ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
少し時間を遡る。
フェルズにロキ・ファミリアが襲撃を受けたという一報を聞いた
ティオナ。
困惑しつつも襲撃しているのは誰なのか問いかける。
「イヴィルスだ。59階層で待ち伏せをしていた。
だが、使者だけでなく食人花と以前に君達を襲ってきた新種のモンスター、そして...」
「モンスターになってしまった精霊も、居るんだよね?」
「え...!?」
「残念ながら...」
ナルヴィが悲しげな顔で告げた言葉の意味を理解してティオナの顔から
血の気が引いた。
イヴィルスの使者や食人花と新種のモンスターはともかくとして、
あの時の怪物化した精霊まで居るとなると事態はかなり深刻だ。
ナルヴィが申し出を拒否した理由を察し、どうするべきなのか
ティオナは考えるまでもなく答えた。
「なら、すぐに行かないと!ししょー!レイ!連れてって!」
「で、ですガ、ここから59階層へ戻るとしてモ...
とても間に合いませンっ」
「そんな...!?じゃあ、どうしたらいいの!?
ティオネや皆を助けに行かないといけないのに!」
焦燥感を募らせるティオナは、今にもその場から立ち去って自力で
59階層へ向かう勢いだった。
戸惑うレイを押し退けようとした時、それを止めたのはナルヴィと
キングコングだった。
その巨大な手で行く手を阻まれ、ティオナは何故行かせてくれないのか
問いかけようとする。
「ティオナ。オルナに言われた事...忘れたんじゃないよね?
力に溺れず、屈せず、飲み込まれてはいけない、って」
「あ...」
その言葉を聞いて、ティオナは進めようとしていた足を止める。
オルナが正しく力を使えるために託した魂の器。
間違った使い方をすれば、きっとイヴィルスと同じ様な凶悪となるに
違いない。
それはダメだと自分を戒めるティオナは深呼吸をして、昂る感情を
精神統一で抑え込んでいく。
やがて、冷静さを取り戻したティオナを見て安堵するとナルヴィは話を
続けた。
「一先ず、70階層まで戻りましょう。
そこで私が何とかしてみるから」
「な、何とかって、どうするの?あ!もしかして別の場所に移動する魔法を使うとか!?」
「それは出来ないよ。とにかく、行こ?」
そう言われて困惑するティオナだが、ナルヴィの言う通りにするしか
ないと決める。
背鰭で作った武器を手に取り、レイ達と一緒にキングコングの掌へ
乗って上下が反転している重力の境界線を越えると70階層に繋がる
光の渦を潜り抜ける。
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70階層に着いてナルヴィは降ろすよう言ってキングコングは
ゆっくりとナルヴィだけを肩から降ろす。
「ナルヴィ、ここからどうするのかな...」
「さァ、私にモわかりませン...」
「彼女は神の分身だ。きっと秘策があるんだろう」
そうフェルズが答えていると、ナルヴィは階層の端まで移動して両手を
顔の前に掲げた。
本来の姿に戻ると、息を吸い込んで瑞々しく潤った唇を開き、詠唱を
始める。
「【地よ、唸れ。来たれ来たれ来たれ大地の殻よ、黒鉄の宝閃よ、星の鉄槌よ、開闢の契約を以て反転せよ。空を焼け、地を砕け、橋を架け、天地と為れ」
両手を天井に向けながら見上げると、無数の魔法円を斜めに向けて
配置する。
その大きさは巨大な魔法円でもキングコングが収まる程に大きく、
危険を察知した周囲のモンスター達は一目散に逃げていく。
「降り注ぐ天空の斧。破壊の厄災。代行者の名において命じる。与えられし我が名はノーム。大地の化身。大地の女王】」
魔法円の天井を向いている表面から浮き出てくる歪な形をした魔力で
創り出された黒曜石。
それが何十、何百も浮き出てきた所でナルヴィは最後の詠唱を
言い放つ。
「【メテオ・スウォーム】!」
ズゴォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!
魔法円から次々と飛んで行く無数の黒曜石。
落下はしていないが流星群の様に天井へ激突していき、轟音を響かせて
天井を削っていく。
階層全体が揺れ動き、振動で壁の一部が崩れる。
「...すごい」
ものの数秒もしない内に70階層の天井を突き破った。
ナルヴィは浮遊しながら連続詠唱で再びメテオ・スウォームを放ち、
69階層の天井も突き破ろうとする。
ティオナとレイ、フェルズでさえその光景に唖然としている中、
キングコングは階層の壁を這って登り始める。
窪みに手を突っ込み、天井にぶら下がりながらナルヴィが空けた穴から
69階へ入り込んだ。
69階層に入った時には既にナルヴィの姿は見えず、同じ大きさの
穴が出来ていた。
「これなら、すぐにロキ・ファミリアの所へ着くなっ」
「うんっ!ししょー!60階層の天井まで空いたらあたしを投げて!」
ヴォ゙ォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!!
ティオナに返答するキングコングは同じ様に壁を登り始める。
ギュアオォオオオオオッ!!
ブ チッ !
途中、大規模にダンジョンを破壊してしまった事でジャガーノートが
目の前で生み出されそうになっていたが、天井を掴んだキングコングの
手で握り潰されてしまった。
ティオナは何か潰れたと思ったが、気にしないでおく事にした。
そして、65階層へ辿り着くとナルヴィが降りて来て60階層の天井を
突き破り、59階層に辿り着ける事を伝えてくれた。
「ありがとうナルヴィ!じゃあ...ししょー!」
ゴフッ!
ティオナが肩を伝って腕を走り、掌に乗るとうつ伏せになると軽く
潰さないようキングコングは握る。
ヴォォオオオオオオオッ!!
ギュォオオオオオオオオオオオオッ!!
狙いを定め、勢いよく振るわれた腕から遠心力によってティオナは
一直線に59階層へと繋がる斜めに空いた穴を潜り抜けて行く。
「行っけぇぇええええええっ!!」
この世界線ではジャガノはかませ以下のトカゲです。