ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

21 / 60
>∟ ⊦>'、< T'luthu

 その種族はヤウージャと呼ばれているが、その呼称よりも

 前にヒッシュ・クー・テンと呼ばれている時代があった。

 

 彼らは地球の銀河系よりも約1000億光年に位置する惑星を故郷と

 している。 

 

 その惑星の原住民であるヒッシュ・クー・テン達は、今のヤウージャと

 同様に名誉と誇りを掛けて狩りをしていたが、突如として異星人による

 侵略を受ける事となった。

 

 侵略者の名はアメンギという昆虫型ヒューマノイドで高度な科学技術を

 持っており、ヒッシュ・クー・テン達は忽ち敗北へ追いやられた。

 

 奴隷となった者達は労働や見世物として同族同士や獰猛な生物と

 格闘する娯楽を強いられ、更には食料にまでされていたと言われる。

 

 そんな苦しみを味わい続けて数十年が経った頃、反逆すべく1人の

 ヒッシュ・クー・テンが立ち上がる。

 

 その名はカーリ。

 ヤウージャ達にとっては伝説の狩人とされ、又の名をアルファと

 呼んでいる。

 

 発端はアルファが自らアメンギ達のために戦闘兵器になると名乗り出て

 それを承諾したアメンギ達は遺伝子交配を行い彼に身体強化を施した。

 

 そして、強靱な肉体へと進化したアルファは力を試すために別の惑星へ

 向かっていた際に油断したクルーのアメンギ達を抹殺し、自ら宇宙船を

 操縦して一度、計画を企てるべく惑星へと向かった。

 

 しかし、その時だった。

 

 虹色の残光を引きながら宇宙船へ向かってくる巨大な光球。

 敵のレーザーキャノンによる砲撃だとアルファは思い、回避しようと

 したが間に合わず、光球は直撃した。

 

 かに思われたが、宇宙船は爆発どころか破損すらしていなかった。

 アルファが疑問に思っていると背後から感じる異質な気配を察知して

 振り返った。

 

 「...あら?ここは...?」

 

 星の様に煌めく長い銀髪、浅黒い艶やかな褐色肌、宝石の様な緑色の瞳。

 包帯で局部と太腿だけを隠した妖艶な女体を持つ女。

 その女の美貌と存在感にアルファは敵意さえも抱かず、寧ろ芽生えて

 いたのは神への信仰心であった。

 

 それこそが、ネフテュスとヤウージャの邂逅である。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 その後、目的の惑星へ辿り着いたアルファとネフテュス。

 自身に何が起きたのか全くわからないネフテュスだが、一先ず色々な

 事をアルファに問いかけた。

 

 知識と言葉の相違点、文明の発達度合いの違い、極めつけはアルファの

 顔を見て、ネフテュスはここがオラリオどころか地球ではない事を 

 察する事が出来た。

 

 しかし、それだけではなかった。

 アルファに地球がどこなのか聞いた所、わからないと返されたのだ。

 そんなはずは、と信じられないネフテュスは頭を抱えた。

 

 アルファは悩んでいるネフテュスに自身の生まれ故郷で起きた事を

 伝えた。

 何年にも渡って奴隷にされた同胞が苦しめられている。

 その話を聞いたネフテュスは自身の現状を後回しにしてアメンギ達への

 報復を手助けする事にした。

 

 アルファは反逆するためにネフテュスの知識を借りて武器を

 自らの手で作り上げた。

 それはアメンギの死骸から内臓を抜き取り、剥ぎ取った外骨格を

 繋ぎ合わせて着込んだ鎧。

 鋭い爪を両腕に身に付け、鋭く尖った部位の骨は宇宙船の予備部品の

 先端に括り付けて槍にした。

 その姿は、アメンギへの示威を表すようであった。

 

 それこそが、これまでにベル達が行なってきた行為の始まりである。

 

 いざ、故郷奪還へ向かおうとした際にネフテュスは恩恵をアルファに

 授けようとした。

 だが、それを丁重に拒否してしまった。

 

 曰わく、知識だけで十分であり力は不要だ、との事だった。

 理由を聞いても答えようとしないアルファにネフテュスは気になる

 ものの、割り切ってアルファと共に向かった。

 

 そして、反逆が始る。

 自分よりも武装したアメンギ達を正しく一騎当千、それ以上の凄まじい

 力を以って葬り去った。

 その光景を目の当たりにしたネフテュスは恩恵が必要ないという事を

 実感したという。

 

 捕えられていた奴隷を解放するとネフテュスは同じ様に鎧と武器の

 作り方を教え、更なる快進撃を見せる。

 

 隷属させていたという傲慢さでアメンギ達は反逆の波に飲まれ続け、

 最後には生きたまま頭蓋骨を脊椎から引き摺り抜かれた首領である

 アメンギが討ち取られ、アルファによるヒッシュ・クー・テンの反逆は

 成し遂げられた。

 

 ヒッシュ・クー・テンは咆哮を上げ、アルファとネフテュスを讃えた。

 その成り行きでネフテュスはヒッシュ・クー・テンに主神へと崇められ

 たのだ。

 地球がどこにあるのかもわからない現状、彼らのお世話になろうと思い

 ネフテュスは留まる事にした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 それから幾年後の事、様々なハイテクノロジーを学んでネフテュスは

 ようやくアルファや他のヒッシュ・クー・テンが地球の事を知らない

 理由を突き止めた。

 

 それは本来進むべき時間軸上から逆行、所謂タイムスリップをしていた

 ために紀元前よりも、地球歴よりも...

 それ以前の地球が存在する銀河系が誕生するよりも遥か昔の時代へ

 来ていたからだったのだ。

 

 アルファと出会う前の記憶を思い返して、ある出来事が鮮明に蘇った。

 

 それは天界からオラリオへ向かっている途中に目の前の景色が歪み、

 漆黒の球体へ入り込んでしまった。

 かと思えば見知らぬ場所、つまりアルファの乗っていた宇宙船の中に

 居たのだ。

 

 地球が誕生するまで正確に換算すると45億4999万年後、そこから

 更に生命が誕生してピカイアが哺乳類へ、また更に進化し続けて言語や

 文明を発達させる程の知識を身に付ける人類になるまで膨大な時間を

 待たないといけない。

 

 その時代の技術ではまだタイムスリップする事は出来ないので、

 ネフテュスはそれならと、来る時のための準備をする事にした。

 

 天界で見ていた地球の様々な文化と文明よりも格段に進歩する事で、

 その科学力を用いた様々な武器を製造し、地球に辿り着くための

 移動手段を確立させた。

 それが瞬間的に移動出来るシステム、ワープドライブである。

 

 ネフテュスが教えた通りにヒッシュ・クー・テンは文化と文明を

 進歩させ、その功績を認めたネフテュスが改名を提案する。

 そこからヤウージャという名前になったのである。

 

 やがて、漸く人類がモンスターと戦っている時代まで経過すると

 初のワープドライブ試験によって1人のヤウージャが地球へと

 向かった。

 

 数年後に子供を連れて戻ってきたヤウージャから受け取った

 活動記録などをネフテュスは確認して、約1000年後に自身も

 向かう事を告げた。

 

 一方、そのヤウージャはそれから10年後に子供と共に再び地球へ

 向かって数日どころか1日で帰還してきた。

 曰わく、約束を果たすために行っていた、という。

 その手には白く金の模様が描かれている仮面を大事に持っていた

 そうだ。

 

 1000年後、ネフテュスは数人のヤウージャ達と地球へ向い、

 数時間後に今度は少女を連れて帰還してきた。

 

 それから9年後、長らく待ち続けたネフテュスは漸く来進むべき

 時間軸上の地球へ辿り着く事が出来たのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...これが、今まで記録。そして...真実よ」

 

 立体映像が消えてガントレットを左腕に装着するネフテュス。

 神々はあまりに壮大で、あまりに神である自身が理解出来ない概念が

 あるのだという内容に唖然としていた。

 

 その反応を見てネフテュスは可笑しそうに笑みを溢しつつも、

 フォローするべく立ち上がって口を開く。

 

 「私が下界へ降りて来た理由を話していなかったわね。

  ヘルメスが1番気になってたでしょうから、教えるわ」

 「あ...は、はい」

 「...ある母親であった1人の女性の魂と話したの。

  彼女は生まれつき体が弱く、子供を産んですぐに死んでしまって...

  それを後悔して、せめて彼女の分まで我が子が強く、逞しく生きてほしいと私に願って冥界へ去って行った。

  ...その願いこそが、降りてきた理由よ」

 

 その青い瞳は悲しみに潤っており、今にも溢れそうになっていた。

 ヘルメスはネフテュスが邪心を抱いているのではと疑っていた自分に

 苛立ちを感じていた。

 純粋にその女性への慈悲を胸に秘めていただけだというのに。

 

 その時、ヘファイストスが問いかけた。

 

 「オシリスが居なくなった理由もそれと関係があるんですか?」

 「ええ、女の子を連れ帰った時に冥界での役目を交代してもらう事を約束したの。

  それから、ミアハにも接触して今の今まで情報提供をしてもらっていたのよ」

 「そうだったのか!?しかし、何故ミアハに?

  ガネーシャではダメだったのですか!?」

 「んー...一応、貴方も候補にはしてたのだけど...

  すごく忙しそうだったから、断念してしまったの」

 「ううーむ...ガネーシャ納得した!嫌われていなかった事にもホッとした!」

 

 恐らく後者が本音なのだと神々は思った。




 尚、プレデターはコミックでは割とよく(料理になって)喰われてます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。