謝し、セトと同様に安堵して涙を流していたという。
一方で古参のファミリアは黙って進呈された称号を書き記していた。
オモチャに出来ない事への文句を言ってしまうという強制送還行為を
するほどアレスの様な馬鹿ではないようだった。
やがてディオニュソスへと回り、フィルヴィスの二つ名を討議し
始めた。
ネフテュスに選ばれるのが楽しくなってきたのであろう神々は幾つも
候補を挙げていく。
だが、一向に先程の様に指名してこないネフテュスに神々は困惑した。
お気に召さなかったのかと不安になっている中、ネフテュスが言った。
「その子の二つ名はそのままが良いわね。似合っているから」
「え?あ...さ、さいですか。えーっと...ディオニュソス、どうする?」
「...まぁ、事前にフィルヴィスからも出来れば【白巫女】のままがいいと言われていたんだ。
ネフテュス先輩もそう言ってくれたのだから、そのままにしよう」
「ほいほい。じゃー...タケミカヅチのヤマト・命ちゃんにいくでー」
タケミカヅチはここへ来る前までに浮かべていた緊張の面持ちを既に
消していた。
何故なら、ネフテュスがまともな二つ名を決めてくれているからだ。
二つ名が挙がる中、ここでネフテュスが挙手して自らが称号を挙げる
ようだった。
それに神々は静まり返って、タケミカヅチはどんな称号を授けて
くれるのか胸を高鳴らせた。
「【絶†影】はどうかしら?」
「はい!是非お願いします!ありがとうございます!」
「えーっとじゃあ絶影...極東の文字で書くと絶対の絶に影でええんやろか?」
「その間に†を入れてね。カッコイイから」
ネフテュスが書類の白紙部分に書いて見せた文字には、しっかりと
†が書き記されていた。
「...ゑ?」
「はいはい。じゃあ命ちゃんの称号は【絶†影】に決まりで」
「ヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱヱ!?
いや、待て!待ってくれロキ!頼むから!」
あまりの不意討ちに絶叫して、ロキに抗議の声を上げる
タケミカヅチ。
既に二つ名を決められた神々もまさかの事態に困惑し、同情したり
していた。
必死に変更を求められるロキだが冷や汗を流しながらヒソヒソと
弁明する。
「しゃーないやんタケミカヅチ。ネフテュス様がそう言うたんやから...
まぁ、ウチも†が入ってふふふカッコイイと思うで」
「笑ってるじゃないかよてめぇえ!」
「ええやん。レベル4になったらまた変わるんやし...
今回は【絶†影】で堪忍してや。な?...ネフテュス様を怒らせるんだけや絶対アカンから」
「...ぐぅううううう!」
テーブルに突っ伏して落ち込むタケミカヅチ。
そんな姿を見ながら、神々は哀れみの視線を送っていた。
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ロキは咳払いをして仕切り直すと、次はアイシャの二つ名を討議し
始める。
が、ここで幾柱の神が首を傾げた。
以前からアイシャはレベル4へとランクアップするだと注目されていて
今回のデナトゥスではアイシャの名前が挙がるのは明白だった。
しかし、目を凝らして見ても表記ミスかと思われる程、予想外の
ステイタスが書かれていた。
レベル4ではなく、レベル5。
熟練度はトータル5500オーバーと補足されている。
「...イシュタル。ネフテュス先輩の前で堂々と不正をするなんて」
「ネフテュスの眷族と真剣勝負をしてレベル4となった。
団長であるフリュネは手も足も出ず倒されたが、アイシャだけは唯一血を流す程の健闘を見せたぞ?
...まぁ、負けてしまったが、おかげでランクアップしたんだ」
ここでロキだけはティオナの成長速度に戦慄した。
ティオナも勝負をして負けたてしまったそうだが、その時点でレベルは
確実に上がったとされる。
それから今の段階まで上がったのは、やはり死に物狂いで追い付こうと
した直向きさ、基異常なまでの執着心であると。
そんなロキを誰も気にせず、話はアイシャのランクアップした経緯に
ついて耳を傾けていた。
「あんなガマガエルにご奉仕とか死ねる」
「ウチの子を怪我させた事あるからザマァみろだな」
「魔法を力技で粉々にしたとか嘘でしょ?」
「許嫁になる条件キツ過ぎない?」
と様々な感想が飛び交う中、イシュタルは手を強く鳴らして神々を
静まり返らせる。
そうして、フィルヴィス同様に変えなくていいという事になり、
アイシャの二つなの討議は強制的に終わらされた。
次に、アイズの二つ名も考えようとしたが、【剣姫】のままで
討議は終わる。
すると、ページが無くなった事にネフテュスは不思議そうな面持ちで
ロキに問いかける。
「ロキ?ティオナの名前が無いけど...?」
「あ、ちょっとお待ちを...
皆、これ別で用意してたティオナの資料やけど、2枚目をまだ捲らんとってな」
「何だ?【大切断】もランクアップしてたのか?」
「まぁ、待て。その...ウチも教えるのに困ってるから、先に資料だけ渡しとくな」
口下手となっているロキに神々は違和感を覚える。
先程までの威勢で話していたから尚更であった。
全員に資料が行き渡るとロキは深呼吸をし、意を決して話し始める。
「ええか?せーので捲るで?せーのっ」
ペラッと一斉に表紙を捲る音が鳴り響いてその後暫くの間、静寂が
その場を支配した。
そして、1番最初にフレイヤが呟いた。
「レベル50...ロキ、詳しく教えてもらえるわよね?」
「うーん...詳しくって言うても、簡単に言った方がええかなぁ。
簡単に言うとティオナもネフテュス先輩の眷族と勝負して、それから色々あって強くなったらしいねんな」
「その色々を教えてほしいのだけど...」
「私が教えてあげるわ、フレイヤ」
ティオナがしてきたこれまでの活動を唯一知っているネフテュスが
説明を始める。
フレイヤ達に語った内容はこうである。
まず、ネフテュスの眷族と勝負をしたが敗北。
それから同様にゼノスの事を伏せてティオナは未開拓地を発見した事で
73階層へ到達し、そこで死に物狂いで未知なるモンスターを
倒し続けた。
そして2週間もの特訓の末、レベル50へランクアップを果たした、と
いうものだ。
神々はどこから質問をすればいいのか混乱した。
それを気にせず、ここでイシュタルがネフテュスの支持に入る。
「アイシャも凄まじい成長を遂げたが、1段階レベルが上がっただけだ。
レベル5に至ったのは実力で成し遂げたと私は誇りに思っている。
つまり...ロキの眷族は異常なまでに強くなろうとした結果が、これという訳だ」
「せやな。ぶっちゃけ言うと全部、ネフテュス先輩の眷族に追いつきたい一心やろな。
見てみ?スキルの最後から上2番目。プレデター・リアリスなんてもうまるわかりやん」
そこにはティオナが得たスキルの名前が記されており、既定していた
スキルの下に2つレアスキルが追加されていた。
憶測で想定したロキの説明によると上記のスキルがダメージを負う度に
攻撃力が、窮地に追い込まれる程に戦闘力が上昇するのであれば、
プレデター・リアリスはネフテュスの眷族が関わる事で力を発揮し、
コング・フィジカルは闘志が高まると身体能力が凄まじい程に
向上するのではという事だった。
基本アビリティがとんでもない事になっているのに何故、そこまで
過剰になるのか神々は理解に苦しんだ。
ふと、フレイヤはネフテュスに眷族の事を問いかけた。
「ネフテュス先輩。今のロキの眷族と貴女の眷族がまた勝負をするとしたら...
どうなるのかしら?」
「健闘はするでしょうね。でも...あの子が勝つわ。
...あの子は特別、だもの」
意味ありげな言い方をするネフテュスだが、ティオナの事を甘く
見ているわけではないようだった。
寧ろ、ティオナなら当然の事だと言わんばかりに自信を持って
言い切ったのだ。
フレイヤはそれに気付いたのか、それ以上聞く事はなかった。
「1つ質問があるんですが...
貴女の眷族がティオナ・ヒリュテに勝てるというのなら、レベルは同等かそれ以上...と認識してもいいのですか?ネフテュス先輩」
「んー...出来れば教えてあげたいのだけど...
あの子の事を知るのは、もう少し待っててもらえないかしら?」
「...そうですか。わかりました」
ヘルメスはこれ以上の詮索はしないと言った様に帽子を脱いで頷く。
一旦、落ち着いた所でいよいよ本題へ移る事になった。
ネフテュスが何時、下界へ降りて来ていたのか。
徐ろに左腕のガントレットを外すと、テーブルの上に置いて操作する
ネフテュス。
表面のタッチパネルから光が放射し、立体映像によって巨大な球体が
映し出された。
神々が見た事もないその光景に目を疑っていると、ネフテュスは
語り始める。
「それじゃあ、話しましょうか...私とヤウージャの歴史を」
本当は神話の通りにDV旦那のセトだったからオシリスに浮気したという没ネタもあったり。