ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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大変長らくお待たせ致しました。
込み合った事情で中々手を付けられずにいました。
 
ですが、当然バッド・ランドは観ました。
新たなプレデターの新境地を開いた作品と自分は絶賛します。


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 血に汚れたリスト・ブレイドやコンビスティックの手入れをしていると、我が女神からの通信が入った。

 アポロン・ファミリアは既に城から撤収している。致命傷を負った負傷者はダフネとショーティが友好的と判定した団員達によって運び出されたんだ。

 

 ...もうじきティオナが現れるから準備をするように、との事だ。まだ日も傾いていないが...彼女が万全ならいつでもいい。

  

 僕も装備の調整は出来ている。まぁ...最後は力でぶつかり合う事になるだろうが...

 ティオナも前回の勝負でかなりの策を練って挑んで来るに違いない。

 

 『ベル。俺からのアドバイスだ』

 『...別にいい』

 『そう言うなって。いいか?お前がまず負ける訳ないけどよ...ティオナは死ぬまでお前と戦い続けるはずだ』

  

 ショーティがそう語り、僕は黙って聞き受ける。

 

 冗長な部分を省いて簡略的に僕が理解したのは...勝敗をつけるためには殺すしかない、という事だ。

 冗談にも程があると思い、その言葉を忘れようと思った。...だが、ショーティもいい加減な事を言ったりはあまりしない。そう、あまりは。

 

 そこで少しだけ覚醒し、話した内容を改めて理解しようと思考を巡らせ...答えを導き出した。

 

 『...力学的には可能か。だが、動き回る彼女を止める必要もある...』

 『腱を切るなり骨を折るなりすりゃいいだろ』

 『簡単に言ってくれるな...』

 

 そうして長々と続けていたショーティとの会話がズズン...という地響きによって終わりを迎える。

 

 今、僕が居るのは屋根や壁が吹き飛んだ塔の最上階であり、後ろを振り向くと...夕陽を背に巨大な人影がこちらへ向かってきているのがわかった。

 ティオナを師事しているキングコングだ...ここからでも伝わる圧倒的な迫力は並みの冒険者なら恐れるあまり、竦んで動けなくなってしまうかもしれない。

 

 よく見れば、右肩辺りの上をレイが飛んでいて...ティオナが彼女の足に掴まっている。

 

 『そんじゃ、どう決着を着けるかはお前次第だ。長としての面子を保てるといいがな』

 『...言っていろ』

  

 僕が答える間にショーティは皆の所へ向かい、この場には地響きとなるキングコングの足音が響き渡っていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「な、なんだよありゃ...」

 「デカ過ぎるだろ...あ、あんなモンスターが居てたまるかよ...」

 

 先程までネフテュス・ファミリアの勝利により大金を得た者達の歓声が止まなかった酒場だった。

 

 しかし、今はとてつもない緊迫感と恐怖心が支配され、酒場は静寂に包まれており、誰もが神の鏡に映し出されているキングコングを呆然と見ている。

 その巨体から放たれる威圧感はモンスターのそれではない。まるで王と...否、神と対面したかのように思えた。

 

 一般人はもちろんのこと、長年それなりに冒険者を続けている者や暗黒期を生き抜いた熟練の冒険者さえも息を吞む。

 

 「あれがリドやレイ達の親分って訳か。やっぱ王の貫禄が半端ないな」

 「本当にね...トラウマが治ってなかったら漏らしてたかも」

 「...み、皆さんはあのモンスターをご存知なのですか...?」

 「いや、直接は知らないが、ある種のモンスターが王と崇める存在であるのは...」

 

 リリルカに説明しようとしていたフィルヴィスだったが、そこでネフテュスの声がそれを遮る。

 

 『彼の名はキングコング。あなた達と同じように知性と心と理知を宿したモンスター、ゼノスの王よ。 

  3000年も昔からダンジョンの頂点に君臨し続けていた存在で...ティオナを強くしてくれた師匠と呼ぶべきかしらね』

 

 そう言い終えると口を閉ざしていた酒場の全員が、仲間や隣に座る認識のない人物に自身の抱く疑念を口にした。

 そんなモンスターが存在するはずがない、人間を教示していたなどあり得ない、とネフテュスの目論見通り否定的な意見が飛び交った。

 

 何より多かったのは...あれがオラリオの下にいるという恐怖心を含んだ発言であった。

 

 『そうね、怖いと思うわよね。でも...それなら、どうして今までずっとダンジョンから出ようとせず、況してやオラリオに襲い掛からなかったのか...

  至極単純に答えてあげると、人間という存在を脅威と見做していないから。皆も足元に蟻がいたとしても気付かなければ気にしないでしょう?』

 

 ネフテュスがそこで言葉を区切ると、酒場は再び静まり返った。不思議とその例えが腑に落ちたように思えたからだ。

 何故、生物は攻撃という手段を用いるのか。それは自身の命に危険が迫り、自身を守らなければならないという防衛本能によるものだ。

 

 『ゼノスは人間との共存を望んでいるわ。もちろん...キングコングもティオナと仲良くなるくらいにはね。

  今、彼女を運んでいるレイもゼノスの1人。とても歌声が綺麗で皆も気に入ると思うわ。

  終わった後で聴かせてあげるから、楽しみにしててね。...さて、それじゃあ...ロキ・ファミリアとの戦争遊戯を始めましょうか』

 

 ゼノスについて話す事はそれだけでいいと、ネフテュスは流れるように戦争遊戯の開戦を告げた。

 まだ混乱しているのにも関わらず、連続で戦争遊戯が始まる事態に酒場の冒険者達は驚愕し、再びざわつき始める。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 今回は一騎打ちである事とどちらかが降参するか倒れるかまで止めないという内容を伝えるネフテュス。

 ティオネを始め、幹部であるフィンや団員達もティオナの勝利を信じて疑わず、その一挙手一投足を見守ろうとしていた。

 

 しかし、次に衝撃的な事実を知る事となる。

   

 『ちなみに...私の眷族、ベル・クラネルには恩恵を刻んでいないわ。それでも、まだレベル50になる前のティオナに一度勝っているの』

 「...ぁ?」

 

 そう小さく声を漏らしたのはベートだった。彼も同じく一度敗北を喫した事がある彼だからこそ頭の中が真っ白になりかける。

 

 『彼女もまた強くなっているけれど...今のベルは試練を乗り越え、神の恩恵を得ずして人の人智、神の神智さえも類を見ない力を使えるのだから、甘く見ない方が身のためよ』

 

 ベートだけでなく、フィン達も信じられないという表情を浮かべていた。

 神の神智さえも超える力とは一体何か...何1つとして答えを導き出せないでいる彼らを余所に戦争遊戯は始まるのであった。

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