ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
随分と静かになってきたな...そろそろ頃合いか。
僕は塔に繋がっている空中廊下を渡って行く。途中、進行を妨げてきた魔法特化の団員達の杖をシュリケンで斬り落とし無力化させた。
威圧も何もしていないのに尻尾を巻いて逃げて行く様は見るに堪えない。
塔に近付いてきたが...出入口付近やその周辺に人影は一切なかった。恐らく、ここへ来る前に僕らを倒す算段で全員を向かわせたんだろう。
入口を通って螺旋階段を登り、アポロン・ファミリアの団長が籠っていると思う部屋の前に立つとドアを開けて室内へ入った。
室内には兵力を見誤ったのかどうか知らないが、たったの10人程度しか居なかった。
玉座の前に立っているのが敵大将であるアポロン・ファミリアの団長か。名前は...ヒュアなんとかだったな。
「まさか単身で攻め込んで来るとは...大した度胸だな、ネフテュス・ファミリア。
だが、自惚れた己を悔いるがいい!かかれぇっ!」
「ま、待ってください!団長様!」
腰の引けた情けない号令と同時に、アポロン・ファミリアの団長を囲っていた護衛達が武器を構えながら向かって来る。
さっきの連中と比べれば勇猛ではあるが...相手になるのも面倒だ。まとめて吹き飛べ。
ギュロロロロォ...!
ド ギュ オ ォ オ オ オ オ オ ンッ!
ガントレットにプラズマエネルギーを蓄積させ、屈む勢いを利用しながら大きく腕を振り下ろすと床に拳を叩き込む。
青白いエネルギーを纏った衝撃波が僕を中心として広範囲に広がり、壁に叩き付ける勢いで護衛達を吹き飛ばす。
衝撃波の余波で窓ガラスだけに留まらず、床や壁、天井まで罅割れていき、最終的にはこの部屋諸共粉々に吹っ飛んだ。
凄まじい爆裂音が周囲に木霊し、視界が煙に覆われる。少し間を置いて訪れた静寂の中、風によって煙が晴れていく。
破片が落ちる音と痛みに悶えて唸り声を上げる護衛達の声が微かに聞こえてきた。
立ち上がって前方を見ると、運良く攻撃範囲から外れていたようでアポロン・ファミリアの団長だけは...
いや?もう1人、長い黒髪の少女も免れているか。
アポロン・ファミリアの団長のその表情は呆然としていたものから徐々に怒りへと変貌していき、僕を睨むと口を開いた。
「くそ!こんな事が...だが、あれだけの魔法を使ったからには魔力は残っていないだろう!」
どうやら魔法と勘違いしているようだが、まぁ...確かにある意味では間違ってはいないか。
スラムはプラズマエネルギーを全て消費して繰り出すため、再度使用するには数十分のチャージが必要だ。
それを好機と見たようで、アポロン・ファミリアの団長は右手を頭上に挙げながら詠唱を始めた。
「【我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ】!
【我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ。放つ火輪の一投!来たれ、西方の風】!
【アロ・ゼフュロス】!」
掌を中心に円光を形成させ、投げ付ける動作でそれを飛ばして来る。
それなりに長い詠唱だったようだから威力もありそうだが...まぁ、気にするだけ野暮か。
そう考えている間に円光は目の前まで飛行して来ていた。アポロン・ファミリアの団長は勝利を確信して気持ちの悪い不快な笑みを浮かべていた。
僕はそれを見て少し苛ついたから、指で円光を摘まみながら受け止める。
なるほど、回転しているから真っ二つに斬り裂くつもりだったのか。それであんな不快な笑みを...
アポロン・ファミリアの団長も長い黒髪の少女も、僕が円光を受け止めた事に驚愕していた。
「っ!【ルベ...!」
しかし、アポロン・ファミリアの団長はまだ何か仕掛けようと掌を向けてくる。僕は少しだけ覚醒し、何をする気なのか読み取ろうとする。
...スペルキーによる爆発か。中々の技量を持っているんだな。
僕を倒そうと奮闘した勇猛さは称賛するが...相手が悪かった事を悔やむしかないな。
スペルキーを言い切る前に、円光を持ち直すとシュリケンの要領でアポロン・ファミリアの団長目掛けて投げ返した。
離れていく円光はアポロン・ファミリアの団長との距離を縮めていき、やがて目の前まで接近した所でスペルキーの最後の言葉である、レと発した瞬間に爆発した。
「が、ぁ...」
「だ...団長様ぁ!」
自らの魔法で自滅した...いや、させたと言うべきか。黒煙を孕みながらアポロン・ファミリアの団長は崩れ落ちた。
うつ伏せになっているためわからないが、体の前面は大火傷しているんだろう。それくらいならポーションでもエリクサーでどうとでもなるはずだ。
これでアポロン・ファミリアとの戦争遊戯は終わったな...肩慣らしにもならなかったが。
『ちょっとベル?アンタね、カサンドラが居たのにこんな派手にやるんじゃないわよ』
「あ...ダ、ダフネ、ちゃん...?」
『ごめん、カサンドラ。怪我はない?私も来るつもりだったんだけど...」
階段を使わずに、ダフネが床以外半壊した塔へ飛び移って来るなり詰め寄ってきた。
何の事なのかわからずにいると、アポロン・ファミリアの団長を介護しようとしていた長い黒髪の少女...
ダフネが言うカサンドラという少女に呼ばれて僕から離れ、ヘルメットを脱ぎながら彼女の安否を気遣う。
...あぁ、娶っていたのか。それは僕にも非があるな...謝罪しておこう。
『カサンドラ、危険な目に遭わせてしまって...ごめんなさい』
「え?あ...い、いえ...だ、大丈夫、ですから...?」
「まったく...怪我させてたら流石に腕の一本落としてやってるところだけど、大丈夫そうならいいか」
冗談ではなく本気でそう言ってる辺り彼女を心底気に入っているんだろう。よく臭いを嗅げば、ダフネのマーキングした痕がしてくる。
僕は2人の邪魔にならないよう、少し離れて元々壁があった縁に移動した。その際、ふと下を見ればショーティが団員の2人と対峙している姿に気付く。
ヘルメットのヒアリングデバイスで会話を拾ってみると...
「ル、ルアン、悪かったって、な?あれはほんの冗談で言っただけだからよ」
「お、俺はこいつを止めてやったんだ。それなら見逃してくれても」
『うーん...まぁ、嫌だね』
返答と同時にショーティは1人をプラズマバレットで吹き飛ばした。もう1人は逃げようとするも、投げ飛ばしたスマートディスクが足元を通過してアキレス腱を切断した。
悲鳴を上げる団員にショーティはコンビスティックの穂先で地面を叩きながら音を立てて近寄って行く。
目の前に立つと、リスト・ブレイドの刃間の間隔を広げて首を挟み込むようにしつつ顔を上げさせて、その表情を窺った。
『あの時お前...俺達の方がルックスは良いって言ってたか?ん?』
「わ、悪かった!謝るから、た、頼む!こ、殺さないでくれ!」
『...心配すんなって。俺もそこまでは怒っちゃいないぜ?』
団員はその言葉を聞いて、安堵したのか薄ら笑いを浮かべていた。次にショーティが返答しるまでは。
『Gyvew mew youl nyse facew』
「へ...?」
団員の絶叫が響き渡った。それを聞いてカサンドラは怯えて小さく悲鳴を上げていた。
リスト・ブレイドから首が外れると、団員は顔を両手で抑えながらのたうち回って地面に血を撒き散らす。
ショーティはそれを少しだけ見ていたが...すぐに見飽きると手に持っていた団員の顔の皮を放り投げ、地面に捨てた。
その顔を剥いでやる! by顔面破壊大帝
これにてアポロン・ファミリアとの戦争遊戯は終わり。
いよいよ、ティオナと...の前に、次はアポロンを地獄へ突き落とします。
どっちの意味かはお楽しみに。