ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
今まで何度か戦争遊戯を見てきた人々やギルド、そして神々もそんな事態に困惑を隠せずにいた。
特にアポロン・ファミリアの団員達も一向に現れないネフテュス・ファミリアに苛立ちを露わにしている。
ネフテュスをよく知る神々もそれはない、と思ってはいるものの内心ではやはり疑心暗鬼となっていた。
何故なら...戦争遊戯が開始されてからというもの、ネフテュス本人が姿を見せていないからである。
しかし、アポロンは不信感を抱くどころかこう考えていた。
「私に会うのが恥ずかしいのだろう。
心配する事はない。必ずここへ来るさ」
どこから来る自信なのかわからないが、現状は変わらないため神々も待つしかなかった。
ルール上、攻城戦は3日間の間に籠城する側が大将を守り抜くか、攻め込む側が城を落とすかという内容なので違反には値しない。
だが、これだけ何も起きずに最終日となったとすれば、誰もがこう思った。ネフテュス・ファミリアは逃げたのでは、と。
もし、本当に逃亡したとなれば必然的にアポロン・ファミリアの勝利となるため賭博でネフテュス・ファミリアに賭けている冒険者や一般市民は大損だ。
当然、ギルドには大勢の群衆が押し寄せ、ネフテュス・ファミリアが本当に逃亡したのか職員に問い詰めていた。
「こ、こちらとしてもこんな事態になるとは思ってもみなかったので...」
「ふざけんなよ!いくら賭けたと思ってんだ!」
「き、きっと!きっとアポロン・ファミリアと戦います!ですから...」
怒号を飛ばす人々にエイナは必死に説得する。だが、納得のいかない冒険者達は暴言を吐きながら不満を爆発させていた。
ロキ・ファミリアの本拠でも訝る団員達がおり、言わずともベートはネフテュス・ファミリアに文句を言い続けていた。
「何勿体ぶってやがるんだ!さっさと終わらせてバカゾネスと戦り合えってんだ!」
「落ち着け、ベート。ネフテュス・ファミリアにも考えがあるんだろう」
「そうじゃ。恐らくティオナの準備が整うまで待っているんじゃろうて」
「チィッ...!」
リヴェリアとガレスがそう諭すも、ベートは舌打ちをして苛立ちを募らせた。
アポロン・ファミリアとの攻城戦が終わり次第、次はこちらのティオナとの一騎打ちを控えているからだ。
「ですが...前日からも動きがないのはどうしてなんでしょうか...」
「わからない...でも、何か起きる気がする...」
「僕もそう思うよ。...こんなに疼いているのは初めてだからね」
フィンは痙攣しているように無意識に動く親指を見つめながらアイズに答えた。
心配そうにするティオネだが、ネフテュス・ファミリアの動向も気がかりなため不安が募るばかりだった。
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一方、その頃。シュリーム古城跡地で待ちくたびれているアポロン・ファミリアは思い思いに退屈凌ぎをしていた。
「おい。酒はもう無いのか?」
「あぁー...無ぇな。おい、ルアン!持ってこい」
「やだね。自分で取ってこいよ、酔っ払いが」
「生意気言ってんじゃねぇぞクソ小人族が!黙って持ってこいってんだ!」
崩れ落ちた城壁の瓦礫に腰を掛けている団員が、顔を赤くしながらルアンに向かって酒瓶を投げつける。
それを悠々と掴み取ったルアンは地面に置いて立ち上がると貯蔵庫へ向かった。
「ったく、何でオイラが...あーもういいや。俺が行かなきゃならないんだよ」
そう愚痴を零して、酒が置かれた貯蔵庫へではなく、城壁へ上がるための階段を登っていく。
縁に肘を突こうにも背丈が足りないため、そこへ登って胡坐をかいて膝に肘をついた。
そよ風が頬を撫で、周辺の岩山から風切り音が聞こえてくる心地良さにルアンは欠伸をかいて目尻に涙を溜めるのだった。
ふと、前方の空を見た時だった。雲が穏やかに流れる晴天にも関わらず、オレンジ色の稲光が走る。
胡坐をかくのをやめながら立ち上がったルアンは不敵な笑みを浮かべながら呟いた。
「よーし、さっさと終わらせてリリの所に改宗してくるか」
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「な、なんだあれは...!?」
塔の窓からヒュアキントスはその光景に我が目を疑った。
空に走る稲妻が巨大な円を描き始め、その中央から突起が出現し始めた。
段々とその形状がハッキリとわかるようになった。それは...とてつもなく巨大な船。
但し、その形状は常識とはかけ離れていた。
曲線状に先端が細く、上部にかけて広がるような船首。生物の肢体を思わせる船体の左右から伸びる部分には。サイドフロートのようなバランスを保つための羽のような物がある。
海面を進む様に飛行する巨大な船は、稲妻の描いた円から抜け出るとそこに滞空する。それと同時に円は消滅した。
アポロン・ファミリアの団員達は突然出現した巨大な船に目を奪われ、言葉も発せずにいた。
すると、船体の表面が開いた箇所から何かが落下していく。
そのまま地面に衝突する、かと思われたがその物体は地面スレスレのところで滑る様にそのまま滑空し始める。
シュリーム古城跡地の周辺には、無数の大小異なる岩山が聳え立っていて地面も高低差が激しい荒野なのだが、その物体は難無く進行してきていた。
城壁から周囲を警戒していたリッソスは、確証は無いもののあれはネフテュス・ファミリアが攻め込んできたのだと判断した。
「戦闘準備!城門前の平地なら姿を捉えられる!弓兵はそこを狙え!」
弓兵に役割分担をされた団員達は指示通りに城門の真上に集った。
弓を番え、聞いた事もない音を頼りに接近してくるネフテュス・ファミリアが姿を見せるのを待ち構える。
リッソスの言う通り、城門の目の前は平地となっており、到着した途端に城壁から狙い撃ちされてしまうだろう。
やがて、岩山の間をカーブしながらすり抜けた3つの影が、高速で城門目掛け向かってきた。
見た事もない正体不明なそれに驚くも団員達は矢を放とうとした...次の瞬間。
バシュウゥゥウーーーッ!
ドガァァァアアアアアアアアアアアンッ!!
ネフテュス・ファミリアが放ってきた3つの長細い物体が城壁に直撃し、爆炎を上げながら大爆発を起こしたのだ。
その衝撃で吹き飛ばされる団員達は城壁から城内側へと落下していく。
指示を出したリッソスはあまりにも凄まじい攻撃を目の当たりにして、ただ茫然としていた。
他の団員達も、落下してきた仲間を助けながらも何が起きたのかわからず動揺しているようだった。
そんな中、平然と口笛を吹きながら歩いている小さい人影がリッソスの目に留まった。
ルアンだ。何故かアポロン・ファミリアの制服を脱ぎ捨てながら城門の方へ向かっている。
「ルアン...?どこへ行く気だ...?」
城門に着くと、何を思ったのか重厚な鉄格子の扉を開けるためのレバーを上に動かした。
三角形に尖った下側がゆっくりと上がって行き、その向こう側に立っていた3人が城内へ入って来る。
「遅せぇーっての。いつまで待たせるんだよ、ったく」
『まぁまぁ、そう怒らないでよ。ダフネは?』
「アイツは...こっちに向かってる最中だな」
そう答えるルアンの視線の先には城壁から城壁へ飛び移りながら向かってくるダフネの姿が。
団員達はそれに驚愕し、頭上を飛び越えていく彼女を目で追うしかなかった。
そして、最後の城壁を飛び越えて地面に着地し、悠々と近寄ってくる。
「私の装備は?」
「あと俺のもな」
『ほら、ちゃんと持ってきたわよ』
『さっさと終わらせてベルとティオナの再戦を観るわよ』
カカカカカカ...