ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「ちょ、ちょっとホンマに...ホンマに待ってくれまへん?

  何でうちらとも戦争遊戯を?これからアポロントコとやり合うでっしゃろ?」

 

 ロキが狼狽するのも無理はない。勝てる訳がない相手から宣戦布告をされたからだ。

 どうにかして穏便に戦争遊戯だけは回避したいロキは、その問いかけにまず答えてもらおうと思いつつネフテュスの顔色を伺う。

 すると、ネフテュスは笑みを浮かべて答えた。

 

 『正確には...あの子とティオナの再戦の場を設けたいからよ。

  あれから強くなれたのなら、もう一度再戦させてあげたいの』

 「あ、あぁ...そういう事ですのん...で、ですけどいくら何でもそう急に言われて、うちらもはい、やりますとは...」

 

 一先ず、不都合でネフテュスの気に障ってしまったという訳ではない事にロキは安堵していた。

 だが、やはり突然に戦争遊戯を挑まれた事には変わりないのでロキはどうしたものかと頭を悩ませる。

 

 すると、アイズがおずおずと挙手をしながら声をかけられたのに気付いてネフテュスは振り返った。

 

 「ネフテュス様...レイを傷つけようとして、ごめんなさい...」

 『あぁ、その事なら...レイからも許してほしいと言われているわ。

  だから今後、気を付けるようにしてもらえるなら、それでいいわ』

 「...はい」

 

 アイズが頷くと、ネフテュスはロキに向き直った。

 何の話だったのかイマイチ理解出来なかったが、ベートに引き続きアイズが何かやらかしてしまったのかとロキは顔面蒼白となっている。

 ネフティスはその反応にクスリと微笑んでから、呼びかけると我に返ったロキは先程アイズと話していた内容の意味を問いかける。

 

 そこで初めてロキはゼノスの存在を知る事となった。そして、やはりアイズがやらかしたのだという事も。

 即ちこちら側が断る権利はないという事になる。

 

 『もちろんその事で私が強制的に戦争遊戯をしてもらうとは思ってないわ。

  第一原則としてティオナの意思で承諾してもらうのだから』

 「...女神ネフテュス。確かにティオナはそちらの眷族と深い関りがあるからこそ一騎打ちに拘っていると察しはしている。

  だが、戦争遊戯は飽くまでもファミリア同士での決闘だ。

  ティオナだけでなく、私達にもプライドがある限り参戦を」

 「リヴェリア。勝てもしない勝負はするべきじゃないよ」

 

 冷静にそう答えたティオナにリヴェリアだけでなくネフテュスを除いたその場の全員が目を見開いて驚く。

 まさか身内からそんな言葉が飛び出すとは思いもしなかったのだろう。

 だが、それでも納得がいかないのかリヴェリアは食い下がろうとした。しかし...

 

 バァンッ!と、そんな音が鳴り響いて今度は全員の意識がそちらへ向いた。音の出所は出入口の扉の前に立っていたベートからだった。

 鬼気迫るような形相を浮かべたままティオナに近付くと、食って掛かるように怒鳴り散らす。

 

 「テメェ...桁外れにランクアップしたからって舐めた口を利くんじゃねえぞバカゾネス!

  あん時の礼はたっぷり返さねえと俺の気が済まねえんだよ!」

 

 ベートはティオナのネックレスを掴みながら打ちのめされた雪辱を晴らそうという心の内を吐き出す。

 しかし、それにティオナは臆する事なく真っ直ぐと見つめたまま無言でため息をついた。

 その態度に怒りが沸点に達したのか、ベートは更に言及しようとするも先にティオナに諭された。

 

 「ベートがあの時よりも強くなってると思うけど、捕食者はもっと強くなってるんだよ。

  それなのにベートは勝てると思ってるの?...他の捕食者も皆が思ってる程、勝てる相手じゃないんだよ?

  プライドがどうとか、正直言って...どうだっていいよ。この戦争遊戯はネフテュス様があたしのために宣言したんだから...」

 

 ベートの手をやんわりと振り払い、ネフテュスの前に立つティオナ。

 言い返せなかったベートは呼び止めようとするも、ティオナから発せられる威圧感に動きが止まった。

 領域を解放し、オッドアイとなっている瞳でネフティスを見据える。 

 

 まるで別人のように変貌した姿にネフテュスに微笑んで彼女がどう答えるのかを待った。

 

 「ネフテュス様。もう一度...再戦させて」

 『...ロキ、皆。異論は...あるかしら?』

 「...そこまで言ったからには、ティオナ...アンタが勝つって信じるからね」

 「独壇場で決めるのは団長としての立場がないとはいえ...今回は大目に見るよ」

 「せやな。うちらが何を言っても、意味ないやろうし...ちゅー訳でベート、諦めや?」

 

 ロキはフィンとティオネと同じくティオナの覚悟を尊重して、そう答えながらベートの肩を叩いて宥める。

 苛立ちは消えていたベートだったが、納得せざるを得ないという答えに舌打ちしながらティオナを睨み付けて部屋から出て行ってしまった。

 

 だが、ネフテュスはそんなベートを気にせずデナトゥスでの会議と同じように、勝利した側が何を要求するかを話した。

 

 『こちらが勝ったらティオナを眷族として迎え入れさせてもらうわ。

  その代わりに...私の眷族を貴女のファミリアに改宗させてあげるっていうのはどうかしら?』

 「え?で、でも、それはネフテュス先輩にとってデメリットにしかならへんでしょう?

  せやったら代わりの眷族を貰うなんて事は...」

 

 勝利側が敗北側に何かを与える事は前代未聞だった。大抵は根こそぎ奪うという事しかしないためだ。

 しかし、ネフテュスは常識外れな事を言うため、そのデメリットな提案に意味があるのだとロキは察している。

 

 『いいのよ。ティオナが居なくなってしまってファミリアの情勢に悪影響を及ぼしてはならないもの。

  それに...貴女の所の方が、気楽にやれるでしょうからね』

 「...そう言ってもらったからには断れませんわ。ほんなら、こっちが勝ったら懸賞金だけで」

 「ダメ。捕食者を...渡してもらうから」

 

 ティオナが遮るようにそうネフテュスに要望してきて、ロキは身の毛がよだつ。

 これ以上ネフテュスの気に障るような事はさせたくないと必死だからだ。ティオネも妹がそうするとは思っていなかったようで焦っている。

 しかし、ネフテュスは特に気にした様子もなく答えた。

 

 『ええ。いいわよ。そちらが勝ったらあの子と懸賞金をあげるわ。

  それじゃあ、日程は...どれぐらいの期間を要したいかしら?』

 「攻城戦なら開始前の準備期間と本番の3日間だから...一週間と4日。

  その間にもっと強くなっていたいから」

 『...ふふ。わかったわ、じゃあ、アポロンにはその日程で合わせるようにしてもらうわ。

  貴女がどれくらい強くなれるのは...頼みにしてるわよ』

  

 そう言い終えるとネフテュスの姿は消えて、ファルコナーは入ってきた窓から飛んで行く。

 

 短いようで濃密な時間にデナトゥスと同様に疲労困憊となっているロキは椅子に座り込んだ。

 ティオネは椅子から立ち上がってティオナを叱り付けようとしたが、既に部屋から出て行く姿が目に入る。

 向かう先は自室であるとわかっているため、自分も部屋から出ると自室へ向かう右側の廊下を進んで行くティオナを見つけるや否や追いかけて行くのだった。

 

 「...ロキ。女神ネフテュスは...神アポロンよりも大変な相手なんだね」

 「いや...よりもやなしにネフテュス先輩の方が大変なんやで...」




という訳で勝敗形式はベルVSティオナの決闘となります。
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