ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「どいてどいて~!」

 

 他の団員にはゆっくり戻るよう伝えて、ティオナとフィンは本拠へと急いだ。

 ぶつからないよう声を出しながら人混みの中を駆け抜け、何としても早くロキと会わなければならないと思っているからだ。

 そして、本拠が見えてきて門の前に停まっている馬車にロキが乗ろうとしているのが目に入る。

 慌ててティオナが呼び止めると、気付いたロキはステップに乗せていた足を下ろして御者に少し待つよう頼んで2人が来るのを待った。

 

 「フィン、ティオナ。無事に戻って来たんやな...よかったわ」

 「うん、ありがとう。でも、それより...ネフテュス・ファミリアとアポロン・ファミリアが戦争遊戯をするって...」

 「え?何で知っとるん?」

 「他のファミリアに所属してる冒険者達が話していたんだよ。

  だから、居ても立っても居られなくなってしまってね...」

 

 フィンの説明にロキは納得しつつ頷いた。既に噂が広まっているとは予想外だったものの、話を進めるのが早くて助かると内心思った。 

 ティオナはアポロン・ファミリアがネフテュス・ファミリアに戦争遊戯を申し込んだ理由を問いかけたが、まだそこまで把握していないと伝えられる。

 今日の昼頃にロキもその事を知ったためだ。

 

 「ま...大方の理由はわかるけどな...」

 「そうなのかい?神アポロンが何を求めているかとかは...?」

 「...ネフテュス先輩が狙いや。アイツはずっと前からホの字やったからな...

  せやから、旦那のオシリスが居らん事をええ事に自分のモノにしようと企んどるんや」

 

 それを聞いたティオナは驚くと同時に、そんな身勝手な理由で戦争遊戯をするのかと怒りを覚える。

 そんな様子を見かねたロキはティオナの肩に手を置いてから、優し気に笑みを浮かべて口を開く。

 その目は真剣そのもので、ふざけた様子は一切ない。

 

 「何も心配する事あらへんやろ?ネフテュス先輩の眷族が...

  あのアホをぶっ潰して後悔させるはずやからな」

 「...うん。負ける訳ないもんね...じゃあ、後で色々聞かせてね?」

 「おう。言い忘れ取ったけど2人共、遠征ご苦労さん。ゆっくりしときや」

 

 ロキは2人に労いの言葉をかけてから馬車に乗り込んだ。少し待たせていたため、御者が急いでバベルへと向かった。

 その場に残ったティオナはロキが乗った馬車を見えなくなるまで見送り、フィンに呼びかけられて中へ入ろうとするもティオネ達が来るまで待つと言った。

 フィンも団長として自分もその気遣いはしなくてはと思い、一緒に待つ事にした。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 以前にもデナトゥスを行ったバベル30階。

 以前と同じ面子の神々が静かに待っていた。...アポロンを睨みつけながら。

 

 天界に居た頃からネフテュスを怒らせてはならないと、誰もが何も言わずとも決められたルール。

 それを破ればどうなるか身をもって知る事となるだろうというのにも関わらず、アポロンは睨まれているのも気付いていないのか鼻歌を歌いながらネフテュスの到着を待っていた。

 

 ある神はとばっちりを受けないかと恐怖し、ある神はアポロンのせいで世界が終わったらどうするんだ苛立ち、またある神はただただアポロンに殺意を向けていたりしていた。

 そして、暫くして扉が開かれてネフテュスがアストレアを連れて会場へやって来た。

 

 その途端にアポロンは立ち上がって、歓迎するようにネフテュスを迎えた。

 

 「あぁ我が愛しきネフテュス!待ち侘びていたぞ。さぁ、座り給え」

 「ええ...遅れて申し訳ないわね。皆も待たせてしまって」

 

 謝罪しながらアストレアを横に座らせて、自身も用意されていた椅子に座る。

 ネフテュスとアストレアが来た事で出席する神々が全員揃い、戦争遊戯についての会議は始まった。

 

 その内容は勝利した側の要求、勝敗の形式、そして開催日程である。

 

 まずアポロンが出した要求はネフテュスを妻としてアストレアは愛人にするというものだった。

 それを聞いて神々は自分達が激怒するよりも先にネフテュスが憤慨すると声にならない悲鳴を上げる。

 しかし、ネフテュスはアストレアと顔を見合わせてから頷いて承諾する。

 

 それには神々も困惑したものの、一気に脱力して安堵するのだった。

 一方でアポロンは嬉しそうに笑みを浮かべて、ネフテュスに感謝の言葉を述べた。

 

 「では、ネフテュスは私に何を望むのだ?」

 「...勝ってから伝えるわ。それまでは...内緒という事で。ね?」

 「そうかそうか。まぁ、いいだろう」

  

 事情を知るアストレアがアポロンを憐れむように見つめているのに、神々は気付いて色々と察した。

 アポロンは自身がどんな目に遭うのか知る由もなく、安易に聞き入れてしまっていたが... 

 

 次に決めるのは、勝敗の形式は代表同士の一騎打ちか攻城戦かのどちらかだ。

 前者は団長を務める眷族が戦って降参若しくは戦闘不能となるまで戦い、後者は城を戦闘区域に指定してそれぞれの団長が倒されるか、または籠城して団長を3日間守り抜くという眷族全員による総力戦。

 

 このどちらかになるのだが、意外にも両神共に攻城戦を選んで即決した。

 尚、籠城するのはアポロン・ファミリア側となる。

 

 「(まぁ、一騎討やとあっちゅうまに終わるやろうしな...)」

 「では、日程だが...私はいつでも構わないぞ?」

 「...それは後日決めても事でいいかしら?こちらも込み入った事情があるのよ」

 「いいとも。では、今回はこの辺りで一時解散としよう」

 

 戦争遊戯における概ねの内容が決まって日程は後日決める事となり、アポロンは軽やかな足取りで帰って行くのに対して他の神々は疲労困憊で足取り重く立ち上がる。

 ロキも日程だけとはいえ、まだ続く会議に気分が沈み込んでしまっていた。

 すると、不意にネフテュスに呼び止められる。

 

 「あとでティオナと話しがしたいのだけど...いいかしら?」

 「は、はぁ...もちろんええですよ。多分、待ってると思いますから」

 「ありがとう。...それじゃあ、アストレア」

 「はい。ロキ、失礼するわね」

 

 戸惑いながらもロキはネフテュスとアストレアを見送り、その場に残されるのであった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「それで...女神ネフテュスからティオナに話があるんだって?」

 「せやねん。一体何の話があるんやろか...うちもちょっちわからへんわ」

 

 黄昏の館へ帰ってきたロキはフィン達を集めて、ネフテュスから話があると伝えていた。

 何を話すのかアポロンとは違って、予測できないネフテュスの思考にロキは大きく息を吐いてから椅子に深く腰掛ける。

 だが、フィン達には心当たりがあった。特にアイズにとっては顔を蒼褪めさせているくらいには。

 ティオナがロキにその事を伝えようとした時、窓を叩く音が聞こえて全員が一斉にその方を見る。

 

 見ると窓の外にはファルコナーが滞空しており、見覚えのあるフィンとリヴェリアとロキ、そしてティオナがネフテュスの物だと気付いた。

 それ以外のファルコナーを知らないアイズ達は窓を開けて、入ってきたそれに驚いて訝っている。

 

 部屋の中央に移動したファルコナーは光を投射すると、ネフテュスの姿を浮かび上がらせた。

 突然に現れたネフテュスに驚くフィン達を他所にロキは先程会ったとはいえ、挨拶を交わしてから改めてティオナにどういった話があるのかを問いかけようとする。

 しかし、それを遮るようにティオナが前に出てきて言葉を詰まらせた。 

 

 「ネフテュス様。あたしに話があるって聞いたけど...」

 『ええ。ティオナ、貴女は...今、どれくらい強くなれたかしら?』

 「...かなり強くはなれたと思うけど...あともう少しで精霊の力を使いこなせるはずだよ。 

  そうしたら...」

 

 ティオナは一度伏せていた視線を上げて、ネフテュスを見据える。

 その瞳には決意が込められているとネフテュスは微笑みながら察した。

 

 『...そう。それなら...ロキ』

 「あ、はい?」 

 『私達、ネフテュス・ファミリアは...ロキ・ファミリアに戦争遊戯を挑むと宣言するわ』

 「...うそん」

 

 一瞬にして灰色に染まったロキ。フィン達は突然の事に理解が追いつけずにいた。

 ...そうなるだろうと、わかっていたティオナを除いて。

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