ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
『こ、これはどういう事でしょうか~~!?なんとアポロン・ファミリアから裏切り者...というより!
ネフテュス・ファミリアの密偵者が紛れ込んでいたぞぉおーーー!』
ダフネとルアン、もといルアーノがヤウージャの装備を身に付けた姿を神の鏡越しに目にしたオラリオ中の冒険者や市民、そして神々は驚愕する。
少し前に出現した巨大な船、その船から降下したブレード・ファイターが城壁の敵を一掃し、そしてルアーノが城門を然も当然の様に開けた予想外の光景にも驚いていたのだが、今はそれ以上にも目を見開いていた。
『それにしても、ガネーシャ様?フィアナ騎士団とは...一体どういう事でしょうか!?』
『うむ...あれはガネーシャだ!』
『真面目に解説してくれませんかねガネーシャ様ぁ!』
解説の仕事を放棄しているガネーシャにイブリはツッコミを入れる声がオラリオ中に響き渡る。
それはロキ・ファミリアの本拠である黄昏の館にも届いていた。
最もフィンは椅子から立ち上がって、ルアーノにくぎ付けとなっている。
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「だ、団長...?」
「...彼が、ルアーノだって...?」
そう呟くフィンは驚愕はもちろんだが、どこか歓喜を含めた笑みを口元に浮かべていた。
親指がこれまでにない程疼き、最悪折れてしまいそうだった。
それはルアーノは出まかせを言い放ったのではなく、真実を言っているという証拠に間違いないと確信できる。
「フィン...大丈夫か?」
「あのルアーノという若造、フィアナ騎士団と言っておったが...まさか」
「...どうやら、ネフテュス・ファミリアはとんでもない隠し玉を持っていたようだね」
心配しているリヴェリアとガレスがフィアナ騎士団について問いかけてきて、フィンは自身が思っていた以上に興奮していた事に気付く。
深呼吸して落ち着きを取り戻しながらリヴェリアとガレスに心配しないよう伝え、改めて座り直すと神の鏡を真剣な眼差しで見つめるのだった。
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裏切りではなく密偵がファミリアに潜んでいたという事実にアポロン・ファミリアは混乱と動揺に包まれる。
だが、リッソスが黙れと一喝し、腰に差している鞘から剣を引き抜くとベル達に切っ先を向けた。
「密偵者だろうと関係ない!貴様らが敵であるのなら...
全員武器を取れ!ここでネフテュス・ファミリアをここで叩き潰すぞ!」
リッソスの言葉に団員達は顔を見合わせ、覚悟を決めると武器を構え始める。士気は上々、とまではいかないが人数を考えればこちらが有利だろう。
その場に居る仲間の団員は15人。相手はたったの5人だ。
城壁を破壊した武器を持っていないのであれば、一斉に攻撃を仕掛けて倒せるだろうとリッソスは判断した。
「覚悟しろ!我らがアポロン様の名の下に貴様ら、を...!?」
そう言い終える前に、腹部に突き刺さる鋭く冷たい感覚がリッソスを襲う。
首をガクガクと震わせながらゆっくり下を向くと、そこに居たのはルアーノだった。
一瞬にして間合いを詰め、脇腹より下に突き立てたリスト・ブレイドをグリッと半回転するように捻りながら引き抜く。
斬り裂かれた裂傷部から血が噴き出した直後に激痛が走り、その箇所を押さえながらリッソスは両膝と片手を地面についた。
目の前が霞む視界に銀色の影が映った。今の体勢では身長差が無くなりルアーノと目線を合わせているような状態となっているのだ。
『お前はアポロンに心酔しちまってる。そうなった奴は相応の罰をくれてやらないといけなくてな...
だから、黒い布...死ぬか死なないかはお前次第の痛みにしとくぜ』
「貴、様...ぁ...!」
『お前はヒュアキントスよりは仲間想いだけどよ...
誇り高きエルフにしちゃ、アポロン並みに性根が腐ってるぜ』
ルアーノは同情するようにそう言ってリッソスの頬をペチペチと手の甲で叩きながら離れて行く。
侮辱された事で屈辱に身体を震わせ、リッソスは奥歯を噛み締めて痛みに耐えつつルアーノを睨み付けた。
落とした剣を取ろうとするも、プツリと糸が切れたようにその場に倒れた。地面には腹部から溢れる血溜まりが広がっている。
「リ、リッソス!」
「嘘だろ...!?アイツはたったのレベル1のはずだぞ!?」
「な、なぁ、ルアン?俺はさ、アポロン様に仕方なく従っていただけで忠誠心なんて...」
リッソスが倒れた事に驚きを隠せず、団員達は自分より格下だと思っていたルアーノが見せた驚異的な強さと容赦のない残虐さに困惑した。
そんな中、1人が武器を投げ捨てて後退りしながらルアーノに許しを乞う。
その団員の腕に巻かれていたのは赤色の布。リッソスの名を叫んだ団員とルアーノがレベル1とは思えない攻撃に驚いている団員は黒色の布を巻いている。
ルアーノはそれを確認するとプラズマ・キャスターの照準をレーザーサイトで黒い布を巻いている団員2人に合わせた。
バシュンッ! バシュンッ!
「がっ...!?」
「ギャ...!」
発射されたプラズマバレットを回避できず、団員2人は胸部に直撃して後方へ5Mは吹き飛ばされるとそのまま地面に倒れた。
直撃した胸部は服諸共広範囲に皮膚が焼け焦げて白い煙が上がっている。
口からは言葉にすらならない呻き声を漏らしており、致命傷であるのは明白だった。
その威力を間近で見た他の団員達は顔面蒼白となりながら戦意喪失して逃げ出し始める。
許しを乞おうとしていた団員もその1人だったが、ルアーノが目の前に立ち塞がっていて足を止める。
『確かにお前は嫌々ここに入らされたもんな。それは俺も同じだから可哀想だとは思うぜ』
「だ、だろ!?だ、だから、見逃して...ぐぇ...!?」
突如として蟀谷に何か硬質な物がぶつけられる。その衝撃で脳震盪を起こし、団員は仰向けに倒れると虚ろな目で空を仰いだ。
やがてぼんやりとした視界に映ったのは、白い髑髏...ダフネの姿だった。
手には短縮したままの専用コンビスティックを握っており、先端から中心より一回り分厚くなっている石突部分には血がこびり付いていた。団員の蟀谷を殴打した際に付着したのだろう。
『アンタは体目的でカサンドラに何度も言い寄ってたよね?
それをウチが注意してもやめようとはしなかった。...だから、アンタは個人的な恨みで赤色の布を付けといたよ』
ダフネは蔑んだ目を向けながら鼻で笑い飛ばし、倒れている団員を足を踏みつけて進んで行く。
尚、踏み付けた際にバキリという音が鳴り響いて団員が悲鳴を上げた。折れた、というより折ったに違いない。
ルアーノはそれを見て気に留める事もなく、ダフネを追いかけようとした。
『んじゃ、ベル。俺も赤色の布を付けた奴らにお礼参りしてくるぜ。
ヒュアキントスはあそこの塔の中だ。待ちくたびれてるはずだから、遊んでやってこい』
『それと、カサンドラって黒くて髪の長い女の子には手を出さないで。出したら殺すよ』
カカカカカカ...
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2人を見送っていると、階段や城壁、そして通路の出入口から多くの増援が駆け付けてきた。
恐らくリッソスや仲間が倒されたのを聞き、別の配置についていた団員達だろう。
ベルはレックスとルノアを一瞥すると前に出て団員達と対峙する。全方位を囲んだ状態となった団員達は何を仕掛けてくるのか冷や汗を流す。
ベルは俯きながら息を全て吐き出し、口から空気を思いっきり吸い込む。
肺が膨らみ切って限界にまで達した瞬間、耳を劈く咆哮を上げた。
『ヴオ゙ォ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!!』
ビリビリと空気が振動し、団員達は体を震わせて腰が引けてしまう。咆哮だけで団員達の動きを封じたのだ。
ベルはまず一番前の列に立っている黒い布を付けた団員に狙いを定める。
リスト・ブレイドを伸ばし、飛び掛かると肩に突き刺して関節窩を抉る事で動かせなくさせ、更に膝蹴りを胸部に叩き込んで胸骨を中心に肋骨を全て砕いた。
続いてレックスとルノアもそれぞれ城壁に居る黒い布を付けている団員を狙い、軽く跳躍して城壁へ飛び移る。
レックスはコンビスティックとゼノモーフの頭部で作ったシールドを。
ルノアはアーム・クラッティングを両手に装備した。
「アイツは後だ!先に後ろの女共を狙え!」
「覚悟しやがれ!その盾なんざ弾いてやる!」
上から狙おうと弓を番えていた団員達は、すぐに背後に立った2人に向けて矢を射る。
数十本もの矢が放たれて逃げ場のない2人は死んだも同然と確信した。
...しかし、シールドで防御するレックスはともかく、回避もしないで矢を全て掴み取ったルノアに団員達は戦慄する。
掴み取った矢を捨てると、ルノアは黒い布を巻き付けている団員の前を塞いでいる団員達に向かいながら言った。
『あたしの拳で風穴空けられたくなかったら、とっとと退きな』
『その程度で粋がるなんて...最近の若い子はホント軟弱ね』
レックスも呆れながらそう答え、2人は団員達へ接近して行く。
弓を捨てる団員達を他所に黒い布を巻き付けている団員達は自棄になったのか、戦意は保ってなのかわからないが2人に向かって行く。
そして、斬り伏せようと剣を振るうがルノアの拳が先に2人の団員の胴体に直撃して、その勢いのまま城壁から降りる出入口の壁に激突した。
同じタイミングでレックスのコンビスティックも脇腹に突き刺さって、くの字に体が折れ曲がりながら壁に全身を叩き付けられる。
逃げた団員達は赤い布を付けていたので、ダフネとルアーノが始末すると思い2人は反対側の城壁へと向かうのだった。