ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
ベルとティオナが同日から修練と特訓を始めて早くも1週間が過ぎ去った。
その間に再び開かれたデナトゥスで準備期間が決められ、戦争遊戯の開催場所となるシュリーム古城跡地にてアポロン・ファミリアは着々と準備を進めていた。
本拠で用意した荷物を城門から運び入れて行き、武器や食料などをそれぞれ団員達は分担して各部屋に分配していく。
その様子をヒュアキントスは城内の中央にある塔から見下ろして、ネフテュス・ファミリアを迎え撃つだけという攻城戦に今更ながら不服そうにしていた。
何故なら、挑んで来る人数はたったの5人という事でこちら側が勝利する以外に考えられなかったからだ。
「つまらないゲームだ。これなら一騎打ちに変更を申し込むべきだったな」
そう愚痴をこぼしてる頃、ダフネもカサンドラと並んで城壁の上から仲間達を見ていた。
仲間達の腕には赤と白、そして黒い布が結ばれており、それを確認しているようだった。
「あぁ...城が落とされる...悪魔が...悪魔が攻め込んできて...」
「...カサンドラ。アンタはヒュアキントスが籠る塔に行ってもらえる?
そこならまだ安全だろうから」
「で、でも、ダフネちゃんは...」
「私の事は気にしなくていいよ。それに1人の方が動きやすいだろうから」
不安そうに見つめてくるカサンドラの頭をダフネは微笑しながらカサンドラの撫でた。
ダフネの強さを知る彼女であるが、やはり得体の知れないファミリアを相手にするとなれば話は別である。
自分の頭を撫でている手を取り、両手で包み込むと祈る様に目を瞑ってダフネに自分の思いを伝える。
少し間が開くものの、ダフネはカサンドラの手を解くと軽く肩を叩いて微笑んだ。
「おーい!城門を閉めるぞー!早く入れー!」
「ちょおぉーーい!待て待て待て!待てったらよー!」
城門の方から聞こえてくる、ルアンの焦り声を聴いてダフネはそちらの方を見る。
息切れをしながら文句を言い放つルアンに仲間達は小人族特有の悪口を言って煽り笑いを浴びせていた。
ルアンはやれやれと言ったようにため息をつき、頭上を見上げるとダフネと目が合った。
お互いに言葉も発さず、頷きもせず、ただアイコンタクトだけで何か意思疎通をしたのかその場から去って行くのだった。
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そうして夜が明けると...世界が日に照らされながら当日を迎える。
『どうも皆さんおはようございまーーーーすっ!いよいよ戦争遊戯当日がやってきました!
今回、実況を務めるイブリ・アチャーでございます!
二つ名は【火炎爆炎火炎】!以後お見知りおきを!
解説は我らが主神ガネーシャ様です!ガネーシャ様、それでは一言!』
『俺がガネーシャだ!』
『はい、あざしたーっ!』
ギルド前に設けられているステージ上で魔石製品のマイクを使いながら、イブリがガネーシャと共に場を盛り上げていた。
元より戦争遊戯が行われる事で、その場にいる人々だけでなくオラリオ中のどこもかしこもが怪物祭以上の賑わいを見せている。
「はぁー...まさかこんな事になるなんて...」
「ねぇー、エイナ。一週間前から悩んでるけど何があったの?」
「...その内わかるわよ。私の悩みの種が...」
そう答えるエイナにミィシャは首を傾げるだけで理解には及ばなかった。
問題神として有名なアポロンを主神とするアポロン・ファミリアと今まで謎とされていたネフテュス・ファミリアとの戦争遊戯はどちらが勝つのか予想もつかないのでオラリオ全体が注目しているのだ。
つまり、今回の戦争遊戯はオラリオ史に刻まれる程の出来事と言っても過言ではない。
「アポロン・ファミリアに3万!」
「俺も5万だ!」
「おいおい、アポロン・ファミリアしかいねえんじゃ賭けにならねえだろ」
それもあってか戦争遊戯では恒例とされている賭博も大いに盛り上がっており、豊饒の女主人も売り上げが伸びると踏んで店内に賭けを行う場を用意していた。
しかし、情報が少ないネフテュス・ファミリアに賭ける人数は少なく、賭けているんは3人にも満たない程。
そのため、ディーラー役を務める商人がネフテュス・ファミリアに賭けろと言うも誰も賭ける訳がない...と、思われたが。
「ネフテュス・ファミリアに50万賭けてやるよ」
「同じく」
「こちらもだ。10万ヴァリスで頼む」
そこに現れたのはナァーザとマフラーと帽子で顔を隠した2人組の女性だった。言うまでもなくライラとフィルヴィスである。
正義を掲げるアストレア・ファミリアの団員が賭博をしていたとなれば白い目で見られてしまうため、こうして変装して来ていたのだった。
フィルヴィスは別段、隠さずともいいのだが高貴なエルフがそんな事をするのは恥だと思ったからそうで。
「よーし!これで賭けを締め切るぞ!ホントにアンタらネフテュス・ファミリアに賭けるんだな?」
「間違えて賭けてたつって泣いても金は貰うからな?」
「寧ろこっちはこう言っておくぜ。終わった後、喧嘩売ってくるなよ?」
「ははははっ!その威勢が続けばいいがな」
ライラの挑発じみた言葉に鼻で笑いながら返すアポロン・ファミリアに賭けた冒険者達。
その反応に3人は憐みの溜息をつく。ふと、ライラは通り掛かったリューを呼び止めて問いかけた。
「はい。恐らくは、改宗してあそこに行っているのだと思います」
「やっぱそうか。まぁ、戻りたかったかどうかはわからねえけど、そうするのが普通か」
「そうですね。事前に手加減だけはしてくださいとお願いはしておきましたが...」
「いいんだよ、腕か足が折れようが痛い目を見せてやっても」
【狡鼠】という二つ名にピッタリな笑みを浮かべるライラにリューは眉を潜め、心配そうに浮かび上がっている神の鏡に目を移す。
間もなく開始するというのにも関わらず、アポロン・ファミリアの団員達はやる気なく周囲を見渡している姿を見てライラの言う通りかもしれない、と接客業に戻るのだった。
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バベル30階で神々も戦争遊戯の開始を待っていた。
少し遅れてやってきたロキも到着して、ネフテュスに声を掛けようと見渡すも姿がどこにもない。
首を傾げつつ、地上を見下ろしているヘファイストスを見つけてどこにいるのか問いかけてみるも...
「え?まだ来られてへんの?」
「そうみたいね。だからかわからないけど、フレイヤは先に上に戻ったみたいね」
「そないねんやか...で、アポロンのアホは?
「あそこで何かしてると思ったら...指輪を磨いてたわ」
うわぁ、と心の底から嫌そうな顔を浮かべるロキはチラッとアポロンを見た。
ヘファイストスの言った通り、執拗に息を吐き掛けながら肩の赤いマントで磨いている。
「ふっふっふっふっふ...私の妻となる瞬間が嬉しすぎて胸が張り裂けるそうなのだろうな。
だが、心配する事はない!その苦しみも私が沈めてあげよう...!」
そうして開始の銅鑼が神の鏡を通じてオラリオに鳴り響き、戦争遊戯が始まる。
ネフテュス・ファミリアがどう仕掛けていくのか、それを誰しもが目を離さずに観ていた。
...ところが、何も起きないまま2日が経ってしまい、夜も更けて最終日を迎える事となった。
恐らく戦争遊戯を最終日まで続けたという作品は今までにないはず。