ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ 作:れいが
「うおおおおおおりゃぁあああああ!!」
ヴオオォオオオオオオオオオッ!
100階層に響き渡る雄叫びと気合を込めた声、砕ける大地と木々の倒れる音。
レイが迎えに来る前に、ティオナは限界まで自身の力を引き出すためキングコングと調整を行っていた。
冒険者はランクアップする事によって自身の視覚や運動神経のズレを修正するのだが、ティオナの場合は異例な上昇となっている故に自身での調節が難しいためキングコングに頼らざるを得ないのだ。
キングコングの振るう豪拳を回避しては反撃するべく突進し、カウンターを受けても体勢を崩さずに防御する。
何度も繰り返しては大地を揺らし、木々を薙ぎ倒す程の荒々しい調整であった。
やがて、キングコングの動きを僅かに見切ったティオナは拳打を先程までとは違う、柔軟を活かした回避を見せる。
そのまま一直線に跳び、キングコングの顔面に拳を叩き込む。...かと思われたが、ティオナはキングコングの頭の上に乗った。
「...にひひっ~、これで調整は十分だね。ありがとう、ししょー」
ゴフッ...
キングコングが横向きにしたままの手を額に当てると、そこへティオナは乗り移る。
ゆっくりと地面に降ろしてティオナは跳び上がって着地した。すると、背後から近づいてくる気配を感じて振り向く。
ナルヴィだ。その手には数尾の奇妙な魚を持ってティオナに近寄ってきていた。
「あっ、ナルヴィ。その魚って...もしかしてご飯のために持ってきてくれたの?」
「それもあるけど...とりあえず食べてもらえるかな?」
「うん!レイが来る前に早く焼かないと...ってうわぁあ!?」
ティオナが枝を拾った直後にナルヴィが無言で火を起こすと魚を焼き始めた。
強烈な火力で魚は少し焦げ目を残しつつもこんがりと焼き上がる。いきなりの事で驚いて戸惑っていたティオナだが、差し出されたそれを受け取り...何故か生のまま白い皮を捲るように取り除いて齧り付いた。
ムシャムシャと食べる事に専念するティオナをナルヴィとキングコングは静かに見守っていた。
やがて、脊椎から垂れる身も啜ってゴクリと喉を鳴らしながら飲み込み、ふーっと息をつく。
「ごちそうさまでした!よーし!これで準備万端だね!」
「ちょっと待って。もう1つ、秘密兵器を作ってみようよ」
「え?秘密兵器...?」
ナルヴィの突拍子な提案にティオナは頭の中を疑問符でいっぱいにした。
しかし、それを気にせずナルヴィは先程食べた魚の骨を手に取るように言い、ティオナは言われるがままそうした。
魚の骨は一般的に知られるような形状ではなく、まるで獣のような太く、硬質である。
それをナルヴィの指示通りに胴体部の骨の根元をもう1つの根元に押し込むとカチリと音を立てて、何と嵌め込むことが出来た。
驚くティオナだが、続けて頭部の骨も組み合わせた骨の上部へ乗せるように押し込み、最後に尻尾部分の骨を胴体部の骨の先端に嵌め込む。
更には顎部分の骨をL字となっている部分の曲がっている箇所に嵌め込み、最後に尾鰭を筒状に巻いてその中へ人間と同じような形状の歯を3本程入れ、それを握っている部分の穴に差し込んだ。
上部にある頭部の骨をスライドさせるように引くと、1本の歯が組み合わせた骨の中央付近に移動したのが見える。
それは正しく銃器であった。骨で構成されているため、ボーンガンと呼称されるだろう。
「投げ斧だけだと心許ないだろうから、使ってみるといいよ」
「えっと...そうしたいんだけど使い方が...」
「まずは標的に狙いを定めて、出っ張ってる部分を指で引くだけだよ」
ナルヴィの説明を聞いたティオナは、周りを見渡して少し離れた木に生っている木の実を見つけた。
握り方を確かめつつ骨の突起を照準にして、木の実に狙いを定めると引き金となる顎の骨を引いた瞬間...
ボシュッ! パァンッ!
ボーンガンの銃口から発射された歯が真っすぐ飛んでいき、数M離れている木の実を粉砕する。
その威力にティオナは目を丸くし、キングコングも思わず引いているようだった。
我に返ったティオナはボーンガンを見つめて、ベルに直撃して大丈夫なのかという不安ではあるものの...本気の勝負をするからには使うべきだと自分に言い聞かせた。
ナルヴィにお礼を述べていると、タイミングを見計らったかのようにレイが迎えに来たのだった。
「じゃあ、行って来るね。ナルヴィ!」
「頑張ってね。ここでしっかり武運を祈ってるよ」
ボーンガンの元ネタは映画『イグジステンズ』にて登場したとんでも銃。
本作中では魚としていますが、原作では気持ち悪すぎる未確認生物の骨です。
それから弾丸の歯も魚のじゃなくて主人公の差し歯。
主人公がその生物の身を貪り食って骨を組み立ててるシーンは衝撃的過ぎて、女優さんの演技が絶対に演技じゃない反応と同じ反応となりますね。