ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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>'<、⊦>'<、,< 決着

 劣勢に追い込まれていたはずのロキ・ファミリアは突如として現れた援軍...と認識していいのかわからないが、アマゾネスの女性と巨大なゴリラのモンスターがグガランチを怒涛の勢いで追い詰めて行く。

 

 椿が用意してくれたローラン・シリーズでも、浅い傷が付く程度でしかダメージを与えられなかったのに対し、背鰭の武器の一撃は怪物の肉体を切り裂いて、巨大な拳による拳打はめり込んでグチャッと体内の何かが潰れる音が周囲に響き渡る。

 

 足元に居るヴィルガやヴィオラスも腐食液を吐き出し、巻き付いて気を逸らそうとしているが、それに目もくれないキングコングに踏み潰され、引き千切られて全く歯が立たないでいた。

   

 「【突き進め雷鳴の槍。代行者たる我が名は雷精霊。雷の化身雷の女王】」 

 「【サンダー・レイ】!」

  

 悶絶して怯んだグガランチに浴びせられる豪雷。

 その眩い光にロキ・ファミリアもイヴィルスの使者も手を翳して、遮ろうとする。

 

 ティオナの背後からナルヴィが放った砲撃魔法であり、全身を焦がしながら麻痺状態となって硬直してしまっていた。

 

 「おっりゃぁああああああああああ!!」

 

 ゴ ギャアッ!

 

 キングコングの肩に着地したティオナは、跳び上がって体を回転させながら渾身の回し蹴りを顔面に叩き込む。

 衝撃でグガランチの顔は歪み、追撃にキングコングの猛烈な前蹴りで下半身にある頭部を蹴飛ばされた。

 

 瞬く間に形勢は逆転され、イヴィルスの使者達は窮地に立たされた事に慄く。

 

 だが、ここで退けば後はないとわかっているため、せめてロキ・ファミリアの冒険者だけでも殺すべく自爆を試みようとした。

 視界に入ったアリシアに目を付け、奇声を発しながら突っ込んで行く。アリシアはそれに気付いて魔剣を構えようとする。

 

 キィィィィ・・・イイイインッ!!

 

 風切り音が聞こえ、イヴィルスの使者達は足を止める。

 そして...振り返った時には、飛翔してくるレイの強靭な翼がイヴィルスの使者達を薙ぎ倒していった。

 時速100kmで飛来する翼は容易く胴体に深い傷を刻み込んでいる。

 

 断末魔を上げる事すら出来ないままイヴィルスの使者達は絶命し、それを見てアリシアは立ち竦んだまま、頭上を飛行するレイが旋回して自分の目の前に降りて来たのに驚く。

 

 「あノ、私はレイと言いまス。ここは危ないですかラ、あそこへ行ってくださイ」

 「...しゃ、喋った...!?」

 「は、はイ。ビックリしたでしょうけれド...

  私ハ、貴女と同じ様に喋れテ、考えテ、食べテ、歌う事が出来まス」

 

 レイの強い意志が宿った瞳に見つめられ、アリシアは目を瞬かせた後...深くお辞儀をしつつ礼を言う。

 

 「ありがとうございます、レイさん。助けていただいて...」

 「ど、どういたしましテ...!でハ、他の人達も助けに行きますネ!」

 「お願いします。私も皆を手助けしますから...!」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「ちっ...!一体何だというんだ、あのモンスターは...それに...」

 

 アイズと剣を交えていたレヴィスは、強引に押し退けて距離を取ってから忌々しくキングコングを睨んだ。

 魔石をありったけ喰らわせたグガランチが手も足も出ずに、ティオナの追撃も含めて一方的にやられている。

 

 それどころではない。ヴィルガやヴィオラスもナルヴィの魔法で多くが一瞬にして木端微塵になり、ロキ・ファミリアを助けながらイヴィルスの使者を確実に仕留めるレイの飛翔で壊滅状態であった。

 

 そんな状況に怒りがフツフツと湧き起こってくる。

 

 最早、ロキ・ファミリアの襲撃もままならないと判断するのに秒数も掛からなかった。

 アイズがエアリエルを纏っての刺突を仕掛けてきたのを見計らい、レヴィスは背にしていた雪の塊に飛び乗る。

 雪の塊は粉々に砕け、キラキラと白い粉を撒き散らしながらアイズの視界を遮らせる。

 

 一瞬慌てるも、アイズはその場から抜け出してレヴィスの位置を特定しようとしたが...既にそこには無かった。

 アイズは背後に居るレフィーヤに場所の特定を試みる。

 

 「レフィーヤ!あの人は...!?」

 「...!、あそこです!いつの間にあんな遠くへ...!?」

 

 レフィーヤが指した方向にレヴィスは佇んでいた。次は負けない、といった眼差しを向けてから、背後にある洞窟へと消えて行く。

 その洞窟はレヴィスが見えなくなると同時に、グガランチが階層の壁に叩き付けられた拍子に塞がれてしまった。

 

 アイズはそれを見送る事しか出来ず、デスペレートの柄を強く握り締めるのだった。

 

 「アイズさん...」

 「...レフィーヤ、皆を助けに行こう」 

 「は、はいっ!」

 

 

 アイズがまず向かった先はヴァレッタと交戦中のフィンの元だった。

 禍々しい赤い剣を振り翳した隙を狙って横一文字に斬り伏せようとするも、悪運が強かったのかレヴィスはそれを受け止める。

 

 しかし、フィンが懐に潜り込むと膝蹴りを鳩尾に叩き込んで、くの字に体を曲げさせた。

 

 「ぐっ...!2体1となる、流石に不利か...!くそっ...!」

 

 悪態をつきながらヴァレッタもレヴィス同様に粉雪による煙幕で身を隠す。

 フィンの呼びかけてアイズはエアリエルで煙幕を吹き飛ばすも、既にヴァレッタは逃走していた。

 

 「...逃げられたか。アイズ、君の方もかい?」

 「うん...また、勝てなかった...」

 「勝つか負けるかは、いずれにせよ決着がついてわかる話なんだ。

  その時まで...君はやれる事をやろう。そうすれば、自ずと結果がついてくるさ」

 「...そう、だね。やれる事を...頑張ってみる」

 

 そう答えたアイズにフィンは成長したな、と思っているのも束の間、すぐ近くで起きた地響きに身構えた。

 

 自分達では手に負えなかったグガランチがボロボロの瀕死寸前となっており、唾液を垂らしながら睨んでいる前方の先にはティオナが立っていた。

 

 「フーッ...!フーッ...!フーッ!フーッ!」

 「アアァァアアアアアアアアアアアアアァアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 呼吸が徐々に荒くなり、最後は怒り狂った咆哮を上げると詠唱を始める。

 ティオナは背鰭の武器を構えて、グガランチの魔法がどのようなものなのか見極めようと見据える。

 

 「【闇ヨ荒べ!光ヲ呑ミホシ夜ノ安寧ヲ代行者タル我ガ名ハ闇精霊!闇ノ化身闇ノ女王!】」

 

 ラウルに肩を貸してもらい避難している所だったティオネは、その詠唱を聞いてとてつもない危機感を覚える。

 ティオナに助けられる少し前に、あの砲撃魔法の威力を身をもって知らされたからだ。

 

 「ティオナッ!逃げてっ!早くっ...早く逃げてっ!!」

 「ティ、ティオネさん!ダメっすよ!っていうかあの人ティオナさんなんっすか!?」

 

 驚くラウルに返答せず、ティオネは必死に叫んでティオナに逃げるように促す。

 だが、ティオナは避けようともしなければ逃げようともしない。寧ろ、迎え撃つかの様に身構えている。

 

 やがて、グガランチは詠唱が終える。

 目の前には漆黒の魔法円が浮かび上がっており、不気味な笑みを浮かべて勝利を確信しているようだった。

 

 「【ダーク・ロアー】!」 

 

 闇属性の砲撃魔法を放つグガランチ。

 凄まじい爆発音と共に砂煙を巻き上げて、ティオナ目掛けて一直線に向かって行く。

 

 「...ふー...」

 

 砲撃魔法が迫り来る中、ティオナは深呼吸をして精神統一をした。瞳の色はまた右目が青、左目が緑となる。

 足元を砕きながら前方へ跳び上がって背鰭の武器を突き出し、真っ向から向かって行った。

 ティオネだけでなく、フィンやアイズ達も無謀な行動に目を見開く。

 

 そして...ティオナに砲撃魔法が直撃した....かに思われただろう。しかし、違っていた。

 砲撃魔法は確かに直撃している。背鰭の武器にだ。

 

 それだけでなく、砲撃魔法は真っ二つに切り裂かれながら消滅していく。

 背鰭の性質によって熱量を奪われていっているからだ。

 あり得ない光景を目の当たりにしたグガランチの顔から笑みは消え、絶望に染まる。

 

 「【火よ、来たれ。猛よ猛よ猛よ。炎の渦よ。紅蓮の壁よ。聖火の咆哮よ。突風の力を借り世界を開け。燃える命。

燃える血潮。燃える心。燃える情熱。燃える勇気。代行者の名において命じる与えられし我が名は火精霊。炎の化身。炎の女王】」

 「【ファイアーストーム】!」

 

 流れるような詠唱速度で超長文詠唱を行い、特大の炎風をティオナの背中に向けて放つ。

 誰もが狙いが定まらず、ティオナに直撃してしまうと思ったが...

 背鰭の武器を背中まで振りかぶる事により、炎風は渦を巻く様に吸い込まれていく。

 

 炎風を全て吸収した背鰭の武器は、まるで太陽の如く光り輝いていた。

 ティオナはそのまま背鰭の武器を突き出して魔法円を粉々に砕き、腰の位置に構え直す。

 目と鼻の先まで近付いてきたティオナにグガランチは恐れ戦く。

 

 「これが...災難ってやつだよっ!!」

 

 背鰭の武器を力強く横に振るったティオナ。グガランチの精霊部分と言える上半身は斬り裂かれて地面に崩れ落ちた。

 残った下半身にティオナは馬乗りとなり、下半身にある頭部の首を斬り付ける。

 背鰭の武器を足元に突き刺し、首っこを両手で掴むと一回転させるくらい捻って脊椎をへし折った。

  

 ブチ ブチ ブチ ブチィッ!!

 

 「うおぉおおおおおああああああああああああああああっ!!!」

 

 最後は頭部を強引に脊椎ごと引っこ抜き、それを掲げながらティオナは胸を叩いて勝利の雄叫びを上げた。

 その光景にティオネは只々呆然と見ており、圧倒されるばかりであった。

 戦いは終わった...そう誰もが思った、その時だった。

  

 「【荒ね...天の...怒...り...」

 

 なんと、上半身だけとなった状態でグガランチは詠唱をしながら手を翳し、最後の悪足掻きを見せる。

 最後の言葉を発しようとするも、頭上から黒い影が落ちて来るのに気付く。

 

 ゴシャッ!!

 

 キングコングに踏み付けられて地中に埋もれるグガランチの頭部。

 翳していた手は痙攣した後、カクン...と力なく落ちた。

 イヴィルスの使者も、ヴィルガも、ヴィオラスの姿もなく、今度こそ戦いが終わったのだ。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ティオナは頭部を投げ捨て、背鰭の武器も置き去りにしてティオネの元へ急ぐ。

 避難させた場所には他の仲間達も居て、幸いにも誰1人として欠けずに無事でいるようだった。

 それに安堵するも束の間、ティオネを探すティオナ。

 

 ふと、背後から感じる視線に振り返ってみると...そこにティオネが立っていた。

 衣装はボロボロであるが、既に傷は消えている所からしてフェルズの全癒魔法か、レイに渡されたマリィの血によって完治したのだろう。

 

 「ティオネ...その...」

 「...何よ?」

 「...ただいま」

 

 それだけしか思い浮かばず、照れ臭そうに笑うティオナに...ティオネは呆れて深くため息をつく。

 しかし、すぐに吹き出して笑みを浮かべるとゆっくりと近付いて、そのまま優しく抱き締めるのだった。

 

 「お帰りなさい...ティオナ」

 

 身長差が以前よりも違うために違和感を覚えるが、それでも最愛の妹が無事でいた事が何よりも嬉しくて、抱き締めたかったのだろう。

 思わぬティオネの抱擁に戸惑っていたティオナだったが、次第に笑顔になり抱き締め返す。

 

 こうして、イヴィルスの襲撃は幕を閉じるのだった。




ファイアーストームの詠唱が何か特撮みたいになったのはご勘弁を...
あとフェルズは全然描写ないけどめちゃくちゃ頑張ってたと思ってください。

ティオナは現在190Cとベル君と同じぐらいになってて、ティオネとは30cmも差があります。
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