ダンジョンで捕食者たちと獲物を求めるのは間違っているだろうかⅡ   作:れいが

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 槍の一撃が迫る中、ティオナは素早く引き抜いた斧で弾いた。軌道から反れた鋭利な矛先は空を切る。

 ベルは攻撃が外れたと同時に脇を締めて、今度は薙ぎ払うように振るった。

 ティオナは体を捻らせながら回避すると、その勢いのまま全身のバネを活かして握っている斧を振り下ろす。

 それに合わせて驚異的な反射神経でリスト・ブレイドを伸長し、刃同士をぶつけ合い火花を散らして斬撃を防ぐ。

 

 「...!」

 「フッ...!」 

 

 鋭い回し蹴りで空中に浮いた状態のティオナの脇腹をベルは狙う。しかし、前腕を掴まれて倒立をする要領で姿勢を保ちながらティオナは身軽に距離を取った。

 地面に着地したと同時にティオナは足腰に力を込めると、頭を下げつつ体を丸めた状態で自身を砲弾のようにして突進するティオナ。

 ベルの肩から腕にかけてぶつかった衝撃は空気を揺らし、僅かにだがベルを後退させていた。

 

 この間、僅か5秒以内で起きた攻防の応酬だった。

 

 

 

 場面は変わって、まずは黄昏の館。

 並みの第一級冒険者をも超越した高速の戦闘を目の当たりしたロキ・ファミリアの全団員は目を見開いて驚愕する。

 

 「な、何よ、今の...!?」

 「速い...見えなかった...」

 「僕も視力には自信があるのだけど...途中までしか追えなかったよ」

 

 しかし、そんなフィン達より唖然としている存在がいた。

 バベルでティオナとベルの一騎打ちを観戦している神々である。

 

 今、彼らの目に映っているのは恩恵を刻まられたアマゾネスと刻まれていない人間のはずだ。

 本来、常識に考えて勝敗は明白なのだが...その常識が目の前で崩れ落ちたのだから無理もないだろう。

 

 ただ、その一方でネフテュスは嬉々としてティオナの成長の満足げに見つめていた。

 

 「いいわねぇ。お互いを高め合える存在と巡り合えて...本気でぶつかっているのだから」

 

 

 

 場面は再び、シュリーム古城跡地に戻る。

 

 ティオナは柄と繋がっている紐を放さないよう握り、斧を投げ飛ばす。

 回転しながら斧は向かって行き、易々と回避されてしまうも強引に引っ張る事で飛翔した軌道上を戻りながら、ヘルメットに守られていないベルの後頭部を狙う。

 それを風切り音で察知したベルは上半身を捻らせる事で直撃を免れた。

 

 だが、体勢を戻した隙を狙っていたティオナは斧が手元へ戻ってくる前に接近し、ドロップキックを繰り出す。

 バランスが効くようにしようと前足を出すが、数秒単位で間に合わず胸部を蹴り付けられて今度こそ何歩か後退させる。

 形成を有利に持ち運ぶベく、ティオナは重機関車が如くもう一度突撃した。今度はベルも両肩を掴んで受け止める。

 

 「ふんぐぬぬぬぬぅ!」

 『...その程度じゃないだろう?』

 「あ、た、り、ま、え、でしょおっ...!」

 

 押し倒そうとしていたティオナだが、僅かに体格差があるため微動だにしない。

 破片を踏み潰しながら足を滑らせてしまう。

 やがて、頃合いを見たベルはティオナの両手をガッシリと掴んだまま背中から倒れ、巴投げの要領でティオナを放り投げた。

 

 突然、投げ飛ばされるのに対応出来なかったティオナだが、空中で体勢を立て直そうと身を翻す。

 地面に落下する寸前のところで着地には成功し、紐を引っ張って転がっていた斧を掴み取った。

 

 キィィィン・・・!

 

 「っ!」

 

 フォシュンッ! フォシュンッ!

 

 プラズマキャスターの起動音と共に赤いレーザーが自身に向けられていると気付き、ティオナはすぐさま背負っている背鰭の武器を構えた。

 砲口から2発のプラズマバレットが発射されるも、熱を吸収する性質を持った背鰭によって消滅する。

 ベルは独自に得た防御手段なのだと特に驚きもせず、続けてヘルメット内部に映る赤い三角形のターゲティングでティオナをロックし、プラズマバレットを撃ち放つ。

 

 弾速は反射神経を駆使すれば避けられるものの、僅かにでも隙を晒せば一瞬で勝敗は決する。

 ティオナは背鰭の武器を横向きに構えたまま防御に徹した。少しでも目が慣れるように発射時の瞬間を観察しながら。

 やがて、プラズマバレットの軌道を目で追い始めたティオナは背鰭の武器に1発が命中すると横っ飛びになって移動する。

 

 即座に右腰のボーンガンを手に取り、上部にある頭部の骨をスライドさせるように引くと弾丸の歯が銃身に装填される。

 ベルに狙いを定めつつ、引き金となる顎の骨を引いた。

 

 ボシュッ!

 

 『!』

 

 ―ドガァアアッ!

 

 銃口から発射された弾丸の歯をベルは辛うじて回避する。標的を失った弾丸の歯は背後の崩れなかった壁の一部を粉々に吹き飛ばす。

 どうやら弾丸の歯はある程度の衝撃で破裂するようだった。

 

 それを見たベルは、原始的ではあるがその破壊力は侮れないと驚愕する。 

 

 同様の手順を行って射撃するティオナ。脅威と判断したベルは回避運動を取り、三点レーザーサイトでボーンガンの破壊を狙う。

 当然、それを見越していたティオナは頭上にボーンガンを投げ、プラズマキャスターの砲口を上に向かせた。

 

 再び斧を掴み取ると、ベル目掛けて力いっぱい投げ飛ばす。ボーンガンに狙いを定めていたベルが風切り音に気付いた時には胸部装甲に斧が命中し、火花を散らす。

 

 それによって大きく体を揺らしてしまい、ターゲティングが外れたプラズマバレットはあらぬ方向へ発射される。

 落下してくる前にティオナは革袋から弾丸の歯を3つ取り出し、敢えて自ら跳躍すると空中でボーンガンを掴み取った。

 

 引き抜いた筒状の尾鰭へ3本を縦に並べて入れ、グリップ部に押し込む。今度は頭部の骨を3回連続で引き、顎の骨を長く引いた。

 

 すると、回数に応じるように弾丸の歯は3点バーストで発射される。

 

 危険を察知し、コンビスティックのポール部を収納したベルは腰のバトルアックスを構える。

 1発は空気抵抗で反れていったが、2発はバトルアックスに直撃した瞬間に破裂して強烈な衝撃波がベルを襲った。

 

 ベルの周囲を瓦礫から舞い散った白い埃が包み込んだ。着地したティオナはボーンガンから背鰭の武器に持ち替える。

 

 モクモクと漂う埃が風に吹き消され、その中からバトルアックスを構えて彼女を見据えるベルの姿があった。

 

 『...良い銃だな』

 「銃?あぁ、これの事?ナルヴィ...精霊が秘密兵器でくれたんだよ。勝ち目があるようにねっ」

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