ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 「ルアン様...」

 「とんでもねぇな...あれがフィアナ騎士団の生き残りなのかよ...」

 「死んではいないとはいえ...痛そうだね」

   

 豊饒の女主人ではリリルカを始めライラとヘスティア、フィルヴィスとナァーザ、更には来客を含めて神の鏡から観戦していた。

 数で勝っているアポロン・ファミリアを少数のネフテュス・ファミリアは瞬く間に倒していくその様を見て、4人と1柱を除き驚愕と興奮が入り混じる声を響き渡らせていた。

 

 一度に5人が武器を手に仕掛けてきて、ルアーノは腰から取り出したシュリケンを投げ飛ばして翳している長剣や突き出した槍の穂先を斬り落とす。

 攻撃する術が無くなって動きを止めた1人にルアーノ跳び上がって近付き、足の甲を踏み付ける。

 激痛で屈んだ所で膝を勢いよく上げると顎をかち上げさせ、裏拳で蟀谷を殴打。気を失った団員を持ち上げると、補助武器として携帯していた短剣を自身に向けている団員達へ投げ飛ばす。

 

 別の団員が死角から殴りかかって来たが、回避もせずルアーノはその拳を頭突きで止める。

 バキリと手だけでなく手首まで複雑骨折となり、皮膚の内側から白い骨が突き出していた。

 あまりの激痛に悲鳴を上げながら倒れる団員に目もくれず、最後に残った1人に視線を移す。

 

 [ル、ルアン!お前だけは許さねぇぞ!]

 『ああ。そっくりそのまま返してやるよ。

  散々俺をこき使いやがって。許すと思うなよコラ』

 [この...クソッタレェエ!]

 

 握っている短剣を突き出すと剣身が炎に包まれていく。先程仲間を投げ付けられた2人も立ち上がって同じような行動を取った。

 どうやら魔剣のようだった。ルアーノはフンと鼻を鳴らしてガントレットを操作した後、左腕を...何故か体の前に下ろす。

 2門のプラズマ・キャスターも2人にではなく、砲口を上下別々になるよう上空に向けていた。

 

 魔力が蓄積された魔剣から3つの火球が放たれ、ルアーノ目掛けて飛んで行く。

 

 「ルアン様っ!」

 

 椅子から思わず立ち上がってリリルカがそう叫ぶと、ルアーノは体を横向きにさせながら後方へ跳んだ。

 背後からの火球2つの間をスレスレですり抜けていき、下ろしている左腕を突き出す姿勢となる。

 更に砲口を上下別々にさせていたプラズマ・キャスターも2人に狙いが定まっている。

 

 『Hasta la vista,baby』

 

 ボシュウウウゥウウウウッ!

 

 バシュンッ! バシュンッ! 

 

 [ぐあぁあああっ!?]

 

 プラズマボルトから高熱ボルト、プラズマ・キャスターからはプラズマバレットが発射され、見事に3人に命中する。

 着地すると同時に3人は地面に倒れて気絶していた。ガントレットのせり出した一部を戻し、ルアーノは移動を始めた。

 

 「...な?信じて間違いなかっただろ」

 「...はい。もう...疑ったりしません...ヘスティア様は別として」

 「どうしてさ!?」

 

 

 「すげぇ...前々からアイツが強いってのは知ってたけどさ...」

 「ええ。それに...あんな小型の乗り物で岩山を砕くなんて...」

  

 浮かび上がる神の鏡に映し出されたベル達の戦闘にルルネとローリエを始めとして他のヘルメス・ファミリアの団員達は釘付けになっていた。

 確実に相手の動きを止める情け容赦のない攻撃だが、決して死んではいないとわかるのがより恐ろしい。

 自分もあの攻撃を受けたら...と想像するだけで顔を青ざめ、手が勝手に震えてしまう。

 

 しかし、例外も居た。

 小人族の姉弟であるポックとポットはルアーノの戦いを見て恐怖ではなく、興奮と歓喜で震えている。

 

 「...ポック」

 「ああ...姉ちゃん、アイツは...本物だ」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 『なんという力の差でしょう!?ネフテュス・ファミリア、見た事もない武器はもちろんですが恐れる事もなく、次々と団員達を打倒していきます!

  団長であるヒュアキントスはレベル3であり、他はレベル2が大半を占めてますがそれを凌駕するとなると...

  ネフテュス・ファミリアは全員それ以上という事でしょうか!?』

 

 イブリの実況はアポロンの耳に届いていなかった。可愛がっている眷族達が手も足も出ず、圧倒されている事に衝撃を隠せずにいた。

 尤もダフネ、ルアンと名前を偽っていたルアーノがネフテュスの眷族であると気付けなかった己の落ち度を棚に上げて、ネフテュスに叫ぶ。

 

 「ネ、ネフテュス!何故黙っていた!?ダフネとルアン...いや!ルアーノがお前の眷族だと!」

 「あら。2人から聞かなかったのはどうしてかしら?改宗して入団する事になったのは知ってたはずよ」

 「ぐっ...!な、なら何故あんなにまで強いというんだ!?ダフネはともかく、ルアーノはレベル1のはず...!

  ...ああ、そうか!そういう事か!神の力を使ったんだな!

  見損なったぞ!お前を愛したのが間違いだった...よってこの戦争遊戯は中止とさせてもらうぞ!」

 

 必死に絞り出した答えにネフテュスはキョトンとして首を傾げた。

 ロキは深くため息をつきながら違反をしていると見苦しく勝手に決めつけるアポロンに言った。

 

 「お前アホか?せやったら、ネフテュス先輩は今頃、旦那はんところに行ってるはずやん。

  そもそもお前がまず気付くんとちゃうんか?神の力が使われてるって」

 「っ!な、何か卑怯な手を使ったに決まっている!

  正直に言え!ネフテュス!」

 

 ロキの正論にいよいよアポロンは顔を真っ赤にさせて唾を撒き散らしながらネフテュスにそう叫ぶ。 

 その態度にとうとう我慢の限界に達したのか、アストレアは立ち上がろうとするも当人に止められる。

 ネフテュスはこの状況でも余裕そうに微笑んだままで、それどころか少し上機嫌で手を自分の口元に当てながら答えた。

 

 「私は何もしてないわ。あの子達は自力で強くなったのよ?

  それを否定するなんて...貴方、神として恥ずかしくないのかしら?」

 

 その一言がトドメとなってアポロンは苦虫を噛み潰した顔で口を閉ざし、悔しそうに唇を噛んだ。

 神々は最初からアポロンの発言は一切聞き入れていなかったので同情などせず、ただ呆れるようにはぁーと吐息を漏らす。

 

 そんな時、神の鏡から一際大きく悲鳴が流れてきた。

 そこに映し出されていたのは...大きく開いた口で団員に噛み付き、壁に叩き付けるダフネの姿があった。




ルアーノ君の戦闘シーンはネガ電王が元ネタ。
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