ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
僕は今、星屑の庭へ訪れて中庭でリュー達4人の相手をしていた。
これで...5戦目くらいだと思う。
「今度こそやってやるわよっ!ライラ!」
「わかってるよっ!」
「リオン!反対へ回れ!」
「はい!」
彼女達の連携はやはり見事なもので、とても美しくて見惚れてしまう程だ。
まるで舞い踊っているかのような動き、これなら敵は翻弄させられるに違いない。
但し...僕は動きを見切りながら攻撃を受け止め、弾き返し、反撃を繰り返す。
反撃と言っても本気の拳打や足蹴りではなく、肩を押したり足を引っかけて転ばすといった手段のみだ。
倒れたらその場で止まり、残った相手のみが挑むといったルールを設けている。
現在、対峙しているリューは悔しそうな表情を浮かべながらも果敢に攻めてくるが...
僕はそれを受け流して首回りを掴むと投げ飛ばし、僕の勝利で決着がついた。
「あぁ~~もう悔しい~!また負けた~!」
「何で私だけ腕か足を掴んでは放り投げるんだよ!くそムカつくなぁ...」
「おいムキムキ背高のっぽ。もう一度だ、勝つまでやるぞ」
「輝夜...流石に休憩にしましょう。このまま続けても見込みはありませんよ...」
悔しそうにする4人だが、士気は一切下がっておらず輝夜は特に負けず嫌いなのか再戦を要求してくる。
リューはそんな輝夜を宥めつつ、休憩の時間を提案する。
不満気な様子であるが輝夜は引き下がってくれた。ボクも休憩をしよう...
尚、この場に我が主神とアストレア様は居ない。
要注意神物とされている神の本拠へ招待されているためだ。
何かあってならないと僕は同行しようとしたが、待っているよう言われてしまった。
カチッ プシューッ...
ヘルメットを脱ぐと蒸された空気が解放されて心地良い。
未だに破損したヘルメットを使用しているが、新規のヘルメットのデザインはもうじき完成するためいよいよこれもお払い箱になるだろうな。
ヘルメットを脱いだ僕の姿を見てあリーゼが近寄ってくる。その手にはコップが...
「はい、ベル君。水分補給はしっかり摂らないとね!」
「...ああ。ありがとう、アリーゼ」
僕は礼を言いながらコップを受け取ると水を口に含む。
冷たい水が喉を通って潤す。そんな僕の様子を微笑みながらアリーゼは見ている。
...素顔の時もそうだが、何故僕がしている事に興味を持つんだ...?
そう疑問に思いながらも、口には出さず残った水を飲み干した。
僕が水を飲んでいる間もアリーゼがじっとこちらを見つめて、少し落ち着かない気分になるが我慢しよう。
「それにしてもベル君ってホント強いね!
まぁ、あんな化け物を相手にしてたら強くなるのも頷けるけど...」
「...アリーゼ達も十分に強い。だから誇りを以てほしい」
「えへへ~...ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
照れ臭そうだが素直に喜んでいるアリーゼに僕は頷き返す。彼女だけでなくリュー達もその強さは称賛するに値する。
...ティオナもあの勝負から強くなっていれば、互角になれるはずだ。きっと...
「そういえば、今アストレア様と一緒に会いに行ってる神様ってベル君は誰なのか知ってる?」
「知らない方がおかしいと言うぐらいには要注意とされている神だ。名は...」
言いかけたその時、別の通路から我が主神とアストレア様がこちらへ向かって来ているのに気付く。
僕は空になったコップを置いてすぐに近寄ろうと思ったのだが...思わず硬直してしまった。
それはアリーゼ達も同じだ。
我が主神は俯いたままで表情こそ見えないのだが、明らかに怒り心頭となっており今にも神威が溢れそうになっていた。
何があったのか聞かないといけない。僕は目の前へ近寄り、跪いて問いかける。
少しの間を置いて我が主神はお答えになられた。
「...イシスお姉様と見間違えるような節穴のオシリス、と愚弄されたのよ。
愚弄した言葉はそれだけじゃないけれど...一番頭にきたのは...
私と婚姻を結べばアストレア様も一緒に可愛がってやる...かしらね」
...何という哀れな神だ。呆れる以外にない...
オシリス様とアストレア様を愚弄するなど、禁忌以外の何ものでもない。
...それならどうするのか、聞かなくてもわかっているが...
「我が主神...どうされますか」
「...尊厳を潰してから殺すわ...」
その目を見たのは僕の生きてきた中では二度目だった。
真っ黒に染まり、光が消え失せて絶望に悲しむその瞳を見てしまったのは...
「アポロンを...地獄の底へ落してあげましょう」
神話ではオシリス様に酒飲ませて酔っぱらわせて姉に変装して抱かれて子供を授かるという中々に破天荒なネフティス様。