ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 恐らくデナトゥスが終了した頃だろうか、僕はアスフィとナァーザ、

 そしてフィルヴィスと共にレイを隠れ里まで送り届けに来ている。

 数か月ぶりに嗅いだダンジョンの匂いは不思議と落ち着くように

 感じた。

 

 兎のモンスターに対する苛立ちも混じって。

 ···少し、やり過ぎてレイを怖がらせてしまったみたいだ。 

 

 やがて、いつもの道を進んで行き、隠れ里に到着する。

 ゼノス達が歓迎してくれる光景も見慣れているとはいえ、それも

 不思議と嬉しさを覚えながら挨拶に頷いて応えた。

 

 「久しぶりだな、捕食者!何か空の向こうに行ってたらしいけど、元気そうで何よりだ」

 『...ありがとう』

 「いいって事、よ...え?ん?い、今、喋ったか?喋ったよな!?」

 

 驚いているリドに僕はもっと驚かせてみようと、パイプを引き抜いて

 ヘルメットに手を掛けた。

 ゆっくりと外して素顔を晒すとリドは大慌てで他のゼノス達を

 注目させる。

 当然、ゼノス達も僕の顔を見て驚愕し、困惑していているようだった。

 

 「成人の儀を成し遂げた。なので、これからはこうして面と向かって話せる」

 「あ、あぁ!そうだったのか!じゃあ、祝盃しないとな!」

 

 昨日、アリーゼ達としたばかりなんだが...

 まぁ、ここへ来る前から予想していた事だ。付き合ってもいいだろうと

 思い、僕は了承した。

 

 祝盃の用意をするために動き出したゼノス達に僕も協力しようかと

 思ったが、主役にそんな事はさせられないと丁重に断られてしまった。

 見ると、アスフィ達も同様のようだった。

 仕方ないのでアスフィ達と座って待つ事した。

 

 準備が進められていく中、右腕を何かが這う感触がして思わず振るい上げ、リスト・ブレイドを

 伸ばしてしまった。

 しかし、それがナァーザが触診していたのだとわかって僕は右腕を降ろす。

 

 「その、ごめんね...?どうしても気になって...」

 

 どうやら未だに腕がどのようにして綺麗に接合されたのか気になって

 いるようだ。

 僕は先程の行為を詫びるために触診を許した。

 ナァーザは尻尾を振って喜び、右腕を肩から指先まで触ってくる。

 覚醒により治癒力で細胞を活性化させた事で傷跡は一切残っていない。

 

 本来なら掟に沿って残すべきだったが、あの時はそこまで頭が回って

 いなかったから名誉の傷を消してしまったという残念な気持ちになる。

 まぁ...けれど、氏族の長という地位を得たのだから足し引きゼロと

 いう事にしよう。

 

 そんな事を考えている内に準備が終わったようでゼノス達は僕達の前に

 酒の入ったジョッキや木の実を盛りつけた葉っぱを置いていく。

 それに気付いてナァーザはありがとう、と一言お礼を言って右腕を

 離した。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 祝盃が始まって、ゼノス達が僕の所へ一斉に集まり、盃を交わした。

 僕が無事に帰ってきた事を喜んでいるようだったので、僕も素直に

 感謝の言葉を口にする。

 それからは質問攻めにあったりしたが、恐らく言っても理解するのは

 難しいと思ったので強い生き物と戦って勝ち抜いた、とだけ伝えた。

 

 アスフィ達もそれを察してか、もう少し詳しく教えたらどうかと

 言ってはこなかった。

 

 「しっかし、こうも早くベルの顔が見られるなんてな」

 「別ニ気ニスル事デモナカッタダロウ。

  コイツガドンナ面デアッテモナ」

 「おい、それならあの顔は何だ?」

 「グフッ!?ア、アレハ単ナル遊ビデ描イタダケダ!」

 「それにしてハ、色々と私やレットに聞いてきていましたガ...」

 

 ...ゼノスでさえ、僕の素顔が気になっていたのか。

 グロスが描いたと思われる絵を見ると、何とも言えなかった。

 

 暫くしてゼノス達が離れ、酒を煽っているとフィルヴィスが近寄って

 来て隣に座った。

  

 「ベル。改めて、祝福しよう。

  氏族の長になれた事、私も友として誇りに思うぞ」

 「...ああ、ありがとう」

 

 そう言って盃を向けてきたので、僕はそれに応えるように自分の持つ

 盃を差し出す。

 カツンとぶつけ合い、同時に飲み干した。

 ほのかにフィルヴィスの頬が赤くなっていたので、少し酔っているの

 かもしれない。

 周囲の賑やかさに心地良さを感じている際、ふと昨日の事を思い返した。

 

 「フィルヴィス。昨日...手を握った時、嫌な思いをさせたか...?」

 「え...?...あ、い、いや!そうではないっ。

  決してお前が悪い訳ではないんだ...」

 

 フィルヴィスは慌てて否定しているが、それなら何故あの時も慌てて

 いたのか。

 まるで僕に触れられるのを拒否したように見えていたが...

 ...このまま互いに気まずくなるのも良くないな。なら...

 半分以下で覚醒を呼び覚まし、隣に座っているフィルヴィスを見る。

 頭脳が思考を巡らせ始めて様々な心理的行動パターンを浮かべていき、

 最終的に導き出した答えが眼に浮かび上がってくる。 

 

 ...異性として認識する好意の表われ、と最初にティオナに対して

 使った時と同じ答えだった。

 まさか...フィルヴィスが...?

 信じられない、という気持ちがあるが心当たりは1つだけある。

 奴らから助けた、それが理由であるなら...納得はいく。

 しかし、決めつけるには早い。ここは...率直に聞いてみるか...?

 

 「...フィルヴィス。実は僕は...他人の意思を読み取る事が出来るんだ」

 「っ!?な、ん...。...っ...」

 「すまない。ただ...互いに気まずくなるのも良くないと思った、から...」

 

 驚愕して言葉を失っているフィルヴィスに僕は謝る。

 だが、こうする必要はあったはずだ。フィルヴィスを失望させて

 しまったとしても。

 沈黙が続いていたが、目の前に運ばれてきたジョッキを掴み取って

 フィルヴィスは一気に飲み干す。

 そして、息を吐くと僕を見ながら答えた。

 

 「なら、言わせてほしい。...私は...お、お前に好意を抱いている、のかもしれない。

  ...わ、わからないんだ。この気持ちが何なのか...」

 

 フィルヴィスは服の袖を握り締め、下唇を噛みながら目を逸らした。

 

 「...私の主神の戯れを言われた時、そんな訳がないと言ったが...

  けれど、本当だとしたらと思うと気が引ける他なかったんだ。

  その...わ、私よりもお前に釣り合う異性が居るだろうから、な...」

  

 それは...ティオナの事か...?

 何故、その事を知っているのかわからないが...彼女の思いやりに

 僕は嬉しさを感じると同時に、罪悪感に苛まれた。

 

 葛藤をしていた彼女を知らず知らずのうちに傷つけていたんだ。

 指の1本...いや、2本差し出す程の償いをしなければならないと思い、

 僕は口を開きかけた。

 しかし、それよりも早くフィルヴィスが喋り始めたために口を閉じる。

 

 「こうして素直に言えたからか、漸く気付いたよ。

  確かにお前に好意を抱いている...が、それ以上にお前の事を好きでいる女性には到底及ぶはずもない。

  だから...忘れろ、とは言わない。せめて...友人として、これからも接してくれないか...?」

 

 悲痛を含んだ微笑みで見つてくるフィルヴィスに僕は今度こそ口を

 開いて答える。

 

 「それは、僕からも言っておきたい。

  フィルヴィスが僕に好意を抱いているのは、嬉しく思う。

  ...酷いと思われても構わない。僕らは許嫁を複数人娶る事が許されている。

  けれど...僕はティオナを迎え入れたいんだ」

 「...ああ、それでいい。彼女こそが...お前に相応しいのだからな」

  

 フィルヴィスは別のジョッキを手に取り、また差し出してくる。

 

 「お前とティオナに幸があらん事を。...いずれ、可愛らしい子を儲けるといいな」

 「...ああ」

 

 僕は頷いてから、ジョッキをぶつけ合って酒をフィルヴィスはと煽った。

 

 そして、夕暮れ時となる事を告げるアラームが鳴り響き、僕らは地上へ

 戻る事にした。

 隠れ里から去って行く僕らをゼノス達はずっと見送ってくれた。

 

 地上へ出ると、彼女達とはそこで解散する事になった。

 僕はまた会おうと約束し、最後にフィルヴィスと握手を交わしてから

 マザー・シップを目指す。

 握手を交わした時のフィルヴィスの笑みには悲痛さは消えていて、

 僕は安堵した。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「...フィルヴィス。ベルと何か話してたみたいだけど...

  何を話してたの?」

 「まぁ...初めて、異性に告白して...失恋した、と言った感じだ」

 「え...?」

 

 予想外の返答にナァーザとアスフィは呆然とする。

 アスフィに至っては眼鏡がずり落ちてしまっていた。

 

 「心配するな。心残りのないよう、ベルに聞かせてもらったからな」

 「な、何をですか...?」

 「ティオナへの想いを、な...」

 

 そう言い残して、フィルヴィは自身のホームへ歩み始める。

 そのしっかりと伸ばした背を見て、アスフィとナァーザは本心で

 言ったのだと思うのだった。




IFルートでハーレムも書こうかと検討してましたが、うーん...
まぁ、期待はしないでください。
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