ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 デナトゥス開催後の翌日、朝から掃除に勤しむクロエだったが、

 その女神が目の前に現われて箒を落してしまった。

 

 「やーやー、クロエちゃ~んお久~。元気にしてるっぽいな」

 

 ニョルズ・ファミリアへコンバージョンする前に所属していた

 ファミリアの主神、セクメト。

 背後には懐かしい顔ぶれの眷族が控えていた。

 

 クロエは隠し持っていたナイフを手に取り、眼光を鋭くさせつつ

 セクメトに問いかける。

 

 「セクメト...私を連れ戻しに来たの?」

 「いんや?偶然にもアンタがここに居るって知ったから...

  これ、渡すようにって言われてね」

 

 そう言いながらセクメトの手には一通の封筒が握られていた。

 眷族の1人にそれを渡すと、クロエに近付いて眷族はそれを手渡そうと

 する。

 クロエはバッと奪い取るようにして受け取り、すぐに距離を取った。

 

 「じゃ、それ渡したから私らはお役御免って事で...帰るとしますか。

  クロエちゃん、お達者で~」

 

 セクメトはクロエが封筒を受け取ったのを見て、背を向けると手と 

 尻尾を振りながら眷族を引き連れ、去って行く。

 クロエはその背中をジッと見つめ、セクメト達が人混みに消えいくのを

 最後まで見送った。

 

 周囲を警戒し、油断させて襲撃して来ないかを確認した後にクロエは

 封筒の裏を見て差出人を確認する。

 

 その瞬間、店内へ逃げるように入ると自室へ急いだ。

 シルやアーニャに呼び止められるもその足は止まらない。

 

 自室に飛び込むなりドアの鍵を掛けるとベッドの上に腰掛け、手紙を

 見つめた。

 一体何が書かれているのか、深呼吸をしてから震える手で開けていき、

 1枚だけ入っている便箋を取り出すとゆっくり広げる。

 

 [クロエ、先に逝ってしまってごめんなさい。

  私は母親失格だと自覚しているわ。

  だけど、母親として我が子には愛情が必要だと思ったから、

  この手紙を渡してもらうわ。

  ...そう書いたけど、何を書けばいいのかしらね。

  我ながら失笑してしまうわ。

  でも、これだけは伝えたかったの。

  貴女は愛しい私の子、貴女をずっと見守ってあげるから。

  だから、胸を張って生きていきなさい。

  暗殺家業をやめたなら、そうね...安らぎの居場所を見つける事。

  愛してるわ、クロエ。

                     母より]

 

 読み終えた途端、緑色の瞳から涙が溢れ出てきて便箋を濡らす。

 今まで抑えてきた感情が爆発してしまい、嗚咽しながら泣き続ける

 クロエ。

 ドアの向こうから心配するリューの声が聞こえてくるも答えられ

 なかった。

 

 「...ありがとうっ...ありがとう、お母さん...!」

 

 クロエは便箋を閉じると大事に封筒へ戻し、そっと口付けをした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 一方その頃、ギルドには大勢の冒険者達が掲示板の前に集っていた。

 それはデナトゥスで決定されたレベル2、レベル4へランクアップした

 冒険者の二つ名を見るため。

 もう1つはこれまで謎とされていたファミリアの情報が公開されたので

 興味本位で知るためだった。

 

 「...何か、案外...」

 「あー、言いたい事は分かるぞ。何つーか、な?」

 

 今回の二つ名の数々は例年よりも至って普通だという感想が多かった。

 ギルドの職員達も最初に確認した際は拍子抜けしたとの事。

 尚、その中で1番に目立っていたのは絶†影だとか。

 

 「いや、それよりも麗傑がレベル5になってるってどういう事だ?」

 「え?レベル4だろ?...は?マジで?」

 

 二つ名を見た冒険者達は次に公開されたファミリアの情報を見る。

 ネフテュス・ファミリア。

 情報はデナトゥスでネフテュスが語った通りの事を包み隠さず提示し、

 活動記録も事細かに記載されていた。

 「...なぁ、これ...どう思う?」

 「どうって言われてもな...

  そもそも惑星とか宇宙って何の事を言ってるんだか...」

 「けど、最近の記録の方で...イヴィルスの使者を討伐したって書いてあるぞ」

 「おいおい、ならこのファミリアがあの時の...」

 

 冒険者達は上記の情報よりも、それ以降の情報に目が行っていた。

 イヴィルスの異常死体が見つかった件はあれ以降、誰もが知っており

 どこのファミリアがした事なのかデタラメな噂話が流れた程だ。

 

 その頃はギルドも情報規制をしてネフテュス・ファミリアの事は

 伏せていたのだが、今回ウラノスからの許可の元、漸く情報の公開を

 決行した。

 エイナはそんな事してしまえばヤウージャ達を見つけ出そうとする

 冒険者が現われそうな予感がすると思っていたが、上記の情報が却って

 胡散臭いと思う意思が強まり、ヤウージャ達の事はあまり話題に

 ならないようであった。

 

 尤も、ネフテュスやベルを含めてヤウージャ達の顔は載せられて

 いないのも大きかった。

 マザー・シップの停泊している森の事もだ。

 

 それにエイナは安堵し気を取り直すと事務処理を再開する。

 

 もうじき担当アドバイザーとして支えているリリルカが

 タケミカヅチ・ファミリアとヘファイストス・ファミリアのスミスと

 中層へ潜る予定日である。

 自分の仕事を熟しつつ、リリルカ達の出発準備の提案すべき事項を

 考えながら羽ペンを走らせた。

 

 やがて、一段落着いた時だった。

 カウンターの前に立つ女性の姿を見てハッと息を呑んだ。

 

 アーディだ。今日は非番なのかラフな格好の私服であった。

 

 「ア、アーディ氏...」

 「どうも、エイナさん。こんにちは。

  ...昨日ね、ガネーシャ様が私の所へ来ていの一番に教えてくれたの。

  彼らの事についてね」

 「...そうでしたか。では、その...」

 「うん。もう大丈夫だよ、彼の事を責めたりしないから」

  

 それを聞いたエイナは頷いて、安堵すると同時にある事を思い出した。

 レックスから教えられたベルの出生についてだ。

 

 「...アーディ氏、少しお話しがあるのですがよろしいでしょうか?」

 「ん?うん。大丈夫だよ」

 「では、あちらに...」

 

 エイナは休止中の札を置くと、アーディを連れて相談室へ消えた。

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