ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
ベルがエルダーとアハによる修練をしている頃、ティオナは100階層に降りてナルヴィの元を訪れていた。
再戦が決まった事を伝え、ティオナが本格的に対抗するための特訓をしたいと申し出た。
ナルヴィは勿論、ティオナの申し出を受け入れると何かを取りに行って戻ってくる。
「ティオナ、真っ向から勝負を挑んでも力の差が出てくるはずだから...
新しい戦い方を覚えてもらわないとね」
「新しい...戦い方?」
「うん。これを使いこなしてもらうよ」
そう言ってナルヴィが手渡してきたのは小型の斧だった。
斧刃の根元に当たる柄肩には樹皮で作られた紐が結び付けられている。
振るってみた感触としては至って普通の斧であり、ティオナはこれをどう扱うのかとナルヴィに問いかけた。
それにナルヴィはまず、樹木に斧刃が刺さるように投擲してみるよう答えた。
ティオナは木から離れた位置に立つと柄を握って投げる動作を確かめてから、勢いよく投げ飛ばす。
縦に回転しながら斧は木に直撃するも、斧刃の上端が掠めただけで表面に刺さりはしなかった。
少し悔しがりながらもティオナは地面に落ちた斧を拾いに行こうとしたが、ナルヴィに止められる。
「引っ張れば手元に戻ってくるようにその紐は括り付けてるんだよ。
相手との距離を取りながら、中距離で攻撃できるようにね」
「あ、そのためだったんだ...わかった。せーのっ!」
ナルヴィに言われてティオナは紐を力一杯引っ張ると斧は宙を舞って、ティオナに向かって来る。
難なく掴み取ると、再び木を目掛けて投擲した。しかし、今度は回転のタイミングが悪く、柄尻がぶつかってしまった。
中々の難易度にティオナは苦戦を強いられるが、ナルヴィはレイと一緒にその場で静かに見守っていた。
ちなみにキングコングは周辺に現れたワートドッグと鬼ごっこをしており、ここには居ない。
休まず何十回も斧を投げ続け、回転する勢いの強さとブレは軽減されてティオナの投擲技術はかなり向上していた。
だが、木の表面を傷付けるだけに留まり、突き刺さるまでには至っていない。
投擲する度に跳ね返って地面に落ちる斧を引っ張ってキャッチしながらティオナは歯痒さを感じていた。
「ん~...どうすればいいのかな...」
息を整えながら斧をじっと見つめて握り方や手の振り方を確認する。
ふと、握っている部分が柄の中心から柄尻に変えて、投げる際にもスナップを効かせてみる事を思いつく。
腕を前に出して狙いを定めると、肘を曲げながら腕で円を描くように勢いをつけてスナップしながら投擲する。
すると、今までと違って弧を描き飛んでいく様にではなく、一直線に回転しながら木に突き刺さった。
「や...やったー!やったよナルヴィー!」
そこでティオナは手応えを感じ、勢いよくナルヴィへと振り向いた。
ナルヴィは上出来だと頷いて、翼を手に変えたレイは拍手を送っていた。
その瞳は輝いており、ティオナは嬉しそうに声を上げながら飛び跳ねている。
「これで第一ステップはクリアしたよ。次の第二ステップはそれを使ってモンスターを倒してきて?
投げないで近接攻撃をしてもいいから」
「わかった!レイ、行こう!」
「はイ」
斧を持ってティオナはレイと共に木々が生い茂る森へ向かった。
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最初に遭遇したのはドードという3Mもの体と共に脚が極端に巨大化している鳥のモンスターだった。
獰猛な性格で嘴や趾に生えている黒く鋭い爪を使った攻撃や、僅かならがに飛翔も出来るため頭上から踏み潰すそうだ。
ティオナを見つけたと同時にドードーは翼を広げながら威嚇して臨戦態勢に入っている。
最初に動いたのはティオナで、レイをその場に残して一気に駆け出すと斧刃が届く間合いに飛び込んで勢いよく振り下ろした。
しかし、ドードーも翼を広げて跳び上がり攻撃を回避した。着地するや否や前方へ戻るように跳んで鋭い爪でティオナを切り裂こうとする。
風を切り裂く音が聞こえた瞬間、ティオナは反射的に横に跳ぶ事で難を逃れる。
「ベルよりは遅いけど、丁度いい相手かもね」
ティオナは相手に不足無しと思い、斧を構え直して対峙した。ドードーは首を低くさせて、ティオナを中心に弧を描きながら警戒する。
斧をしっかりと握り締めてドードーの出方を伺うと、今度はドードーから勢いよく飛び掛かって来た。
ティオナは先程のように横へ跳ぶのではなく、前方にスライディングをしながら出る事で攻撃を回避。
膝立ちの状態で斧を投げ飛ばし、ドードーの後頭部を狙った。
しかし、ドードーは振り向き様に顔を反らして直撃を免れると跳び上がり、ティオナ目掛けて飛び掛かる。
回避するには間に合わないと判断したティオナは斧を引っ張らず、自身も飛び掛かって首に掴まる。
そして、そのまま自身の体重を後ろへ乗せながらドードーは勢い余って地面に激突した。
その衝撃で地面を転がるティオナは体勢を持ち直して紐を引っ張り、戻ってきた斧を掴み取る。
ドードーは頭を振るって、ティオナの姿を捉えると気味の悪い咆哮を上げて前傾姿勢のまま突進してくる。
飛翔するよりも走力に特化した脚力で、嘴で刺突するという攻撃にでたようだ。
斧を背中に隠し、十分な距離まで引き付けようとタイミングを伺うティオナ。
数秒も待たず距離が無くなった瞬間、ティオナは斧を振り翳す。それを見てドードーは方向を変えて斜めに進んだ。
「そりゃぁあッ!」
それを狙っていたティオナは斧を投擲し、縦に回転する斧は伸び切っている首を切断した。
ズシャッ!と先に胴体が地面に倒れ、切断された首が転がり落ちた。
少し手間取ったものの斧で仕留める事が出来たティオナは、近寄ってきたレイに対してピースサインを見せる。
レイは技能が向上した事を褒めるべく、頷いて同じようにピースサインを返した。
「この調子でドンドンいくよ!」
「はイ、頑張りましょウ。ティオナさン」
そうしてティオナは次なる獲物を求め、森の中をレイと駆け回るのだった。
ザ・プレイの主人公であるナルもやっていた特訓ですが、回転したら縄が絡まるんじゃ?と思い、ピザカッターに紐を括り付けて実際に投げてみたところ...
紐は絡まず回転して投げられたので、現実的に可能な戦法なんだと感服しました。