ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「では、あの時インファント・ドラゴンから助けてくださったのは...

  ネフテュス・ファミリアの方だったのでしょうか?」

 「姿を見せないという点では合致しますけど...

  憶測でしか決められませんね」

  

 桜花と千草はタケミカヅチの手伝いをするため、今回は命、ヴェルフ、

 春姫の3人でリリルカはダンジョンに潜っていた。

 潜る直前にリリルカ達もネフテュス・ファミリアの情報を見たよう

 である。

 

 ネフテュスに返し切れない恩がある春姫にとっては驚愕する他なかった、

 

 「そういや俺の所にドロップアイテムをタダで置いていく奴が居てよ、そいつがネフテュス・ファミリアの眷属だって言われた事があるな」

 「はぁ?タ、タダって...ちなみにですが、それらの値打ちは如何程の物があったんですか?」

 「まぁ、ウチのテナントで売ってる高い鎧が5、6個は」

 「申し訳ありませんがネフテュス・ファミリアとリリは仲良くなれそうにありませんね」

 「リ、リリ殿...そんな目にならなくても...」

 「そ、そうですよ。ネフテュス様のおかげで...

  私は命ちゃん達の元に来られたのですから、どうか穏便にお願い致します」

 

 死んだ魚の様な目になるリリルカに春姫は焦りながらも宥めた。 

 恩神のネフテュスに失礼があってはならないからという気持ちの

 表れである。

 リリルカはそれを察して、ため息交じりにわかりました、と頷く。

 

 そうして春姫からネフテュスの事について、タケミカヅチ・ファミリアの

 面々と再会した日と同じように改めて話し合いながら進んで行く3人。

 当然、モンスターに出会わす危険を忘れずに。

 

 やがて、7階層へ降りる通路へ入ろうとした時に1人のアマゾネスと

 すれ違った。

 

 「ん?あぁ、春姫じゃないのさ。久しぶりだね」

 「アイシャさん...!ご無沙汰しておりますっ」

 「相変わらずお堅いね、アンタは...そっちの3人は同郷のお仲間かい?」

 「あ、こちらの命ちゃんはそうですが、リリルカさんとヴェルフさんは別のファミリアの方々です。

  いつもパーティーを組んでくださって、お世話になっています」

 

 ふーん、とアイシャは見定めるように3人へ視線を移す。

 その3人はアイシャと目が合って緊張が走った。

 

 提示版でランクアップした冒険者のリストにアイシャが載っていて、

 レベル5に一気にランクアップしたという異例の冒険者だと知って

 いたからである。

 

 しかし、当の本人は特に気にしていないのか3人に話しかけた。

 

 「春姫の世話を見てくれてありがとうね。

  色々ヘマをしてるかもしれないけど、やばくなった時は助けてやってくれるかい?」

 「あ...は、はい。もちろんですとも。

  その...あ、初対面なのですがランクアップ、おめでとうございます」

 「ああ。そっちこそ、レベル2になったんだろう?おめでとさん」

 「私からもご祝福を。おめでとうございます」

 

 リリルカとヴェルフは意外な程、気さくに2人と話しているアイシャに

 キョトンと目を丸くする。

 見た目判断ではもっと荒々しい性格なのかと思っていたからだ。

 

 しかし、先ほどの言葉には確かな感謝が込められていたとわかった。

 

 「ところで、アイシャさん?そちらの肩に乗せている物は一体...?」

 「これかい?プレゼントで貰った武器だよ。

  どんなのかって説明すると...あそこを見てなよ』

 

 ハーレムパンツの裾の金具に引っ掛けていたヘルメットを被ると、

 アイシャは細長い突起している岩を指した。

 

 4人はその岩を見ていると、赤い三点の光が照射されて次の瞬間、

 すぐ横からの突風と眩い光に驚く。 

 

 何が起きたのかと驚いている中、先程まであった突起している岩が

 根元から周囲の地面を含めて粉々に吹き飛んでいた。

  

 『とまぁ、こういった飛び道具でね。

  威力が強過ぎて扱うのに苦労してたけど、やっとこさ慣れてきて今日実践しに来てたって訳よ』

 「...その武器をくれた奴は...まさか、ネフテュス・ファミリアの奴か?」

 『悪いけど、それはちょっと言えないね。ファミリアの決まりなもんで...

  春姫が世話になってるとはいえ、そう簡単にはいかないんだよ」

 「そうか...なら、聞かなかった事にしといてくれ」

 

 ヘルメットを脱ぎ、アイシャはヴェルフを諭しつつ苦笑いを浮かべた。

 ヴェルフは食い下がる事はせずそう言ってアイシャも察すると、頷いて

 肯定する。

 

 そうしてアイシャは地上へ戻る所だったので4人に別れを告げると、

 そのまま通路を進んで行った。

 春姫はお辞儀をして見送り、命も同じようにしていた。

 

 「...ヴェルフ様、あれだけの威力を持つ魔剣をネフテュス・ファミリアが創れるのでしょうか?」

 「そいつは確証を持てないしわからねぇが...

  本当にそうなら俺の故郷も一瞬で無くなっちまうだろうな」

 

 冷静そうなヴェルフの返答にリリルカ固唾を飲む。

 そして、ネフテュス・ファミリアには関わらないでおいた方がいいと

 決めた。

 

 それからリリルカが何とか気を取り直そうと鼓舞して、7階層へ潜るの

 だった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 「はぁっ...はぁっ...!」

 

 19階層にて、木々の間を必死に逃げ惑う男の姿があった。

 誰が見ても満身創痍だとわかるくらいに頭から衣服まで血塗れとなって

 片腕が無くなっている。

 

 それでも周囲を見渡し、足がもつれて転ぶもすぐに立ち上がって何かに

 恐れながらある場所を目指す。

 その手にあるのはDの文字が刻まれた球体上の鍵となる魔道具の

 ダイダロス・オーブ。

 男の正体はイヴィルスの使者、タナトスの眷族なのだ。

 

 タナトスの命令に従い、ロキ・ファミリアの動向を探ろうと冒険者の

 恰好でダンジョン内の18階層にある扉から出た。

 下の階層に続く出入口に入ろうとしたその矢先、仲間が何者かに

 殺された。

  

 背中から空いた穴は心臓から肺の一部を削る程の大きさで、即死だと

 わからされた。

 すぐさま他の仲間と通路へ入り、19階層へ逃げ込もうとするも、

 その途中で最後尾だった仲間の悲鳴が聞こえてきたが、既に

 死んだ者だとして見捨てた。

 

 19階層に辿り着くと、急いでその階層にある扉へ急いだ。

 仲間と周囲を警戒しながら進んで行き、モンスターに構わず走った。

 

 しかし、またしても途中で仲間の1人の悲鳴が耳を劈く。

 今度は余裕があったのか、その方を見ると地面に設置されていた円形の

 物体から伸びた刃が足首に食い込んで捉えている。

 罠だとわかり、泣き叫びながら助けを求める仲間も見捨てた。

 

 青黒い視界に映る赤い影は男ともう1人のみ。

 

 階層の壁際までもうすぐだ、と男は喜んだ瞬間。

 風切り音が聞こえたと同時に鋭い痛みが腕に走り、粘り気のある液体が 

 顔面に掛けられる。

 

 その拍子に男は転倒し、顔に付着したその液体を拭おうとしたが、

 ある違和感を覚えた。

 両手で拭いているはずが、片手でしか拭く事が出来ない。

 男は何かを察して、恐る恐る目を開けて見ると右腕が上腕部から

 無くなっている事に気付く。

 

 更に、全身に掛かっていたのは隣を走っていた仲間の鮮血だった。

 斬首された首が足元に転がっている。

 男は発狂し、血を拭うのも忘れて立ち上がり走り出す。

 

 頭上を飛ぶリベルラが飛ばしてきた針が刺さろうが、バクベアーに

 背中を引き裂かれようが、とにかく前へ前へと進んで行った。

 

 そして、扉がある壁際が見えて男は残った左手に握っている

 ダイダロス・オーブを突き出して扉を開けようとした。

 目の前が僅かに人型に歪んでいるのにも気付かず。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 ベキッ グチャグチャ... ブチブチッ グチュッ...

 

 樹木が生い茂る中、何かを咀嚼する音が不気味に鳴り響いていた。

 数匹のモンスターが一ヶ所に群がり、地面に血溜まりを形成しながら

 一心不乱に何かを食べている。

 

 ポタ...ポタ...

 

 その頭上からは血溜まりに向かって赤い雫が落ちて来るのだった。

 

 カカカカカカ...




 ちなみにやったのはいぶし銀のウルフ。
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